| 2001年11月20日(火) |
◇ランディ・ジョンソン! |
□先週のテレビ番組で、筑紫哲也氏と大リーガーのランディ・ジョンソンが対談していましたが、これが面白かったです。
要約:「貴方にとって、野球とはなんですか?」という問いに、「野球は大好きだけれども、私の全てではない。神様とか家族とかが一番大切です」と大投手ジョンソンは答えたのです。
多分、司会者諸氏や、私を含めた視聴者も、「野球は私の人生です」とか、「全てです」とかの答えを期待していたんだと思います。しかし、見事に予想を裏切った彼の答えでした。
□なんの御法話でしたか、開祖は維新の志士達に言及して、「…口では天下国家を唱えて、家族泣かせて酒を飲んでいた。なにが革命だ」とその姿勢を手厳しく批判されたことがありました。
本山に居た頃、開祖夫人から御家族のアルバムを見せて頂いた事があり、その中に筆太の字で、
「駱駝を見る度に、戦乱に明け暮れた蒙古での若かりし頃の自分を思う。祖国に住み、子供と遊ぶこの幸福感、体験しないものには判らぬ喜びである。平和、そして自由、愛する者を持つ楽しみ、これこそ真の極楽である」
との御言葉がありました。私は感動して、この直筆を暗記してしまいました。(若干違うかな?)
話を戻して、ジョンソンの答えを聞いて、フッと開祖のこの御言葉を思い出しました。
| 2001年11月19日(月) |
◆身体の運動/操作について! |
■ 守者は相性の良い動作、方向で防ぎ、攻者をして相性の悪い動作、方向を取らせれば良い訳です。言うは易しですが…。
□1.身体の運動/動作は、前後運動、左右/側屈運動、回旋運動、開閉運動を大本とし、これらの複合体として、少林寺拳法の各種体捌きがあります。
これまで色々な人達を指導をして来て、身体の使い方の様々なことに気付かされました。それは取りも直さず、“私の勉強”となって来た訳です。
近年、ある動作、ある体位、あるいは姿勢と著しく相性が良い、悪い運動/動作の存在に気が付きました。
□2.判りやすい例では、前受身と非前屈動作/姿勢。これで受身を行うと、痛くてしょうがありません。合気道の本には、ですから、「帯を見ながら回りなさい!」と書いてあります。
今度は逆に、前屈動作と(前方)蹴りはとても相性が悪い運動です。初心者は蹴りをする際、「オジギをしてはいけない!」と注意されるのはこの為です。前屈して蹴る癖を取らないと、何時か腰を壊します。
蹴りは、後屈、側屈、回旋動作と相性が良いのです。ただし、後屈動作は相対動作として力の伝達が出来ないので、回旋や側屈を主に蹴りをします。ここで言う後屈という表現は、体操的な後屈ではなく、反るということです。表現、難しいですね…。
□3.もうひとつ、蹴る側の骨盤の高さが重心側より下がると、これも蹴りに適した姿勢ではありません。特に、中段より上を蹴る場合、その側が高い方が明らかにやり易い姿勢です。
この問題は非常に面白く、片足立ちになり、同側の骨盤を高くしても低くしても、動作的には側屈になりますが、前屈の要素が加わらない限り、前方への蹴りは出来ます。
たまに逆蹴りで、骨盤下がりのフォームの人がいます。この体勢が少林寺拳法のどの基本と結びつくか分かりません。しかし、蹴り動作は両姿勢で可能であると述べておきます。
これは他の動作についても言えますが、まさしく、それらの中から相性の良い動作と悪い動作を峻別するのです。
□4.突きや蹴りは、体重移動と直結した動作です。武道において、体移動の動作はとても重要で、体で行うにせよ、膝、足で行うにせよ、その段階で頭部は前後、左右、上下と自然に移動し、且つ攻撃線を外すことになります。
左中段か一字構えで、差しこみ寄せ足をして順蹴りをします。この時の体勢は回旋、側屈を主動作として腰をやや上げるような半身の構えとなり、左肩、左腰は上がり、右肩、右腰下がります。つまり、自然に体重を後方に移し、左足を上げやすい体勢になる訳です。
骨盤の線/上下を変えるのは簡単です。踵を上げれば、上げた側が高くなります。中野先生の順蹴りがこのような体勢です…。
さらに考えれば、前足を後方に引いても同じ体勢になります。逆突きでは寄せ足をいいますが、受けからの順蹴りでも、(後ろに引く)寄せ足が重要になります。防禦時は顔をより安全にし、攻撃時は顔が近付き過ぎないようにする体捌き、足捌きなのです。
