日々雑感
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花屋でススキを見かける。「中秋の名月」を明日にひかえて、月見用に入荷したらしい。和菓子屋には月見団子が並んでいるだろうかと思いつつ、そちらは確認せず。
『花々と星々と』犬養道子(中公文庫)を読んでいる。五・一五事件で凶弾に倒れた犬養木堂(毅)を祖父に、白樺派の作家であり、後に政治家となった犬養健を父に持つ著者が、幼い頃の日々と周囲の人々について描いた自伝的長編である。
大正から昭和の初期にかけて。本の中にはいろんな人々が登場する。活字でしか名前を知らない彼らは、みな生き生きとして、どこか可笑しい。ふっくらと「お餅」のような体格で相撲好きの岸田劉生や、父と連れ立ってどこまでも歩いていってしまう武者小路実篤、犬養毅は身体の弱い孫娘のためにりんごを磨り、そんな中で芥川龍之介は決して笑わず、黒いマントを羽織って「さながら影のごとく死の使者のごとくであった」。
しかし、やはり印象的なのは白樺派の文人たちの肖像。この本の前半に満ちているのは「白樺らしい理想と楽天」であり、底抜けに明るく、風通しがよい。「ほんものとは、人真似をせず自己に徹した人のこと」と言い合い、「自由」と「自分」とを貫こうとする人々。そうした空気が、やがて五・一五事件へと向かう作品の後半では、どんなふうに影を帯びてゆくのか。
夜、友人とナーちゃんの夜散歩に同行。そのまま友人の家で「ニュース・ステーション」をいっしょに観ながら小豆アイスを食べる。帰りがけ、『真珠夫人』の文庫本と楳図かずおの『洗礼』、りんご2つをお土産にもたせてくれる。夜道、月が明るい。
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