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V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
新しいステージに立つと、そこでしか会えない人がいた。先日の「増収増益組織づくりセミナー」には、30代のベンチャーの若者がいた。彼は自分の経営計画書を僕のセミナーに持参してきた。そして講義が終わった後、私にその経営計画書の内容を見てくれと言った。このような意識の高い受講生にはなかなか会えるものではない。また、同じく創業間もないベンチャーでありながら、部下を二人連れて3人で来ている人もいた。その方からは、後日メールを頂いた。曰く「自分も反省する機会になりました。自分が目的、方向を決めて、計画と実行は社員に任せるようにしようと思いました。一緒に参加いたしました二人も、どうやっていけばいいかという方法・手順も分かりやすく、教えていただきましたので、ヤレル感があり、モチベーションが違って、前向きになっています。いい方向に動き出しているなと感じています」。意識の高い人に会うからこちらも気づき成長できる。本当にありがたい。
5日に書いたようにステージに立つ私の夢は実現した。が、それは次の景色を観るための一歩に過ぎない。高い山に登れば今までとは違った景色が見える。遠くまで見晴らしいがいいだけでない。別のより高い山が見える。その山の上の雲を目指して再び挑んでいく。自分の人生の目的をそのように変えないとここに立った意味はない。では、自分はここでどんな山を見たのか。ズバリ、昨日の日記に登場したような想いと行動力のあるマネージャを多く育てることだ。私が彼に伝授した4つのステップは、K-BAS(ケーバス)というメソッドでネーミングしているが、このK-BASマネージャを多く増やしていくことが私の使命だと思う。それもひとつの企業の中に何人も増やしていく。そうすることでその企業の業績は上向き、100年を超えて継続するだろう。その仕組みをどう創るかが次の課題。4月に起業して、仕事が益々面白くなってきた。
2月から7月まで実施していた某社のV字回復プロジェクト。実は一番の中心人物だったK課長が6月末で異動。予想されたことだったとはいえ、それが一番の心配事だった。が、見事に目標達成。彼が撒いた種が実を結んだのだ。そんなK課長から、私宛に嬉しいメールが届いた。感動したのでここに記す。「今回のV字回復プロジェクトでは大変勉強させていただきました。特に「リーダーとして成すべこと…」を考えさせられました。私が至った結論は『1.業績を上げるためには社員自らが考え行動すること! 2.そのために、失敗を恐れず安心できる環境を整えること! 3.みんなで決めたことをマネージャ自身が行動する 4.そして、賞賛し、結果が出ないときは自分のこととして悔しがり、喜怒哀楽を共有すること』以上が社員の働き甲斐を創出すると感じました。職場は変わりましたが、どんな業務においてマネージャとしてやるべきことは変わらないと思います。新しい職場でも実践していきます」。K課長の真摯な姿勢に私も教えられた。
会社案内を作成、完成した。印刷には友人の勧めでネット印刷を使った。データは友人のデザイナーがすべてPDFで作成してくれた。サイズ、紙の質他申し込みの仕方も全部教えてくれた。中何日で納品するかで価格が違った。早ければ高く、日を置くと安くなる。何部刷るかでも価格が違った。明朗会計だ。出来上がりが心配だったが、心配な人には見本を送るサービスがあった。そして、オーダーから僅か5日で会社案内が届いた。申し分ない出来にビックリした。このサービスは印刷弱者だった中小企業のコミュニケーションがどんどんイージーにタイムリーにする。革命とは、強者に集中していた富や権力が、弱者に分散されることをいうと習ったことがある。大手ほど有利だった印刷媒体がこれで弱者でも対等になるのだから、このイノベーションはまさに革命だ。素晴らしい!
