| 2024年12月29日(日) |
ベイビーガール、聖なるイチジクの種 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ベイビーガール』“Babygirl” 2018年10月紹介『ヘレディタリー 継承』から2024年7月紹 介『シビル・ウォーアメリカ最後の日』等々、話題作、問題 作を提供し続けている映画会社A24がオスカー女優ニコール ・キッドマンを迎えて創り出した衝撃の作品。 キッドマンが演じるのは巨大物流会社のCEO。自らその会 社を創業し、叩き上げで今の地位を築き上げた人物だ。その 夫は評価の高い舞台演出家のようだが、円満に見える夫婦関 係には彼女の性癖で少し不満も感じている。 そんな女性の前に就職を希望する大学生のインターンが現れ る。そして若い男性の姿に少し気を惹かれた女性CEOは、 男性の巧みな誘導で瞬く内に欲望の淵に溺れて行ってしまう ことになる。その結末は…。 脚本と監督は1975年オランダ生まれで、2000年代にはポール ・ヴァーホーヴェン監督作品への出演やトム・クルーズとの 共演もあるという女優出身のハリナ・ライン。『氷の微笑』 が好きだったという監督の想いが描き出した作品だ。 共演は2024年1月紹介『アイアン・クロー』などのハリス・ ディキンスン。他に2023年11月紹介『TALK TO ME/トーク・ トゥ・ミー』などのソフィー・ワイルド。そしてアントニオ ・バンデラスらが脇を固めている。 女性の監督は男性にも理解できる様に描いたとしているが、 男性の身としてはいろいろ悩むところも多いかな。でもまあ これが女性の感覚なのだろうということは理解できる。それ に結末には安心もできたというところだ。 それにしてもオスカー女優がよくぞこの作品にという感じも するが、女性監督への信頼というかその将来性にも期待を持 っているということなのだろう。キッドマンが本作への出演 の決め手にしたという監督の前作も観たいものだ。 ただ展開としてCEOの部屋に様々な人物が自由に入ってこ れるのは、大会社のセキュリティーとしてはどうなのかな。 オープンな設計で多くの人の監視下にあるということはある が、ここは少し違うような感じもした。 なお劇中に「東京の“カワサキ”」という台詞が出てきて、 関東在住者としてはニヤリとしてしまうが、“カワサキ”は オートバイ会社のことなのかな。それを踏まえた字幕の表記 はよく考えて付けられていたものだ。 公開は2025年3月28日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷 他にて全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ オの招待で試写を観て投稿するものです。
『聖なるイチジクの種』“دانهی انجیر معابد” 2017年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で最優秀作品賞を 受賞、2020年ベルリン国際映画祭で金熊賞受賞のイラン人監 督モハマド・ラスロフが制作し、2024年カンヌ国際映画祭で のプレミア上映では12分間のスタンディングオベーションと 審査員特別賞が贈られた作品。 物語の基になったのは2022年にテヘランの大学で起きた警察 による女子学生謀殺事件。これはヒジャーブの着用強制に反 対する学生運動の弾圧の中で起きた事件で、これによって民 衆運動に火が付いたとも言われているものだ。 そして物語はその事件に巻き込まれた一家を描いて行く。そ の一家の父親は革命裁判所に調査官として勤務し、将来は判 事への道もあるとされていたのだが…。そんな一家の住居に 娘の友人が警察に撃たれて担ぎ込まれてくる。 この状況で友人の身柄は家族の許に返されるが、程なくして その友人が警察に連行されたという話が飛び込んでくる。そ の一方で父親に支給された護身用の拳銃が紛失。その行方を 巡って親子の間にも疑心が生じ始める。 出演は監督の2017年作にも出演していたミシャク・ザラと、 俳優、監督としても活動して学生運動にも明確に支持を表明 していたことから実刑判決も受けているというソヘイラ・ゴ レスターニ。 なおカンヌ国際映画祭でのプレミア上映には、過去の作品で の政府批判によってパスポートを取り上げられていた監督は 秘かに自国を脱出して出席したが、俳優の2人は出国を拒否 されて参加は叶わなかったそうだ。 映画にはスマホで撮影されたと思われる弾圧の模様を写した 映像も挿入され、それはかなりの衝撃を受けるものになって いる。おそらくそれだけでもこの作品は政府の弾圧の対象と なるものだろう。 そんな衝撃の作品だが、映画はそこに巧みにエンターテイン メントの要素も持ち込んでいるもので、その辺に監督の非凡 さも感じさせる。特に後半のヒッチコックばりの演出や結末 の意外性には喝采もしてしまう作品。 167分の上映時間に全く長さを感じさせない見事な作品だ。 公開は2025年2月14日より、東京地区はTOHOシネマズシャン テ他にて全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ギャガの招待で試写を観て投稿 するものです。 * * 今年はこれでおしまいです。みな様良いお年をお迎えくだ さい。
| 2024年12月22日(日) |
