ハニハニィ

2002年10月27日(日) 「片恋連鎖」

好きな子がいます

一組のさちこちゃんです

幸せの子と書きます

本当に幸せそうに笑う子なんです

はじめて見たとき心臓がやぶけそうでした

でもさちこちゃんには 好きな人がいます

好きだから

その子の目線の先まで見えてしまうのです

(それは自分の友達で)

(いつも顔をあわせる友達で)

(少し泣きました)
















片恋連鎖
















「圭ちゃーん」
「さっちゃん。どしたの?」
「次、化学なんだけどさー。図説忘れちゃって。持ってない?」
「あー・・・持ってたかなー。ちょっと待って」

さっちゃんは私の友達兼部活仲間だ。
さっちゃんはバレー部主将、私は副主将。
1年生の時に部活で一緒になって以来、とてもとても仲良しさんなのだ。

「あ〜、ごめん。持ってないや。昨日持って帰っちゃったんだよね。ほら私ってお利口さんだからさv」
「そっかー・・・利口かどうかは知らないけど、持ってないなら仕方がないね」
「なんだー、その言い方はー」
「うそうそ。わざわざごめんね〜愛してるよ圭子―vv」
「私もさーvv」

がばっと抱き合いながら、ふと視線を感じると菊ちゃんがいた。
山中君が笑ってた。
ちょっと勝ち誇った顔をしてみた。
そんでちょっと心の中が痛んだ。

「あ、そうだ。図説持ってそうなやついたよ」
「え?」
「菊ちゃーん。化学の図説持ってるー?」

途端、菊ちゃんの頭からネコ耳が現れたような感じがした。
ガタガタ、と少々派手な音を立てて(菊ちゃん嬉しそうだね)、菊ちゃんがこっちに向かってくる。
ご主人様から餌をもらう時のネコのよう。
ん?じゃ私がご主人様でさっちゃんは餌かい。
菊ちゃんはさっちゃんを食べたくて仕方ないのかい。
自分のアホ。

「にゃににゃにー」
「だから図説。さっちゃんが貸してって」
「忘れたのー?」
「エヘヘー。先週中間だったじゃん。持って帰ったらそのまま持ってくるの忘れちゃった」
「エライねー。持って帰ったんだー。オレなんかもう諦めてるから持って帰ってんなかったよ」

菊ちゃんの声は30%ウキウキ感が水増しされていた(当社比)。
ロッカーを開ける音もすがすがしい(ロッカー汚いね)。
ガサゴソ、体操服やら得体の知れないものやらが押し込まれてるロッカーから化学の図説が出てきた。
表紙の端っこが折れてた。中にはいっぱい落書きもあるんだろう。
ていうか私の落書きもある(先月席が隣だったときに落書いたのだ)。

「ハイ☆」
「わーありがとー。助かるよー。ほんとう菊丸君ありがとね」

さっちゃんの極上の笑顔に菊ちゃんはメロメロみたいだ。
一瞬声を出すのも忘れてた模様。
悔しい。さっちゃんのこと好きだけど、笑顔一つでこんなに菊ちゃんの目を奪えるさっちゃんはずるい。
別にさっちゃんが悪いわけじゃないけどさ(悪いのは私の魅力に気付かない菊丸英二なのだ)。

「あ、さっちゃん早く教室戻んないと授業遅れるよ」
「え?本当?!やば。あ、じゃ菊丸君、後で返しに来るから。本当ありがとー」

そう言ってさっちゃんは律儀なまでに菊ちゃんにお礼を繰り返し自分の教室に走っていってしまった。

「・・・菊ちゃん」
「・・・・」
「よかったねー。さっちゃん今日も可愛かったね」
「・・・・うん」

菊ちゃんの頬は今頃紅潮していた。
ああもう可愛い。

「ね。私のおかげだと思いませんか?今日さっちゃんと話せたのは」
「・・・思います」
「んじゃ、今日ジュースでも奢ってください」

「了解!」

わしゃわしゃっと私の髪の毛をかき混ぜて(これでも毎日のセットの大変な私の髪の毛)、極上の笑顔で私に笑いかけた。

「あー、さちこちゃん可愛いなーvvv」
「さっちゃんは可愛いよ。でも私のものなのだー」
「何言ってんだよー。けーこなんかにはもったいないもん」
「な、何を言うか、この口はー。そんなこと言うんだったらもう協力しない」
「えーうそうそ!!!圭子ちゃん、圭子様!今の嘘―。ナッシングー!!!」
「冗談だよ。協力するよー」
「サンキュー。だからけーこ、大好きさー」

