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V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
リフォーム業界の専門家の話を聴きました。分譲住宅の営業マンだった人がリフォーム業界の営業マンに転職すると、まるで売れないのだそうです。理由は、分譲住宅はモノを説明し、価格を安く提示し、「いつまでならお得です」と期限を区切るのが営業の秘訣。一方リフォームは、要望を聞き、それに応える仕様を考え、アレンジし、満足させるのが仕事。さらにお客様もリフォームはしたいものの「今すぐでなくてもいいか」と考えがち。だから、意思決定をどんどん先送りしてしまう。そんな時にお客様の立場で一緒に考えて、「そういうことなら、お盆までにやりましょう」と納得の納期を提示できる人が売れる人だといいます。分譲住宅はメーカー営業で、リフォームはサービス業。似て非なるモノ売りとコト売りの違いがこれほどわかりやすい例も珍しいですね。
コロナ禍で結婚式が延期または中止にした人が17万組にのぼったとの報道を見ました。その人たちに対し、式場の対応は大きく異なりました。
感染者数が多くなって、もうどこでどんなクラスターが発生したかなど追う気力もなくなった昨今。ANAの第一四半期の大赤字や日産の今期の見通しを聞きながらこれが中小企業に及ぼす影響を思いつついまだ空けない梅雨空を睨み、暗澹たる気持ちになる。こんなときに思い出すのは、某社の事業部長の言葉。曰く「『人は自分のために』と思うときに一番弱く、『他人のために』と思うときに一番強くなる」。これは真実だ。一般にご主人が奥様に頭が上がらないのは、この「他人のために」の量で奥様に圧倒的に負けているからだ。自分がだんだん弱くなっていく…そんな感じがするときは…「他人のために何ができるか」…その視点が欠けているとき。だから、こんなときこそ「他人のために何ができるか」を考えよう。そして、「ありがとう」と喜ばれる、自分が今できることに集中しよう。今年の晴れ間は、自分でつくるしかない。
本部も負けていません。2005年に「のどごし生」を発売するとき、ライバル会社も同じ日に新商品を出す、という情報が飛び込んできました。もし同じ日に出すと、試飲会場を取られてしまい、お客様が試飲できなくなってしまいます。1日でも3日でも早く出せないか。そんな現場の声に、生産本部、物流本部、営業本部は出荷の前倒しを検討します。24時間稼働の工場の生産物流計画の組み換えは、手配する資材なども異なるから容易ではありません。が、各本部はチカラを合わせ、それをやり切り、1週間早く市場投入することができたのです。キリンの理念は「お客様本位」「品質本位」。「もっと喜んでもらえるものを」を追求するからこそ、こんな開発と一体感が出るのでしょうね。
そのぐっさんは、キリンには知らせず、なんと自分で「キリン宣伝担当」の名刺を作り、お馴染みの黄色いジャンパーを着て、近所のスーパーなどに宣伝に回ったといいます。それが本社に伝わり、ある日、本社に呼ばれました。すると、ぐっさんは社長室には行かず、「営業部」に電撃訪問。そして、営業部の皆さんを激励したといいます。この行動に、営業部門はがぜん盛り上がり、「のどごし生売るぞ!」と団結できたのです。
毎日愛飲している『のどごし生』。その開発物語を聞きました。キリンでは、商品コンセプトをターゲットの言葉で書くルールになっています。『のどごし生』が開発された当時のターゲットは「日産エルグランデ」に乗るお父さん。コンセプトは「家族の笑顔に囲まれて幸せ!」。CMのキャラクターに使われたのは、ターゲットをそのまま映した「ぐっさん」。この頃、ビールは「会社の付き合いで飲むもの」から「家庭で家族と、友人と飲むもの」に変わりました。ぐっさんがCMで黄色のジャンパーを着て、サラリーマンを演じながら、会社の束縛と無縁なスッキリ感が出て、とても気持ちよかったですね。その後、このCMの真似をして全国の営業マンが動き、全国のスーパー至る所で同じ陳列が登場しました。
10年前、JTBの人とこんな話をしました。「るるぶ」の語源は、「見る・食べる・遊ぶ」の語尾の略。これが昔々の旅行の目的でした。それが、10年前には旅行の目的が変わり、「るるぶ」の意味も「体験する・食べる・学ぶ」に変わったといいます。確かに、秘境体験とか、検定試験合格とか旅行の目的がずいぶん変わりましたね。そして今、旅行すらままならない時代を迎えています。とくに、「体験する」が難しくなりました。新しい「るるぶ」は何になるのでしょう?……?考えてみました。ジャーン!「つながる・伝わる・尊ぶ」なんて、いかがでしょう??OnLineで、多くの人とつながる時代。もっと地球環境や資源や時間やひとり一人の個性や自分らしさを尊ぶ時代にしていきたいですね。
大手靴チェーン店の社長からの質問をいただいた。単刀直入に、ズバッと。「靴屋がやらなきゃいけないことを3つ教えてください」。この手の質問をする社長にはいつも脱帽する。
小説『宮本武蔵』の中で、沢庵和尚が、商いで成功した武蔵の友人・又八にこう喝破します。「商売がうまく行ったからといっ人間が大きくなったように思うなよ。小さいものを大切にする心が人間を大きくするのだ」。これを読んだ瞬間、和尚の言葉の重さに圧倒されて思わず仰け反ってしまいました。家族、困っている人、小さな約束、小さな夢…こうしたものを大切にしている人は確かに強い。大きい。30代の頃、利益の拡大こそ使命としてきた若手コンサルタントとしては頭にガツンと一撃喰らった思いでした。以来、規模の大きさを誇示するのをやめました。さて、ドラマ『半沢直樹』はビジネスの大きさばかりを競っていますね…頭取のひと言にも小ささを感じてしまいます。どんな人物が大きな人として描かれるのか興味津々です。
以下は、震災直後の嶋選手スピーチの書き起こしです。「開幕5日前、初めて選手みんなで仙台に戻ってきました。変わり果てたこの東北の地を目と心にしっかりと刻み、「遅くなって申し訳ない」と言う気持ちで避難所を訪問したところ、皆さんから「おかえりなさい」、「私たちも負けないから頑張って」と声を掛けていただき、涙を流しました。その時に何のために僕たちは闘うのか、ハッキリしました。この1カ月半でわかったことがあります。それは誰かのために戦える人間は強いということです。東北の皆さん、絶対に乗り越えましょうこの時を。絶対に勝ち抜きましょうこの時を。今この時を乗り越えた先には、もっと強い自分と未来が待っているはずです。絶対に見せましょう、東北の底力を。本日はありがとうございました」今、映像を見返して、私も拍手してしましました。「何のために」。当事者は常にそれを問い続けることが大事ですね。
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