せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2005年06月30日(木) 「離婚弁護士2」

 録画しておいた最終回を見る。「タイガー&ドラゴン」は録画に失敗したけど、こちらはだいじょぶ。
 前回との2回連続で(その前にもフリがあったから計3話か)、逆セクハラの杉本彩が会社社長武田真治とのたたかいのと、宇梶剛士の妻・長野里美に天海祐希が不倫を訴えられる話が同時進行。
 前回は話のひろがりっぷりにどうなることやらと思ったのだけれど、見事にまとめた最終回。メインキャスト全員に見せ場をつくって、大団円でしめくくる脚本の腕の見事さに感動。戸田恵子、玉山鉄二も、ひさしぶりにちゃんとした芝居をさせてもらって光ってる。
 それにしても、このシリーズのキャスティングディレクターのセンスはすばらしいと改めて思った。毎回のゲスト出演者の豪華さとぴったり感は他ではみられない。
 たとえば今回は、武田真治が、ホリエモン的なキャラを、もっとおしゃれにもっといやらしく演じていて素晴らしい。自信満々なんだけど、誰も信じられない男の弱さを的確に見せる。
 杉本彩は、いかにも逆セクハラをしてそうに見えるところがミソ。でも、画面から強く立ち上るのは、強そうに見える女のしんどさと弱さのホンネだ。
 ほとんどセリフがない、宇梶剛士の妻役の長野里美。唐突に上げた叫び声がすごかった。あきらかにバランスを崩している女だった。
 彼女の代理人弁護士を演じるのが大島さと子。意地悪なおばさんを、なんの誇張もしないできっちりと演じている。
 武田真治の会社の弁護士の八木橋修。お話のオチは、インサイダー取引を「うっかり」してしまうという、ちょっと微妙なものだったので、つい「あんたは何してたの?」とつっこみたくなってしまう存在。「弁護士だったら、そのくらいわかるでしょ」と。でも、ちっとも人間的じゃないこの人が、実は、武田真治を裏切ったのかもしれない、もしかしたら、武田真治にふりまわされているうちに、ありえないミスをおかしたのかもしれないと考えさせられる、細かい芝居の積み重ねに成功してる。
 今回は、いいセリフがいっぱいだったのもうれしかった。宇梶剛士との別れのシーンの天海祐希の「きれいな弁護士じゃない。きれいで優秀な弁護士」というセリフ、最後の七夕の笹に飾った短冊に天海祐希が書いた願いごと「お姫様だっこ」などなど。
 「ラストプレゼント」でもそうだったけど、天海祐希は、悲しいときに悲しい芝居をこれっぽっちもしないのがすばらしい。ただひとつの例外は「忘れないで」という言葉の微妙なふるえだけ。
 それでよしとしている脚本、演出、俳優のこころざしに大いに共感する。大満足なドラマだった。パート3がはじまることを強く願っている。


2005年06月29日(水) 「Four Seasons 四季」稽古

 稽古前、三枝嬢とPIKY PINKYの打ち合わせ。近況報告もお互いにいろいろ。
 稽古場の玄関を入ったら、一緒に、一匹のモンシロ蝶が入ってっきてしまった。ヒラヒラ飛んでいるので、どうやったら外に出せるかと目で追いながら考えていたら、受付の中にいたおじさんに「わかりますか?」を言われる。部屋がわからなくて困っている人に見えたらしい。モンシロ蝶は見えなかったのかな? 「あ、ダイジョブです」とよくわからない返事をして、部屋に上がる。
 稽古場に続きの台本を予定の半分だけ持っていく。今日は「読んでおいてね」と渡すだけにする。
 基礎トレのあと、昨日の続きの稽古。代役はできるだけしたくないのだけれど、天辺くんを中心に、早瀬くんと小林くんにノグの役をやってもらって、先に進む。
 ていねいに段取りやセリフの言い方を決めていくのではなく、いろいろやってみる稽古をする。
 木にとまってるのがセミじゃなくて、ゾウや犬だったりするところからスタート。なんだかわからないやりとりが自然にできてくる。そのとき、カラダはとっても自由になっているんだね。
 天辺くんには、声の調子を「たとえば歌だったら……」というようにたとえてダメだしをさせてもらった。
 ラクな状態でいるときのカラダから出る声と、何かやってやろうとたくらんでいるときカラダから出る声が全然違ってしまうのはなんでだろう。
 他愛もないセリフが延々つづくのが僕の芝居だけれど、それでもやっぱりセリフの論理が積み重なっていくところは大事にしていきたいと、いつものように「ちゃんとやりとりをしてね」と話したりもする。
 帰り、1Fに降りたら、モンシロ蝶は無事外に出られたようで見つからない。よかった。
 おなじみのコンビニで雑酒ゲットの酒部活動。缶酎ハイをコンビニの袋に包んだまま飲んでいる僕の飲み方が、マミーに「チンドン飲み」とネーミングされて、なじんでしまっている。こないだ見かけた菊五郎似のチンドン屋のお兄さんをマネしているわけだけれど、説明しないと全くわからないと思う。ともあれ、体調も復活しているので、「チンドン飲み」しながら、駅までおしゃべり。
 このあいだの録音の仕事のサンプルデータを送っていただいた。声の仕事でキャラクターを演じたのはほんとうに久しぶり。どうなってるかとドキドキしながら聞く。
 なんとか芝居になっていて、ほっとする。それでも、ああやればよかったと思うところたくさん。次回以降の課題にする。

 「Four Seasons 四季」初日まで、あと28日!


