せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2005年09月04日(日) 「猫のヒゲのしくみ」稽古

 こんなにぐっすり眠ったのは久しぶりというくらい、眠ってしまう。しかも、家を出る時間ぎりぎりに目が覚める。パソコンに向かって原稿を書いていたのだけれど、気がついたら、ちゃんと横になって寝てしまっていた。
 制作の竹内さんから頼まれていた、ネット用の稽古日記も送れていないまま、ばたばたと飛び出す。
 電車の中で書き上げて送ろうと、パソコンを取り出そうとしたら、パソコンを持ってくるのを忘れていた。がっかり。何やってるんだ。
 すっかり何もすることがなくなった電車の中、台本を読み、そのあと、このあいだゲットした映画「プリシラ」のノベライズの文庫本を取り出す。稽古のはじめの頃、笹木さんから、僕の役は「プリシラ」のテレンス・スタンプがイメージだと聞いた。
 芝居の中の僕は、ずいぶん彼とは遠いのだけれど、それでも、ブックオフでこの本を見つけたとき、やっぱり買っておこうと思ったんだった。
 ノベライズしているのは、エミ・エレオノーラ。このあいだ、「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」で、イツァークを演じていた。映画では語られない背景や思いに、ぐんぐん立ち入って書いている。この手のノベライズは、「それは違うでしょ?」とつっこみたくなるようなものが多くて、いつもは敬遠しているのだけれど、この「プリシラ」に関しては、書き込まれた部分が違和感なく映画のセリフや場面にとけ込んでいる。少し元気になって稽古場に向かう。
 今日の稽古は、舞台にいつもあるソファの位置が変わったせいで、あちこちで位置や動きが変わった。これまでの稽古でできあがっていた場面をつくりなおすかんじ。
 昨日の撮影のために持ってきたブーツを、今日から稽古場で履いている。高さがあるので、歩き慣れないといけない。それに、視線が全然変わるので、みなさんと芝居するためにも、きっちりはき続けることにする。
 食事休憩の時間に、郡司くんと星さんと、近くのそばやさんに行く。星さんの仕事の話「愛のソレア」のことなどを、二人でルンルン聞かせていただく。
 夜は通し稽古。頭から流れを確認しながら。自分の中での気持ちの変化を一つ一つさぐって、衣装のだんどりをイメージしながら、演じていく。
 帰り道、歩いていたら、雨音がするのに、雨が降ってこない。しばらくしたら、道の左半分だけがどんどん濡れていく。雨に追いかけられているかんじだ。こんなのはじめてとおもしろがっていたら、そのうちに、ざーっと降り出した。ものすごい雨。カサをさしてもびしょぬれだ。
 たどりついた駅のホームも風のせいでどこに立っていても濡れてしまう。時刻表のかげで休んでいたら、ホームの屋根の隙間から雨漏りし始めて、見る見るうちに滝のようになった。とんでもないいきおい。階段にざあざあと落ちて、下へ下へと流れていく雨は、なんだかものすごかった。
 郡司くん、星さん、藤井くんたちの一行と合流。
 電車が止まってたらどうしようかと思ったのだけれど、東武線は何事もなし。最寄り駅を降りたら、ほとんど雨は止んでいた。さっきの大雨がウソのよう。


2005年09月03日(土) 「猫のヒゲのしくみ」撮影

 「一人女装」(自分でメイクする)も「野外女装」(女装して外に出る)も、ひさしぶりなので、ドキドキしながら、稽古場でメイク。
 なんとかできあがって、公園まで歩く。気分はパレード。ドレスのすそを引いて歩きながら、だんだん、この役を演じる度胸が足し算されていく。
 カット毎に細かく撮っていくやり方でカメラに向かうのは、ほんとにひさしぶり。舞台とは全然勝手が違うので、ややとまどう。星さんや、藤井くん、土井さんや沖本さんといった方々の、カメラへの向き合い方のみごとさに感動する。
 撮影場所は、木の陰の半日陰の中。それでも、昼日中なので、さすがに暑い。見る見る汗をかいてしまい、いろんな方に扇いでもらったり、汗を拭いてもらったりする。
 木がいっぱいあるだけあって、セミがとんでもなくうるさい。遠くで鳴いてるとかいうのではなく、すぐそこの、それこそ、手の届くところでミンミン鳴いているのが見えている。
 出番のない時に、木陰で休んでいたら、上から液体が降ってきた。セミのおしっこだ。土井さんのペットボトルに入ったりして、初めのうちは大騒ぎになったが、あんまりしょっちゅうなので、ついにみんな慣れっこになってしまう。
 近所のおじいちゃん、おばあちゃんや、子どもたちに見守られ、散歩に来ていたポメラニアンのアトムくんと遊び(星さんと一緒に)、なんだか今日一日がとっても楽しい野外イベントのようだった。
 公園でのロケが終わったあとは、スタジオに戻って、室内のシーンを撮影して、ナレーションを録った。今日一日で終わるんだろうかと心配だった分量を、予定通り終えて、最後には、稽古をすることもできた。
 充実した一日。
 男性陣は、鼻の頭を中心にみんなうっすらと日焼け。僕は、分厚いメイクのおかげでまるで無事。