ウィキッドふたりの魔女、あの歌を憶えている、Flow |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ウィキッドふたりの魔女』“Wicked: Part I” L・フランク・ボームが1900年に著した物語『オズの魔法使 い』。その物語に想を得てアメリカの作家グレゴリー・マグ ワイアが1995年に発表した小説を基に、2003年に初演された ミュージカルの映画化。 始まりは悪い魔女が死んだという告知。これは『オズの魔法 使い』でのドロシーの行いによるもので、これによって元の 物語との繋がりが明示される。そしてここから本作のストー リーが展開されて行く仕組みだ。 それは告知に現れた良い魔女グリンダに対する、オズの住人 マンチキンの子供からの「グリンダは悪い魔女と友だちだっ たの?」という問い掛けで、そこからグリンダと西の魔女エ ルファバの来歴が語られることになる。 出演は2020年2月23日付題名紹介『ハリエット』でオスカー 候補になったシンシア・エリヴォと、グラミー賞受賞者のア リアナ・グランデ。他にジョナサン・ベイリー、イーサン・ スレイター、マリッサ・ボーディ。 さらにボーウェン・ヤン、ブロンウィン・ジェームズ、キア ラ・セトル、アンヂ・ナイマン、コートニー・メイ・ブリッ グス。そしてミシェル・ヨー、ジェフ・ゴールドブラムらが 脇を固めている。 監督は2018年9月2日付題名紹介『クレイジー・リッチ!』 などのジョン・M・チュウ。製作はマーク・プラットとデイ ヴィッド・ストーン。この2人は舞台版を立ち上げから手掛 けた生みの親だ。 物語は才能はあるが異形の女性と、才能は劣るが華やかさを まとう女性の葛藤を描くもので、そこには人種など様々な差 別を想起するような表現も登場する。それらが現代に評価さ れる所以でもあるのだろう。 因に製作者の2人は、上演時間に限りのある舞台では全てを 描き切ることができなかったとしており、その思いを存分に 注ぎ込んだ映画化ということだ。このため上映時間は今回公 開の“Part I”だけで2時間41分、さらに続くものだ。 とは言えかなりの長尺だが、実は劇中にはたっぷり時間を掛 けた群舞などが随所に登場してこの辺にはインド映画の影響 も感じさせた。でもまあ観ている間はあまり時間を感じさせ ず、楽しんで観させてくれたものだ。 そしてそこにILMが手掛けたVFXが投入され、一面では 『LOTR』を髣髴させるファンタシーワールドが展開され る。これは舞台では描き切れない。それも見どころと言える 作品だろう。 公開は2025年3月7日より全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社東宝東和の招待で試写を観て投 稿するものです。
『あの歌を憶えている』“Memory” ジェシカ・チャステイン、ピーター・サースガード共演によ るヒューマンドラマで、2023年の第80回ヴェネチア国際映画 祭にてサースガードがコンペティション部門の男優賞を受賞 した作品。 チャステインが演じるのはシングルマザーの介護士。娘との 関係は問題ないようだが、内面的にはいろいろトラブルを抱 えているようだ。そんな女性が同窓会のパーティで男性と出 会うが、彼は若年性認知症だった。 その出会いは、最初は誤解から始まったが、やがて誤解も解 けて関係が深まる。しかし認知症の彼には様々なトラブルも 付きまとう。そしてそのトラブルが彼女の別の問題も引きず り出す。 2人以外の出演者は、2015年2月紹介『バードマン…』など のメリット・ウェヴァー、モデル出身で本作が映画デビュー のブルック・ティンバー、2018年8月5日付題名紹介『嘘は フィクサーのはじまり』などのジョッシュ・チャールズ。 さらに『怪盗グルー』のシリーズで主要キャラクター、アグ ネスの声優を務めるエルシー・フィッシャー。そして2018年 12月紹介『サスペリア』などのジェシカ・ハーパーらが固め ている。 脚本と監督は2018年4月22日付題名紹介『母という名の女』 などでカンヌ映画祭の常連、2020年には『ニューオーダー』 という作品でヴェネチア国際映画祭金獅子賞も受賞している メキシコの俊英ミシェル・フランコが手掛けている。 若年性認知症の話では、2005年7月紹介『私の頭の中の消し ゴム』や、同年10月紹介『博士の愛した数式』など過去にも 秀作は多いが、本作ではさらに当人だけでなくその周囲にま で話を膨らませたところは新機軸と言えるだろう。 しかもそれらがいずれも記憶に絡む話というところは脚本家 =監督の巧みさも感じさせるものだ。そしてそれらが意表を ついて驚くような展開で描かれて行く。正しく映画の醍醐味 と言えるような作品だった。 因にタイトルの「あの歌」はプロコル・ハルムによる1967年 のヒット曲『青い影』だが、僕は今まで曲は知っていたが歌 詞までは知らなかった。それが本作では歌詞の字幕付きで流 れるが、まさかこんな歌とは…。それも驚きだった。 公開は2025年2月21日より、東京地区は新宿ピカデリー、Bu nkamura ル・シネマ渋谷宮下他にて全国順次ロードショウと なる。 なおこの紹介文は、配給会社セテラ・インターナショナルの 招待で試写を観て投稿するものです。