2005年06月28日(火) 「Four Seasons 四季」稽古

 二週間ぶりに全員がそろった稽古。台本の続きを持っていく予定だったのだけれど、プリンターの調子が悪いので明日に延期。
 基礎トレの後、1場のあたまからを立ち稽古。それぞれの課題をていねいにやっていってもらう。
 ふとした瞬間に自由になるカラダのおもしろさ。天辺さんにいろいろとテーマを伝えて、いろいろやってもらう。楽しい稽古になっていったと思う。

 発売中の青土社「ユリイカ」7月号「特集この小劇場を観よ!」の「この劇団がすごい'05」というページでフライングステージを紹介してもらっている。前のページにはピンクトライアングルさんも!
 「Four Seasons 四季」について、ていねいに書かれていて、とってもうれしい。大好きなノエル・カワードについて書かれていることも(「陽気な幽霊」というタイトルは、彼の同名の戯曲からタイトルを拝借してる)。
 これを読んでうちの芝居を初めて見てみようと思う人がいてくれるとうれしい。ずっと見てくれているお客さんたちも、これを読むとうれしい気持ちになってくれるんじゃないかな。
 どうぞご覧下さい。

 「Four Seasons 四季」初日まで、あと29日!


2005年06月27日(月) 富士見丘小学校演劇授業

 富士見丘小学校の演劇授業。今日の講師は吉田日出子さん。子どもたち書いてもらった「けんか」の作文を一緒になって演じてもらう。
 前半は、台本のまんま。後半は、台本の続きを即興で演じてもらう。あらかじめ、台本のある方をやる人と、即興をやる人を決めておいてもらって、全員が演じた。
 子どもたちが書いた言葉は、借り物ではない生な言葉として彼らの口から聞こえてきた。
 吉田日出子さんが母親役、子ども役と次々いろんな役を演じながら、子ども達と芝居をする。こうやりなさいと無言のうちにリードするのではない、きちんと同じ立場で関係をもとうとする姿勢に感動する。
 即興のパートは、前々回の永井愛さんの授業を踏まえて。永井さんの授業で「もっと
やりたい」と思った子どもたちの気持ちが、いい盛り上がりを見せたと思う。
 母親役を演じながら、ほんとに母親の言いそうな言葉を口にしている彼らがすばらしい。観察してるんだねえ。
 最後に、吉田日出子さんに、谷川俊太郎さんがイラクの子ども達の絵によせて書いた詩を読んでもらう。「おじいちゃん死んじゃった」という絵本。日出子さんは、詩だけでなく、子ども達の言葉もていねいにひろっていってくれた。最後は、宮沢賢治の詩による「星めぐりのうた」を。子ども達は、大いに盛り上がってけんかを演じたあと、戦争と死についての話を聞いた。長丁場で、集中が切れるじゃないかと心配したのだけれど、2クラスともきっちり終えることができた。
 初めに、舞台に立っている人だけでなく、客席で見ている人も、一緒になって場を支えてるんだよという話をした。子ども達は、しっかりこの言葉をうけとめてくれたんじゃないかと思う。うれしい。
 給食をいただきながら、フィードバック。日出子さんは、子ども達と一緒に給食を食べてくれた。「子ども達はみんな自分のまんまでいるのがすばらしい」と言ってくれた日出子さん。それができるクラスになっていることが、何よりもすばらしいことだと思う。

 夕方から、急に具合が悪くなる。熱は下がったはずなのに、むかむかと気分が悪い。ソルマックを買って飲んでみるが、なおらない。
 家にようやくたどりついて、しばらく倒れ込んで寝てしまう。熱はやはりなし。とにかくふらふらするので、水をいっぱい飲んでみるが、めまいはおさまらず。汗だくになりながら浅い眠りを眠る。


2005年06月26日(日) 冷房はじめました

 真夏のような日。僕の部屋にはクーラーがないので、クーラーのある居間に移動して、時々横になりながら、仕事をする。今年の初冷房だ。
 猫も昨日今日はあまり外に出かけず、家の中の涼しいところで横になって寝ていることが多い。
 風通しのいいところが好みかと思うのだが、廊下の隅のひんやりした床にべったりカラダをつけて寝ていたり、台所のテーブルの下で、木でできたてーぶるの脚に足先をくっつけて横になっている。
 今日も一日、一歩も外に出ない。例外は真夜中に、猫を探しに行ったこと。といっても、玄関を出たら、すぐ脇の塀際の暗がりに仰向けになって寝ていた。今日は、真っ暗な夜。車や自転車が来たら、間違いなく轢かれてるところだ。
 抱きかかえて帰るが、猫の毛の間に熱気がこもってるようで、余計に重たくかんじる。
 昼間、母親に「猫は冬は寒がりで、夏は暑がりなの?」と聞かれる。言いたいことはわかる気がしたが「そうじゃない?」としか答えられない。わがままなところは猫も人間もおんなじだ。いや、人以上か?
 このところ、日盛りの駅のホームでぴょんぴょん歩いているカラスをよく見かける。真っ黒なカラスは、やっぱり夏は余計に暑いんだろうか?


