■花 4■ - 2002年09月06日(金) 「自分の友達とかの花が分かったら面白いだろうな。」 「そうだね。理解してもらえないとは思うけど。」 どうして日向くんは分かってくれるんだろう。 分かった振りをしてくれるのかもしれないけど。 良く分からないけど、でも嬉しいからいいや。 そんなことを思いながら 私はサンドイッチの最後の一口を口の中に入れた。 「ごちそうさまでしたっ。」 ぱしっ。 私は軽く手を叩いて サンドイッチが入ってたバスケットに深々と一礼をする。 また食べに来たいと思ったし、この店を教えてくれた 日向くんにも感謝の意味を込めた。 からんころん。 外に出て思わず上を見たら空が綺麗で 吸い込まれそうになる。 「ああ、空、綺麗だなあ。」 これは日向くんの声だった。 同じタイミングで見ていたようだった。 雲1つ無い真っ青の空。 ビルに囲まれている中で、空だけが鮮明に見える。 まるで其処だけ色がついてるみたいだ。 「あー。公園行きたいなあ。」 ポツリと私が言うと 「行こうか。」 日向くんは間髪入れずに言った。 そして、私の答えを待たずにまたさっさと歩き出す。 私は苦笑いをして後を追った。 きっと日向くんは私がイヤだと言ったら 足を止めてくれるんだろうなと思ってしまった。 何となくだけど。 歩きながらふと、また目に留まる。 どうして目についてしまうんだろう。 携帯で話しながら泣いている女の子。 赤い花が地面に落ちてサラサラと消えてゆく。 どうして泣いているの? …泣かないで。 ズキズキズキズキ。 胸が痛くなるのが分かる。 私は足を止めて女の子の方を向いた。 女の子は真剣に見つめる私の視線に気付いて 泣き顔を見られるのが恥ずかしいのか 顔を隠しながら走って逃げていく。 「待って…」 「…ん?…どうしたの?」 日向くんが足を止めて振り向いた。 私は日向くんに向かって一気にまくし立てた。 「あの子の花が、今落ちた!」 「え?」 「行かなきゃ!」 …泣かないで。 私は女の子を追いかけようと走った。 日向くんも私の横に着いて走りながら 私を見つめて真剣な顔で言った。 「冴ちゃんが責任を感じることじゃないんだよ。」 …え? 「その子の花はもう戻るもんじゃないんだ。」 …何を言ってるの日向くん? 「花が何故咲いているか、君は知ってるんだろ?」 思わず私は足を止めた。 「……どうして……」 ズキズキズキズキ。 …心臓が痛くて何も言葉が出てこない。 いや、考えたくないだけなのかもしれない。 「……日向くん。」 「……公園に行こう?空見ようよ。」 日向くんは子どもをなだめる様に ふんわりと笑って、自然に私の手を取った。 あまりにも其れは自然に感じられたので 振りほどく事が出来なかった。 それに、何故か酷くショックで 振りほどく気力すら湧かなかったせいもあった。 そして今度は ゆっくりと私の歩幅にあわせて歩いてくれた。 てくてくてく。 無言で私達は公園まで歩いた。 サラサラした感触の日向くんの手は大きくて その手から少しづつ優しさが伝わってくるような気がした。 意味無く涙が出そうになるのをぐっと堪えて 下を見ながら歩いた。 その公園は小さな噴水があって パシャパシャという音が絶えず響いている 小さな小さな公園だった。 日向くんは芝生の上にごろりと寝転んで 猫みたいに背伸びをして丸まった。 「あー気持ちいー。」 何だか気持ち良さそうだったので 私も隣でよいしょと寝転んで空を見つめた。 視界にあるのは全てが真っ青な空で 自分が空の中に飛んでるような錯覚に落ちる。 …空に溶けてしまえたらいいのになあ。 なんて、訳の分からないことを思いながら。 -
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