2005年09月02日(金) 「猫のヒゲのしくみ」稽古

 仕事先から稽古場へ。一日いなかっただけで、ほんとにひさしぶりなかんじと、星さんに言われる。ほんとにそうだ。不思議なかんじ。
 劇中映画の撮影を、台風が来そうだということで、明日全部やってしまうことになった。あと何日か先だと聞いていたので、あわてる。買い物も準備も、明日の土曜にやろうと思っていた。
 とにかく、仕度をしないといけない。
 つけまつげ用の接着剤がないかもしれないと思ったので、帰りに探すことに。郡司さんにおつきあいしてもらって、一緒に駅前の東急ストアの化粧品売り場に駆け込んで、「つけまつげ用のノリありますか?」と店員さんに聞く。なぜか必死になってしまっていて、おかしかった。夜の10時過ぎにつけまつげのノリを探す男二人。かなりあやしい。でも、見つからない。
 郡司さんと別れて、渋谷のドンキホーテに寄ることにする。明日の朝、大荷物をひきながら渋谷の街を歩くよりは、今日中に見つけた方がいい。
 ドンキホーテで、無事発見。ほっとした。帰り、渋谷の夜の街を久しぶりに歩いた。
 家に帰って、準備開始。まずは衣装とウィッグとメイク用品の確認。計画していたビーズで作った涙のようなつけまつげ(辻村ジュサブローの「王女メディア」のようなやつ)は、今からだと間に合わないのと、早変わりには向かないということで途中まで作ったものを断念する。
 テレビで「ニューシネマパラダイス」をやっているのに気がついて見始めてしまう。何度も見ている映画なのに、今日もまた見てしまう。映画にまつわる芝居の稽古中に見るには、ほんとにいい映画。ラストはやっぱり泣けてくる。
 気がついたら、5時過ぎ。ウィッグに羽根をつけるのに苦労して、ばたばたと出かける時間になってしまった。それでも、なかなかいいかんじにできあがったウィッグに満足する。


2005年09月01日(木) 台本と原稿

 喉の調子が悪い。風邪だろうか? 薬を飲んで、仕事に向かう。一日中、仕事。へとへとになる。稽古をしているときとは、全然違う疲れ方。
 帰ってから、昨日もらった台本を製本してみる。いつもはあまりやったことのない、きっちりした本の形に。
 これまで、自分の登場する場面を中心に読んでいたのを、あらためて、全体を素直に読みなおしてみる。気がつくことがいっぱい。僕の役がしなくちゃいけないことと、存在にしかたについて考える。

 テレンス・ラティガンの戯曲をこのところ、何本も読んでいる。「銘々のテーブル」「椿姫」「父と子」「ブラウニング版」「深く青い海」を一気に読む、一人の劇作家の作品を、こんなにまとめて読むのはひさしぶり。
 ラティガンは、戦前から戦後にかけてのイギリスの劇作家。ウェストエンドに作品が3本同時に上演されていたこともあるという人。ただ、戦後イギリスでおこった新しい演劇の波(「怒れる若者たち」)の台頭で、すっかり過去の人になってしまっている。
 作品も何本が翻訳されたものを読んでいたのだけれど、正直、あまり興味がもてなかった。客間が舞台で上流or中流の紳士淑女がおしゃれな会話をつづけてる。ノエル・カワードのような諧謔や毒もなく、サマセット・モームのような見事にたくまれた作劇術もない。
 でも、彼はゲイの劇作家。ずいぶん前に読んでそれきりにしていたのを、あらためて読み返すとなかなかおもしろいことに気がついた。そこここにゲイテイストとはいえないまでも、やっぱりゲイならではかもしれないと思えるところが見えてきた。
 まず、パロディというか、名作をモチーフにした作品がいっぱいある。「椿姫」「トスカ」などなど、オリジナルを換骨奪胎して作り上げるという感覚は、ゲイならではかもしれない。ていうか、僕もそうだからか?
 別れた男女が、再会してああだこうだと話をするというのも、僕がよく書いてる話のようで身近?なかんじ。
 読んではみたものの、原稿はまとまらない。


