天気は晴れ。
飛行機の出発時刻は14時。
3週間ぶりに、あなたに逢える日。
目を合わせた瞬間、
私は一体どんな顔をすればいいんだろう?
飛行機から降り立ち、あなたが居る街へと急ぐ。
あなたと逢えるのは3時間後。
時間はたっぷりあるはずなのに、
はやる気持ちを抑えきれずにいる。
胸が、痛いほど、高鳴る。
外は知らぬ間に雨が止むことなく降り注いでいたけれど、
ちっとも憂鬱なんかじゃない。
苦い珈琲を飲みながら、
呼吸を整える。
あなたのことが頭から離れないよ。
あなたも同じように思ってくれてるのかな?
あなたにメールを何度も送る。
数時間遅れで、あなたからの返事が届く。
今日は何故か、タイミングが噛み合わない。
時間が、距離が、もどかしい。
こんなにも、近くに、居るのに。
ガタンゴトン電車に揺られて、
人が溢れる金曜日の銀座へと足を踏み入れる。
人、人、人。
傘を持つ習慣の無い私は、
生ぬるい雨に打たれながら、1つのビルに駆け込んだ。
溜め息。
宙を見つめてみる。
そんな時、不意にあなたからの電話。
「もしもし? 何処に居ると思う?」
「会社? 仕事、終わりそう?」
「実はね」
「うん?」
「今、銀座に居るよ」
「嘘」
「今、何処?」
「えっと…●●ビル?」
「了解。すぐ行くから、待ってて」
予想外の展開に驚きながら、
ビルの階段を駆け上り、トイレへと駆け込む。
桃色のグロス。
漆黒のマスカラ。
群青色のアイシャドウ。
鏡の中の、私。
そこには喜びなんかじゃなく、
困惑の色が広がっている。
不安。
怯え。
羞恥。
無理やり微笑を作り出し、
ドアを開けて、ビルの入り口へと急ぐ。
そこで、あなたからの2度目の電話。
「何処に居るの?」
「入り口」
「中? 外?」
「中。何処に居るの?」
「外」
慌てて屋外へと飛び出る。
人、人、人。
目を凝らして、あなたの姿を探す。
…。
あ。
いた。
同時に、目が合う。
私に気付いたあなたは、
瞳だけで笑い、
私のほうへと近づいてくる。
思わず目を逸らす、私。
傘をさしたあなたが、目の前までやって来る。
「来てくれて、ありがとう」
俯いていた私は、
少しだけ勇気を出して、あなたの顔を見つめてみる。
優しい。
目。
優しい。
声。
私の知ってる、あなた。
私だけが知ってる、あなた。
何も言わず、
あなたの腕にしがみつく。
きっと、この時の私の顔は、
泣き顔にそっくりだったと思う。
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無事、ダーと逢う事が出来た金曜日。
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