眼の前に横断歩道がある。 歩行者用の信号は、赤い色。 1車線しかないから。 何人も、何人も、気にせず歩いている。
どうしてだろう。 そのほとんどが笑っている。
楽しいの? おかしいの? 優越感に浸っているの?
私には、渇いた笑いにしか見えない。
私は立ち止まっている。川の流れを乱す岩みたいに。 笑顔が変わる。 迷惑そうに私をにらむ。
怒鳴ろうが、 叫ぼうが、 集団で来ようが、
道をあけるつもりなどないのに。 威嚇するようににらみつける。
浮き上がる気持ちはなんだろう。 怒り、そして、羨望。
赤信号は渡らないのじゃない。 渡れないのだ。 渡ってよくても、私には渡れない。 できないことを平気でやれる人間。 嫌悪とあこがれの反する感情を抱く。
そんな気持ちは止まっている人だけ。 急ぎ足の人に、考えてる余裕なんて…
気づくほど、自分が嫌になる。
赤信号。 ただ、立ち止まり、考えていた。 青になり、音楽が流れるまで。
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