2005年08月29日(月) 「猫のヒゲのしくみ」稽古

 まずは歌の練習。シベリウスの「フィンランディア」、ラスト近い賛美歌のようなメロディ。最初に聞いたときはどうなるかと思ったのだけれど、30分ほどで形になってしまった。
 僕は星さんと一緒にメロディ担当のソプラノパート。郡司さんの指導で声の出し方から、自分以外のパートをちゃんと聞いて、声をまぜていく意識を持つことなどなど、とってもおもしろい。そして、なんてきれいなんだろう
 笹木くんが3稿のラストまでを持って登場。
 稽古は、後半を中心に。


2005年08月28日(日) ショーケース

 篠原さんと富士見丘小学校の打ち合わせに、半蔵門へ。卒業公演の台本のた叩き台について。その後、篠原さんは、国立劇場で高校演劇の発表会へ向かった。一度別れたのに、なんとなく、またマックでお茶することになり、おしゃべりをたくさん。篠原さんは、高校演劇の中国大会の審査員をしたそうで、その時の話をいろいろと聞く。十数回も改稿したという話や、みごとな一人芝居のことなど。高校演劇ってなんておもしろいんだろうとあらためて思った。いい芝居の話を聞くのは、とっても楽しい。
 その後、森下スタジオへ向かい、明樹由佳さんから案内をもらった池内美奈子さんのワークショップのショーケースを見る。駅前で、松本くんや江原さんの一行と会う。
 池内美奈子さんの主催するワークショップの発表会。池内さんと俳優たちの「こんなことできます」というプレゼンテーション。
 いろんな芝居の短いシーンを演じていく。演出はどれだけされているのだろう、その場にいる俳優は、信じられる言葉を発することに集中していた。とってもおもしろいもの、ちょっと微妙なものなど、いろいろ。それでも、自分のカラダと声に向き合っている俳優達の姿はとても魅力的だった。
 中でも明樹由佳さんは、いろんな場面を演じながら、いつも生き生きと肉体と言葉がじかにつながったかんじで、目が離せなかった。
 ルールとして、「うまくいっていないと思ったら芝居をとめてもいい」というのがあって、明樹さんは、「メッカへの道」を演じ始めてすぐ、「ソーリー」と言って、芝居を止めた。たしかに、外のスタジオから音楽がどかどか響いてきて、僕たちも集中しずらいかんじだった。池内さんに「どうしたい?」とたずねられて、明樹さんは「さわりながら」演じることに。まずは、相手役の井上可奈子さんと一緒にわーっと走り回って、池内さんの太鼓の合図で芝居が始まった。どこかにさわって、何かを頼っていないと言葉を紡いでいけない状態の緊迫感。そして、しばらく経って、どこにも触れずに一人で立ったときの心細さとそれでも一番ツライ言葉を口にしなくてはいけない、その瞬間の緊張感。明樹さんの抱える葛藤がまるごと伝わってきた。カラダと言葉のありようって、こういうことなのかもしれないと、思った。明樹さんは、いつも「まるごと」の人だと、この頃よく思う。この間のフラジャイルでも、ラ・カンパニー・アンでも。僕にはなかなかできないことだ。尊敬する役者さんの一人だ。
 森川くんと会場でばったり。きっと会うんだろうなと思っていた。
 帰りに、両国の倉庫へ、衣装の第二弾を取りに行って、森川くんの新居におじゃまする。芝居の話をいろいろと。一緒に飲んだビールと、芝居ばっかりに触れた一日の、ほろよいのいい気分で帰ってくる。


2005年08月27日(土) 「猫のヒゲのしくみ」稽古

 今日は、笹木さんがお休み。
 まずシアターゲーム。楽しくテンションが上がる。
 稽古は、ややラフに通していく感じ。みんな昨日に続いてリラックスしたふんいき。とっても楽しい。
 いくつかの場面を終わりまでを通してやることができて、気持ちの流れに納得がいった。字面でわかっていても、やっぱりやってみないとわからないことがいっぱいだ。一つの場面にいる時間の気持ちのつながりができた気がする。
 このところの「見る芝居」を今日もやっていたら、前から見ていてくれた有川くんにそのことを指摘される。「話の中心を見すぎるって言われるんだよね」と答える。僕は、お客さんに「私を見てればだいじょうぶ」と伝えるような芝居をよくしてしまう。僕なりの「座長の芝居」なんだと思う。それでも、今回は違うことをしないと。せっかく役者としてだけで参加してるんだから。僕が演じる「真野吹雪さん」は、目の前で展開するお話の流れにどれだけ乗っているのか? 丸ごとなのか、それとも「関係ないわ」と知らんぷりしてるのか、そのかねあいを考えていこう。というか、いろいろやってみよう。それが稽古だよね、きっと。


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