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V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
30代半ばのコンサルタントにお会いした。彼の話を聴いて驚いた。彼は開口一番、「私は戦略の立案はできないのですが戦術は得意です」。聴くと「対面営業に強い、SNSマーケティングに強い、広告宣伝に強い、エンドユーザーの気持ちがわかる」が戦術に強い、ということらしい。確かにそのようなニーズは強いが、「戦略がわからない」ということを恥と思わないコンサルタントがいることに驚愕した。私たちの時代では考えられなかったことだが、これもニーズが細分化され、その細分化された市場のひとつひとつが大きくなっているからこそ言えることなのだろう。そのひと言に自分の時代遅れ感を痛感した。
商品企画研究部会の取り組みで、静岡県掛川市にあるビューテックという会社を訪問した。同社はスピルニナという藻を育て、健康食品に加工して販売している会社だ。スピルニナはスーパーフードの大様と言われ、自動車会社の新規事業創出プロジェクトで唯一採択されて取り組んでいる事業だという。藻を育成する設備、加工場などを観ながら担当者の話を聴いたが、その熱意に圧倒された。課題は「販売無くして経営無し」というように、健康食品はいかにして売るかにかかっている。が、こういう人が挑むのなら、きっと成功するだろう。新規事業の成功者は「何を創るか」も大事だが、誰がやるかも大事なのだ。
稀勢の里がついに横綱に昇進した。結びの一番で白鵬を破っての優勝だから誰も文句はないだろう。その結びでは、稀勢の里よりも白鵬に感動した。とにかく最短距離で稀勢の里を寄り切ろうと直線的に攻めに攻めた。大横綱が健気なぐらい一生懸命勝ちに行った。しかし、稀勢の里はそれを凌いだ。猛攻を正面から受けてしのぎ切ったことは、大きな自信になるはず。そのような自信を生み出したのは先輩横綱の意地。その精神力に大拍手したい。
高卒の新入社員が活躍し、定着率の高い会社に、なかなか新人が定着しないクライアントの社長や専務をお連れして、なぜ新入社員があんなにも生き生きとしているのか話をお伺いした。すると、まず高校の卒業式に会社から花束を贈る。次に、新入生に親への手紙を書いていただく。これを入社式で読み上げる。本人が読み上げると泣いてしまうかもしれないので先輩社員が代読する。その後社章を授与し、無限大握手をするという。これを聴きながら、歓迎力というかリスペクトの仕方の違いを感じた。新入社員にいかに喜んでもらうかの想いに溢れている。「新人なんて面倒くさい」と考えている会社とは大違い。これを機にクライアントが変わってくれればと思う。
ファミリーマートにサークルKサンクスが吸収されて、商品の統廃合が始まっている。サークルKを主要顧客にしていた企業の中には売上ダウンを余儀なくされた会社もあるという。また、取引持続化のため、食品の製造原料をファミマの親会社である伊藤忠商事の原料に変えて製造するよう指示されている会社もあると聞く。合併しても看板が変わるだけで、他は何も変わらないように見えるが、実は生き残りを図るための、ドラスティックな改革が有無を言わさず進んでいる。その噂を聞くにつけ、ビジネスの厳しさを感じるとともに、セブンイレブンとどちらが勝ち残るのか注視していきたい。
焼津の鮮魚卸の顧問先を訪問したら、業績が好調だという。理由は「ふるさと納税」。同社が作る魚の切り身が人気なのだ。また、同社の製品ではないが、同じ焼津地区の「鰹節セット」も人気だという。このセットには鰹節に鰹節削りが付くという。ところが今どき、鰹節削り器はなかなか手に入らず、品薄状態。この話を聴きながら、ああ、ここにも成熟産業が生きる道があったかと感心した。ちなみに焼津市のふるさと納税には1本100万円の「鮪まるごと」もメニューのひとつになっていて、今まで10本以上出たという。恐るべきふるさと納税。そして、この寄付制度を生みだした人を素晴らしいと思う。
顧問先の常務と話す。同社にビジョン開発を指導したのは8年前。以来同社は毎年3年計画を立て、それをローリングして運営してきた。3年計画を3年間でやり切る会社が多い中、毎年3年後を考える方法は先が読みにつくい時代には合っているやり方だ。感心してそのことを褒めると、8年前の私の指導の影響だという。昔指導したことのうちいくつかが教え子の中で常識となり血肉となる。それを知ってとても嬉しいと思った。
女活に力を入れている広告代理店の話。同社は毎月社内報を発行しているが、その表紙を飾るのは「月間MVP」の受賞者である。その社内報は、本人だけでなく、その家族にも贈られる。それを聴いて、これは従業員のモチベ―ションアップに有効だと感じた。何より家族が「あなた、いい会社に入ったね。よく頑張っているね!」と言ってくれてそれが辞めない理由になりそうだからだ。豆に月刊誌を発行している会社は少ないが、今できている会社には勧めてみたい方法だ。
業績好調の資材商社の常務に、同社の強みを聴いた。常務は、「お客様が〇〇のような材料はないか?」と尋ねてきたときに、とにかくそれを探す力だという。そのものずばりがなくても、商材を組み合わせることで提案する。「見つかりません」という言い訳はもう10年やっていないという。「安くならないか」というオーダーには、価格だけを望むなら、当社を通す価値がないとお客様には伝えている。この付加価値を生む活動に特化した姿勢が、強さの秘訣だと聞いて得心した。
カンブリア宮殿に登場した掛川市の『たこまん』を訪問。静岡県内に18店舗経営している地元超密着の和洋菓子屋だ。お店の雰囲気、和・洋菓子の味、丁寧な接客力、そして平松社長のお話に感動。同社の経営理念は「ひとりのお客様の満足と、ひとりの社員の幸せ」。経営ビジョンは「家族・友人・地域に対し、誇りある企業・職場を目指す」。昭和59年に定めて以来、ぶれずにそれだけを目指してやってきたという。現在はパートさん含め従業員数366人。社員の誕生日と社員の家族の誕生日には、社長はバースデーレターを書き続けている。さらに、毎月の全従業員の活動報告書すべてにコメントフィードバックをする徹底ぶり。「みんなの満足、みんなの幸せ」でなく「ひとりの」と表記している真意と、それを実践するすさまじさを聴いて感動した。
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