夏になると帰省する。東京に出てから、ずっとそうである。いつまでこうやって過ごせるだろうと思いながら、今年もまたここにいる。一年のうちのほんの一時期、夏のあいだだけの風景。どの夏のこともよく覚えている。はじめての帰省、同窓会、神社の境内でのラジオ体操、間近で見た花火。開け放した窓の外でニセアカシアが風にゆれている。遠い波の音。今日も夕焼け。今年の夏もしっかりと仕舞いこまれて、明日は東京へ戻る。