『Flow』“Straume” 2024年カンヌ国際映画祭・ある視点部門に出品され、同年の アヌシー国際アニメーション映画祭では審査員賞と観客賞を 受賞したラトビア出身のアニメーター、ギンツ・ジルバロデ ィス脚本、監督、音楽による作品。 恐らく近未来と思われる地球の物語。主人公はとある森の中 で1匹で暮らしていた猫。時には野犬の群れに追い掛けられ ることもあるが、そこは機転を利かせて逃れたり、危険はあ るがどうにか生き延びてきたようだ。 ところがその森に大洪水が襲い掛かり、上昇する水位で木々 も梢まで水没する事態となる。それでも猫は流れてきた船に よじ登り、何とか難を逃れる。そしてその船には猫を慕う若 い犬やキツネザル、カピバラ、鷺なども乗り込んでくる。 やがてその船は水流に乗り、人間の痕跡が見える島や巨大な 建物の並ぶ廃墟へと漂って行くが…。 共同脚本にプロデューサーでもあるマティス・カジャ、脚色 にロン・ディアンという名前も並んでいる作品。体裁はファ ンタシーだが、SF的にもいろいろと面白い考察ができる作 品だ。 骨子としては動物たちが協力して困難を克服して行く友情物 語といった感じだが、そこには当然人種差別のような意味合 いも含まれるだろう。特に犬だけの船との遭遇などには考え てしまうところもある。 とは言え全体はファンタスティックな世界での冒険物語とい う感じで、それはなかなか面白いものでもあった。ただ痕跡 だけで登場しない人類の行方には勘ぐってしまうところもあ るもので、滅亡したのかそれとも…。 気象変動のことなどを考えると、もしかすると太陽の変調で 人類は地球を見捨てて動物だけが残されたのか? 主人公ら の船がノアの箱舟にも見えて、それを暗示している可能性も 考えてしまった。だとすると悲しいお話かもしれない。 閑話休題、エンドクレジットを観ていたらStudio Dogsとい う項目があって単語の名前が並んでいたが、Catsの項目は見 つからなかった。劇中の猫の動きはぎこちなくも感じたが、 監督は犬派かな? 猫は擬人化で仕方のない面もあるが。 いろいろ考察できて面白い作品だった。 公開は2025年3月14日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷 他にて全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ファインフィルムズの招待で試 写を観て投稿するものです。
| 2024年12月15日(日) |
恋脳 Experiment、僕らは人生で一回だけ魔法…、ゴールドフィンガー巨大金融…、(報告)ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-完成報告会 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『恋脳 Experiment』 1996年生まれ、東京藝術大学大学院映像研究科アニメーショ ン専攻修了の岡田詩歌監督が、大学院修了制作の作品でPFF アワード2021審査員特別賞を受賞。それにより獲得したPFF スカラシップの権利を活用して制作された作品。 主人公は幼い頃にはお姫様ごっこが好きだった女性。映画は 彼女の幼児期から始まり、中学生での恋愛?経験が綴られて から美術大学に通う大学生時代、さらに社会人になってから の恋愛事情などが語られる。 そこにはかなり打算的な話もあるし、逆に相手側の都合よさ が強調されているようなものもある。それらは現代の若者事 情ではアルアルなのかもしれないし、昭和世代の自分の感覚 からは少しずれている感じのものもある。 でもまあ全体としては今も昔もあまり変わらない恋愛の様子 が描かれているのかな。特にあまりドロドロした状況がない のは観ていてほっとする感じでもある作品だった。しかもそ こにちゃんと擽りがあるのは大したものだ。 出演は2023年3月紹介『忌怪島/きかいじま』などの祷キラ ラと、2019年8月4日付題名紹介『左様なら』で祷と共演の 平井亜門。さらに2024年10月紹介『敵』などの中島歩。 他に河井青葉、大月美里果、佐藤和太、二見悠、中山雄斗、 門田宗大、関谷翼、小林リュージュ、小野まりえ、川郷司駿 平、佐藤京、中島多羅らが脇を固めている。 作品はエピソードごとに副題がつくオムニバスのような構成 だが、ブツ切れな感じはしないし、それなりの流れもあって 滑らかに観られた。でもまあ各エピソードは今様という感じ かな。それなりにドライなのも良いのかもしれない。 たださすがの東京藝術大学というか、中で演じられる作品や パフォーマンスは完成度が高くて、ある種の本物感があるの も面白かった。特に主人公の作り出す造型やパフォーマンス は見ごたえもある感じがした。 これらは監督が作り出しているのだろうし、それを含めて面 白い才能の監督が出てきたという感じもした。 PFF スカラシップは過去には橋口亮輔、李相日、荻上直子、 内田けんじ、石井裕也、工藤梨穂らの俊英を輩出しており、 この監督にも期待が持てそうだ。 公開は2025年2月14日より、東京地区は新宿シネマカリテ他 にて全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ストロールの招待で試写を観て 投稿するものです。
