ほんま さぶいなあ。
こんな夜にかぎって石油ストウブの灯油が無い。
ああ 邪魔くさいなあ。でも灯油を入れて、ストウブに火をつけないことには部屋は凍るような寒さやがな。 ああ どないしょう…。
こんな時ほど“執事”とか“お手伝いさん”“家政婦さん”のいるようなお家に生まれたかったと思う。
「おい…トミタ… 部屋がなんや凍るほど寒いやないか…」 「ご主人様…失礼いたしました。お部屋のストウブの灯油切れのようでございます」 「ございます やないやろ…トミタ。しっかりしてや。あんたこの家に来て何年になるんや?先代が、えらいかわいがってたもんやから今でも使たってるけどもやな、ふつうの会社やったら定年を10年もすぎたアンタを使たってるんわ…」 「ご主人様! それだけは…言わないでくださいませ…」 「わかってんのか…トミタ…あんたが丁稚にあがった頃から先代…つまりわしの父親はあんたの面倒見てきた。そのかわがられて来たのに…お前は先代を裏切って!」 「ぼん! いや! ご主人様…そのお話だけは…!」 「いや! このさぶいのに灯油も入れんと、このわたしを凍え死にさせようと思てるやろ トミタ!」 「めっそうもございません〜〜」
「トミタ…わては知ってますんやで。あんたが先代の御料さん…つまりわてのお母さんと出来てもたことを…!あの冬の嵐の夜…そんな風に先代からは聞いてるで!」
「うっっ… ぼん… それだけは…それだけは…ううう…」 「ふん! もうええわ! はよ灯油を入れさらせ!」 <部屋を出るドアを閉める音「バタン!」> 「っは、はっい…」
トミタ…モノローグ… 「わては…好きこのんで奥様とああなったのやない…あの夜、奥様が部屋の鍵を開けて…わてを招き入れたんは…奥様やったんや… あの… 寒い冬の嵐の夜… そんで… その十月十日後に生まれたんが…
ぼん… あんたなんでっせ… ぼん…
…てな アホなこと考えてんと… さっさと灯油 入れて来なはれ…。
さぶいさぶい…
ええええええ〜 もう2月やがな。
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