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V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
稀勢の里がとんでもない大逆転優勝を果たし、観ていて叫んでしまった。こんなことがあるから人生何事も諦めちゃだめなんだと思う。優勝決定戦のとき、仕切る姿を見て、なんと気力が充実しているのかと驚いた。人間、集中力が滾るとあんなオーラが出るものなのだ。小6のとき、輪島の対北の湖戦の逆転優勝を観て、以来相撲ファンになった私だが、原点を思い出した。あの怪我の中で120%の力を出し切れるのは、それだけ練習の蓄積があったから。ここ一番に弱いと言われた稀勢の里の、ここ一番の強さに苦しみ抜いた人の強さを観た想いだ。
照ノ富士が14日目の琴奨菊戦での立ち合いで変化した。すると会場から「モンゴルへ帰れ」というヤジが飛んだという。立ち合いの変化には感心しないが、このヤジはもっといただけない。私は小5のとき静岡から岐阜に転校した時、「静岡に帰れ」と言われてとても悔しい思いをした覚えがある。人には安心していられる居場所が必要で、それがないというコトはとても辛いことだ。私はその辛さから、自分や人の居場所つくりにその後の人生を捧げていると言っていい。組織の中での自分の居場所を創る。市場の中でクライアントの居場所を創る。居場所を創る方法は、独自性を高めることのみ。私のライフワークは落ちこぼれに居場所を創ることだ。すべては5年生の時の理不尽な「帰れ」から始まった。今回の照ノ富士への容赦ない言葉は、異郷で人一倍頑張っている身にはさぞかし辛いことだっただろう。この悔しさをバネに、彼にも相撲界で帰れなどと言われない居場所を創って欲しい。
新商品企画を指導している顧問先で進捗確認を行う。今回は7人を指導しているが、20代の若手社員がクリーンヒットを飛ばしてくれた。前々回の指導で「わが社の技術の特徴」を整理した。前回の指導で「こんな業界にニーズがあるのではないか?」と仮説を立てた。そのときなかなか着眼点が良かったので「その仮説を持って実際に業界No.1企業に提案に行ってみたらどうか?」とアドバイスした。すると、これがビンゴ!!たまたま先方が試作品を作ろうとしているタイミニグにぶつかり「こんな商品を探していたんだ」と一気に話が進んだ。商品開発指導をしていると、こんなセレンディピティによく出会う。犬も歩けば棒に当たるというが、周囲のアドバイスに従い素直に行動している彼の姿勢に拍手を送りたい。
WBCで日本が敗退。米国投手陣の曲がる速球を観ていると、あれ打つのは至難の業だと思う。特に8回の筒香選手の当たりはHR級の当たりに見えたけど、スタンドには届かず。それだけ球質が違うのかも。そんな中、こんな球を3000本も打ったイチロー選手の凄さを改めて思う。彼は雑誌Numberのインタビューで「大リーグでは1、2、の、3」のリズムでは打てない。だから「1,2,3」のリズムで打てるよう「振り子打法」をやめた、と言っていた。日本の強打者がその違いをマスターするのは、数日では難しかっただろう。また、菊池選手と松田選手がエラーやファンブルをしたが、慣れていないアウエーのグランドの難しさかもしれない。経営も同じ。アウエー(海外)で戦うには、その環境特性を研究して理解し、適合していくための時間が必要だ。
レゴランドのターゲットは2〜12歳。大人が行って楽しめる空間が限られているが、子どもと一緒に行くと、喜ぶ子供を見て大人は超ハッピーになれると思う。例えば、従業員は皆、ネーム札の上にレゴブロックとフィギュアを付けている。このフィギュアは、子供が「自分のものと交換して欲しい」と言ったら交換しないといけない。そのことを知っている子は家から自分のフィギュアを持って来る。従業員と子供がお友達になる仕掛けだが、そうやって大人と物々交換する子供を観たら、大人も嬉しくなるのではないか。ビジネスでもそうだが、コミュニケーションが生まれるきっかけを提示できる会社・人は素晴らしいと思う。
4月1日に開業予定の名古屋のレゴランドを見学。中でもミニチュアの作りに超感動。レゴはおもちゃじゃない。クレヨンや絵の具と同じ、ひとり一人のクリエイティビティを引き出す文房具や楽器と同じ道具(ツール)なのだ。これはビジネスも同じ。日本の家電製品のように完成品メーカーは衰退しているが、半導体やコンデンサ等、村田製作所やローム、京セラ、オムロン等の特殊なパーツは世界から長く強く求められている。伊那食品工業が成長を続けるのも、寒天が完成品ではなく食品原料や工業品の原材料として提供できるからだ。レゴは道具だからこそ時代を超えて長く愛用され続けるのだろう。
息子が大学に合格した。発表前日の昨日、息子が落ち着かないので、彼を誘って生物資源学系への進学を希望する契機となった聖地に出かけた。地元岐阜の河川環境楽園とアクア・トト。アクア・トトはトリップアドバイザーで「行って良かった水族館」で第3位に入る水族館だ。息子が小学生の時、家族で何度も行った。自然発見館が主催する「おさかなクラブ」には毎月通い、魚採りや解剖、池の掃除などをやった。鮎の放流体験、鮎の産卵観察体験、越冬鮎観察、水族館宿泊もやった。中学の職業体験学習もここだった。環境が人を育てるというが、近くにこんな施設ができたのはとてもラッキーだった。不安に駆られたら、「なぜ、始めたのか」「何のため、何を目指してここまできたのか」を考える原点回帰をする。すると気持ちが新たにあり、感謝の気持ちが湧いてくる。気持ちの良い巡礼だった。
パートナーコンサルタントと一緒に2年がかりで5Sを導入した会社の常務と話す。常務はニコニコしながら、「先生、5Sの指導料、あれは安すぎでしたよ」と笑う。理由を聴くと、今期は最高業績が出そうだという。原因は、毎年クレームなどで発生していた損金が、今期は殆ど発生しなかったから。その原因を、常務は5Sを導入したからだと考えているのだ。5S導入指導終了後も毎週社内の5S巡回監査を行うことで従業員が強くなっている。最近は社内監査の平均点数も90点以上の部門が増えてきた。最高益という現実もさることながら、人財が強くなっていることが私には嬉しい。
昨日の大手ゼネコンの研修は、本社のある東京ではなく、名古屋以西を管轄する大阪支店独自の企画。東京は仕事も人材も豊富で、人材育成に対し差し迫った課題はない。一方、大阪がそのペースで育成していたら、必要な時に必要な人財がいなくなってしまう。その危機感から企画されたもの。そのような動機づけが事前になされているため、受講生も皆、真剣に参加してくれた。私もこれまでの経験から、地方組織ならではの劣等感や疎外感、本社への対抗意識は強くしみついている一人である。もう二度と会うこともないかもしれないが、一期一会の精神でその日に伝えるべきことを全力で伝えたいと思った。
大手ゼネコンで「次期マネージャ候補者研修」の講師を務めた。「次期」ということは、これからマネージャに成る人を対象としているが、「昇進前」に研修する会社は素晴らしい。なぜなら、受講者のモチべ―ションは高く、彼らの不安を勇気に転換して上げられるからだ。私は「新任マネージャ研修」も行うが、昇進後3か月以上経ってから研修を受けると、受けた人から「もっと早く受けたかった」という声をよく聴く。どんなマネージャでも、スタート3か月間で必ずやって欲しいことがある。それに間に合わないようでは「新任マネージャ研修」の意味がない、研修は内容もさることながら、「いつやるか」がずっと重要だ。それを理解して企画しているこの会社は、それだけで素晴らしいと思う。
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