〜ダメダメ医学生の京風日記〜

京の都に生息するダメダメ医学生、伯耕による日常生活記。

モテない王道を突っ走りながらも、萌えを求めてただ今奮闘中であります。

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きのう いちらん あした
2002年04月01日(月)    いざ見学!冠状動脈バイパス手術

朝6時半に起きた。今日は楽しみにしていた心臓血管外科見学の日だ。

7時半に京大病院に到着。ちょっと遅れたかなと思った。
しかも、病院内が結構複雑で(広すぎ)、心臓外科行くのに迷う。
が、しばらくして無事心臓血管外科ナースステーション前の会議室に到着。
恐る恐る中に入ると、既に多数の先生方が集まっていた。
まずは、同じ会議室で開かれた抄録会に出席させてもらった。
英語でかかれた論文をみんなで読むという感じ。
最新の療法の紹介っぽい。教授がそれに対して意見を述べていた。

そしてそのまま朝一の手術のため、ある先生に連れられてゆく俺。
まずは研修医室で白衣に着替える。そして病院内の複雑な経路をたどって行く。
初めての人だったら絶対迷うよなあ、と思いつつ、某診療科へ。
ここから本日手術を受ける患者さんをベッドに乗せて運んでいく。
患者搬送用エレベーターに乗り、まずは4階へ。通路をたどると…
ついに現れた「手術部」入口。関係者以外立ち入り禁止だ。

両開きの扉を広げると、正にそこは「手術部」!
全身緑、または青の手術着に、マスク、手術帽をかぶった人でいっぱい。
ここで患者さんはチェックを受ける。
その間に俺は自分も手術着に着替えるためいったん3階へ。
更衣室に入り、上下緑の術衣に着替える。自分のは下着だけ。
そして、別の出口から出て、そこでマスクと帽子を装着。
そこで階段を上がり、スリッパを履きかえ、ドアから出ると…

長い廊下にずらっと手術室が並ぶ、正に手術部の中枢!
今回は奥のほうにあるとある手術室が、見学の場だ。
患者は既に搬送されており、麻酔医が麻酔をかける準備をしていた。
手術室は思ったよりも暖かい。半袖1枚の手術着で快適だ。ちなみに25℃。
今回見学する手術は「冠状動脈バイパス手術」だ。予定所要時間はなんと6時間!
他の場所から取ってきた血管で、狭窄した冠状動脈のバイパスを
作るという、メジャーだけどそれなりに難しい手術…らしい。

9時過ぎ、麻酔がかかったようだ。まずは全身に消毒を施す。
そして、毛穴からの感染を防ぐための消毒液を含んだビニール(?)で
患者のほぼ全身を覆い、その上から緑のシートがかけられる。

9時半過ぎ、あっという間に手術は始まった。電気メスで胸部を縦に切開していく。
結構ショックを受けるかなあと思ってたんだけど、それなりに冷静でいられた。
皮下組織が切り分けられ、胸骨をでっかい金属製の道具でこじ開ける。
見てると、ブラックジャックのあの絵、やっぱ的を得てるわ。忠実だね。
でも、出血はあまりない感じ。ほとんどドレーンで吸い取ってるからかな。

切り離された胸骨の間から胸を開胸器で押し開く。
そして、まずはここの血管を剥離する作業に入る。電気メスを使って丁寧に。
ブラックジャックみたいな「メス」って使ってないみたい。
ほとんど電気メス(←いわゆるメスの形をしていない)使ってた。
第一の血管の剥離が終り、続いて押し開かれた部分の下のほうへ。
すると下のほうにピンク色の臓器が見える。これは…おそらく胃だね。
ここから第二の血管を剥離する。ここも電気メスで慎重に。
ここである先生がのぞき台をセットしてくれた。
これに乗ると2列目の上から手術部野を至近距離でのぞき込める。
それにしても迫力あるよなあ。でも意外と血は大丈夫だった。

その後、心膜の切開に入る。思ってたよりも割と薄かった。
そして切り開かれた心膜が横に分けられると…心臓が見えた!
ほんとにすっごい勢いで動いてる。今まで動いてる臓器はなかったからビックリ。
心臓が露出したあたりで米田教授が登場。手術コートを着て、最前列に陣取る。