何年か前に「何を捨てるかで人生は決まる」という本を読み、「その通り!」と思ったことがある。私には15年近く、自分が立ちたいと願うステージがあった。それは私が尊敬する師匠が立っていたセミナー講師のステージだった。そして、10年近く前に私を認めていただき、以来ラブコールを頂いていたステージでもあった。受講者は向学心旺盛でなおかつ現場主義を貫く中小企業の社長たち。選択眼に厳しく、オリジナルな事例を語らないと認めてもらえない厳しい場だ。そしてそのステージに立つには、捨てなければならいものがあった。それはサラリーマンという立場。講師がサラリーマンでは、リスクを背負っている受講生の経営者とは対等な関係でないからだ。4月に起業した私は今日、憧れのそのステージに立った。無我夢中だったけど、スタッフの皆さんや会場の熱心な受講生の皆さんに支えられて納得のいくセミナーができた。夢だったステージで、そこでしか会えない皆さんと会うことが出きる。その事実が本当に嬉しかった。
岐阜の多治見にある核融合科学研究所で、セミナーを行った。岐阜県の主な会社から選抜された経営者候補生を育成する岐阜県と工業会が主催する『賢材塾』。その中でマーケティングを担当している。受講者は全員技術部門所属。そのような技術系の人にマーケティングを語るときは、いつも自分がブラザー時代に開発したP-touch(TEPRA)開発体験の話をする。TEPRAは最先端でも何でもない技術を組み合わせて生まれたイノベーション。消耗品で会社を救うビジネスモデルは円高不況で傾くブラザーが立ち直る契機となった。かつては、「TEPRAの開発話なし」で喜ばれるセミナーにはどうすべきか真剣に考えていた。どうあっても、TEPRAの開発体験話が一番人には受けるからだ。だから封印したこともあったが、今は自分にしか語れないことを語る使命だと感じている。間もなく30年になるが、そこから得た学びは決して風化しない。これからも伝えていきたいと思う。
ある大企業の子会社の社長だった人と話す。彼は2000年代初頭に中国の上海勤務になった。それまでは人をあまり信用せず、自分が中心になって「俺が、俺が」で仕事をしていた。しかし、中国に行ってからは人を信用し、「和」や「チームワーク」をとても大事にするようになったという。一人でできることよりも大勢でできることの方が圧倒的に多いからだ。確かに部下一人一人を見ていると「足りない」と思うことばかりだ。が、そこをぐっと呑み込んで「よくやっている」と声がけする。部下がミスをすることはあるが、成功していることに比べればミスなんて大したことはなく、自分が謝ればいいだけ。そうすれば自然と会社は回る。そのことに気づいた彼は帰国後、子会社の社長となり好業績を続けた。「任せれば、人は楽しみ、動き出す」は星野リゾートの星野社長の言葉だが、それを文化の違う中国で学び日本に持ち込んだことが素晴らしい。
某労組の委員長が労働金庫の皆さんに話す講演を聞いた。その中で、来店時の挨拶のことで苦言を述べていた。労金の職員はその委員長が店に行くと「いらっしゃいませ」という。しかし、委員長は「自分たちは仲間だ。だから『お疲れ様です』と言うべきだ」と主張する。これはディズニーランドが「いらっしゃいませ」と言わず「こんにちは」というのと同じ。ディズニーランドはお客様と会話(キャッチボール)がしたいがために「いらっしゃいませ」と言う。すると客が「いらっしゃいませ」と返す。委員長もテラーさん他の職員と会話がしたいから「お疲れ様です」と言う。すると誰だって「お疲れ様です」と返す。挨拶はコミュニケーションの始まりだと言うが、対等であるための挨拶のあり方を主張できる人は自分と他者との関係性を重視するほどに志が高い証拠。委員長は「アナログの時代は心を掴んでいた」と言った。LINEのアニメの絵では伝わらないことを大事にする時代なのだ。
昨日の見学時にカゴメがなぜこのようなストレートな商品を作ったのか疑問に思った。尋ねると、工場長は「社長の指示だったから」という。昨年、同社のトマトジュースが空前の売れ行きとなり、店頭からなくなる事態になった。理由は「トマトには脂肪燃焼成分があり、メタボに効果がある」という京大の研究チームの発表。この研究は、カゴメとは関係のないところで行われたものだった。それを知った社長は「それを当社が発信しなかったことを恥じろ」と現場に指摘したのだ。これを受けた幹部たちは「自分たちはまだまだトマトの価値をお客様に提供できていないのではないか?」と自問自答。その中から生まれたのが「自分たちはトマトのストレートな美味しさを伝えていないのではないか」という疑問。そして、今回のプレミアムが誕生したという。常にワンランク上の視点で自問自答する社長の厳しさと、それに応える現場のNo.1企業のプライドに感銘を受けた。
FWE研究会の仲間とカゴメの那須工場を見学した。そこで飲んだのは期間限定の「カゴメトマトジュース プレミアム」。原材料はトマトだけ。食塩もなし。開発思想は「自然の美味しさを損なうような技術に頼らず、食の楽しさをお客様に提供する」で、シンプル イズ ベストに感銘を受けた。「自然の美味しさを損なうような技術」とは、例えば甘くしたいときに砂糖を入れるような安易なこと。砂糖に頼らずに甘さを出すにはどうしたら良いかを考え抜くという。カゴメは野菜ミックスジュースなどが得意だが、このときの味付けも自然の美味しさを組み合わせてつくる。開発ポリシーの「これだけはしてはいけない」を伝えている会社は「しなさい」で縛る会社より、創意工夫の幅が広くなるのだと実感した。
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