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V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
昨日の商品開発セミナーは、女性社員による女性社員のための商品開発セミナーだった。そのパネルディスカッションの司会をしたのだが、成功した企業の幹部とファシリを務めた女性コンサルタントとのトークセッションから導かれた成功の鍵は3つだった。第一は、環境を整えること。会社がこうした取り組みの必要性を認めて「女だから」と軽く見ないこと。また、直属の上司が活動しやすいように時間を工面してあげること。第二は、企画を進める段階でのファシリテータを女性にする。そして、多数決は絶対とらず「いいね!」を重ねた合議制にすること。第三は、特にサービス業の場合企画から開発、店頭、販売に至るまで一気通貫にすること。製造業でも本田技研やカルビーではこのような一気通貫のプロダクトマネージャーがいたが、川上から川下まで同じ人が考えるから、コンセプトがぶれない魅力的な商品ができる。
寺島実郎先生の講演会でもうひとつ面白かったデータは、「川上インフレ川下デフレ現象」。2000年を100とした場合、原材料費は251と2.5倍になった。中間財は117、最終財は86.特に最終財のうち耐久消費財は59。また2013年比でも、原材料費は17.0%増、中間財は5,5%増、最終財は2.8%増である。つまり、原材料比の値上がりを企業はなかなか価格に転嫁できず、付加価値を伸ばすことができないのだ。よって企業は、賃金を政府の要求通りに上げられないのである。そんな中で企業が勝ち残ろうとするのなら、スピードしかない。早くやればそれだけ人件費を圧縮でき、その分コストダウンできる。カンブリア宮殿を見ていても「どこよりも早い試作品を作る会社」「どこよりも早い印刷屋」などが出てくる。私のクライアントも新規事業は「速さ」を売りにし、実現する仕組みを築いた企業はいずれも成功している。迅速なサービスは、コストダウンを求める企業の切実な要求なのだ。
日本経営合理化協会主催の全国経営者セミナーでエコノミストの寺島実郎先生の講演を聞いた。その中で大変興味深いデータが2つあった。ひとつは、日本の株は誰が買ったかという話。野田総理の解散宣言以来上がり始めた株は、外国人投資家が15.7兆円の買い越し。対して日本人の機関投資家(企業)は5.9兆円、個人投資家は8.0兆円の売り越しだという。つまり、外国人は日本企業の株を買っているのだが、日本人は「もっと高くなるから買おう」とは思わずに、「ちょっと高すぎるくらいだから今のうちに売っちゃおう」と言って手放している構造だ。もし日本人が自分たちの株はもっと高い!と思って売らなければ、株価は18,000円ぐらいの水準にあるという。外国人に買い支えられた日本の株は今後、外国人投資家に魅力的な他の投資対象(BRICsや米国)が出てくれば一気に売られ、下がる可能性がある。15,000円付近で安定する株価を見て「日本経済力強く回復!」と誰かが言ってもそれは見た目だけのようだ。
7つの習慣を教えている先生の話を聞いた。大変感動したのでメモしておきたい。その先生は小中学生向けに塾でWin-Winを教えていた。受講生の中に障害を持った子がいた。その子は、地域内で最も荒れていると言われている中学に進学した。進学後、クラスで学級訓を作ることになった。すると、その子は自分から学級訓を「Win-Winにしよう!」と提案した。同級生はWn-Winが何かなんて知らなかった。そこで彼がそれを一生懸命教えた。そうしたところ、皆がその大切さに気がついた。そして、荒れた学校の中でりながら、そのクラスだけは苛めがないクラスになった…。先生はそれまで「自分の講義はあの人ほど上手くない」と他人と比較してしまい落ち込むことがあったという。が、この経験から「目の前の一人のために一生懸命になれば、影響力は広がる」ことに気がついた。以来、度の講義もそのことに集中し、「講義はいつだって一期一会」を胸に講師をしているという。コンサルタントと講師は本質的に違うが、その講師魂を見習いたいと思った。
外資系保険会社でトップセールスだった友人に驚くべき話を聞きた。彼は保険に興味のある人を集めてセミナーをする。そこで日本人がかけている死亡保険の平均が2800万円だと伝える。では、保険をかけた人の受け取り額の平均はいくらか?…178万円だという。なぜなら多くの人が賭けている65歳までに死なないから。では65歳までに亡くなる日本人は全体の何%か…となると2%だという。そしてほとんどの人が僅か2%になることを恐れて保険をかけ続けているのだ。こうした事実を示した上で、彼は保険を掛け捨てではなく増やすものにしてはどうかと提案する。掛け捨て型と貯蓄型とでは税金面も含め生涯収支が2000万円も違うとダメを押す。ここまで言うと、多くの受講者が「一度見てください」と保険証券を持ってくるという…と、ここまで聞いて私が一番驚いた話は、65歳までに2%しか死なないという事実だった。私の父はその2%に入っている。ああ、なんて残念なことなんだ!!
