某社の社長には先代が残した番頭がいた。その番頭は公私混同が目立ち、社長が専務だった頃はいつも当時の社長であったお母さんに愚痴をこぼしていた。しかし、社長に赴任するとそれを言わなくなった。そんな困った番頭を使いこなしてこそ経営者である…と腹を括ったのである。すると見方が変わって接し方が変わり、衝突そのものがなくなったのだ。
老舗のA社長に部下を褒めて使う秘訣を聞いた。それは「3S+1S」だという。「3S=すごい!、さすが!、すばらしい」。そして「+1S」は、部下が「どうせ私なんか」とか「私、別にできなくてもいいのです」とか思わぬネガティブワードを言われ、どうにも褒めようがないときに使うという。それは、「そう来るか!」。それを聞いて思わず噴出してしまったが、一度使ってみようと思う。
社員が生き生き働いている店の加工場に案内していただいた。そこには従業員が書いた色紙が掲げてあった。「外注さんへ 一人一人、一つ一つがお店の宝です。ありがとう。(署名)」。この色紙を見ると、また、これを書いた人とその周りの人たちの優しい心根が伝わってくる。そしてそこにはいない外注さんたちがこの店のために熱心に働いている姿が目に浮かんできた。まとまりのある仲間なんだ。
リサイクルショップY店には店員たちによる大きな寄せ書きが掲げてあった。真ん中には1億円達成の文字。その右隅にひときわ大きな文字でこう書いてあった。「みんなとってもありがとう!!○○市でみんなと出逢えたことは生涯の宝物になりました!ずっと忘れない!わあの最高の宝物です!」。同店の店長の言葉だ。この言葉に泣けるのは業績の大小じゃない。他者と一緒にやり切ることを大切にしてくれるリーダーだからこそ泣けるのだ。
Y店の店長とは、竹内日祥上人のセミナーで出会った。その中で習った概念のひとつに「全体と部分の関係」がある。自分は全体の中の一人である。よって、その役割を果たす。しかし、それだけでは歯車に過ぎない。そんな一部を担う自分でも、全体に大きな影響を与えられる場面がある。これが「全体の部分の関係」で、自分が全体に好影響を与える存在だと信じられる根拠を与えることが主体性を引き出すのだ。
リサイクルショップY店の店員は正社員もアルバイトも今から3年先までのシートを書く。今後何が起こるのか、自分がどうなりたいのか、どうなっていくのかを書くのだ。大企業でも自分のキャリア設計を会社に望む声は大きい。会社の未来と自分の未来をリンクさせて夢を描き、それを店長と部下が共有し、店長がその実現を後押しする。ゴールに向かうためのサポートは、人の自主性を引き出す。
売上げを客数で割れば客単価が出る。GWのような人手の多い期間は、客数が増えるのでどうしても客単価が落ちる。問題はこれを「当たり前」と思わず、「ついで買い」を増やす仕組みをどう作るかだ。例えば、サッカー選手のカード、日本代表のDVD、サッカーのユニホーム、コミック『キャプテン翼』などを一箇所に集めてサッカーコーナーを作る。こうしたクロスセルを工夫するのも店員の仕事である。
リサイクルショップY店に専務がやってきた。店内を見渡した店長はひと言「この売り場、ドキドキしない」と言って帰っていった。専務の言う「ドキドキしない」は「お客様が望むものになっていない」ということ。そのひと言に店長は燃えた「ならば、すんごい売り場を作ってやる!」。このエピソードに専務の人使いも流石だと感じた。本当はあれこれ指示したいのだろうが口出さない。主体性を伸ばすには信じて見守ることが大事なのだ。
リサイクルショップY店の店長は、同社に入社してから自分の人生が変わったという。それまでは建設現場で人に使われる身。「どうせ自分なんて…」とマイナス思考だった。ところが同社にバイトで入ったとき、ある売り場を「あなたに任せます。好きなようにやっていいですよ」と任せられた。棚割り、商品の配置、照明、色など何でも自由だった。自分の意見に皆が賛同し、皆で売上目標を達成。それを皆で喜んだ。そのとき感じた「ウワッ」という感覚が店長を変えたのだ。
リサイクルショップY店の店長が部下に「この前採用した新人はちゃんと育っているか?」と尋ねる。部下は「ハイ、ちゃんと育っています」と答える。確認するとレジが打てるようになった、クレジットの処理ができるようになったという。が、店長から見ればそれは全然育ったことにならない。なぜならその新人は笑顔、態度、マナーなどがまだまだなのだ。店長は「真心を込めた接客ができるように人を成長させていくことが教育」だという。自分の手伝いをさせることが教育ではないのだ。