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2002年03月11日(月) きみ

 
きみはぼくのとなりでねむっている

しゃつがめくれておへそがみえている

ねむってるのではなくてしんでるのだったら

どんなにうれしいだろう

きみはもうじぶんのことしかかんがえないめで

じっとぼくをみつめることもないし

ぼくのきらいなあべといっしょに

かわへおよぎにいくこともないのだ

きみがそばへくるときみのにおいがして

ぼくはむねがどきどきしてくる

ゆうべゆめのなかでぼくときみは

ふたりっきりでせんそうにいった

おかあさんのこともおとうさんのことも

がっこうのこともわすれていた

ふたりとももうしぬのだとおもった

しんだきみといつまでもいきようとおもった

きみとともだちになんかなりたくない

ぼくはただきみがすきなだけだ



『きみ』谷川俊太郎


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