月の輪通信 日々の想い
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2004年05月21日(金) 妹になる

ここ数日、PCの調子が最悪で,全く起動しなくなってしまった。義兄が毎日うちに往診に来て,ああでもないこうでもないといろいろ復帰を試みてくれたが,ついに今朝,瀕死のPCくんは救急車で緊急入院してしまった。
代わりにつないでもらっていた骨董品のノートパソコンではさぞかし不便だろうと、義兄が別のPCをつなぎなおしてくれ,ようやく普通にメールやネットが出来るようになった。
来週のお茶会を前に超多忙なはずの義兄の貴重な時間を、我が家のPC如きのために何時間も裂いてもらうのは本当に心苦しい。
でも、メールチェックが出来ない,日記の更新ができない、なじみの日記書きさんにお会いできない日が3日も続くと、何とはなしにいらいらも募る。
「忙しいのに済みません。」何度も何度も頭を下げつつ,「いいよいいよ」と根気良くキーボードを叩きモニターを見つめる義兄の親切に甘える。

実家では私は第1子で、すぐ下の弟とは5つ、その下の弟とは7つ離れている。
当然、呼び名は「お姉ちゃん」
3人兄弟というよりは、どこか親寄りの中間管理職のような姉であった。
10歳年上の夫と結婚して,11歳年上の義兄と9歳年上の義妹が出来た。
「お兄さんがほしいなぁ」と淡い妄想の世界で逞しく頼りになる兄の存在を夢見ていた私にとって、義兄はまさしく「お兄さん」。
40過ぎのおばちゃんになった私を「Nちゃん」と名前で呼び,困ったときにはひょろりとやってきて気持ち良く助けてくれたりする。まさしく「長子気質」である兄にとっては年の離れた弟の嫁は、「しゃあないなぁ」と手を貸さなければならない手のかかる妹の一人なのだろう。
一方,結婚によってはじめて年長の兄弟をもつことになった私にとっては、「お兄さん」という呼称一つ取っても、どこかぎこちなくいつまでもくすぐったい。義兄同様「長子気質」のきわめて強い私にとって,「いいよいいよ」と気持ち良く助け舟を出してくれる義兄の寛大さが,とても有難いくせにしっくりと甘えてしまうことが今だに出来ない。
「申し訳ないなぁ,こんなに時間を取ってもらって・・・」
と居ても立っても居られない気持ちになる。自分一人で問題を処理できないことが情けなくなる。
中途半端な長子気質だなぁとつくづく思う。

「はい、これで当座はネットもメールも出来るようになったよ。また修理に出たPCが戻ってきたらつなぎ直してあげるから・・・」
いつもの如くさらりと言って,仕事場に戻っていく義兄の後姿はまさしく月光仮面だった。
義兄が修理に費やしてくれた長い長い時間を申し訳ないと思いつつ、「やれ,うれしや、メールもネットも出来る!」とそそくさとPCの前に座る。
結婚して15年。
ようやくだれかの妹として「お兄さん」に甘えることの嬉しさに気付きつつある私。
そのことを父さんに伝えようとしたけれど,生まれついたときから誰かの弟だった父さんには微妙なニュアンスが伝わりにくい。
そのくせ,10歳も年上でどこか兄のような気持ちで私を見ている夫にとっては、義兄に甘える嬉しさを語る妻は面白くないに違いない。
「そういうことじゃ、ないんだけどな・・・」と思いつつ,早々に話題を切り上げる私はやはり長子気質である。


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