月の輪通信 日々の想い
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2005年08月25日(木) 地蔵盆

八月も20日を過ぎると、さすがに子ども達の周りに何となく憂鬱な空気が流れ始める。
プールや楽しいレジャーの計画もほぼ消化した。
虫取りや水遊びにも、いまいち真夏の輝きを感じない。
父さん母さんは盆明けあたりから、お子様サービス期間を終了して、通常のお仕事モードに戻りつつある。
そして残っているのは、見るもうっとおしい放置したままの宿題・・・。
今年は毎年の例に反して、受験生のオニイが夏休み前半で学校からの課題を終えた。中学最初の夏休みの課題の量にアグアグしているアユコ。感想文、工作、ポスターの3点セットを残して唸っているゲン。そしてあさがおの押し花を忘れてたと慌てるアプコ。
やっぱり毎年この時期にはこうなっちゃうんだなぁ。

今日、明日と、地蔵盆。
工房の入り口にあるお地蔵さんの祠をきれいにして、赤白の提灯を下げ、新しい前掛けをこどもたちの数だけ縫った。今年は父さんの登山や家族の急病などで、ぎりぎりになるまで準備ができなくて、大慌てでお供え物を買い揃えた。
お昼過ぎ、子ども達が椅子を並べたり、木魚やお焼香盆を運んだりしてくれている最中に、お寺さんが約束の時間より30分も早くお見えになった。いつものおなじみのご住職ではなくて、ずいぶん年若いお坊さんだ。
大人たちがご挨拶もそこそこに間際の準備に駆け回っている間に、お坊さんは子ども達に「何人兄弟?」「お兄ちゃんは何年生なの?」とこどもたちに声をかけながら、あれこれ準備を手伝ってくださっている。一番年かさのオニイが、若いお兄さんのようなお坊さんとなにやら親しげに言葉を交わしているのが見えた。
そしていつもの住職さんなら、おじいちゃんやひいばあちゃんにむけて大人向きの挨拶をなさって読経に入られる所を、「今日はね、子どもを守ってくださるお地蔵さんの日だからね、特別心を込めて手を合わせてみてね。」と
子供向けの短いお話をして席に着かれた。
お経の声も、ご住職の朗々と歌うような名調子ではなく、生真面目で涼やかな若いお声の南無阿弥陀仏だった。

「お坊さんにも あんなに若い人もいるんやなぁ。」
とオニイが後から話してくれた。
「何となくお坊さんといったら、年寄りのイメージがあったんだけど。
若いお坊さんというのもなんかいいね。」
「ふうん、そう。じゃあ、将来はお寺のお坊さんになるってのはどう・・・?」
「う〜ん、悪くないけど・・・。でも鶏のから揚げや明太子が食べられなくなるのは辛いな・・・。」
「・・・なに、それ。お坊さんだって、肉も魚も食べるし、結婚もするよ。宗派にもよるけどさ・・・。」
「あ、そうなの?知らなかった。」
こういうあっけらかんとしたマヌケ振りがまだまだ可愛い。

近頃、オニイが周囲の大人を見上げる視線の方向はなかなかに渋い。
炎天下の駐車場で踊るような手振りで車を誘導するじいちゃん警備員だったり、スーパーの食品売り場で朗らかにくるみパンを試食販売するおじさんであったり・・・。
そういえば数日前、「ちょっと面白い人を見たよ」と教えてくれたのは、行きつけの図書館の男性職員のこと。
静かな図書館で目に余る騒々しい振る舞いをする小学生達を大きな声でガツンとしかりつけたのだそうだ。他人のルール違反やちょっとしたズルがいちいち癇に障るオニイには、そういう毅然とした態度を取れる大人の姿がすっきりと気もちよく見えるのだろう。
そういう見方が出来るオニイも「なんかいいね」と母は思う。


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