泣いて、泣いて、泣いて、泣いて。泣け始めたのですら昨日のことだと。それまでは、ただひたすら呆然としていて。
犬に天気の名前なんかつけるもんじゃない。雨が降るたび、泣けてくる。
つけてたと思ってた覚悟も、悟りも、何もかも。なんて圧倒的に無力なんだろう。貼り付けなきゃいけない筈の用紙は失くすわ、子どもに開口一番「顔がヘンだよ?」と指摘されるわ、他にもポカを色々したと思うけど、覚えてない。よく無事に運転できた、と思うほど泣いてたことしか。
思えば生まれた日は、家族全員が揃ってた。そんな年だった。パソコンのパの字くらいを知ってた時だ。か弱くて、家の中で尻尾を振ってた。
父は夜勤と日勤を繰り返す生活。そんなウチに求められたのは、ほえない犬で。見事なくらい、ほえなかった。行儀の良さは、動物病院に勤めている友達にも褒められたっけ。
生まれた日が、雨で。召された日まで、雨なのか。せめて「サン」って名づけてたら、あと1日でも生きてくれたのかと。梅雨の季節に、考える。
鎖が切れても、せいぜい隣の庭で遊んでいるような弱気な犬だった。大丈夫なのかと、すごくすごく心配だ。犬のくせに、死んでからのことまで飼い主に心配させてるし。
犬のくせに。最後に食べたのは、食べられたのはキャットフード。
今度は、猫に生まれ変わっておいで。もう犬は飼えない。卑怯な考えだと十分に承知していても、死ぬのを見るのは、辛すぎる。
ただし、条件。存分に、天国で遊んでからね。