菊ちゃんは私に投げキッス(キャ☆)をしてきた。
私はそれを空中で払いのける真似をした。
本当のキスが欲しいなぁ。うそうそ。思うだけ無駄なんで思わなかったことにしてください。



( 都 合 の い い 自 分 の 妄 想 は 
 現 実 を よ り 悲 し く さ せ る か ら )



「お前等いつまで突っ立ってるんだい!もう授業始まるよ!!」

教科書で頭を叩かれて、振り向くと竜崎先生が立っていた。
背ェ高いなぁ。

じゃなくて、今日の宿題終わってなかった・・・(ガーン)
うわーん!!
絶対居残りだよー!!!!!






本当に居残りです。
くすん。ただでさえ、キライな(先生の事好きでも数学は好きになれない)数学なのに。
こんなポツンと、一人淋しく数式を見たって頭に入るわけないじゃないか。
絶対菊ちゃんも忘れてると思ったのに。
菊ちゃんは山中君に写させて貰っていたらしい。チキショウ、抜け駆けだ。
あ、そういえばジュース奢ってもらってない。うわーん。

菊ちゃん、自分はさっちゃんに図説のお返しとかでキャンディもらってたくせに。
(家宝にするとか言ってポケットに大事そうに入れてた。)
菊ちゃんの熱でベタベタに溶けてしまえ!
うそうそ。菊ちゃんそしたら絶対泣きそうな顔して私に訴えてくるもん。
そんなのやだ。菊ちゃんの悲しい顔は見たくない。私、慰めてあげられないもん。
そんな言葉持ってないんだもん。




菊ちゃんが一度、私の前でそんな顔をしたのはさっちゃんに好きな人がいるんじゃないかと気付いた時だった。
胸が締め付けられた。
私はもちろんさっちゃんに好きな人がいるのは知っていたし。(そのうえで応援していたのだ)
私にはどうすることも出来ないことだったし。
ただ一言。



「でも思い続けてたら何か変わるかも知れない」



菊ちゃんに言ったのか私自身に言ったのか、今となってはわからない言葉だったけど。
菊ちゃんは。

「お前いいやつだよね。圭子と友達でよかった」

と言った。
空しさと嬉しさと切なさと色んな感情がごっちゃになって、ただ笑うしかできなかった。
さっちゃんみたくキレイに笑えない。

「七瀬さん?」

聞き覚えのあるその声にはっとした。
意識が過去にトリップしていたことにやっと気付いた。

「山中君?」
「まだプリントやってたの?」
「え?エヘヘ〜。そうなんだ。もう数学あまりにわかんなすぎて進まないんだよね」
「どこまで進んだの?」
「ん〜、半分はいったんだけど・・・竜崎先生、課題増やすんだもんなー」
「見せて」
「え?うん」

山中君は練習途中だったらしい。
男テニレギュラー用のジャージを羽織っていた。
この人がレギュラーってことが信じられない。
この細い腕のどこに、そんな力があるのだろう(授業で初めてラケットに触れたとき、意外な重さに驚いたものだ)。

「教えてあげようか」
「え?でも今練習中でしょ?いいよー悪いよ」
「いいよ。大村には忘れ物取りに行って来るっていってあるし。それに七瀬さんも早く部活行きたいんでしょ?」

救世主!!!メシアだ!!!!!






「ありがとー。ほんとう助かった!!」
「今度、ジュースでも奢ってよ」
「奢る奢るー。ん?ジュース?あ、山中君、菊ちゃんに『ジュース奢れよバカヤロウ』って言っといてくれる?」
「いいよ。あ、今日のアレのか」
「うん。アレの」

山中君は、柔らかく笑った。(この人の笑い方はとてもキレイだ)(自分の笑い方が恥ずかしくなるくらい)

でもそのあとに。

山中君はとんでもないことを言った。



「七瀬さんって、英二のこと好きだよね」



脳の運動が一瞬止まった。電気刺激が消えた。

私は一瞬死んだ。

それくらいの衝撃だったんだ。

足が震え出す。
なんでわかったんだろう。やっぱり私の笑顔は不自然だったのかな。
さっちゃんみたくキレイに笑えない。
さっちゃんに嫉妬してるのバレたのかな。

「・・・え?や、何で〜・・・違うよ〜菊ちゃんはいい友達だよ。ほら、今、菊ちゃんの恋のお手伝いなんかもしてるし」
「無理しなくてもいいのに」
「無理なんてしてないってー!山中君勘ぐりすぎだよー」
「そう?ま、いいんだけどさ。でもそんな無理して笑っても「無理してない!!」

