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2007年01月05日(金) 「悪魔が来たりて笛を吹く」

イナガキ金田一第4弾でございます。
…あんまりこういうこと言いたくないんですけど、今回はまさに激戦区。
六本木では渡さんの2夜連続ドラマの後編。
赤坂では後輩くん主演連ドラの初回スペシャル版。
受けて立つお台場はイナガキ金田一。
これがバッチリ重なってるんですもん。(あ、汐留は?)
それだけ各局自信作で真っ向勝負をしかけてきたんだなぁ。
勝負に値する作品として金田一が選ばれたとすれば、名誉なことですけどね。
……こんなこと考えてないで作品に集中しろ自分。

どうしてこんな遠回りなのか白状しますと。
今回は公式HPの開設が遅かったり、CMで使われた題字がダサかったりして
個人的に実は今までの作品よりイマイチ盛り上がれない部分があったんです。
しかもポスターも、なーんかデザイン良くないし。
あの怪人のイラストって見覚えあるデザインなんだよなぁ……。
以前公開された映画でも、似たようなの使ってませんでしたっけ?
極めつけが「金田一、恋に落ちる」というコピー。
あれこそ「へ????」だったんですよ。いやいやいや、誰に?いつ??
原作読んでもそこへ繋がるようなきっかけすら思い当たらないというのに。
ゴロさんのインタビュー読んでも、ちょっと難解とかマニア好みの作品とかいう話はあるけど
"恋"なんて聞いた覚えがないんですけど…………。
という違和感がぬぐえなくって。
今まではポスターもコピーも全てイナガキ金田一の様式美で統一されてたのにさー。
今回はそれが感じられないんですもん。
なんだか今までのイナガキ金田一路線から外れちゃうんだろか。なんて一抹の不安もあったんですよ。
でも原作に目を通して、公式での出演者のインタビューを読んでいく毎に、
そして事前番組を見てイナガキ金田一らしさは失われてない!と安堵したわけです。

前置き長くてごめんなさい。
さて、ドラマの感想。

1年ぶりのご無沙汰ですねー。
そこには耕さん以外の何者でもない、耕さんが居ました。
お久しぶりです。と声をかけたくなるぐらい。
横溝先生も橘署長(違うんですって)も。
お二方と耕さんのやり取りの和むこと和むこと。
特に先生とは背中あわせに座ってたり、顔を見合わせたりと、なんとも可愛らしいシーン満載で。
回を重ねる毎に耕さんの可愛らしさが強調されてるような気もしないではない。
可愛らしさというか…お茶目度がどんどん高くなっているような。
そんな耕さんも好きですけど、1作目の変人っぷりがちょっと懐かしくもあったり。

前半、さくさくテンポ良く進んでいったので、かなり展開早く感じたんですが
それでもかなりバッサリそぎ落とした部分がありますね。
その一方でうまく繋げたり、オリジナルな展開を持ってきたり。
ううーむ。
かなりイナガキ金田一としての金田一作品になっていたような気が。
前作の女王蜂でも一部大胆なアレンジがされていたけど、今度はそれ以上に手広いアレンジだったなぁ。
ここは賛否両論別れるところじゃないでしょか。
ただ、原作を読んでいて頭を悩まされた登場人物の多さとか複雑さが
かなりすっきり整理されていたのは有り難かった。佐藤さんの手腕には頭が下がります。

何よりも耕さんが一つ事件を阻止してますよ!おおー!
金田一というと、事件を阻止できない探偵ってイメージもあるんですが(こらこら)
すごいよ耕さん!
しかもフルート演奏にチャレンジして、自ら謎解きしてるし!
…金田一がフルート吹く必要あるかどうかは置いといて、サービスショットとしてはナイス!

でも、横溝先生宅やバラックでフルートの練習していたのは
事務所で練習してて、周りから苦情が入ったに違いない(笑)

マントばっさばっさと翻すのも今までより増えております。
その代わりに頭かきむしってもフケが落ちなくなったし、
「これどうぞ」と本を差し出すこともなくなりました。女王蜂でも無かったかな?

謎解き部分。
東太郎の告白と、耕さんの謎解きのバランスがほどよくなってたんじゃないでしょか。
ここの成宮くんの演技が良かった。
ゴロさんじゃないけど「役者さんだったんだなぁ」って。
「M」の時はまだまだ頼りない感じだったんですけど、演技に説得力が出てきていましたね。
木村くんとの競演が楽しみだー。

演技といえば、椿子爵役の榎木さんにも目を奪われました。
今まであまり興味を引かれる役者さんでは無かったのだけど(失礼)
鬼気迫る表情や演技に圧倒されました。
もっと大人しいだけの役者さんという認識しかありませんでした……。申し訳ないです。
ノーブルな雰囲気もかもし出しているし。華族という設定がこんなにはまるとは。

そうそう。イナガキ金田一は毎回、絶妙のキャスティングがされてますが
今回もはまってましたねぇ。
秋吉さんの妖艶さと無邪気さのアンバランスな感じとか、伊武さんの嫌らしさを内在した尊大なところとか。
一彦役にも目が釘付け。いかにも世間知らずな華族の坊ちゃん。
そんなイメージに合っている役者さんが、いるものなんですねー。
だけども人物像の書き込みは弱かったなぁ。
これはストーリー上、美禰子や東太郎に重点が置かれた分、仕方ないことなのだけど。

さて、ドラマ全体の感想なんですが。
……なんだか上手く言葉にできないのですよ。
「犬神家」は興奮しました。
「八つ墓村」はぐいぐいひきこまれました。
「女王蜂」はエンターテイメントを堪能しました。
で、「悪魔が…」なんですが。
なんとも言えない感情がぐるぐる渦巻いているのです。
まるで冒頭の横溝先生の独白のように。

暗い情念が渦巻いている。
派手さ、カタルシスよりやるせなさを感じさせる。
原作自体が持つ陰うつなテーマがそうさせるのかもしれません。
例えば「八つ墓村」は怒濤のごとく突き進んでいくストーリー。
ぐいぐい引き寄せられてドミノ倒しのごとく次々に起こる事件で目が離せなくなる。
一方こちらは遠巻きに事件をながめているような。でもそうして傍観者を決め込んでいるはずなのに、いつの間にかどす黒いものに絡みとられてしまっている。
ねっとりとまとわりつくような、後ろ髪を引く作品だからでしょうか。
月イチでいうところの"語り合いたくなる"ドラマだったなぁ。
気になって何度もリピートしてしまいたくなる作品です。

焼け野原にポツンと立つ椿邸の画面はインパクトありましたね。
CGは若干やり過ぎな感じもありますが。
星さん、はりきってます(笑)
相変わらず美術にも凝っているし。
椿子爵の部屋のガラス窓や、金田一の事務所のドアにはめ込まれた色ガラスが洒落てました。
椿邸の廊下に下がっている電灯なんかも、いかにもその時代らしくてよかった。
そういえば、第一の殺人で殺害現場に橘署長が入っていく後ろを
ハンディカメラがずーっと追いかけていく画面があって、手持ちカメラって珍しいなぁと思ってたのですが。
2度目に見て、あれは耕さんの目線なんだ!と気付きました。…遅い?
(確かにハンディの映像中は、一度も耕さんが画面に映り込まないし)
逆に砂占いの円卓の周囲を回る耕さんとカメラのシーンは、星さんの十八番だ!とすぐ分かったけど。


ともあれ、今までとは少し違ったテイストのイナガキ金田一。楽しめました。
また来年会えることを信じて。そして一刻も早いDVD化を願っております。




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