『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』 2024年3月に放送作家を廃業した鈴木おさむが2019年初演で 続けてきた舞台の朗読劇を、共同テレビジョンで多くの連続 ドラマを手掛けてきた木村真人の劇場長編映画初監督として 映画化した作品。 登場するのは田園の広がる村に暮らす4人の男子。内3人は 幼稚園からの同級生だが、1人は心臓に障碍を持つ虚弱体質 で小学生から仲間に加わった。そんな4人は分け隔てなく協 力して無事に18歳になるまで歩んできたようだ。 その4人が18歳を迎える年の初めに村の重鎮に呼び出され、 村の秘密を告げられる。それは18歳から20歳までの2年の間 に1回だけ魔法が使えるというもの。ただしそれは人の生命 に関るものであってはならないという縛りもあった。 そしてその縛りが破られた場合には、村を大きな災害が襲う という警告も告げられる。しかしそれは村に様々な影響も及 ぼしていた。そんな中で4人はどんな事態で魔法を使うこと になるのか…。 出演は“FANTASTICS”の八木勇征、“インナージャーニー” の櫻井海音、“IMP.”の椿泰我。それに『ウルトラマンタイ ガ』の井上祐貴。さらにカンニング竹山、阿部亮平、馬渕英 里何、笹野高史、田辺誠一らが脇を固めている。 舞台、ましてや朗読劇というのは表現自体に様々な制約があ る訳で、それを観客が想像などで補って楽しむことが醍醐味 だと思う。テレビは逆にその制約で観客は一歩退いて楽しむ ことになる。 それに対して映画は、ある種の没入感で観客は映像と一体に なって楽しむことができる。その場合に観ているものに違和 感があると、それは一気に楽しめなくなるし、観る価値も失 わせてしまう。 この作品にはそんな違和感が随所に感じられてしまった。そ れは物語の設定にもあるが、言ってしまえばダム建設への反 対運動の顛末などはもっと詳しく提示してくれないと、はあ そうですかとはならないもののように思える。 展開を大きくしてしまった分、何か全体的に深みというか厚 みが足りなくて、その点が物足りなく感じられてしまった。 鈴木氏にはこれに発奮して、さらに別の作品を観せてくれる ことを期待したいものだ。 公開は2025年2月21日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷 他にて全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ポニーキャニオンの招待で試写 を観て投稿するものです。
『ゴールドフィンガー巨大金融詐欺事件』“金手指” 2008年8月紹介『レッド・クリフ』などのトニー・レオンと 2024年2月紹介『流転の地球−太陽系脱出計画−』などのア ンディ・ラウが、2003年『インファナル・アフェア�掘抂瞥� の再共演を果たした作品。しかも脚本・監督は『インファナ ル・アフェア』3部作の脚本を手掛けたフェリックス・チョ ンが担当した。 物語の始りは1970年代の後半。東南アジアで事業に失敗した 華僑の男が香港に流れ着く。ところがこの男、香港で二束三 文とされていた土地の転がしに協力し、その成功に味をしめ た男は香港の財閥を手玉に取り始める。 そして1980年代、愛人の名を冠した巨大金融グループを立ち 上げた男はさらに大掛かりな金融詐欺へと乗り出す。しかし その男の背後を汚職対策独立委員会(ICAC)のエリート捜査官 が追い始めていた。 やがて2人の対決はそれぞれの家族も巻き込む壮絶な戦いへ と進んで行くが、そこには歴史の影も落ち始めていた。 共演は元アイドルユニット“Twins” のシャーリーン・チョ イ、2006年2月紹介『SPL狼よ静かに死ね』などのサイモ ン・ヤム、2020年『レスキュー』などのカルロス・チェン、 2020年1月紹介『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』 などのアーロン・クォックらが脇を固めている。 題名は映画の中でもミダス王の説話が語られており、正に触 るものを全て黄金に変える金融の闇が語られているものだ。 因に物語は実話に基づいているそうで、1980年代のバブル期 の香港はこんなものだったのだろう。 ただし男を追うエリート捜査官はフィクションのようだが、 登場する汚職対策独立委員会は実在のもので、こんな出来事 が起きていてもおかしくはないようだ。特に金融グループの 顛末はほぼ実話とされている。 それにしても結末の呆気なさと言い、正に時代の流れに押し つぶされて行く男の姿が描かれるが、その背景にあったもの が今も続いている香港の現実を重ね合わせると、何とも言え ない気分にもさせられる作品だった。 2時間越えの作品だが、2大スターの共演がしっかりとそれ を支えて堪能できた。 公開は2025年1月24日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷 他にて全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社カルチュア・パブリッシャーズ の招待で試写を観て投稿するものです。 * * 記者会見 『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-完成報告会』 2025年2月21日公開予定の作品の記者会見及び映画上映の 際に行われる新たなシステムの体験会を見学してきた。 まず物語の舞台はRap Battleの勝者によって社会が動かさ れているという世界。そこは現在チュウオウ・ディビジョン の「言の葉党」によって支配されているようだ。 その覇権を目指して各地を勝ち抜いた6組のラッパーたち がBattleを繰り広げる。そしてその勝者が「言の葉党」と対 決し、さらにその勝者が次の支配者となる。 