リサイクルショップY店の店長は、なかなか部下の動きに満足できない。挨拶ひとつ、お客の目を見ていえないのだ。こんなとき店長は「こっちの熱意が足りなかった」と反省する。曰く「100言って伝わらないのなら、200言えばいい。そう思えば自分はまだ半分しか言っていないと」。一般に、伝えることとコミュニケーションは違うというが、自分のモノサシで考えるのではなく、相手のモノサシで考えないと伝わらないのだ。
非常に生き生きとした人材が働いていると評判のリサイクルショップY店で、その育成の秘訣を聞いた。同店では朝礼・終礼に30分づつかけている。その場では失敗を共有する。別室に呼んで叱らず、人前で叱る。「一人の失敗はみんなの学び」として、同じことを起こさないようにするためだ。また、終礼では今日良かったことを振りかえり拍手する。良かったことで締めることで明日に繋がるからだ。
老舗のA社長は記憶力の向上で有名な小田全宏さんのアクティブブレイン協会を支援している。その理由が感動的だ。「わが国の自殺者3万人。しかし、24時間以内に死ねなかった人や、死に切れなかった人も含めれば100万人は自殺志願者がいると考えられる。彼らが自分に自信を持てるようになるといい…記憶力の向上は『こんな私にもできた』という自分を信じる根拠を作る。だから支援しているのです」。自分を信じる根拠作り。大阪のほめ達こと西村貴好さんも同じことを言っていたが、今一番大事なことだと思う。
ある会社の二世経営者を指導した人が、「この本を読め」と題名のみを伝えた本がある。果たして二週間後、その二世はその本を自分で買って読んでいた。そしてこの指導者に本の内容について質問をした。こうしてこの二世は自分に必要な答えを本の中に見つけた。が、多くの人は本を紹介されても本を買わない。かっても読まない。そういう人は学ぶ意欲が薄いので、誰からも教えてもらえなくなる。本一冊、素直に読むかどうかが人生の分岐点なのだ。
後継者には財務を読む知識が必要だ。財務諸表はPLとBSの組み合わせで読むことができる。PL×BSが○×○なら問題ない。○×●の会社は過剰な設備、投資などでBSが崩れている。その崩れを一刻も早く挽回する必要がある。●×○の会社はキャッシュリッチゆえに新事業をやるのが理想だが、関係のない事業を始めて大穴を空ける可能性がある。二世は自社がこの4つのどこに自社があるのかを認識し、財務の回復に手をかけなければならない。
部長が社長に「**したいのですが…」と進言したとき。社長は「お前はそういうけどな…ダメだ」といって自分の考えで判断し、部長に納得させることができる。が、自分が会長で後継者が社長の場合。「NO」だと思ってNOというのは簡単。しかし、それではこの会社がいつまで経っても新しい色に染まらない。「やってみろ!」と言い、知らんぷりをする。前に進むためには我慢することも大事なのだ。
老舗のB社長は、経営を息子に継がせるのが一番難しいという。なぜなら「息子のやりようは、面白くない」と思っても、決して手出しをしてはいけないからだ。もし親子で一緒に事業をやるようなら、息子の前に進む力は弱くなってしまう。先代の顔色見ながら事業をやっても面白いはずがない。そもそも先代が跡取りに「やらせられない」と思ったら事業は成り立たない。先代は何としても息子を信じて任せないといけないのだ。
老舗のB社長に理想の禅譲の時期を聞いた。社長は自分の経験から絶対に30代で交代すべきだといった。なぜなら、30代が一番動けるときだから。40代を過ぎると動きは落ちる。55歳を過ぎたら仕事をせずに遊んでしまう。30代なら、自分のブレーンを採用し、育てていくこともできる。20代の頃から動けるだけ動いて人脈を広げることもできる。頭で考えすぎず思ったら即行動し、失敗できることが30代承継の価値なのだ。
二世経営者には常に先代と比較される運命にある。最初は一生懸命真似ようとする。まねできる部分もあるしできない部分もある。真似のできない部分に苦しんだ二世は、やがてあんな人にはなれない。なりたくもない」と悟り、「先代と自分は違って当然」だと割り切る。そして、「自分流のやり方」に目覚める。多くの二世がこの過程を歩むが、二世に限らず守・破・離こそは人が育ち、強くなるプロセスだと思う。
二世経営者には共に会社を支えていく仲間が必要だ。仮にその仲間を先代が選び「○○さんと○○さんとでこの会社を支えていくように…」と遺言したとしても、先代にとって都合のいい部下が、二世のブレーンになるとは限らないのだ。よって先代はできるだけ早く後継者譲り、後継者自身がマイ・ブレーンを見つける時間を作る。そしてそれができるまで見守る。そういう禅譲がもっとも上手くいく。