2005年06月25日(土) お休み

 昨日ちょっと調子がよかったと思ったら、また熱が上がる。稽古を休ませてほしいという連絡をする。もともと天辺くんもNGということだったので、稽古はなしということになった。
 一日、ひたすら寝てすごす。カラダの具合が悪いと気持ちが沈むのか、気持ちが沈んでるとカラダの調子も悪くなるのか? 両方の理由を自分に許しながら、どんどん沈んでいくそんな一日。


2005年06月24日(金) 「Four Seasons 四季」稽古

 阿佐ヶ谷での稽古。薔薇族の取材で影坂狩人さんが来てくれる。
 特別なインタビューもなく、稽古を見ながら、写真をとってってくれた。
 永山くんが、去年のgaku-GAY-kaiのビデオを持って、見学&遊びに来てくれる。
 彼もまじえて、今日も、基礎トレの後、いろんなことをして遊ぶ。
 帰りは、駅コンビニで入手した雑酒類でみんなは酒部活動。僕は、一日持って歩いているコントレックスを飲みながら帰ってくる。
 この頃調子が悪いのでうまく録れてるか心配だった「タイガー&ドラゴン」最終回。予想通り、ビデオはこれっぽっちも動かないまま録画終了になっていてがっかり。重ね録りで消えるはずだった徹子の部屋の清水ミチ子を、なんとなくもう一度見てしまう。再放送かDVD化を待とう。

 「Four Seasons 四季」初日まで、あと33日!


2005年06月23日(木) ローな日

 劇作家協会で篠原さんと来週の授業の打ち合わせ。子どもたちに書いてもらった作文、というか「けんかのセリフ」を構成して、来週の授業の準備をする。ユニークなものがとっても多くて、とてもおもしろかった。題材としてやりやすいものを選び、加筆して、6本にまとめる。来週の月曜の授業が楽しみだ。 
 夜、風邪っ気がまたぶりかえす。微熱が出て、腹の調子が悪い。気分がどんどん沈んでいく、いやなかんじ。
 ビデオに録った「徹子の部屋」に出演している清水ミチ子をぼーっと見てしまう。次はあの人をやって!とおねだり状態の徹子、写真で登場する顔マネに「まあ、そっくり、本人かと思った」というコメント続出。「麗子微笑」はいいとしても、林真理子は微妙だろう。ダイジョブなのか?
 何度も聞いた、綾戸智絵のライブに感動。そして、一番のツボは、徹子と二人でそれぞれ演じた北林谷栄。ケラケラと笑って、少し元気になる。


2005年06月22日(水) 「Four Seasons 四季」稽古

 朝、大寝坊する。あわてて、平田さんに遅くなるとメール。起き出したのだけれど、なんだかふらふらするので熱を計ってみたら7度8分あった。びっくりする。たしかに風邪気味だったけど、おなかこわしてるだけでなんとかやりすごせると思ってたのに……。バファリンを飲んで、しばらくお休みの連絡をしようかどうしようか考えたのだけれど、やはり出かけることにする。大雨なのでバスで北越谷まで。その後の連絡の悪さで、なんでこんな時間に?という時間に到着する。申し訳ない。
 今日の講師は鴻上尚史さん。全員で和になって拍手をまわしたり、ポーズをまわしたり。それから彫刻家と粘土のエチュード、棒をつかってのゲームなどなど。子どもたちはとってもいきいきと取り組んでいた。去年は体育館で2クラス合同、しかもとっても暑い日でなかなか大変だったのだけれど、今日は特活室で1クラスずつ。とても楽しい授業になったと思う。
 お昼休みから5時間目にかけて、来週の授業で使う作文を、子どもたちが校長室までとどけにきてくれる。いろいろなけんかについて書かれたもの。書いた順にどんどんじかに持ってきてくれるのが、とってもうれしかった。授業中に校長室に来るのってどんな気分なんだろうと、小学生だったころのことを思いかえしてみる。作文は、明日、劇作家協会で篠原さんと二人で明日、構成することになった。
 午後から、録音のお仕事。ネットラジオ用のナレーション録り。とても楽しく、勉強させてもらいながら、なんとか録りおえる。どうもありがとうございました!
 その後、ノグが以前録った台詞のリテイクにつきあわせてもらう。そして、帰り道、ノグに感想をいろいろ話しながら渋谷まで。
 夜は稽古。ノグはお休みで、あとはそろった。早瀬くんはけっそりやせて実家から戻ってきた。小林くんの風邪も回復。代役で稽古してもしょうがない台本なので、エチュードやシアターゲーム「だけ」をやると宣言。昼間の鴻上さんの授業も参考に、ひたすら遊びたおす。
 大事なのは、上手な芝居をつくることじゃなくって、舞台の上の僕たちの間にちゃんとしたコミュニケーションが成立することだ。普段ちゃんと話せなかったら舞台の上でちゃんと話せたってしょうがない。ていうか、話せるわけがない。
 100円ショップで買った風船をパスしながらのしりとりがとっても新鮮だった。天辺くんと早瀬くんは元体育会系的に熱くなってしまって、しりとりが時々アバウトになる。それもまた新たな発見。今週はこんなことをいろいろやってみようと思う。
 稽古がえりのみんなの顔が、なんだかとっても和んでいて、それは楽しい遊びをした後の子どもの顔なんじゃないかと思った。昼間の富士見丘小学校の子ども達の顔によく似ていた。
 芝居のしかたやら役作りやらで眉を寄せて悩んでる顔よりも、こういう笑顔と僕は芝居がしたい。この笑顔の向うにこそ、悩んでしまう理由を解決する道もあるに違いないと思うから。

 「Four Seasons 四季」初日まで、あと35日!