なお実際の物語にはRap Battleの勝者が世界を支配するに 至る設定や、6組のラッパーたちの相関図などいろいろな要 素が絡み合っているようだ。 とは言え映画では、イケブクロ、ヨコハマ、シブヤ、シン ジュク、オオサカ、ナゴヤの6つのディビジョンのチームが 登場し、まずはタイマン、続いて巴戦へと進められる。 そして一般公開では、これらのBattleの勝者を観客が投票 で決定し、それによって以降の展開が変わるというシステム が使用される。会見ではこの体験も実施された。 それは事前にスマホのアプリをダウンロードして、所定の タイミングでスマホの画面をタップするものだが、その制限 時間が意外と短くて僕は最初の投票を失敗してしまった。 でもまあ若い人なら難なくやれるのだろうな。そんな感じ で世界初とされる映画館での双方向の影響が可能になったと されるものだ。 なお最初の3回のタイマン戦で分岐の数は2*2*2=8、 次の巴戦の分岐の数は3、そして最後の戦いの分岐の数は2 なので全体の分岐の数は8*3*2=48。 ただし映画の結末は各チームが勝利の場合の7通りだが、 映画の制作は48通り行われたとのこと。観客は全て見るのも 至難だが、多数決では好みの結末も難しそうだ。 そんな話題性も満載の作品になりそうだ。 なおこの紹介文は、配給会社TOHO NEXTの招待で会見を観 て投稿するものです。 * * なお今週はもう1本試写を観ているが、主な情報が解禁前 ということなので、今回は紹介を割愛します。
| 2024年12月08日(日) |
室町無頼、映画を愛する君へ、おんどりの鳴く前に、嗤う蟲、愛を耕すひと |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『室町無頼』 2023年直木賞受賞の垣根涼介が2016年に発表した原作から、 2024年2月紹介『あんのこと』や2020年1月紹介『AI崩壊』 などの入江悠脚本/監督で映画化した作品。なお本作に関し ては2024年2月に記者会見の報告もしているが、その作品が 完成したものだ。 物語の背景は室町時代。登場するのは歴史書に1回だけ名前 が出てくるという蓮田兵衛。蓮田の名は寛正三年の徳政一揆 で大将だったというもの。それまでの一揆はただの暴動だっ たが、この時初めて組織戦が行われたという。 その蓮田に対するのは骨皮道賢。こちらは複数の史書に名前 があるようだが、蓮田との交流の記録はない。しかし同時期 に出自が似た境遇となれば、このような物語も生まれたかも しれない。そんな見事なフィクションの世界だ。 そこに天涯孤独の若き剣士や高級遊女などを絡めて、後に戦 国となる時代の幕開けを告げる応仁の乱、その前夜の物語が 展開される。 出演は大泉洋、堤真一、長尾謙杜(なにわ男子)、それに松本 若菜。他に柄本明、北村一輝。さらに般若、武田梨奈、水澤 紳吾、遠藤雄弥、前野朋哉、中村蒼らが脇を固めている。 大泉洋に関しては2015年『駆込み女と駆出し男』の記者会見 での振る舞いで極めて印象が悪いものだが。本作は同作以来 の時代劇かな。でも刀を使った殺陣を演じるのは今回が初め てだったようで、それは良く演じられていた。 その殺陣シーンは東京のアクション監督・川澄朋章と京都の 殺陣師・清家一斗の競作だそうで、大泉、堤を始め長尾の棒 術使いも見応えがあった。特に長尾はかなり長尺のシーンも あってワンカット風のその演出も見事だったものだ。 さらに壮大な爆破シーンには東映京都撮影所の職人芸と、東 映アニメーションによるVFXが加味されたということで、 これも中々の見ものになっている。正に東映時代劇の復活と いう感じもする作品だ。 未曾有の天災に伴う飢饉(物価高)、さらに疫病の蔓延など、 現代に重ねることも容易な物語。その一方で公家たちは民か ら集めた税金で優雅に庭園造り(万博・神宮外苑の再開発)な どを楽しんでいる。それに対して遂に民衆が決起する。 さすが入江悠監督という感じの作品だ。 公開は2025年1月17日より全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社東映の招待で試写を観て投稿す るものです。
『映画を愛する君へ』“Spectateurs!” フランスの国立映画学校で学び、1991年のデビュー作『ニ十 歳の死』でジャン・ヴィゴ賞を受賞したアルノー・デプレシ ャン脚本、監督による自伝的要素の強い映画史作品。 主人公は6歳の時に祖母に連れられて初めて映画館に行き、 そこで映画の魅力に憑りつかれる。そして学生時代は映画部 に所属し、卒業後は評論家を足掛かりに映画監督の道へと進 んで行く。 そんな男性の成長が、無声映画から現代までの数多の映画ク リップと共に綴られる。そこには1964年の『ファントマ危機 脱出』から2008年の『フローズン・リバー』まで、僕自身の 映画歴にも重なる作品も多く登場する。 出演は、主人公の各年代を演じるルイス・バーマン、ミロ・ マシャド=グラナー、サム・シェモール、それにサリフ・シ セ。他に過去の作品で監督の分身の役柄を演じたマチュー・ アマルリクが彼自身の役で登場する。 挿入される映画は総数51本。そこには世界最初の映画とされ る1896年のリュミエール兄弟作品『ラ・シオタ駅への列車の 到着』から1927年アベル・ガンスの『ナポレオン』など歴史 的な作品も登場。 その一方で1988年『ダイ・ハード』や1993年『クリフ・ハン ガー』など、普通の映画史では出てこないような作品も散見 される。