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戯 言ノ源
―― 連ねた意味も、持てない小鳥。
氷室火 生来
回帰

2005年02月21日(月) ■
野蛮な戯れ。

恙無く終わったというものの、取り敢えずのネタに尽きる事は無く。

例えば、母上様がずっこけるの事。
それはもう豪快にいきました。
確かに、場所が悪かったのかもしれない。
限り無い凸凹道に、激しい斜面。
おまけに車がバックで入場したものだから、状況のせいと。
しかし、それでもだ。
履き慣れないハイヒールとかスカートとか、そういうもの全てすっ飛ばして。
だるまの如く転がるあの人は素敵でした(助けてやれよ)。
いやだって……靴が空に舞った辺りからしか見てなくて。
飛散したハイヒールが物語る後ろで、物言わぬずんぐりとした身体。
何度も起き上がろうとしては、おきあがりこぼしの根性で転げ転げて。
色んな場所に打撲と裂傷を負ったあの人は英雄だとも思えたね(だから助けてやれ)。
塀の上から見えていた姿が突然消えたとは親戚談。

例えば、父君様狼狽えるの事。
それは嘗ての思い出話。
藁を積んだトラックに、小石を投げて遊んでいたと。
懐かしげに語る運転中の父君様に、後部座席から身を乗り出して。
わざわざ口を挟んだ兄上様の、言葉。

「火、投げてみれば面白かったかもよ?」

所詮は、有り触れたただの冗談。少し物騒さを帯びただけの。
というと軽んじていると思われるかもしれないが、
そんな事はしないと判っていての、冗談だから。
笑い話で終わる筈だったそこに、突如奇声は舞い込んだ。

「火ぃっ!? 火いぃっっ!?」

何度も何度も連呼される、裏返るそれの面白い事面白い事。
これこそ、その場にいる者にしか分からぬ笑いと言えるだろうか。
予想外。思いも付かなかった提案をされるとこんな風になるのだと。
中々内面を見せない父君様の、人間味を見た気がする(そんなんで)。
しかし、彼が鉄面皮だという訳ではなく。
確かによく他人に言われる彼の印象といえば、
何を考えているか分からない。
穏やかで腰の低そうな感じだけど、本心じゃどうだか。
爽やかマスクの下が腹黒そうで怖い。
肉親でさえ、そう思わない訳でも無い。が、事実としては。
全く、そんな事が無いのだとしたら。
本人は全く何も考えて無くてその時思った事を口にしているだけ、
謂わば、勢いは感じられないがしかし勢いの人なのだ。
単純で言われた事をすぐに鵜呑みにして己なりに考えるから一人の世界に入りがち。
よって、他人にそういう評価を下されて怒る訳でもなく、
へぇ、そうなんだ。そう見えるのかー。
とこれまた鵜呑みにしたりする。いや怒れよ。腹黒い言われてるぞあんた。
CMを熱中して見ている途中で声を掛けても返事の返ってこないのがいい証拠。
そして、あまりの予想外にはとても素直な反応をする。
だからこその。

「火、火ーーっっ!!」

という、反応なのだろう。

観察や分析をしていて飽きないのが人の楽しさでもあるというのなら。
そしてそうする事を楽しさと感じられるのが己であるとするならば。
ネタに尽きない者が周囲にいるという事実は、中々によき事なのかもしれない。
他の全てに目を瞑る事が出来なくとも、そういう接し方をしていれば。
他に取り立てる事と言っても大したものは無く。
帰りの車が眠さの境地に達している父君様運転の為多少の怖さを伴ったとか。
食べた魚を骨の髄まで本当に骨の髄までしゃぶっていたとか。
え、別に誰の事とは言いませんが。だって取り立てる事じゃないですものね? 普通普通。
いいんです。一番面倒な事は、恙無く終わったのだから。


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