キスを頂戴

2004年01月31日(土)

待ち合わせの場所に行くと、
もう既に大きなカバンを抱え、彼が立っていた。
どんな人ごみの中でも、すぐに見つけられる特別な人。
彼も私を見つけると、すぐに満面の笑みを浮かべた。
私を愛しく慈しむような、優しい微笑み。
おかしな話だけど、久しぶりに会って、
この笑顔を見られた瞬間、
「私は、この人に愛されてる」
そんな風に、いつも感じるんだ。
言葉を交わさなくても、分かる。



私は、彼に買ってもらったティファニーのネックレスを、
手に握り締めていた。
会ったばかりの彼に、それを無言で差し出す。
肩甲骨まで伸びた髪を手で束ね、後ろを向くと、
彼がネックレスを私の首に取り付けてくれた。
不器用な、大きな手。
いつも暖かいその手が、私の首筋にそっと触れる。
ゆっくり、ゆっくり、確かめるようになぞっていく。
「会いたかった」
そんな彼の声が聞こえてくるみたい。



笑いながら、地下鉄の階段を降りる瞬間。
数段先に進んでいた彼が、くるりとこちらを向いた。




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何も言わずに、軽く唇に触れる。
満足そうな顔をして、再び歩き始める彼。
もしかして、あなたも寂しかったの?
寂しいのは、私だけじゃなかったんだ。


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