□5.蹴り/順蹴りや回し蹴りについて、少林寺拳法の蹴りは、手は内転、足は外転系の蹴りであることを理解しなければなりません。
良く、手を外転、足を内転して蹴る人/サッカーの蹴りをイメージすると判りますが、守ってからの反撃には、前者が適した運動です。流派の出力系統は大事にしなければなりません。
蹴りを主体に述べてみました。
| 2001年11月15日(木) |
◇ブレクタイム !? |
□一騎駆けという戦法/出陣法は、織田信長独自の戦法と思われていますが、三国志/吉川英治著を読んでみると、その様な戦法が当時からすでにあったようです。非常に機動力があり、敵に動きを読まれにくい戦法です。信長は今川方への内通者を警戒していたのでしょう。
後年、彼の西欧文化の吸収力(新らしがりやサン)を見ると、この時代、先進であった中国からも、色々なことを学んだであろうことは、想像に難くありません。
□三方が原で惨敗した徳川軍が浜松城に逃げ戻り、城門を閉ざさず、かがり火を盛んに焚いて、「すわ!敵には備えがあるゾ!」と武田軍の追撃を心理戦で防いだ話も、三国志の中で諸葛亮孔明が用いています。
□石田三成は、非常に生/生き延びるのことに執着しました。これも史書を読んで、古今の英雄たりといえども何度も死地に追いやられ、でも、危機一髪ギリギリのところ、生を諦めないで生き抜いて勝ちを得た故事を学んでいたからでしょう。
三成は結果こそ得られませんでしたが、死ぬまで負けを認めなかった態度は、少林寺の拳士魂と通じるものがありますか…。
□布陣法や構えなど、軍隊と軍隊が衝突する戦争と、個人と個人の闘争に、どこか共通点があるのが興味深いです。
ちょっと関係ないですが、将棋とチェス。布陣が前者は対構え(?)、後者は開き構え(?)から対局が開始されます。文化の違いからでしょうか? 面白いですね。
■ 開き、対の構えによって生じる、上段、中段に関する表と裏、あるいは正と逆の概念に、上手い名前が見つかりません。色々と考えているのですが、“門の存在/概念”を判り易く表現するネーミングが欲しいのです…。
□1.現時点での私の考えを述べますと、攻防時の布陣、構えによる体勢には三つの概念があるということです。自身の構えの正面が開いている。閉じている。そして正面を閉じて行けば、反比例して裏面/体の側面から背面が開くことです。
一般に正面が開いていれば、左右の裏は固く、攻撃されにくいのです。一方、半身を強くして正面を閉じれば、確かに正面は守り易いですが、裏を攻められます。この加減によって、攻防のスタイルとなります。
□2.守りの立場からすれば、開けば、正面からの強力な攻撃を受けとめることになり、閉じれば、左右からの挟撃を覚悟しなければなりません。もちろん、前者では左右の、後者では正面の攻撃が無いと云う意味ではありません。
ひるがえって、対構えからの逆蹴りがスカシ易いと云って、当たらないという意味ではないので誤解しないで下さい。上の状態で半身で、さらに手の構えが伴えば、門が狭い上に当てにくく、スカシやすいということに異論を挟む余地はないでしょう。ただし、対構えでも正面を向いているのなら、逆蹴りはやはり、当て易くなります。
通常、半身の場合は直線系の攻撃に強く、曲線系の攻撃には弱い(相手からすれば当て易い)と云われています。特に半身が強い時、足払いにより、裏から体を崩されて攻撃される場合があります。
□3.少林寺拳法の構えはレの字立ちに象徴される様に、45°半身、これは45°線上に足、腰、肩が揃うことを基本とし、様々な組み合わせ/歩幅、手の構え、体格、得意技などにより、自身の個性に合った構えを取ります。もちろん状況にも合わせるでしょう。
以前、海上保安庁の人達が六人道場に習いに来ていました。うち二人は武術指導員でした。全員無事に黒帯を取りましたが、ある人が面白い事を言いました。
「…小船の中で犯人を逮捕しようとすると、時々、両方共、海に落っこちそうになるんです。あわてて犯人と支え合うのが可笑しいんです。船上は揺れるし、物がゴチャゴチャしてるので、安定して構えますね」と言ったのでした。
私は“なるほど!”と思いました。“南拳北腿”という言葉は、中国の拳法の特徴を表す言葉だそうで、教範中にもあります。よね(?)
