2007年04月15日(日) 4/15の佐藤研二ソロの感想

3月21日の坂本弘道から、4月7日のふいご、8日の内橋和久、そして4月15日の佐藤研二、と、ここんところうちの店としては過密なライブスケジュールでした。ホント言うと、動員のことや、それから私たち自身がじっくりとそのライブの余韻に浸りたいという面から言っても、うちの店でのライブは1ヶ月に1 度ぐらいがいいんだけどなあ。でも、オファーがあると、そのどれもが魅力的なので引き受けざるを得ないといった具合なのです。

で、日曜日の佐藤研二ソロ。
昔はこんな感じですよ!
マルコシアスバンプ時代の映像。音も映像も悪いけど、ベースの音がむちゃ際立ってます。
http://www.youtube.com/watch?v=Fq-squmqwr8

それがねえ、今ではおなか出ちゃって、髪も上のほうは少し薄くなってて。(ごめんなさい・・・!)
でもさ、弾いてる時は、すっげー美しく見えるのね。見えるってのは違うよな、あれは本当に美しい顔だ。
うちの店でいろんな方がライブをやってくれてますが、演奏している時に最も楽しそうで最も幸せそうで最も美しい、それを見ているだけで胸が打たれてしまうほどの表情で演奏する人というと、佐藤さんが一番なんですよ。

佐藤研二さんは、坂本弘道さん、そして三木さんという方の3人で、KOTSU-KOTSUというチェロ三重奏のバンドをやっています。
で、ちょっと坂本さんの話になりますが。
坂本さんって、先日のライブで感じたのですが、なんだか自分の身の回りに起こる事象をネガティブに捉える方だと思いました。ネガティブに捉える、またはネガティブな面を中心に見据える。そういう目で捉えた世界を、演奏することでぐわんっと引っくり返し、あの美しい音楽世界を作ってしまうのではないかと思いました。
坂本さんの話を聞いていると、坂本さんの周囲には悲惨なハプニングに満ちています。そこで坂本さんはいつも、血だらけになってしまったり、大切なチェロが破壊されたり(自ら、なんだけど)、アンプが破壊されたり(自ら、だけどね)ということが起こるようです。しかし、まるで壮絶なカオスの中で起こったようだけども、かなり冷静にそれらを見つめながら、そこにある一瞬を演劇的に展開させていくのを虎視眈々と伺っているような、演出家としての目、というのも、持っているような人だと思いました。

で、佐藤さんはまたこれ、その坂本さんと対極、と言ってもいいのでしょうか? まあ、大体、坂本さんとだってまだ間近にお会いしたのは3回で、佐藤さんとだって2回しかないので、知らないことだらけなんですけども。
佐藤さんは、弾いている音楽がどんなに難解なものだろうと、または高度なものだろうと、ただ、もう全面的に演奏しているということの楽しさを前に出してます。もうこちらまでその多幸感でとろけそうになるぐらいに。
音楽プロデュースもされているし、作曲もなさるけど、やっぱり佐藤さんは「プレイヤー」って感じの人かなあー。

実はまた、坂本さんに引き続き、佐藤さんとも朗読をさせていただきました、私。坂本さん同様、佐藤さんも関わっている川上未映子さんの本、「そら頭はデカいです、世界がすこんと入ります」から。前日、佐藤さんとの電話で、急遽やることにしたのです。
当初は坂本さんともやった「私はゴッホにゆうたりたい」だけの予定でしたが、当日になって佐藤さんが、
「1ステ2ステと、2つやりましょう」
と言って下さり、それを断る手もないわけで。
それで、急いで選んだのが、まだ読んでもいなかったページにあった、これ。
「春におそわれる」
http://www.mieko.jp/blog/2006/02/post_9265.html

そして、2ステに「私はゴッホにゆうたりたい」でした。
http://www.mieko.jp/blog/2005/03/post_3.html

坂本さんの時は、もうむっちゃくちゃ緊張しましたよ。喉はずっとカラカラで手は冷たくなって、もうなんにも見えんくなるし。
でも、これまた坂本さんと佐藤さんの特性の違いだと思う。今回、私はこれっぽっちも緊張しなかったのでした。私が慣れたとか、そういうのとは全く違うのです。
ただ、それは、「ただそういうこと」なだけで、出来上がったものは、どっちがどうだったかなあー・・・。私にはまだわかんないや。わかんないので、私もまた、やらしていただけたら、と思っているのです。

大変長くなってますが・・・。
ライブ終わりに、泣いてる女性がいたの。
ずっと、マルコシアスバンプ時代からの佐藤さんの大ファンで。
やっぱ、マルコシアスバンプファンは、年齢も私と結構近いぐらいなのね。だから、多くの人は結構、ライブから離れてしまっている人も多いのではないかなあ。この女性も、佐藤さんの演奏を聴くのは10年ぶりぐらいらしい。
で、終盤で、ボロボロと泣いている。
そう言えば、うちでやるライブでこういったことってなかったよなあ。
でも、私はさあ、すっごくその気持ちがわかるよ。
この人はきっと、過去の、激しく追っかけをしてたころの、楽しかったことや熱かったことやつらい思いをしたこと、でも何よりもやっぱり楽しかったことが走馬灯状態で、でも今、この一瞬のライブの時間が終盤に来て、それはまるで、「明日で世界が終わります」という宣告と同じぐらいに悲しくて、もうそれで泣けちゃって泣けちゃって涙が止まんなくなっちゃっているのでしょう。
私も、それから佐藤さんのマネージャーの女性も、その後ろでもらい泣きしちゃって、最後の演奏を聴きながらやっぱりボロボロと泣いてたのです。



 < 過去  INDEX  


ロジウラのマタハリ 春光乍洩 [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加