先週末に小泉元総理の演説を聞いた。原発0化に向けた話だった。フィンランドで核のゴミを捨てる地下400Mの、2km四方の工場を見学した話から、それほど捨てるのに困る原発に頼ることの異常性を説いた。そして、自然再生エネルギーの最新事情と、蓄電池や省エネ空調設備などの先端技術触れ、「ピンチをチャンスに変える。太陽、地熱、風力など、日本は無限にある自然をエネルギーに変える国になれる。原発ゼロ化に進む途中で自分が死ぬのなら死んでもいい」と語った。小泉さんは現在72歳。当初父親が死んだ65歳まで頑張ろう、その後は引退するつもりだった。が、震災を見て「自分にできることはあるのか?」と考えているうちに、使命感や情熱が湧いてきて元気がでてきたという。そして94歳まで現役を続けた尾崎行雄の言葉「自分の本舞台は将来にあり」を引用し、その決意を示した。自分の覚悟をこんなにも堂々と語れるものなのか…話の巧みさもあるが、その強い意志、迫力に感動した。
『永遠の0』を観ながらよく泣けた。特に、彼が仲間を守るために上官に反論し殴られるところや、自分を助けようとして危険な目にあった仲間を諭すようなところ…涙が止まらなかった。上司から見れば、部下は思うように動いてくれないものだ。「OK」と言えばいい場面で「NO」という。地味していればいいのに派手に振る舞い顰蹙を買う。もっと情を絡めた対応をすべきところに常識的なやり方を持ちこむ、PRすべきチャンスに引っ込んだまま何もしない…そんなジレンマばかりだ。主人公・宮部久蔵もそんな小さな考え方のズレに苦しむ。それも彼が直面していたのは生きるか死ぬか、国家のためか家族のためか、という問いだから、一つ一つの言葉が命懸けだった。彼の考え方は当初誤解された。が、後に正しく伝わり、共感した人々は彼の死後も、彼の家族を大事にする。宮部の姿は「いつかわかってくれるだろう」を信条とする、厳しく優しい上司と部下のあるべき姿だった。
映画の『永遠の0』を鑑賞した。昨年6月に原作を読んでから、ぜひ観たいと思っていた。誰かのために命を捨てる生き方は尊い。原作では、なぜ主人公・宮部は最後に特攻隊を選んだのかわからないままだと言われていたが、映画を観ていてわかったような気がした。送りだした何人もの教え子たちが死んでいくのに、自分だけが生き残ること=たとえそれが家族のためであっても、彼にはそんな自分が許せなかったのではないか。私も部下をリストラしたことがある。正確には私の上司がリストラしたのだが、止められなかった私も同罪だ。すると「他人を切って、お前はノウノウと残る。それで本当にいいのか?」と、しばしば自戒の念に襲われる「それが世の中だ」と言ってしまえば楽なのだが、日本人故か割り切れない想いがずっと残る。解決する方法は、自分で自分に始末を付けるしかない…。いつか死んでお詫びを…の文化は、自分のDNAにはまだ残っているように思う。
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