衝動的に私は叫んだ。
山中君の目が少し見開かれた。
でもまた山中君は、いつものように笑った。

「涙目なんだけど?」

そう指摘されたとたん、私の目からは大粒の涙がポロリと零れた。
彼はいつだって、優しく、無遠慮に、核心を突いてくるから。
思わず、タガが外れた。

だって、本当は。

本当は。
ずっと辛かったんだ。
いつだって泣きたかったんだ。


菊ちゃんが「さっちゃんの笑顔」に夢中で、私は必死になって自分の笑顔を見て欲しくて。

なのに、菊ちゃんは友達としてしか見てくれなくて。
鏡の前で毎晩練習している笑顔の練習とか(こんなに鏡を見るようになったのは菊ちゃんのおかげだ)。
いっぱい色んなことが報われなくて。

でも報われなくても。

私は笑い続けた。

笑っていなくちゃ、いけない気がした。

菊ちゃんは、さっちゃんが好きで。(とっても一途)
さっちゃんは、1組の大村君が好きで。(振られたけど、彼女は一途)
私は、菊ちゃんが好きで。(ふられてないけど、私も一途)


笑っていなくちゃ、見ていられなかった。

自分に決して振り向かない彼を。

振り向いてもらえない彼女を。

好きな男の恋路を応援してる自分を。

笑っていなくちゃ、崩れ落ちてもう戻れなくなりそうだった。




( ね ぇ 、 報 わ れ る 恋 っ て 何 で す か ? )




「みんな幸せになれる恋があればいいのにね」

山中君は、泣きじゃくる私の頭を撫でながら、そう呟いた。





結局、山中君は、私が泣きやむまでの30分間ずっと私の頭を撫でたり、涙を拭ったり、たまに抱きしめたりしていた。彼のジャージには、少し鼻水がついた。

彼はそれを見て、また柔らかく笑った。




菊ちゃんを好きになって初めて流した涙。









帰り道。さっちゃんと二人で帰りながら。
グラウンドをちらりと見たら、テニス部はまだ練習をしていた。
さっちゃんは大村君に夢中だった。
私がまず初めに、見つけた菊ちゃんはさっちゃんを一番に見つめて切なそうな顔をしていた。私はまた泣きそうになった。一度外れるとなかなか抑えきれない。どうにか目線をそらすと山中君がいた。彼は、ジャージの胸部分をつまんで笑ってみせた。私の鼻水。涙。山中君の汗なんかも混ざっているだろう。私は瞬きを二度してから笑った。涙は目の潤いに留まった。私はもう一生山中君には頭が上がらないだろう。

私は、大声で「バイバイ」と言った。
さっちゃんもつられて、「バイバイ」と言った。

そしたら、菊ちゃんと山中君が大声で「バイバイ」と言った。
部長の大村君が「集中しろよ」と怒っていた。

私とさっちゃんはその様子を見てまた笑った。











( み ん な 幸 せ に な れ る 恋 が あ れ ば い い の に ね )










片恋連鎖

















( ね ぇ 報 わ れ る 恋 って ど こ に あ り ま す か ? )



















好きな子がいます

同じクラスの菊ちゃんです

英知の「英」を名前に持つくせに

ちょっとおバカです

でも菊ちゃんのまわりは空気がとても和やかです

そんな菊ちゃんの空気が笑顔が

私の胸を痛くさせます

そんな菊ちゃんには 好きな人がいます

菊ちゃんが言ってました(瞳をいつも以上にキラキラさせて!)

(私もちょっと潤みました)

(でも泣かなかったんです!)








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サイトに載せている「片恋連鎖」という話です。後半を今いじりました。
なんだか別物になりました。
これは、既存のキャラクターを使っているので、名前は変えました。でも一人変わってません。既存のキャラと言っても、名前と部活を借りただけのようなもんです。充分おたくです。ひかないで下さい。・・・。
長くてすいませんでした。

中途半端に書き直したから、おかしいね。
ついでに名前前の飯の部分があったので書き直しました。ふぅいかんいかん。


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きーこ [MAIL]

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