原案帳#20(since 1973-) by会津里花
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2003年02月02日(日) 疑われつつある「科学的客観主義」を批判的に踏まえて

タイトル長すぎ。↑

★1・KSの「客観的性別」
★2・ところで「KS」とは?



★1・KSの「客観的性別」

「杏野丈掲示板」に書こうとしたけれど
あまりにも多くの もしかしたらKSについて全く理解できない人とかにも
見られてしまうかもしれないし
私のこの意見が 広くKS当事者の人たちに受け入れられるかどうか
わからない とも思うので
そちらに書くのはやめて 自分のところにだけ書くことにしました

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「客観的な性別」は 常に必ず 「正しい」のでしょうか

20世紀ごろから世界中で「常識」となっていった「科学的客観主義」は
20世紀末ごろから 疑問視されるようになってきました
だから というわけじゃないけど

またまた持ち出してスマソですが
KS(クラインフェルター症候群)の人たちの「客観的性別」は
「男」でいいのでしょうか?
私は何人かのKS当事者とお会いしたことがあるけれど
彼らの「客観的性別」は 男でも女でもない と感じてしまいました

そんなこと言うと 当事者の方から物凄く怒られてしまうかも
でも 非当事者として 遠くから見て わかること

出生時に主に外見で認知された「男」を 素直に受け入れて
男になろうとしている人だっていて それはそれで立派な生き方だと思います
たぶん そういう人が 比率としては多いでしょう

けれど その一方で
「男になる」ということが 心身ともに受け入れられず
たとえば 男性ホルモン投与で 他の身体的疾患を抱えるようになったり
いつまでも解消しない 性別についての悩み を抱えつづけたり
そういうKS当事者もいます
当人の気持ちとしても 「自分は 男でも女でもない と感じる」 という言葉を
何人もの人たちから 何度も聞きました

こういう人たちの「客観的性別」って 本当の本当に 「男」 で いいの?
医学でも法律でも 今は 「それ(男)でいい」 ということになっています
でも 私 それ 納得できない

非当事者のくせに と思われるだろうけれど この感想は 譲れません


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KS当事者の方で 異論 反論 感情的に傷ついた など ご意見のある方
ぜひ 掲示板かメールで お知らせください
あ 当事者じゃなくても ご意見 ご感想 お願いします

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★2・ところで「KS」とは?

「KSFJ(KS Family Japan)」というサイトがあって、
そこからコピペさせてもらおうかと思ったけれど
無断引用・転載はお断り、ということなので、
許可は許可でとることにして、
私が知っている範囲でできるだけ正確に(かつ簡潔に)書こうと思う。

この日記の常連さんならば、何度も同じような説明を読まされたことがあると思うので
うんざりしてしまっているかもしれないけれど、
……ということは、いずれ私なりにきちんと説明質得るページを作って
必要があればそこにリンク、というかたちをとりたいと思う……
とりあえず今は、およそこんな感じの説明で:


KS(クラインフェルター症候群)とは

卵子・精子形成の際の「減数分裂」において異常が起こり、
性染色体が「XXY(またはXXXY、XXXXY……など)」になってしまう、
先天的な染色体異常と、そのために発生する性分化異常の総称。

なぜ「XXY(など)」になるかについては省略する。

確か200〜500人に1人程度の割合で発現するそうだ。
(数字の幅が極端に広いのは、気が付かない人も多いから)

Y染色体(正確にはその中のSRY因子)を持っているので、
出生時の性器の形状はほぼ正常男子と変わらないことがほとんど(らしい)。
このため、出生時に医師や親によって認知される性別は「男」とされる。

ところが、X染色体を通常よりも1個(またはそれ以上)多く持っているため、
第2次性徴において「男性化」することがさまざまな程度で妨げられる。

結果的に、成人した時には特徴的な外見となることがよくある。
ただし、「特徴的」といっても個人差が大きく、「こういう特徴」と一概には言えない。

たとえば、第2次性徴が発現することによって、
それまで大量に分泌していた「成長ホルモン」の分泌が抑制されるのが正常パターンだが、
それが充分に起きないために「(きゃしゃな)高身長」になる人もいる。
(なぜか医学の教科書にはこういうケースだけを取り上げていることが多いらしい)
もちろん、そうならない人もいる。

