
戯 言ノ源
―― 連ねた意味も、持てない小鳥。
氷室火 生来
回帰
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| 2006年06月09日(金) ■ |
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知り合った中で、数多く優しい人がいる。と同時に、沢山の危険を孕んだ人達なんだろう。当たり前に。 一辺だけに見える輝きでも、当たり障り無く付き合っていこうと、始めは誰でも思っているから そうなのだとしても、短所を見つける事の方がとても簡単だから、たった一欠片知った部分だけに しがみついていい人なのだと思い込んでは、食いついていこうなんて浅ましさもある中で。 また一人、出逢った人がいる。とても優しくて、傷付き易くて、痛みを知るからこそそうなっていて、 だから誰かを傷つけたりしないように、強く見せかけている少女だった。 その説明はかなりの部分が不足していて、敢て足りない事にしておこうと逃げ出す心掛けがあって、 先ず少女であったのかといえば、多分彼女は少女では無く、色んな意味で少女だなんて 或いはただの呼称、そして或いは多少なりとも下に見ている傾向。あくまで自説。 優しかったのは、誰にでも優しさを振り撒くから。その中に垣間見える執着と愛着は、表現に、 そしてその表現を齎した本人に何某か還元されているのだろう事。言葉とか、態度とか、なんでも。 傷付き易いのは、些細な言葉のあやにさえ興味を持って、推敲し、噛み砕いて、 そうして思い知ってしまうから。そんな少女に、投げ付けられた言葉は一言でも判り辛くても すぐに難解に、そして残酷になれる。そんな彼女に、幾つも投げつけた、自分もその一人。 痛みを元々知っていて、けれど更なる、新たな痛みを与えたのは他でも無い私で有り、 執着は台詞の真実を見い出した時違う部分での執着として、嘘だと懇願し泣き喚いた。 その前に既に別の事で傷付いていたから、ただ差し出しただけの腕もどんなに慈悲に満ち、 縋りつきたい支えだったのか知れない。そうなると判っていて差し出し、そして自分のシナリオ通りに、 終わりを迎えた。筈だった。最初から其処の時点までが、予想されているべき範疇だったから。 心酔したように踊り狂うように盲信していたんだろう実際、何処まで昇華された存在だったのだろう。 決して裏切るべからず、決して突き放す事も無く、ただただ愛を注ぐマシーンと錯覚さえ持てた一瞬。 素振りを制し誤解も何も域に達する、理解していて何故行動を行なうのか。心が無いのかもしれない。 始めから、終わる為に始まったのに。知っていたのは、原稿を渡されたナレーターだけ。 深い深い情愛を注いで、心底吸い付くようにしがみついて、その末路に最初から予定されていた さよならが来るなんて、相手には唐突。もう数年も、前の事なのに。未だに引き摺る、心麗かに。 言い振りを見返せば何処の神様のフリをしているんだか自覚も辟易も何度も繰り返し、 しかし確かにそうだったのだ。どの一瞬か、それまでの全てか、彼女は信じ頼り愛し、 一人の知り合いのようにも見えて、隣にいるのが当たり前の幼馴染にも嘯いて、 かけがえの無い親友にも感じて、始めから繋がった家族にも似ていて、これ以上無い恋人にも霞んで、 見守ってくれる神様にも近くて、ただの凡人にも同じで、顔も知らない遠くの人も違いない。 それならば何故、そこまで心弱る程に、預けてしまったのか。それを理解する術は、勿論無い。 言葉を愛し語り交じったからこそ、そこまで深く、彼女にとっては深く、二人は通じ合えたのに、 一方的な遮断と拒絶、どれだけ弱いものか思い知った、たった一日でどの言葉も届かなくなる。 まつごを予測出来なくても、気付くべきだったのか誰かは云えないのか。騙されていたんだよ、とでも。 許す程に尊い言霊は、彼女にとっては心削る創作だった。一言一言に考え込んで、眠れないぐらい 夜を通して、手紙だって徒や疎かになんて出来やしない。愛して、いたのだと思う。 全てに対して、ある一線を持ちながら別け隔てなく。そういえばなんて聞こえのいい聖女。 突然袂を分けてから、彼女にとっては音信不通。此方もまた数年後に、消息を確認した次第。 その中で成長した少女はまだ、心を傷付け振るわせながら、決然と立ち上がってはいたけれど 迷い痛がっていた。一人の人間としてみていたのかどうかさえ疑わしく、そんな事を口にする事さえ 資格を持たない私が云うのもなんだけれど、忘れられない記憶は薄らぎ、忘れない為に必死になって、 忘れていく事を哭いて引き止めた。なんとかかんとか体裁を保っていたのか、今ではそれなりに 立ち振る舞えるのか、言動を見る限り読む事は少しずつ難しく、時の経過がそうさせたのか、 それとも成長した彼女が無闇矢鱈に傷付く事をもうこわがって、或いは学習して、 強くなった証の代わりに、少しだけ難しくなったのかもしれない。ユーモアセンスをフル出動で、 誰かにだけ理解るように、同じ痛みを持った誰かには伝わるように、書き記していったのかもしれない。 そして勿論、いつまでも時に縛られたままじゃ人間は、誰しもいない。経験に変えようが 煩悩に終わろうが足掻いて前に進む為にとか言いながら横道に逸れたりして。 決然と答えを出し始め、見違える程に成長し、本質を磨き続けながら、時が催促した彼女になって、 逢って、逢いたくてきたその時に、どんな道を、見出せるだろう。導いてやるなんて億劫で、 自ら動きもしないだらけものだけど、せめてその時に、正面切って向かってやりたいのに。 まるで彼女の為に待っているかのような優越。まるで見透かして自分が偉いとでも言いたげな憂鬱。 さぁおいで、心の内に。 なんにしても、ただ待っていたり、痛みに震えている事に限界を覚え、我慢をやめて、 そもそもそうするだけの理由なんて始めから無く、戦って然るべき相手に立ち向かう為、 若しかしたら足は気ままに、主人を運んでくる事でしょう。その時には、立ち向かってあげなくちゃ。 寸分の優しさか、まだ残された理性か、真実を伝えた差異の驚愕を覗きたい邪悪な心か、 なんにしても、動き出した彼女に対して、してあげられる事、そんな押し付けがましささえ正当になる、 それがいやで我武者羅理窟付けたくなる、そう、巡るべき時がきたのだ。やって、きたのだ。此処に。
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