待ち合わせの場所に行くと、 もう既に大きなカバンを抱え、彼が立っていた。 どんな人ごみの中でも、すぐに見つけられる特別な人。 彼も私を見つけると、すぐに満面の笑みを浮かべた。 私を愛しく慈しむような、優しい微笑み。 おかしな話だけど、久しぶりに会って、 この笑顔を見られた瞬間、 「私は、この人に愛されてる」 そんな風に、いつも感じるんだ。 言葉を交わさなくても、分かる。
私は、彼に買ってもらったティファニーのネックレスを、 手に握り締めていた。 会ったばかりの彼に、それを無言で差し出す。 肩甲骨まで伸びた髪を手で束ね、後ろを向くと、 彼がネックレスを私の首に取り付けてくれた。 不器用な、大きな手。 いつも暖かいその手が、私の首筋にそっと触れる。 ゆっくり、ゆっくり、確かめるようになぞっていく。 「会いたかった」 そんな彼の声が聞こえてくるみたい。
笑いながら、地下鉄の階段を降りる瞬間。 数段先に進んでいた彼が、くるりとこちらを向いた。
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