2005年06月21日(火)

 練馬から西武線に乗って座ったら、襟元に虫がとまった気配。びっくりして右手で払いのけようとしたら、少し浮いた襟首から背中に入ってしまった。さらにびっくり!
 かさかさ動くかんじは、ハエなんかのやわらかい虫じゃなくて、蜂や甲虫系の固い虫の感触。僕もびっくりしたけど、向うもびっくりしたようで、一生懸命出口を探して動いている、その足取りがかんじられる。わあ……。
 「ごめん、出ておいで」と襟首を広げたら、すとんと下に落ちてしまって、こんどは右の脇あたりでもぞもぞしている。信じられない! やつは苦し紛れに、噛みついたようで、そいつの足跡をたどって、ちくちくした痛みがある。どうしよう……
 やつをつぶしてしまわないように(つぶしそうになってやつがおそろしい反撃に出ないように)、右手を宙に浮かしてキープしている姿はとっても間抜けだったと思う。車内で上半身裸になるのは、さすがにためらわれたので、池袋まで行ってトイレでシャツを脱ごうと考える。でも、がまんできない。痛みとかゆみとかさかさ歩く「音」とそいつの感触!
 上に着たシャツを脱いで、中のTシャツのすそを外に出してゆすった。お願い、これでどこかに行ってちょうだい!
 どんな虫が出てくるかと思ったのだけれど、何もいない。とんでったの? それともまだいるの、どこかに? このあたりでちょっとパニックになる。ちょうど着いた椎名町の駅に、おぼれる人が岸にたどりつくときのような気分で降りて、大急ぎでトイレへ。シャツを抜いで、Tシャツを脱いで、今度こそ何が出てくるかと思ったら……
 何も出てきませんでした。やっぱりさっきの車内でやつは逃れたもよう。そのかわり、背中には足跡をたどるように直径3センチほどの真っ赤な腫れが、首筋から脇にかけて計6個。
 蜂が刺したら、もっと痛いはずだし、でも、あの感触は、羽のあるそこそこ大きな虫だった。だったら、一体なんだったんだろう?
 その後の帰り道でも、妙に背中がもぞもぞして気持ち悪い。微妙な痛みが残っているだけなのだけれど、そこからやつの感触までも再イメージしてしまう。もう、いないってわかってるのに。
 バスの中で、ふと、やつがセミだったらどうだったろうと考える。背中に入ってしまったセミ。絶対にありえないんだけど、ちょっと許せる気がしてきた。蜂はいやだけど、セミなら許せる、これは差別か? でも、セミだったら「よく鳴かないで我慢したね!」と言ってあげたいような気分にもなってくる。差別じゃなくてひいきか? そのうち、セミだったよかったのに、いや、きっとセミだったんだと思うようになったころ、背中のいやな感触もうすらいできた。
 いつも読んでいるアナウンサーの今泉清保さんのブログで、ホタルについて書かれていて、その中で「じゃんけんで負けて蛍に生まれたの」という俳句が紹介されていたのを夜、読んだ。
 気になってよそのサイトで調べてみたら、特攻隊の若者が、じゃんけんで負けて、志願兵として一歩前に出て、死んでいったという話をふまえて詠まれた池田澄子さんの句なんだとわかった(まちがった情報だったらごめん)。
 今の小学生は、この句を国語の教科書で習ってるんだそうだけど、恥ずかしながら、僕は、初めて知った。そして、とっても心を動かされた。背景以前に、イメージのひろがり方に感動した。こんな句を授業で知る子どもたちがちょっとうらやましかった。芭蕉や一茶もいいけれどね。
 最近、テレビの「世界で一番習いたい授業」という番組を見て30年近く前に僕らの世代が習った知識と今の常識は大きくかけ離れているんだということを知って愕然とした。
 人類の祖先、文明の始まり、それに「鎌倉幕府の始まり」などなど、今では僕らがならった知識は「あのときはそうだったけど今は違う」ということになってしまってる。
 今の子どもたちはどんな教科書で学んでるんだろう? もう一度、知った気でいるいろいろを、それから、僕らが子どものときにはなかったいろいろを、勉強してみたいと思った。富士見丘小学校の子どもたちの教科書もいつか見せてもらいたいなと思った。


2005年06月20日(月) 池袋

 仕事の帰りに池袋を少し歩く。新しく建て直しているというシアターグリーンをちょっと見てみようと思った。
 まだ工事中でコンクリートうちっぱなしの外観は、以前のさびれたアパートを劇場に改造したようなシアターグリーンの面影は全くない。
 それどころか、この一角がきれいになったせいで、通り全体がすっきりして見える。
 手前の路地を右に入ると、いいかんじのどらやき屋が「今日は売り切れです」の札を出して店を閉めていたり、せまい間口の蕎麦屋があったり、「月〜土、生ビールのみ放題1000円」の中華屋があったりする。
 お寺の奥のうっそうとした雰囲気がきれいさっぱりなくなっていることにはびっくりした。それくらい、あの「シアターグリーン」のじめっとしたオーラが強かったってことなんだろうか。
 駅までの道には、サイゼリヤ、ビルディ、大戸屋といった安いご飯どころが並んでいる。けっこう便利な街かもしれないと思いながら、いつものバス停に反対側から近づく。
 それだけなのに、景色が全然違って見える。
 これまで知らなかった池袋をいくつも発見した気分の短い散歩。


2005年06月19日(日) 人形焼き

 昼間、母親が買ってきた人形焼き。近くのホームセンターの前で、よく営業している、車で来て、その場で売っていく店の一つ。他には焼きたてメロンパンや焼き鳥などなど。
 で、その人形焼きは、キューピー人形の形そのままだ。背の高さ10センチ弱のまるごとのキューピーさんが、こんがり焼かれている。
 これは、なかなか食べにくかった。鯛焼きの頭をかじるどころではない抵抗感。普通の人形焼きは、頭だけだから、胴体がいけないんだろうか?
 それでも、結局、両手を上げてバンザイをしているポーズから、手足を一本ずつむしりとって食べてしまう。魚の活き作りや海老の躍り食いのような気持ちにちょっと近い。
 このアイデアを思いついた人は微妙に後悔してるんじゃないだろうか。
 母親は「この間食べたのとは生地が全然違う。この間の方がおいしかった」と言っている。