曰く、「南の地方は暖かく、船上の生活が主流だから手技が盛んとなり、空手の源流となった。一方、北の地方は寒く、草原地帯で発達したので足技が発達した。少林寺拳法は北派の系統である。」
これは、中国拳法研究家でも、一概に言えないと否定的な見解を持つ人もいます。しかし、海の男達がそうだと言うのですから、納得しない訳には行きませんでした…。
このように、状況に合わせて構える時があるでしょう。
□4.「45°の半身」と私は門下生達に構えの基本を指導します。少林寺拳法の思想に合った、正面でもない、半身でもない中庸の構えであると思います。
肩、骨盤の高さは平行を保ち、足はエックス・X。この時の角度は45°の線が交差しています。
左中段構えなら左足先をXの左上点辺りを踏みながら真っ直ぐに置き、右足を右斜め上から走る線上に平行のなるように、左斜め上から走る線上に置きます。その時、体の中心部はXの中心点に来るようにします。
これで、肩、腰、足が45°線上になりました。左肘部は僅かに引いて左脇腹を守り、右肘部は僅かに前に出して右脇腹を守っています。この時、どちらの下にも硬い腰骨があります。
この状態からやや半身、やや正面は腰(股関節)の操作によって出来ます。もし、足を(少し)動かせば、強い半身と強い正面になります。これらから門が開く、閉じる、裏門という概念が始まるのです。
□5.法形については改めて述べますが、今は門の概念から基本形を述べます。初学者が学び易い形とはなんでしょうか? 例えば“左対構え”からですと、
上段逆突きを内受け突き:無理攻めを咎める。開身をする場合、狭い進入路を益々狭めるので受け易い。
上段逆突きを内受け蹴り:無理攻めを咎める。半転身をする場合、狭い進入路を益々狭めるので受け易い。
*この時、対構えでの逆突きや順足刀蹴りはスカシ易い方向になるのですが、攻者が突く為に腰を回し、正面を向いてくるので、受けからの反撃の場合、これが解消されます。攻撃半ば以後に突くチャンスが生じやすいでしょうか…。
上段逆突きを上受け蹴り:無理攻めを咎める。振り身をする場合、狭い進入路を益々狭めるので受け易い。
*この場合、順蹴りはもともと蹴り易い布陣なので、出会い頭から正面を向くまでに当てるチャンスが生じやすいでしょうか…。
ちょっと、膨大になるので、考え方の一端/閉じている側への攻撃を益々閉じ、いわゆる表、裏の攻防とするなどの分類法を示しておきました。なお、人体の構造上、手足は左右に付いているので、完全な直線攻撃は考えられません。したがって、入り身が大きく浮上して来ます。
| 2001年11月09日(金) |
■上段攻防法の開き対! |
■ では、上段の攻防法での開き対の理はどうでしょうか…?
□ボクシングの対戦を見れば一目了然、あります! オーソドックスタイプ同士の対戦。我々では左中段対構えで対峙することになりますか。その時の、左パンチはリードパンチと云われ、お互いジャブ・左を放ちながら、相手の右に旋回しながら戦機をうかがいます。
これは、正門(以下、表・オモテと表現する)から入ろうとしている、当てようとしているのです。
それにたいして、左対右/左利き・サウスポーでは、お互いが入ろうとする空間がぶつかり合い、強力パンチである右、サウスポーでは左のパンチが直接当たる光景をしばしば目にします。これは逆突き同士が表になるからです。
右利きの多い社会では、少数派サウスポーの方が変則的な戦い方に慣れている為に、有利(?)と云われています。
□私は近年、天地拳第一は、この表と裏を教えている法形ではないかと気が付きました。もちろん、他の重要な理もありますが…。
第一は左対構えで相対している時、順突きを開き下がって受けます。これこそ、表と裏の理を同時に教えてくれているのです。
つまり、表から入ってくる危険な進入路を無力化してしまう体捌きなのです。逆説的に言えば、開き構えからの順突きは受け易いということになります。
そうであるなら、前回、述べた対構えからの表の蹴り攻撃にも、この理が応用できます。対構えからの順蹴り、回し蹴りに対して開き下がって受けることが、容易に創造(想像ではありません)出来るではありませんか。
法形にもありますね。逆転身蹴りです。たまに、開き構えからの順突きに逆転身を行っている人がいますが、わざわざ当たりやすい方向への体捌きであり、この間違いは感心出来ません。
今月号の機関紙における“内受け蹴り”。開き構えからの逆突き攻撃を内受けしています。危険な方向の受けであり、対構えの逆突きを半転身気味に内受けする方が、方向を教える基本として良い様に思われます。表も必要ですが…。
□注意することは、開き構えの場合、上中の連撃になると中段突きは表から来ることになる訳ですから、注意が必要です。
対構えでは、例えば、対天一、半月返しは初撃の順突きを半転身などをして無事に(?)受けられれば、二撃目の逆突きはスカシ易い、受け易いということになります。
上段は手の攻撃が主であり、自在関節の肩を起点とした攻撃であるため、現実には受けるのは大変です。しかし、表、裏の概念を知っておけば多少は有利になるでしょう。
*この日記は修正出来るものですから、この上段攻防の開き対についても、若干修正しながら書き足しています。これは後ほど正式に日記中で述べます。
■ 中段攻防における開と対の理!
