ある大学院生の日記

2006年01月06日(金) 調査2題

見るともなしに新聞を見ていたら、某全国紙の世論調査の結果が出ておりました。質問項目にこんなのがありました。ひとつは、「格差社会への対応として(中略)所得の再分配を強めるべきだとの意見があります。再分配を強めるべきだと思いますか。」、いまひとつは「政府の政策として、税金などの負担は多くして福祉など行政サービスを充実させる「大きい政府」を目指す考え方と、税金などの負担を少なくして民間に活力を発揮させる一方、福祉など行政サービスを最小限とする「小さい政府」を目指す考え方があります。どちらの政策を取るべきだと思いますか」というもの。前者に対しては「強めるべきだ」が67%、「強めるべきでない」が24%、後者に対しては「大きい政府」が38%、「小さい政府」が47%、ということになっておりました。この部分についてこの新聞は「「小さい政府」への支持が強い一方で、税金や社会保障による所得再分配の強化を求める人が多いとの結果は、矛盾する部分もあるように見える」とし、小さな政府が単純に支持されているわけではない、と結んでおりました。

なんじゃこら、というのが正しい読み方だと思うのですがどうでしょうか。何の条件付けもなく「格差が開くのを政府が傍観しててもいいですか」と聞いたら「ヤダ」と答えるのが人情でしょうし、このような質問文で「小さな政府のほうがいいですか」と聞かれたら「ハイ」と答えるのが当たり前じゃないでしょうか。だって、この質問文は、「大きな政府は所得分配を大規模に行っている」という事実を「福祉など行政サービス」のみで表現しているからです。現在の政府部門の支出の半分以上は年金・医療等を通じた所得再分配です(教育も含めるともっとですが)し、これらは「行政サービス」という単語から一般に想像されるサービスとはちと異なります。もっと単純に「いまよりも増やすべきですか」とか聞けなかったんでしょうか。コメントを求められた大竹文雄先生もなんだか困ってしまったらしく「効率的な再分配は難しい問題だが」とかおっしゃってますが、そりゃまあそれくらいしか言えんわなあ、といったところでしょう。

なんだかなー、と思っていたら、イロモノ経済効果レポートを出すことで有名な某経済研究所が「寒波が日本経済に与える影響」なるレポートを発表していてあきれてしまいました。たぶん、このレポート作成中には豪雪の影響がまだ出てなかったんだろうとは思いますが、寒波豪雪のせいで集落が孤立したり、人が亡くなったりしているというのに、何をかいわんや、というところです。この調子で行くと、「豪雪対策で地方政府の支出が増えて乗数効果が」とか言い出しかねません。さすがにやりすぎ、といわれても仕方のないところでしょう。

しかしこの研究所、知り合いが大勢いるのでなんだか気分は複雑ですな。


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