職場の回覧をつらつらとみていたら,青色発光ダイオードの特許についての文章がありました.あの,200億円だかなんだかを報酬として支払え,とかいう判決についてです.この発明に関して言えば,会社側のサポートはそれほど大きくなかったわりに発明による報酬を会社側ががっぽり取ってしまったので払ってあげなさい,というような話だったかと思います(いきなり違ってたらすいません).で,額が額だし,発明がどーんとうまくいくたびに個人にそんな報酬を払っていたら企業としてはやっていけないとか,いやいや儲かっているところから払うんだから大丈夫だろうとか,そんな話があるようです.研究室の同期だった人間も,儲かっているところから払うんだし,インセンティブスキームとしてはOK,みたいなアホなことを書いたりしているわけですよ.さて,研究開発をナリワイにする(開発は違うか)ことになりそうな立場から,その回覧にはいっていた文章に非常に共感するのは,研究や開発や,あるいは学習なんてものも,内面的動機付けのほうが一般に外面的動機付けより強い,というあたりでした.もちろん,研究開発をするひとだって人間ですから,やったことに対して十分な報酬がほしいのは当然でしょうし,報酬が「評価」のひとつの顕現だとすれば,報酬をケチる企業には文句もあるでしょう.しかしそれはそれで一部,あるいはかなりあるとしても,そうはいっても研究開発をする人間なんてのは,好きなように研究開発をする環境があって,努力や結果を評価してくれる,それは必ずしもカネじゃなくても,環境があれば,そんなに文句を言ったりはしないんじゃないかなあ,と思います.つまり,研究開発によってうまくいったらどどーんと報酬が出る,ということはインセンティブスキームとして間違いではないにしても,研究開発の環境を整えてあげることのほうが,よほどインセンティブとしては強く働くのではないかなあということです.もちろん,研究開発の環境を整えるということには多大なお金がかかるでしょうから,開発がうまくいったときの報酬から,環境整備費用をさっぴけば,成功時に払うべき報酬なんてそんなに多くないでしょう.
青色発光ダイオードについては,そこらへんの事情が特殊だった,ということなんでしょう.企業と研究開発者との関係を,政府と企業の関係のように扱い,お金をぶらさげればインセンティブスキームとしてよろしい,なんていうのはなんかヘンじゃないんですかね,というのがワタシの感想です.ワタシだったら,いい論文を書けたとしたら,会社から現金もらうよりも,発表の場を与えてもらったり,指導教官から褒めてもらったりしたほうがよほどうれしいと思います.ワタシの分野の論文は儲けにつながらないので,杞憂ですけど.
えーと,そうはいうものの,成功したときの報酬という外面的動機付けがあんまり低いと,やっぱり研究開発をする人間は逃げちゃうんでしょうねえ.プライド高そうだし.