2005年06月18日(土) 小松川高校演劇部新人公演 「Four Seasons 四季」稽古

 午後から小松川高校演劇部の新人公演を見に行く。
 最寄り駅の平井から、開演ぎりぎり&このところの膝の痛みのせいで、タクシーでワンメーター。とっても愛想のわるい運転手。「小松川高校まで」と言っても、ノーリアクション。途中、携帯に電話が。それまでの無愛想ぶりとはうってかわって、とっても「スマイル」な声で応対。腹が立つ前におかしくなった。運転しながら電話してるし、スポーツ新聞をハンドルに重ねて、運転士ながらメモしてるし、つっこみどころまんさいだったのだけれど、何も言わずに降りる。いつもは「どうも」ぐらいの一言かけて降りるのだけれど、あえて無言。ドアが閉まったあと、やっぱりいやみの一つも言ってやればよかったと思う。
 開演前、OB、OGのみんなとごあいさつ。こないだまで三年生だったなっちゃんやマサくん、マドカちゃんが大学生だ。感慨深い。彼らが一年生の新人公演がついこのあいだのようだ。わりとよく会ってるコバヤシくんにゴッちゃん、シモジくん、ミズノくんたちに、ほんとにひさしぶりのサトシくん。そんなふうで客席は関係者でいっぱい。明日は地区の新人戦。一日かけて十数校の演劇部の新人が30分の芝居を次々上演するコンクール。よその学校の舞台を見に行ってる場合じゃないよね。
 芝居は、サトウヒロミ作「ラジカル同窓会」。3年生のサトチくんから、「男5人女2人の台本ないですか?」とメールをもらって、ネットで調べて見つけた台本。公開されてた前半だけ読んで、「これはどう?」と返事をした。その後、後半を取り寄せて読んだら、前半のおもしろさにくらべて、後半はややいまいちなかんじ。だいじょぶかしらと、正直心配だった。
 で、舞台は、のっけからとってもいいのりだった。たしかに滑舌が悪いところがあったりはするけど、このゲイやらニューハーフやらSMの女王さまが登場する芝居を、彼らはとっても素直に楽しんで演じているのがわかった。
 中でも電ボくんという一年生が演じたトランスセクシャルの役が思い切った演技で素敵だった。初舞台がそれってどうよと思いながら、それを言ったら、どの役もそうかと思い、どれも同じ用にフラットに演じてる彼らがとっても素敵に見えた。
 客席のOB、OGたちは、「演劇部の同窓会」という設定からして、かなりはまってしまい、ゲラゲラ笑いながら観劇。とっても楽しい20数分だった。
 終演後、恒例のOBOGの自己紹介&ダメだしタイムのあと、みんなでカラオケに流れる。僕は稽古があるので、お先に失礼する。駅までつきあってくれたコバヤシくんと、歩きながら、今日の芝居の感想、この頃の高校演劇事情などなどおしゃべりする。
 屈託のない高校一年生が演じる姿は、倍できかないトシの大人にも十分元気をくれた。ありがとうね、みんな。明日の新人戦、見に行けないけど、がんばってね!!
 夜は、稽古。
 コバヤシくんとハヤセくんがお休み。ストレッチ、シアターゲームのあと、エチュード稽古。久しぶりの「お話聞かせて」。「舌きり雀」「親指姫」「さるかに合戦」を、三人でリレーしながら語っていく。
 舌がなかなか切られなかったり(舌切雀)、かぐや姫のような登場のしかただったり(親指姫)、みんなで力を合わせて復讐の筈が一人でサルをやっつけたり(さるかに合戦)と、不思議な話が語られる。天辺くんとなんだそりゃなやりとりをしながら、語っていく言葉の距離をさぐっていく。
 台本の稽古は、今日も冒頭の流れを。言葉がどう届くのか、相手の反応をどう受け止めるか、などなど、演出というよりも、いろいろやってみる稽古。初演では、ちゃんと見れていなかったところを、ていねいにつくっていきたい今回の再演。台本どおりの稽古でも、一回ごとに違うことをやってもらう。
 みんなそれぞれ、いい反応。なぞらないということのおもしろさ。そして、引き算ではなく、まずは足し算で芝居をしていくことのおもしろさが見えてくる。


2005年06月17日(金) 大根

 仕事帰りによく立ち寄る酒屋さんでは、エスニック食材や有機栽培の野菜も売られてる。
 チヂミの素と冷麺を買ってレジに立ったら、店のおばちゃんと東南アジア系の女性のお客さんがおしゃべりしてた。
 「どのくらい有機?無農薬なのか?」など。その話のついでに「その大根がねえ、おいしいのよ」という話に。30センチほどの長さのとんでもなく太い大根。180円。おいしそうな葉っぱも元気よくついたまま、ごろんとしてる。「じゃあ、僕ももらいます」と言ってしまい、大根を抱えたまま、はるばる電車とバスに乗って帰ってきた。
 「大根あるのに……」と母親に言われたので、今晩料理するのは断念。明日以降に持ち越し。
  
 「タイガー&ドラゴン」は「品川心中」の回。この番組、今クールのTVドラマの満足度調査で一位になったそうだ(ちなみに2位は「離婚弁護士2」。なんだかうれしい)。
 今日見ていて思ったのは、クドカンの脚本もいいけど、何より、長瀬智也の魅力がこのドラマを支えてるんだっていうこと。ほんとにいい顔して芝居してる。熱演だけとは言い切れない、すごさがある。なにか賞をあげたい気分。あ、こないだの「ヘドウィグ」の三上博史にもね。なにかこう「ドカン」とした賞。