□同じく法形を理解する上で、開き構えと対構えの関係について述べてみたいと思います。
胴を蹴っていると、蹴りやすい体位があることに気が付きます。対構えでは順蹴り、開き構えでは逆蹴りが行いやすいことに、異論はないでしょう。さらに、相手にやや前傾してもらえば最高です。
これはつまり、攻撃の進入路に正と逆(と言うか、正門に対して裏門か…)があるのです。胴体の部位は球体ではなく、楕円形であり、正面を向かない限り、向かってくる力の方向をスカす形を、ママとる場合があります。攻者、守者はこれを理解しなければなりません。どちらかが、この理を味方に付けた方が有利となります。
□正の方向
対構えでは順蹴り、順回し蹴り、逆の返し蹴り、逆の足刀蹴り(膝を押し出す系統)、逆の後ろ回転蹴り、順突き、順鈎突きなどが正の方向からの攻撃であり、守者にとっては危険な方向/進入路となります。
開き構えでは、逆蹴り、逆回し蹴り、順足刀蹴り(膝を押し出す系統)、順返し蹴り、逆突き、逆鈎突きなどが正の方向であり、守者にとっては同じく、危険な方向/進入路となります。
正の方向は、良く守らなければなりません。
□逆の方向は、全てこの反対になります。
例えば、開き構えの布陣を取れば、順蹴り、順回し蹴り、逆の足刀蹴り(膝を押し出す系統)、順突きなどは逆の方向。特に直線攻撃はスカし易い形となり、構えがしっかりしてさえいれば、慌てずに対処出来ます。
対構えでは、逆蹴り、逆回し蹴り、順足刀蹴り(膝を押し出す系統)、逆突きなどが逆の方向。特に直線攻撃はスカし易い形となります。
逆の方向は、前回、述べたように構えさえしっかりしていれば、かなりな無理攻めなのです。
□中段攻防の法形で考えてみましょう。
守者、左一字構え、攻者、左中段構え(例なので、法形の構え通りではない)の対構え。
正の方向を教えている法形。 ◎十字受け蹴り◎下受け順蹴り◎金的膝受け波返し◎三防受け蹴り◎段蹴り波返しなど
逆の方向を教えている法形。 ◎下受け蹴り◎三合拳横転身蹴りなど
守者 左一字構え、攻者右中段構え(例なので、法形の構え通りではない)の開き構え。
◎逆蹴り地一◎逆蹴り膝受け波返し◎逆蹴り地三◎三合拳半転身蹴りなどは、正の方向を教えている法形です。
◎払い受け蹴り◎下段返し◎中段返し◎払い受け地二などは逆の方向を教えている法形です。
以上となりますが、何か気が付くことはありませんか…?