ここからの、冠状動脈へのグラフト吻合が一番の難点らしい。
見てると吻合用の針は子供の小指の爪先くらいだし、糸は髪の毛より細そう。
ふと気付いてみると、手術室には13人の人がいる。
執刀チーム、麻酔医、介助看護婦、外回り、見学者の俺。
それにしても、手術ってのはチームワークだってのはほんとに感じた。
変な言い方だけど、執刀チームは「スウィング」してるからなあ。
教授の鮮やかな吻合術に見入ってしまう俺。
どこを縫えばつながるかなんて判らないもんなあ。みんな赤いし。

手術室背面にある「手術時間」のデジタルタイマーが3時間半を回った。
さすがに俺も足腰が痛くなってきたので時々椅子に座る事にする。
3箇所目の吻合が終り、続いて4ヶ所目。つなぐたびにエコーで血流を確認する。
さすがにドレーンで回収した血液も溜まってきたようだ。
時々聞いたことある言葉が出てくるとちょっと嬉しい。
「電気メス取って」、「コッヘル」、こんなの聞いたことあるなあ。
ただ今回は人工心肺装置は使わないみたい。使う事もあるらしいけどね。

4箇所目の吻合が終り、教授がいったん最前線から離れる。
コートを脱いで戻ってきた教授が俺を見つけて話し掛けてきてくれた。
臨床医としてのあり方、研究との関わり合い、医療経済について…。
まさか手術室で話してくれるとは思わなかった様々なお話。
臨床医として、常に患者の側に立って物事を考える事、
そしてその上に研究者としての進歩を考え、それは常に患者に
還元されるべきだということ。当たり前の事ばかりだが、
だからこそ心に残る素晴らしいお話だった。
常に患者のことを第一に考えられる医者でありたい、それ以上に、
常に他人の事を思いやれるような一人の人間でありたいと思った。
そしてその上に先進性、これが大事なんだなあ。

5時間経過。腰が痛いし腹も減った。
まずは患部の洗浄だが…患部にビーカーで水を注いでドレーンで吸い込む。
てか、こんな原始的な方法でいいのか?内蔵を水洗い(笑)。
その後、心膜の縫合を終え、後は胸骨をつなげる作業に入る。
ここで、カツオの一本釣りでもするかのような馬鹿でかい針に
通したワイヤーを骨に突き刺していく。ブツッ、ブツッて露骨な音。
そして通し終えたらワイヤーを力の限り引っ張り、胸骨を固定。
そして、皮膚の縫合に入る。俺は他のお医者さんに症状の説明を受けていた。

6時間経過、手術は成功した。手術台から患者さんをベッドに移し、
ICUに搬送。家族の方とも対面。まだ患者さん、麻酔から覚めてないみたい。

しばらくして別の手術室で新たに冠状動脈バイパス術が始まった。
俺が部屋に入ると既に心臓が露出、クラフトの剥離も済み、
後はバイパス地点に吻合するのみとなっていた。
1時間後、吻合開始。無事終った…と思われたが、エコーで見ると、
どうもバイパス路への血流が少ない模様。急遽吻合をやり直すことに。
多少その場がヒートアップする。出血もさっきよりかなり多い。
心膜と肋骨の間におびただしい量の血液が溜まり、ドレーンで吸い出してゆく。
しばらくして新たに縫合した吻合部にも、エコー検査の結果
今度は無事、そこそこの血流があることが判明。ほっとした雰囲気だ。

このあたりで俺はかれこれ10時間以上、ほぼ立ってる状態。
しかし、きついのは3時間、6時間後くらいかな。ピークはほんとに辛い。
でも10時間もたつとさすがに慣れてきた…かな。

このあたりで時計が8時を回り、俺は帰宅させてもらう。
更衣室で手術着から白衣に着替え、研修医室に。
詰めている先生に事情を話して本日終了。

外へ出たらもう真っ暗。当たり前か。
でも病院から外に出ると不思議な感じ。
さっきまで生きてる人間の心臓を至近距離で見てたってねぇ。
医者ってのは面白いけど不思議なものです。




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