2005年06月16日(木) 女のすごさ

 来週収録予定のネットラジオの原稿を読んでいる。18歳の役。イメージ画と自分のギャップにも、ハラハラするような気分。ともあれ、来週の収録が楽しみ。
 録画しておいた教育テレビの「私のこだわり人物伝 向田邦子〜女と男の情景」を見る。向田邦子について爆笑問題の太田光が語ってる。なかなか見応えがあり、独自の視点と語り口があざやか。今回は「男は女にかなわない」と題して、「女のすごさ」を物語る。
 「阿修羅のごとく」の名場面が取り上げられてる。加藤治子のところに乗り込んできた本妻、三条美紀がピストル実は水鉄砲を向けるシーン。八千草薫と加藤治子の鰻重のやりとりなどなど。ほんとにすごいなあとあらためて思った。
 太田光は、役名でなく、女優さんの名前で語ってるのが、なんともいえず親近感。「八千草薫が訪ねてきて……」みたいに。
 「一つの場面で同時にいくつものことが起こる。そんなことが書けるのは向田邦子だけだ」というコメントに納得。
 劇中に登場する女たちの思いの種を秘めていた向田邦子という女性のすごさ、飄々としたたたずまいからは想像できないところが、なんともいえず、すごいなあと思えてくる。
 バックに流れるのが大好きな日向敏文の曲なのもうれしい(それも、昔のやつばかり)。でも、それよりもずっと強烈に、テーマ曲になってるトルコの軍楽隊が奏でる「メフテル」は、今なお新鮮な迫力だ。しばらく頭の中に鳴り響く。


2005年06月15日(水) 富士見丘小学校演劇授業

 富士見丘小学校の演劇授業。今日は永井愛さんによる「即興劇」。
 まず、「場をつくる」。一人ずつ出た人が、それぞれの動きをしながらそこにいる。次に出る人は、前の人が作った場がどこかを考えて、そこにいる自分の動きを考える。4人目まで続けて、5人目の人が、そこがどこかを大きな声で宣言して、場面に入る。初めの人が考えた場面とは全然違うことになってしまっても、最後に決まった場面にいる人たちとして、その場で会話をする。
 寝転がる、本を読むというパターンが決まってしまったり、ケンカになってしまったりという流れが多かったりと、なかなか微妙なかんじ。
 永井さんが言われたように、「人を見る」ということは、とてもむずかしいことのようだ。
 相手が誰かを決めてあげないといけないのだけれど(たとえば、「お母さん!」と一言声を掛ければ、その人はお母さんになれる)、それもなかなかうまくいかない。それもやっぱり、人をちゃんと見ることができていないからなんだと思う。しっかり声を出す、そして、その場の設定を決めるというのは、とてもおもしろいことなのだけれど、なかなかそこまでいけなくて、自分が何をするかというおもしろさで止まってしまっているのが残念だった。
 でも、次から次へと出ていきたいと立ち上がる子どもたちが大勢いて、びっくり。みんながとてもおもしろがってるんだということがわかった。
 後半は「エレベーター」。見ず知らずの5人が乗り合わせたエレベーターが止まってしまう。彼らはどうするか?というもの。
 2月の6年生を送る会で去年の6年生がやってものを見ている彼らは、どうしてもなぞってしまうようだった。即興ではなく、決まった流れをたどってしまうかんじ。そこを抜けるのに一苦労。
 後半のクラスの最後の組は、ナオキくんがしっかりみんなをまとめて見事だった。後で聞いたら、彼はそれまでの他の人たちをずっと見ていて「どこがよくないか」を考えていたらしい。みんなの前に出て何かやろうとすると、つい笑ってしまう子が多かったのだけれど、ナオキくんは一度も笑わずに、この「困った状況」を真剣にどうにかしようと苦労していた。
 彼がきっちり集中していたせいで、他のみんなもだんだん場面と状況に集中してきた。そんななか、彼らがふっともらす、一言がとてもおかしかった。お母さんとはぐれた女の子に「お母さんは?」と聞いたナオキくん。エレベーターのすきまから、呼ぶ「おかあさん」という情けない声。絶妙な間で入った「あ、電池切れちゃった」という言葉などなど。一つの場面として、とてもおもしろい瞬間がいくつもあった。僕は、子ども達と一緒に座って見ていたのだけれど、見ている彼らもどんどん場面に集中しているのがわかった。
 これが最後になってしまったのが、とても残念だ。永井さんも言っていたけれど、「失敗を積み重ねるとだんだんうまくなる」ことは間違いない。今日「もっと、うまくできたのに!」とくやしい思いをしている子ども達の気持ちを、これからの授業でなんとか満たしていけたらなと思った。
 午後からは、秋の2年生と5年生を対象にした授業の打ち合わせに同席させていただく。演出家の森さんをはじめとする文学座のみなさんと鈴木さん、それに先生方と授業計画について話す。
 帰りは篠原さん、森さん、道野さんと途中までご一緒する。演劇授業についてあれこれお話する。森さんがしきる秋の授業がとても楽しみになった。
 夜、森川くんと待ち合わせして、パルコ劇場の「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」のゲネプロにおじゃまする。
 三上博史がなんだかものすんごいことになっている。もう圧倒された。曲もいいのだけれど、それをとってもすばらしく歌い上げる、三上博史の魂に心ゆさぶられた。このあいだの「ナイン」はすばらしかったけど。この「ヘドウィグ」は「すんごい」ってかんじ。中でも、ドラァグクィーンとしての客いじりは、まさにパーフェクトだった。
 終演後、青井さんにご挨拶。ありがとうございました。
 森川くんと食事しながら、芝居の話たくさん。