また、(実はまだ詳しく勉強できていないけれど、たぶん)人間の体は
「男にならないのなら女」
という方向で成長するものらしく、
男性的な第2次性徴が起きない代わりに、さまざまな程度に「女性化」することもある。
極端なケースでは、ぱっと見の外見が女性にしか見えない人もいるし、
(ご本人にとっては迷惑極まりないことだけれど)まじまじと観察しても
「男か女かわからない」外見の人もいる。
上に挙げた「高身長で華奢」とはならない人もいる。
(ただ、どうやら人の他人に対する認識は「男か女か」を識別せずにはいられないものらしく、
本当は男女どちらかわからない外見なのに、たとえば本人が男女のどちらとしているか、とか
「どっちかといえば」という程度の特徴で、
とりあえずその人を「男」または「女」と決めてしまう人=本人以外、が多いと思う)

先に書くべきだったかもしれないけれど、
上に挙げたような極端な特徴が全く(またはほとんど)出ない人もいる。
っていうか、そういう人がいちばん多い? (未確認)
私はたまたま外見的な特徴がはっきり出て、
そのせいで生き難さを感じている人たちと最初に出会ってしまったからか
「男性にも女性にも見えない」ということに強い関心を持ってしまったけれど、
それはそういう特徴の現れない当事者に対しては、むしろとても失礼なのかもしれない。
……っていうか、うーん、当事者じゃない立場でこういうことを書くのは難しいですね……

はっきりした特徴の出ない人の場合、「不妊」によってKSが発覚することが多いようだ。
ということは、それまでは自分の性別(男性)については
特にはっきりした違和感を感じていないことが多く、
だからふつうに結婚したし、子どももほしいと願っているのに、
その願いは決してかなうことがない……ということになり、
そのことが大きな悩みとなる人もいる。
(もしかしたら、そういう当事者が最も多いのかもしれないけれど、未確認;
それこそプライバシーの領域の問題だし、
上述の特徴のはっきりしたケースと「合算」しないと正確なことはわからないはずだけど、
そういうことをした人はいない、もしくは私が見つけていないので
今は何とも言えない)

「男性化の阻害」に個人差が大きいということを、とりあえず三つに分けて説明してみたけれど、
いちばん大切なことは、一人一人の当事者が自分の「性」についてどう思っているかを
必要に応じてちゃんと聞いて、それを理解するように努めることだと思う。
私の上のような説明をパターン化して覚え、
現実に目の前にいる当事者が「どのパターンに属するか」なんてことをしようとするのは
はっきり言って、その当事者本人に対してとても失礼なことだと思う。

ある意味、私のこの説明そのものすら、そういう「失礼なこと」に当たるかもしれない。

なので、この記事を読んだ人……KS当事者にせよ、その周囲の人にせよ、全く関係ない人にせよ……は、
どうか個々の当事者の「性についての自己表現」にしっかり耳を傾けてほしいと思う。

ただ、デリケートな問題だから非当事者が首を突っ込むべきではない、として
腫れ物に触る、あるいは「見て見ぬ振りをする」のはどうかな、とも思う。
なぜなら、KS当事者だって常に非当事者に囲まれて生きているわけだし、
周囲の非当事者にできる限り理解・受容されて生きていきたいのは当然だろうから。
蓋をして知らないままにするよりも、理解し、受け入れた上で
「いちいち拘らない」接し方をするべきだ、と思う。
本人が拘っていれば、当然耳を傾けるべきだ。

まだまだ言いたいことは山ほどあるような気もするけれど、
まとまりません。
にもかかわらず、ぜんぜん「簡潔」じゃないけれど、
とりあえず今はこれにて筆を置くこととします。

「多様な性」を喜んで生きることが、全ての人の喜びとなりますように。

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