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嫌いな食べ物「キュウリ」


2004年09月20日(月)

この日記は、もう随分昔の私を知っている人が見ている可能性があって、ゆえに私は言葉を作るのにも、また言葉を選ぶという作業をすることがある。それは何とも面倒な作業で、うまいこと表現出来なれば結局私の書きたいことの一つも表現出来ていないものにすら、なる。だから今日はやめよう。そういうことを。(前置き)







もう他人の長い爪を見て、痛そうだと思うことも無くなった。私の爪を深爪することも無くなった。
あの人が居た二年と八ヶ月は、私の爪はいつも短かった。あの人の柔らかすぎる肉の中に、私の指先が入り込む所為だ。私は毎週欠かさず爪を深く切ったし、毎週あの人の爪が長いのを見て、どうしようもなく哀しい想いに暮れた。毎週の愛撫を与える私は、二年と八ヶ月の間に、どれだけの愛撫を与えられたろう。
時折男に触れられた。泣きながら、御免と言って拒む言葉を続けながら、セックスをしたがる私の身体を彼等はどう思ったろう。情けないことこの上なかった。
何の妄想も、何の状況も無い自慰を覚えたのもこの時期だ。
長い幸せな、恋人生活の中で、私の身体に与えられた、エロスの快楽の回数は、10すら行かない。
快楽が全てというわけじゃない。けれど余りに空しかった。それでも素晴らしかったのは、どうしてだろうとたまに思う。拒みながらセックスしたがる身体が当時の私なら、セックスしながら求めるのが今の私か。
時も、金も、全て今私のものとして此処にある。色んな状況のセックスも楽しめる。不倫と、浮気と、親子ほど違う人との重なりだとか。けれどこれの、何が私の自慰と違うというのか。

今、私は毎週末どこかに行く。新宿、原宿、渋谷、銀座、日本橋、丸の内、池袋。何処にもあるサーモンピンクを、一つずつ消していくのだ。
今日は原宿だった。同じ店、同じ時間、嗚呼私はあそこの席で、彼女を怒った。トイレから帰ってくる彼女の目が腫れているのを見て、御免ねと言いながら、しかし反対したのだ。三ヶ月前、私はそんな香りのするところをことごとく避けて通った。今、そんな香りのするところを一つずつ、私だけの記憶に変えようとしている。
今なら多分、普通に会うことが出来る。恋愛であるか、そうでないのか、友愛であるのか、それすらもわからない次元で。
逃げいるのも良いのだと思う。そうやって私は毎週、サーモンピンクを消しながら、一方で、ある人に誘いの手を伸ばす。おいでおいで、どうせ遊びなのだから。一度寝たらそれきりさ、そんな風に。
「私は穢れているでしょうか」なんて下らない、ばかげた、反吐が出そうな言葉は吐きたくも無い。(そんな言葉を吐くような奴はクズだ!)私はね、いつもこうしている。

そういえば、朝にヨーグルトを食べる習慣が私のものになった。床を毎週水拭きする習慣も私のものになった。カレーに豆を入れたがるのも私のものになった。


……余りにはっきり言い過ぎただろうか。
もう、良いや……時折ね、だって、目頭が痛くなることがある。喉が嗚咽するんだよ。考えられない。信じがたい。


さくま