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V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
新年、あけましておめでとうございます。今年はトリ年。当社はトリとの縁が深い。V字経営研究所のV字は、渡り鳥がチームで飛ぶ時のV字編隊飛行に由来している。渡り鳥はこの形で飛ぶことで、推進力が1.5倍以上も高まり、オチこぼれを出すことなく、皆なで何千キロも先のゴールにたどり着くことができる。私はこの姿を企業の経営チームに重ねる。カリスマの後を後継者が継ぐ。その重荷を後継者一人で背負わせず、皆で交代しながら背負って飛ぶ。そのような企業を一社でも増やしたくて、この名称の意味としている。今年は何社の過酷な渡りを援けることができるか、今から楽しみだ。
経営者は社員に自立せよ、という。自分に必要な教育訓練を自分で見つけ、自分が履修し、自分の給料を上げる。それができるのはほんの一部の人たちだ。偉人伝のTVドラマでよく「東京(江戸)で勉強したい」と親に訴えるシーンが出て来るが、これは偉人伝特有のシーンだ。多くの人は、自分から学ぶ、という発想がない。その人たちに「自分で受けたい教育を探せ」と言っても無理なのだ。また、自分が何を学んだり経験したりすれば経営ビジョンに辿りつくための一助になるか考えよ、と言っても、「何を学ぶべきか?」「何を経験すべきか?」には気が付かないのである。よって、「君はこういうことを学べ」「次はこの経験をせよ」は育てる側が指示しないといけない。そしてその中で自分事を増やしていくしか育成法はないであろう。
某社で研修を行う前のインタビュー。すると、総務担当の女性が研修の効果について次のように語った。「うちの会社は評論家が多い。研修の受講後の感想文を読んでも、他部署はこんなふうにすると良いと思いました、と記載されていて他人事、自分から動くことが大事なのに、当事者意識がない。そこを変えれば社風が変わるのではないか」。自分から動かないで意見だけを言う体質が問題だという。わたしの研修のテーマはスキルの伝承がメインだが、実はこの体質転換が求められているのだと感じた。こういう意見を言っていただける総務担当者は本当にありがたい。
名古屋の長者町にあるトランジットビルは「創造力を刺激する空間」だ。かつては繊維問屋だっただけあって、横に長い棚がある。この棚を本棚に用いていた。そのため廊下が個性的な書棚になっていて、クリエイティブ魂を刺激された。1Fに米国流の本格的なハンバーガ屋が入り、日本中の地ビールを出しているのも、どこかアーティスティックだ。古いモノの利用、効率の良い収納、間接照明…リフォームの魅力をすべて兼ね備えていて、多くのクリエイターの共同作業場となっていた。
「アートプロジェクトがある町は信用できる」。名古屋市の長者町は時折トリエンナーレというアートプロジェクトの舞台になるが、そこでアーティストが集まる雑居ビルを経営している人の話を聴いた。彼は、アートは人が持つオリジナリティを引き出すものだと定義していた。行政が、アーティストが関わりたいと思える環境をつくるから、オリジナリティを発揮したいアーティストが集まるという。集まったアーティストは腕を磨き、そこで創作し続ける。そこから生まれたオリジナリティが人を惹きつけ、多くの人を集める。アートプロジェクトがある街は、発信力があり、オリジナリティがある。つまり、「自立している街」。だから「信用できる」というのだろう。浜松や松本などを音楽家の聖地を思い出しながら、妙に納得できる言葉だった。
生産性を上げるための方法は、現場に落ちている。小さな改善の積み重ねでしか、生産性を上げる方法はない。よって現場の声に対し「うるさい!」と否定するのは、生産性を下げる。現場は気が付いているがトップは気が付いていないことにヒントがある。現場の声を「聴きに行く」「拾いに行く」ことが生産性を上げることなのだ。
TEDの生産性に関するスピーチを調べていて素晴らしい論文に出会った。ここに転記する。「上手くいったチームには3つの特徴がありました。1つ目は、彼らは互いに高いレベルの社会的感受性を示していたということです。2つ目に、上手くいったグループは、お互い公平に時間を持っていました。議論を独占する人や、逆に傍観する人もいませんでした。3つ目の特徴は、上手くいったグループには、より多くの女性メンバーがいたということです」。「数少ないスーパーマンやスーパーウーマンによって問題を解決できると考えていては、きっと解決はできなかったでしょう。全員が必要なのです。全員に価値があると認めたときにだけ、限界をこえてベストを創るためのエネルギーや想像力、勢いを解放することができるのです」。なるほど。やはりスパースターは要らないのだ。必要なのは、理念に共感し、お互いを必要としあう理念共同体である。
「従業員が辞めない構造をどう作るかは、労働生産性をどのようにしてあげていく構造をどう作るかと同じである。高い給料を払い続ける構造は辞めない要因のひとつである。生産性が上がるやり方を、追求していくしかない」。給料はハーズバーグの研究による環境要因でしかない。しかし、ここを満たさないと動機づけ要因だけでは人は止められない。人が辞めて困る会社はまずは生産性が上がる仕組みを作る。ここからがスタートである。
好業績を誇るある会社の社長の話を聴いた。彼は、今の会社を上場するつもりはないという。上場すると株主に配当しなければならない。その分、投資力を失う。特に、我慢しなければならないのが従業員への給与。そのため、良い社員が流出するリスクがある。そうならないために、敢えて上場しない。聴きながら、人が財産のサービス業は、このくらいシビアにコストのことを考えるのかと驚いた。
「自動化や持続可能のニーズは100年続く」。安川電機の説明者の言葉だ。この言葉を聞いた時、同社の社員を羨ましく思った。なぜなら、ニーズが100年続く=100年仕事がある=会社は成長し続ける=すごく安心できると思ったからだ。私の仕事は、果たして100年続くニーズを相手にしているだろうか?何かに取って代わられて消滅するようなニーズを相手にするような仕事はしたくない。同じ仕事するのなら、100年後も存在するであろうニーズに対して答える仕事がしたい。ならば、人生を賭けて取り組む価値があるし、未完成のまま次に繋げることもできる。
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