2005年06月14日(火) 「Four Seasons 四季」稽古

 荻窪で稽古。久しぶりのジョギング。懐かしい善福寺川(神田川?)沿いに、ノグ、マミー、天辺さんと4人で走る。途中で早瀬くんから、僕の携帯に連絡が。走りながら、受け応えしていたら、へろへろがさらに倍になったかんじ。ともあれ、至急、連絡してほしいと伝える。
 僕は、それ以降へばってしまって、DOUBLE FACEの稽古の時を含めても、初めて途中で歩いてしまう。へとへとになってなんとか帰還。
 高円寺に確認の電話。早瀬くんのお祖母様が亡くなったそうだ。早瀬くんはとりあえず実家に帰ることになったそう。ゆっくり、きちんとお別れしてきてほしいと思う。
 稽古は、その後、前回の続きのシアターゲームの後、1場の立ち稽古。
 マミー、ノグ、天辺さんの三者三様なキャラのぶつかりあいといろいろやってみる。
 ていねいにくり返しているうちに、早瀬くんの登場シーン前で時間が来てしまった。
 帰りに、前回、「各自」でやっていた「酒部」活動を。僕とマミーと天辺さんは、途中のミニストップで「雑酒」をそれぞれゲット。「お疲れさま」と缶を合わせて、飲みながら歩く。
 このあいだのチンドン屋さんを真似て、コンビニの袋に包んでみる。これはこれで、目立つかんじ。まあ、気持ちは伝わるっってところかな。


2005年06月13日(月) いのち

 家の玄関の脇にあざみが生えている。
 母親に聞いたら、毎年、生えてくるのだという。それが日に日に大きくなっている。
 盛大に枝分かれして、とげのある大きなギザギザの葉を広げている。一日の10センチほども育っている気がする。枝のそれぞれが縦横に大きくなるので、こんもりとした緑はどんどんかさだかくなっていっている。まん中の茎のてっぺんには、早くもつぼみらしきものができている。
 あざみってこんなに早く咲くんだったろうかと考える。雑草のようなといってもいいようなたくましさだ。
 朝晩、圧倒されながら、元気づけられている。命のいきおいのすばらしさに。
 須藤真澄「長い長いさんぽ(後編)」を読む。
 愛猫ゆずをペットの火葬場に連れて行き、戻ってきた須藤さん夫婦の、その後数日間のお話。
 前編以上に、自分を含めて死にとまどい受け入れられないでいる自分を冷静に見てるかんじがする。おかしなことしてんなあという自嘲とか、どんなふうに見られてるだろうか自分?という視点とか。
 死んでもずっと一緒にいるんだねという思いが伝わってくる。命に対する向き合い方のひとつの形。
 ゆずは、しあわせだね。だったね、じゃなく。


2005年06月12日(日) DM発送

 朝、小林くんに渡そうと思ったミュージカル「スウィーニー・トッド」のビデオをちょっとだけと思って見ていたら、デッキにテープが巻き込まれて、大変なことに。かなり昔のビデオだもんな。なんとか取り出して、テープを分解するが、よくわからない小さなバネが飛び出して、組み立て不可能に。しかたないので、もう1つ別のテープを分解して、その枠の中にオリジナルのテープ部分をそっくり移植する(マミーにあとで話したら「楳図カズオの『洗礼』みたい!」と言われた)。今度は成功。ちゃんと出来たかどうか確認しながら、早送りで結局最後まで見てしまう。かなりソフトなかんじのオリジナルキャストのアルバムをずっと聞いていたので、この舞台収録版のグロテスクさはちょっとつらい。キャスティングも、演出も。ジョージ・ハーンとアンジェラ・ランズベリーは同じなんだけど。スティーブン・ソンドハイムの曲は名曲ぞろいで、聞き応えがある。
 朝から、かかりきりだったくせに、出がけにわたわたして、テープを忘れて出かけてしまう。何やってんだか。
 午後、世田谷パブリックの生活工房でフライヤーの折り作業。マミーと三枝嬢と。折り機をなだめすかしながら、なんとか終了。その後、荷物を持って、タクシーで高円寺へ。劇団員が集まってDM発送作業だ。たんたんと作業は終了。発送は明日。みなさんのお手元には明後日以降、届くと思います。ご予約をお待ちしていますね!
 高市氏に夕飯がわりの焼肉をごちそうになり、解散。一雨きそうな天気だったのが夕立が来ることもなく、微妙に湿気の多い夜風に吹かれて帰ってくる。

 「Four Seasons 四季」初日まで、あと45日!


2005年06月11日(土) 「Four Seasons 四季」稽古

 昼間、パレードスタッフのミオちゃん、イッセイさん、カザンちゃんが、うちに置いてある荷物を取りに来てくれた。イッセイさんのセダンに積みきれるかと心配したのだけれど、なんとか納まる。一息ついて、コーヒーを飲みながら、おしゃべり。猫も時々来ては、猫好きなミオちゃんにかわいがられていた。
 夜は、稽古。全員が揃う。はずが、早瀬くんと小林くんがもろもろの事情で遅刻。よし、やるぞ!の気持ちが微妙になる。
 初めましての天辺さんとストレッチ、脱力、呼吸(誰が一番長く息を止められるか競争。優勝は天辺さん)。全員揃ってから、僕らも久し振りの外郎売り、拍手を回すシアターゲームのバリエーション(3拍子、4拍子、5拍子で、1拍目を強調するルール)、それから、しりとり。天辺さんの脱力しながら自爆するかんじにほのぼのする。
 このあいだのさっこさんとの美術の打ち合わせの報告などをしてから、後半は、1場と2場の読み合わせ。時間が来たので途中で今日はここまで。
 行きがけに花屋でゲットしたシャクヤクを帰ってから活ける。持ち歩いてる途中でどんどんつぼみがゆるんできたのだけれど、活けて一時間もたったら、ものすごい勢いで花が開いて、とんでもないボリュームになった。いっぱいにいれた水が、花が咲いた分だけ少なくなってる。立ち上がる水の力に少し涼しさをもらった気分。

 「Four Seasons 四季」初日まで、あと46日!