正に監督自身が愛した映画たちが並べられているよ うだ。 もちろんその中には、2022年4月紹介『映画はアリスから始 まった』のアリス・ギイやアルフレッド・ヒッチコック、イ ングマール・ベルイマンなど歴史を語るに相応しい作品もあ るが、僕には意味不明の作品もあった感じだ。 結局の話、これらの作品は監督自身の映画体験を綴っている もので、それに共感できれば評価も容易いが、映画の楽しみ 方は各自異なるもので、僕個人的には何か押し付けられてい るような感じも持ってしまった。 ただ映画体験の浅い人にはこれも映画の見方を知る上で価値 があるかな。そんな一つの見方を教えてくれる作品にはなっ ているのだろう。とは言うものの最後に『SHOAH ショア』の 話が延々と出てくるのにはまいったが。 公開は2025年1月31日より、東京地区は新宿シネマカリテ、 ヒューマントラストシネマ渋谷、UPLINK吉祥寺他にて全国順 次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社アンプラグドの招待で試写を観 て投稿するものです。
『おんどりの鳴く前に』“Oameni de treabă” ルーマニア・モルドヴァ地方の寒村を舞台にしたブラック・ コメディ。ルーマニアとブルガリアの合作で、ルーマニアの アカデミー賞では6冠に輝いたという作品。 主人公は都会の勤務も経験した警官。その主人公が出身地の 村で果樹園の経営を夢見、街に所有していたアパートを引き 払ってその資金に充てることを考える。そんな主人公には村 での勤務で、若い見習い警官の部下もいたが…。 その村は人格者の村長の許で過疎化の進む地方の中でも人口 が減らないとされており、地方社会の模範ともされていた。 ところがそんな村で事件が起きる。その捜査を見習い警官が 進めようとするが、主人公はそれを諫め続ける。 その裏には村の歴史に基づく因習があったが、さらにそこに は主人公も知らない村の秘密があった。 出演はルーマニア・アカデミー賞で主演男優賞受賞のユリア ン・ポステルニク、同助演男優賞受賞のヴァシレ・ムラル。 他にアンゲル・ダミアン、ダニエル・ブスイオク、クリナ・ セムチウク、ヴィエタリエ・ビキルらが脇を固めている。 監督は同監督賞受賞のパウル・ネゴエスク。1984年生まれの 監督は2016年には自身の長編第2作で同年のルーマニア興行 記録第1位にも輝いているそうだ。なお本作は他に脚本賞、 編集賞、作品賞にも輝いている 映画の宣伝チラシにはタランティーノの名前が挙がっている が、僕は1996年『ファーゴ』のコーエン兄弟の思い出してい たかな。1996年の作品も警官が主人公で、田舎が舞台だし、 雰囲気も似ている感じがした。 コーエン兄弟では弟イーサンの『ドライブアウェイ・ドール ズ』を2024年3月に紹介しているが、どの作品も社会の規範 をちょっと外れてしまった人たちの姿を温かい目で見ながら 描いている。本作にもそんな目線が感じられた。 いろいろな社会の柵に巻き付かれながら、それでも懸命に生 きている。そんな姿が愚かしくも優しく描かれた作品だ。そ して結末は、これはかなりぶっ飛んだ感じの展開だが、これ はこれで納得のできる巧みな作品でもあった。 公開は2025年1月24日より、東京地区は新宿シネマカリテ、 ヒューマントラストシネマ有楽町、UPLINK吉祥寺、さらに京 都シネマ他にて全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社カルチュアルライフの招待で試 写を観て投稿するものです。
『嗤う蟲』 2012年3月紹介『先生を流産させる会』や2024年3月紹介 『毒娘』など内藤瑛亮の脚本を、2022年5月紹介『ビリー バーズ』や2022年11月紹介『恋のいばら』などの城定秀夫 監督で映画化した作品。 舞台は日本のどこかの田舎。麻宮村というその田舎にスロー ライフに憧れた若い夫婦が引っ越してくる。妻はイラストレ ーターでリモートワークが可能。夫は脱サラで無農薬農業を 目指しているようだ。 そんな夫婦はインスタグラムで「#田舎移住」をアピールす るなど、田舎暮らしを満喫していたが…。そんな夫婦に村の 顔役の自治会長や近所の住民がちょっかいを出し始める。特 に隣家の夫婦にはちょっと問題があった。 それでも健気に田舎暮らしを始めた夫婦の前に、厳しい村の 「掟」が立ちはだかる。それは悲惨だった村の歴史にも根付 いたものだった。しかもそれが若い夫婦を巻き込む事件に繋 がって行く。 出演は、元乃木坂46メムバーで2020年2月紹介『水曜日が 消えた』などの深川麻衣と、2023年8月紹介『市子』などの 若葉竜也。それに2009年4月紹介『色即ぜねれいしょん』な どの田口トモロヲ。 他に松浦祐也、片岡礼子、杉田かおる、中山功太らが脇を固 めている。また音楽を『恋のいばら』などのゲイリー芦屋が 担当している。 実は物語の背景にある「村の歴史」というのが水害で、その 復興のために仕方なかったという状況説明がある。それが何 と直前に書いた『おんどりの鳴く前に』にもあって、しかも その後の展開もかなり似通った設定だった。 勿論それは偶然なのだけれど、こんな設定が作られる社会的 な背景はあるのだろう。それは多分政治不信ということでも 括れると思うが、そんな状況に日本もルーマニアも置かれて いるということかもしれない。 ただし完成された映画は全く違ったもので、上のルーマニア 作品がある種重厚なつくりであるのに対して、本作は田口ト モロヲの怪演が光る作品。その辺の作り方の違いにも面白さ が感じられた。どちらも快作だ。 公開は2025年1月24日より、東京地区は新宿バルト9他にて 全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ショウゲートの招待で試写を観 て投稿するものです。