□少林寺拳法の法形の場合、特に対蹴り中段攻防法について、100%、相手の裏を取ることがありません。これは不思議です。下段を蹴る足刀引き足波返しでは、相手の裏に出る攻防法がありますが…。
教範には“掛け手、挟み受け、払い受けは流す”などの記述があるのに、これはどう言うことなのでしょう。
――掛け手攻防法や流し手の攻防法をずいぶんと研究しました。で、中野先生に質問したのです。
「何故、少林寺拳法では蹴りに対して、相手の表/内に入る技法が多いのですか?」
「足の急所はほとんど内側にあり、そこは受けられる/叩かれると非常に痛いところである。だから、少林寺では体を内に捌き、足を受けるのである」
□つまり、少林寺拳法の剛法、特に対蹴りの技法は“受け技有り”のようなんですね。先生の中では…。確かに、足を掛け手で取ったり、流して倒したりすると、金的を蹴ったり、倒した後、蹴ったり叩く形となり、悲惨な戦い方になる恐れがあります。
受けられたら痛い、中段攻防の法形は痛くて正解だったのです。ウーン、良く考えられていますね! でも、修練する時は、気を付けましょうね。
| 2001年11月07日(水) |
■布陣法/構えについて! |
■ 法形について思うことを述べましょう。
□将棋の定石には実戦の積み重ねから生まれた、序盤における(戦法の)駒組み手順、中盤に至るまでの変化手順。および、駒の機能を主にした攻撃手筋、防御手筋と言われるものがあります。
布陣法である序盤定石には、絶対に知っていなければならない定石があるので、例を上げます。先手、後手共に飛車先の歩を突いていったとします。イメージできますか?
先手の五手目の手番で、そのまま角の頭を歩で攻めてはいけません。必ず自分の角の横に金を上げて、弱い角の頭を守るのです。そのまま突くとどうなるか、先手は必敗します。逆に、後手が金を上がらずに歩を突いたらどうなるか、同じく後手が必敗です。
(無理攻めを咎める規則正しい理論が)面白いでしょう! これを“守り”という視点から述べても面白いのですが、今は“布陣法/構え”という視点で述べます。
□一字構えは中段の攻撃、主に回蹴りに強い構えです。ですから、中野先生は仁王拳においてやや前屈、上段を誘うが如くの構えをとります。これは、中段の攻撃については必勝の備えがあるからであり、誘った上段については当然です。
法形を修練する際、この二つの意味が理解されなければなりません。誘いをテーマにした法形/白蓮拳においても、誘いの外を攻撃された場合、無理攻めとして咎める反撃法の存在を前提として、この布陣/構えが成り立っているのです。
私はしたがって、ある構えからことさらな誘いをかけるのを不自然と考えます。構えそのものが、身体の一部分の固め/守りであり、結果ある部位/大きくは上段、中段をすでに誘っているのです。身体全身という防禦線は長大に過ぎ、全てを守るのは不可能です。で、ある部位を鉄壁にして後顧の憂いを無くし、他を守り易く、反撃し易くするのです。
□例えば、払い受け蹴りの際、一字構えから前手を横に誘えば、相手は大きく回さなくとも三枚を蹴る事が出来ます。そうなると、守者は上段と中段の両方に気を配らなければなりません。
大きく回してくる攻撃への反撃法が払い受け蹴りであり、もともと一字構えで中段を固めている我に対しての、彼の無理攻めへの必勝法がその本意でなはいでしょうか。ただし、顔面を後方に引き、攻撃されにくくして、前手を横に中段を誘うという考え方もありましょう…。
何故、そのように思ったかと言うと、中野先生の八相構えの指導を受けたからです。この時の構えは、体は左45°半身。左右の手はやや高め、特に右手は顔面の右下横まで上げます。明らかに上段を固め、(結果)中段を誘っています。
中段の攻撃に対しては、あらゆる中段反撃法、上段に対しても同様の反撃を秘めて構えるのでしょう。この時、正面は向きません。全ての法形で、下段/金的は誘いません。先程述べたように、防衛線が長くなり過ぎます。半身の構えで固め、無理攻めへの咎めとして、膝受け波返し、地王拳などがあるのです。
□従来の修練では、無理攻めを咎めるという視点が抜けているのではないでしょうか。誘いばかりに目が向いている帰来があります。しかし、「誘いの隙に真の隙あり!」なんて恐ろしい言葉が存在するのです…。
過去の本部の連載と重複していないでしょうね…。
| 2001年11月06日(火) |
■技法論・中野先生の目打ち! |
■ 本HPでは技法について、これまで言及したことはありませんでした。しかし、海外にいる拳士からのも含め、多少の問い合わせはあったのです。
