凪の日々
■引きこもり専業主婦の子育て愚痴日記■
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集合住宅内の共有スペースでばったりTさんと会う。
「聞いたよ、異動なんだってね」と言おうとしたが、お互い「あ、」と言った後、黙って抱き合ってしまった。 「もうやだー暁さんってばー」とTさんがいきなり涙声になる。 「私、まだ言ってないのに皆知ってるのねー」と笑いながら鼻をすする。 うん、だって、それだけ皆には大事だし。
話そうとするも、言葉を探す前に、抱きしめてしまう。 何度も、何度も、「もう〜…」とお互い言いながら、互いに顔をうずめあう。 Tさんの細い体。もうすぐお別れ。
「あら、まずいところにきちゃった?」と別の階のFさん親子がやってきた。 「あらやだ、ばれちゃった恥ずかしい」「実はこんな関係なの」など、わけのわからない冗談を言いながら、鼻をすすり笑いあう。 子供達はわけもわからずニコニコ周りを走り回る。
あれこれ引越しの予定等を聞きつつ、「寂しくなるねぇ」とFさんが言う。 「寂しくなるなんて言わないで〜私はもう寂しいんだから」とTさんが涙を拭きながら笑う。
でもまだH君が幼稚園だからさ、幼稚園ママつながりで友達も出来るよ。 子供が小学生になったらもう親同士で知り合いになんかなる機会ぐっと減るしね。 そうそう、子供が小さいと親も知り合い作りやすいよね。 子供は学校や幼稚園ですぐ友達作れるけどさ、母親は友達作るの難しいよね。 そうそう。旦那は職場で子供は幼稚園や学校でいくらでも知り合い出来るけど、主婦は難しいよね。 幼稚園や学校で役員やれば知り合い出来るよ。子供会とかさ。 前向きに、前向きに、明るい話を。
あれこれ話しながら、「でもまだいるから!遊ぼうね!」とTさんが笑う。 ランチくらい行きたいよね。お花見は●日にしようか。
あぁそれにしても寂しくなるねぇ。 寂しいねぇ。 言わないで。それは言わないよ。
集合住宅内のTさん宅の異動が決まった。
同じ転勤族のHさん宅は今年も異動なし。 また一年間よろしく、と挨拶しあったけど。
Tさん宅の子供は二人とも男の子だし、歳も兄がアイの一つ下で弟がアユムの一つ上で見事にすれ違いというか、子供的には共通項が無かったけれど、親的には楽しい人だったのでかなり残念。
ちょっと天然が入った感じのTさんは、でもとても前向きで楽観的で楽しい人だった。 同じ天然系でも私はかなりネガティブな方なので、Tさんのリアクションはとても新鮮で、一緒にいてとても気持ちが救われる感じがあり、なのに微妙に私と感性がかぶる所もあって、密かに親近感を抱いていた。
引越しは来月頭。 集合住宅内のママ仲間で集まって送別会の相談をするも、日がないのと、それぞれの予定調整が中々難しい。 せめて子供が春休みに入る前に分かっていれば、学校や幼稚園に行っている間にランチでもできたのにねぇと皆で残念がる。
とりあえず、お店を予約してとかは、子供入れて総勢20名なので大変だし。 近所の公園でお弁当を持ち寄って花見にしようか、と話す。 花は咲いてないかもしれないけど仕方ないね。 子供達は勝手に遊んでいればいいし、大人は座って話していればいいし。 そこで集合写真とろうよ。 それを色紙に貼って寄せ書きしよう。 スナップ写真も沢山とって。 デジカメで撮ればすぐプリントできるし。 皆で飲みに行こうって話も実行できずじまいだったね。 子供をみてもらえないと動けないしね。
あれこれ相談しつつ、合間に「さびしくなるねぇ」と誰かがつぶやく。 じゃぁ日にちはTさんに聞いてから。それにしてもさみしくなるねぇ。 お弁当は注文してもいいかもね。あぁでもいなくなるのってやっぱり寂しいねぇ。
東京出身のTさん夫婦。 今度の異動先は北陸だそうだ。 「あの家族の事だから、きっとスキーがんがんすべりまくるだろうね」 「いや、スノボよきっと」 「また運動神経ばつぐんのS君は物凄く上達するだろうね」
ポジティブでアクティブなTさん一家だから、誰もが嬉々として雪国生活を楽しむ彼らの姿を思い浮かべ笑う。 そして誰かが「あぁでもさみしくなるねぇ」と続ける。
春だものね。仕方ない。 お花見、晴れるといいな。桜が咲くといいな。
暁
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