『愛を耕すひと」“Bastarden” 2013年2月紹介『ロイヤル・アフェア/愛と欲望の王宮』の 主演マッツ・ミケルセンと、脚本・監督ニコライ・アーセル が再び手を組み、デンマークの作家 Ida Jessen が2020年に 発表した小説“Kaptajnen og Ann Barbara”を映画化した、 実話に基づくとされる作品。 時代背景は1775年。王族の血を引くが緋嫡子の主人公はそれ まで多くの人々が挑戦しては敗れた北部ヒース地帯の開墾を 申し出る。それは国王に敬意を表し、開墾に成功したら貴族 の称号を得るという目標のためだった。 そんな彼がやってきたのは正に不毛の地。しかし彼には軍役 の中で得たある秘策もあった。ところが開墾を始めた彼の前 に地元の領主と名乗る男が立ちはだかる。その土地は元より 国王のものであったのだが…。 そこに不吉とされる黒い肌のタタール人の少女や、悪辣な領 主の許を逃げ出して来た若い男女、さらには森に暮らす不法 集団なども加わって、不毛のヒース地帯の開墾を巡る闘いが 繰り広げられる。 共演は、デンマーク出身で2020年〜22年にはリドリー・スコ ット製作総指揮のSFシリーズに主演したというアマンダ・ コリン。本作で助演男優賞受賞のシモン・ベンネビヤーク。 2014年生まれで本作に大抜擢のメリナ・ハグバーグ。 さらにデンマーク王立美術院卒でプロダクションデザイナー としても活動するクリスティン・クタトゥ・ソープ。2022年 『ライダーズ・オブ・ジャスティス』という作品でもミケル センと共演しているグルタフ・リンらが脇を固めている。 また音楽を2013年2月紹介『ハッシュパピー』などのダン・ ローマーが担当している。 文明国とされる北欧デンマークにもこんな時代があったのだ と思わせる作品。つまりは日本映画の時代劇みたいなものだ が、異文化に接するという思いがしっかり無いと多少は面食 らうかもしれない作品だ。 しかもテーマが荒野の開墾だから、これはお気楽なアクショ ン時代劇を期待した人にははぐらかされる感じもしたかもし れない。実際に一緒に試写を観た人の中にもそんなことを言 っている声も聞こえてきた。 でもこれがその国の人にとっては英雄なのだし、その辺はし っかりと心して観るべき作品だろう。そういった意味で新た な知見の得られる作品だった。その意味では間違いなく面白 いし、知識が豊かになる作品だ。 公開は2025年2月14日より、東京地区は新宿ピカデリー他に て全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社スターキャット、ハピネットフ ァントム・スタジオの招待で試写を観て投稿するものです。
| 2024年12月01日(日) |
ゆきてかへらぬ、くすぶりの狂騒曲、アプレンティス ドナルド・トランプの創り方 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ゆきてかへらぬ』 大正期の詩人中原中也とその愛人で駆け出し女優だった長谷 川泰子、それに文芸評論家小林秀雄の関係を、2023年10月紹 介『ツィゴイネルワイゼン』などの田中陽造が脚色、2007年 5月紹介『サイドカーに犬』などの根岸吉太郎監督で映画化 した作品。 物語の始りは京都。古い家並みが続くその町で17歳の詩人と 20歳の女優が出遭う。やがて2人は東京へ旅立ち、東京では 詩人の才能を高く評価する評論家が2人を迎える。こうして 東京での3人の暮らしが始まるが…。 やがて3人の関係が縺れ始める。そしてそれは夭逝した詩人 の生涯に繋がって行く。そんな物語が、街並みを再現する大 掛かりなセットと、丁寧に演出された京都、東京の風情と共 に描かれて行く。 出演は2023年8月紹介『キリエのうた』などの広瀬すずと、 Netflix シリーズ『忍びの家』などの木戸大聖、2012年7月 紹介『ひみつのアッコちゃん』などの岡田将生。他に田中俊 介、トータス松本、瀧内公美、草刈民代、カトウシンスケ、 藤間爽子、柄本佑らが脇を固めている。 また音楽を2008年8月紹介『レッド・クリフ』などの岩城太 郎が担当。さらに撮影を儀間眞悟、照明を長田達也、美術を 原田満生と寒河江陽子、衣裳デザインを大塚満など、錚々た るメムバーがこの映画と若いキャストを支えている。 中原中也の自由詩に関しては、70年安保世代の自分としては 当時に話題にした記憶もあるが、それは混沌とした時代に生 きる現代の若者にも通じるところがあるかな。そんな気持ち にもなる作品だった。 結局は三角関係の愛憎物語なのだけれど、その頂点は女優な のか詩人なのか、しかもその結末が予想外の展開になって行 く。そんな不思議な物語が、見事に再現された大正期の風景 と共に描かれる。 正しく映画と言う感じの作品だった。それにしても1950年生 まれの根岸監督は70歳を超えているが、1990年代生まれの若 い俳優たちを相手によくぞこれを作り上げたという感じもし た。 公開は2025年2月21日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷 他にて全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社キノフィルムズの招待で試写を 観て投稿するものです。