Zimさん(コーネル合宿で知り合った方で、女流カメラマンです)からのなんて、イングリッシュでの質問なんです。それに対する“My poor English”での解答は、もう皆さんに見せられるものではありません…。
次に上げるのは、ある支部長の先生/中野先生の大ファン(?)からの質問です。
「…さて長くなりましたが、一つだけ教えていただけないでしょうか?「目打ち」にかんして中野先生のご指導のすばらしさ(教え)に触れられていましたがどこにそれを感じたのかよろしければご教授賜りたくお願い申し上げます。(注:私の『演武の手引き』を読んで下さいました)」
解答:《…お尋ねの目打ちの件ですが、一回りした二回目の横浜講習会の時、私が先生に質問したものです。
「目打ちは人によって、手の掌を下にして打つ人と、甲を相手に向けて打つ人がいますが、どちらの方が正しいのですか?」
「…掌を下にして打つと指先で目を横からハスル形になり、これでは相手の目を傷つけてしまう。それに対して、甲を向ける形は相手が目をつぶっても、“眼窩”に対してどれか一本の指でも当たる形になり、相手の目を傷つけない。目打ちは相手が目をつぶったってイイの!つぶった上からだって効くの!」と(要約ですが)解答して頂きました。
私は驚きました。これまで、目打ちは目に当てるものと考えていたからです。(目を外しても良いんだ!むしろ安全なんだ!)新鮮な驚きでした。先生には昔から教わっていましたが、(これは…、聞き漏らしがまだまだあるなー)と思いました。
このように、“目打ち”ひとつ取っても、少林寺拳法の本分である活人拳を、先生は正しく伝承されていますね。》
付け加えますと、“甲を相手に向ける”と表現したのは本意ではありません。そのようにすると、体感的にはバックモーションをかけることになります。
現時点での私の目打ちの見解は、手首の関節の脱力はもちろんですが、四指の、主に基節骨と中手骨間の関節、要は指の根元の関節の脱力が重要と思われます。
片方の手で手首部分を押さえたって、目打ちは出来ます。さらに、中野先生はやや手首をローリングするようにされました。これは実際に見ればなんてことはありませんが、文字で表現となると難しいです。多分、中指が一番長いからだと思います。
― こんな所で初の、技法論としますが、まあ、参考になれば幸いです。
| 2001年11月05日(月) |
◆昇段試験これでイイ? |
■ 昨日の昇段試験は全員無事に合格したようですが…。
話を聞くと、試験は同じ道院同士のペアで採点されるのではなく、まったくバラバラにされてしまうとのこと。これは、いかがなものでしょう!?
ペアで練習/修行するのが少林寺拳法の最大の特徴であり、さらに、同じ道院同士、ペアで昇段に漕ぎ着けられたことは、素晴らしい仏果と考えます。賞賛に値するのではないでしょうか。
そのペアの演武を採点しないのでは、技術偏重です。一歩譲って、護身的な側面から、抽出科目ならギリギリ可でしょうが、これとて危険で、私は反対です。
「私の主張・演武の手引き」中にも述べているように、演武は少林寺拳法の中核なのです。拳士は、演武に含まれる精神によって滋養され、また、実技においても少林寺流の動きが身に付きます。
ペアで真剣な演武をさせることに、昇段試験のひとつの眼目があるのではないでしょうか。付け加えて、先程述べたように当日のいきなりの組み合わせでは、間合い、力加減など、ただでさえ緊張している受験者達には大変危険と思われますが、いかがなものでしょう…。
■ 本欄をもうけようと思った動機について記しておきます。
文章/考察を書き溜め出したのは、最初はワープロ/キャノワードから、続いてPC/マッキントッシュを購入し、これは大いに役立ちました。現在はIBM のA4ノート型タイプを使用しています。
生来の不精者である私は、このせっかく書き溜めた文章の保管が難しいのです。今回にしても、一年間、技法についてせっせと書き溜めたものがあったのです。しかし、ハードディスクの故障で一瞬にしてパー。マックの時はなかったんですが…。
価値については、まあ自己満足のレベルでしょうが、それでも同じものが書けないのは驚きです。で、HPに目をつけました。プロパイダーに登録しておけば、かなり安全に記録が保管/バックアップ出来ると考えたのです。個人的にもCDRを購入しました。
掲示板、メール、自己の思考の軌跡が分かって本当に楽しいです。十年、二十年の価値ではないかと思います。
そんな訳で、非常に個人的な理由が第一義であることをご承知下さい。
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