『くすぶりの狂騒曲』 2014年に開場した「大宮ラクーンよしもと劇場」を背景に、 そこに送り込まれた芸人たち「大宮セブン」の活動を、吉本 興業も製作に加えて描いた実話に基づくドラマ作品。 現在の「大宮セブン」には「マヂカルラブリー」「すゑひろ がりず」「ジェラードン」などもいて、それなりの人気はあ るようだ。そんな中で主人公の「タモンズ」は最初期からの メムバーとされる。 しかしその発足時には観客0の日も頻繁にあり、会社からは 非難や悪口を浴びせられ、とても順調な活動ではなかった。 しかもそこにコロナ禍が襲い掛かる。そのため収入は激減、 主人公らはアルバイトを続けながらの活動となる。 そんな中から「すゑひろがりず」がM−1グランプリ決勝進 出を果たし、さらにR−1グランプリで野田クリスタルが優 勝、「マヂカルラブリー」がM−1グランプリで優勝など結 果が出始める。 しかし最初期からのメムバーの「タモンズ」には飛躍の切っ 掛けが掴めなかった。それでも藻掻き続ける彼らの姿が描か れる。 出演は2023年4月紹介『オレンジ・ランプ』などの和田正人 と、2012年3月などで紹介『サイタマノラッパー』の駒根木 隆介。他に2022年10月紹介『I AM JAM』では脚本、監督、主 演を務めた辻凪子。 さらに2023年4月紹介『渇水』に出演の永瀬未留、徳井義実 (チュートリアル)、2019年8月紹介『生理ちゃん』などの岡 田義徳らが脇を固めている。監督は立川晋輔、脚本は中村元 樹が担当した。 作品は「大宮セブン」の面々が総登場のものだが本人は出演 せず、全て俳優が演じているという仕掛け。それが「マヂカ ルラブリー」や「すゑひろがりず」など結構似ていて、「タ モンズ」の2人も宣材写真などを見ると似ているものだ。 ただ最近は前回紹介の『死に損なった男』などこの手のお笑 い芸人の話を多く見掛けるが、それぞれ映画の中でちゃんと 芸を披露してくれていたもの。それが本作ではドラマに集中 しているものだが、それは多少物足りないかな。 そのドラマも売れない芸人の話など今時どこででも聞かれる もので…。せっかく吉本興業が製作するなら、せめて主人公 の2人だけでも、もっとしっかりとしたお笑いを見せて欲し かった。 公開は12月13日より、東京地区は新宿バルト9、イオンシネ マ他にて全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社イオンエンターテインメント、 吉本興業の招待で試写を観て投稿するものです。
『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』 “The Apprentice” 2023年2月紹介『聖地には蜘蛛が巣を張る』などのアリ・ア ッバシ監督が、政治ジャーナリストのガブリエル・シャーマ ン執筆による脚本を映画化。次期大統領が全米での上映阻止 を画策したとされる作品。 時代は1970年代の初め。大学を出て父親の不動産業を継ぐこ とになったドナルド・トランプは、政財界の大物が集まる高 級クラブの最年少会員となり、そこで辣腕弁護士ロイ・コー ンと出会う。 そして弁護士に気に入られたトランプは、立ち居振る舞いや 政財界で生き残るための様々な手立てを伝授されて行く。一 方そのクラブでは将来の伴侶となるイヴァンナとの出会いも 果たすことになるが…。 出演は2023年12月紹介『ダム・マネー』などのセバスチャン ・スタンと、2013年1月紹介『ゼロ・ダーク・サーティ』な どのジェレミー・ストロング。さらに2007年4月紹介『ボラ ット』の続編に出たというマリア・バカローヴァ。 それに1990年代から活動を開始し、1996年にはジェーン・カ ンピオン監督作品で全米批評家協会賞を受賞した2004年6月 紹介『16歳の合衆国』などのベテラン、マーティン・ドノヴ ァンらが脇を固めている。 映画は政治問題化するような内容のものではないが、個人的 にはかなり恥ずかしいかな。だからと言って公的に上映阻止 を出来るようなものではない。単にトランプの横暴というレ ヴェルの問題で、それは傍目には笑えたものだ。 そんな作品だがこの映画を観ていて気になったことが一点、 映画の後半に差し掛かった辺りのパーティの場面で、トラン プが「アキオサン」と呼びかけてその人物に近付いて行こう とするシーンがあった。 このシーンでアキオサン自身は写らないのだが、はて?これ は誰だろうということだ。ここで僕が思い付くのはソニーの 盛田昭雄氏。この当時はSONY of America の立ち上げ時期で 盛田氏はアメリカで陣頭指揮を執っていた。 つまりこの時点で盛田氏はトランプとファーストネームで呼 び合うほどの仲だった訳で、その後のソニーのアメリカでの 躍進の基礎が築かれた切っ掛けが判る中々のシーンだったの かもしれない。 日本人としてはそんなことも気になる作品だった。 公開は2025年1月17日より全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社キノフィルムズの招待で試写を 観て投稿するものです。
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