2005年06月10日(金) 女優競演

 ル・テアトル銀座に青井陽治さん演出の「ちいさな歳月」のゲネプロを見にいく。
 カナダの劇作家、ジョン・マイトンの戯曲。ウィリアムという詩人をとりまく女性たち、母と姉と妻と娘が紡ぐ50年の物語。稲本響さんの生演奏の音楽が全編を包み込む。
 母親役新橋耐子さん、妻の長山藍子さん、姉の岩崎加根子さんのまさに「女優競演」の舞台だった。火花を散らすやりとりというのは全くないのだけれど、静かな静かな時の流れの中で、それぞれが見せる「老い」のありようが、圧倒的だった。ぼけてしまった場面の新橋さんの大きな芝居。ずっと若々しいままだったのに、最後にふっと歳月の重さを感じさせる長山さん、そして、少女から60代へと「的確に」年齢を重ねていく岩崎さん。それぞれがとっても見事だった。
 松田洋治さんと藤谷美紀さんが、若い者代表のような登場のしかたで新鮮。音楽とのアンサンブルも見事な、しっとりしたいい芝居を楽しませてもらった。
 青井さんにご挨拶して、銀座の街へ。雨の中、少し余計に歩いてから地下鉄に乗る。


2005年06月09日(木) チンドンのみなさん

 帰りの電車の中で、チンドンの人たちに会う。僕のとなりに辻占売りの格好をした若い衆と、普段着のその友達らしき人。向かいの席に町娘が二人。とき色の着物を着たのは女性。朱の着物は男性だ。きりっとした男前。目鼻立ちがしっかりして、今の菊五郎さんによく似てる。仕事の帰りらしく、大きな荷物、太鼓やその他の楽器を抱えていた。
 菊五郎さんは、500mlの缶酎ハイを飲んでいたのだけれど、その缶をコンビニのビニールで包んでもっていた。さすがの気遣いだなあと感動した。となりの女子の町娘は300mlをかくさず、そのまんまだったけれど。聞こえてくるおしゃべりの声も、きびきびとして気持ちがいい。北千住で下車したのに思わずついていってしまいたくなるくらい、素敵な人たちだった。


2005年06月08日(水) 富士見丘小学校演劇授業 「Four Seasons 四季」稽古

 朝から富士見丘小学校の授業のお手伝い。今日は「自分を話す、人を聞く」という授業。1、2時間目は2組、3、4時間目は1組、合同ではない、少ない(といっても30人以上)人数。
 まずは田中さんのウォームアップ。自分の名前を言って、全員でそれを真似る。
 続いて、青井さんによる授業。二人組になって、相手を見て、気がついたことを話す。それから、今日のメイン、「朝から今までのこと」を二人組になった相手に話をする。
 3分間話して、それを聞いた人は、みんなの前で発表する。
 両クラスとも、とてもいい集中のしかた。1組は、全員で話していたら、時間が足りなくなってしまった。予定では、十分余裕を見ていたのに、みんながほんとによくしゃべったせいだ。
 それにしても、朝からの数時間で、彼らのしていることの多彩さにはびっくり。
 起きるところから、まず、二度寝。起きてからも、ゲームをしたり、おもちゃの手入れをしたり、素振りをしたり、兄弟げんかをしたり。家を出てからも、友達を迎えに行ったり、低学年の子にいじめられたり(!)、歩道橋のところでケンカにまきこまれたり。学校に来てからは、読書の時間。「トリビアの泉」の本がひっぱりだこだったもよう。今日は眼科検診があった。
 「ゾウの時間、ネズミの時間」ではないけれど、ほんとに子どもの時間は、ゆっくりながれているのかもしれない。
 彼らの話はとてもいきいきとしていて、しかも、話した相手の声色を真似たり、「脚色しちゃいます」と宣言したり、社会の時間「Wカップの話が続いて、なかなか奈良の大仏の話にならなかった」という指摘(?)があったり、ただ、話さなくていけないことを、仕方なくしゃべってるというのとは全然違う次元になっていた。
 この先、何ができるようになっていくか、とても楽しみだ。
 教室に向かう途中の図工室の前の廊下に、つくりかけの「木馬」がたくさんならんでいる。ヌキ材を使って作ったシンプルな構造なのだけれど、小さな子どもはちゃんと乗れる暗いの大きさ。木馬も、色とりどりに塗られると、違った表情を見せてくれる。耳がとがってるもの、丸いもの。鼻先に角がある「一角獣」など。完成が楽しみだ。
 金髪の僕は、みんなに「金髪先生」と呼ばれる。名前も覚えてもらったようでうれしい。田中さんは「黒毛(くろげ)先生」と呼ばれてたらしい。給食をいただいて、田中さんと二人でそんなことをしゃべりながら帰ってくる。
 夜は、稽古。「Four Seasons 四季」の稽古初日なのだけれど、僕は仕事が終わらず遅い稽古場入り。天辺くんとノグもお休みなので、集まったのは、小林くん、早瀬くんとマミーと僕。ゆるゆるとストレッチをして、マッサージをしあいながら、おしゃべりする。僕は小林くんと。
 劇団の公演は、去年の11月以来。僕は「二人でお茶を」があったけれど、みんなでこうしてアップするのは、ほんとに久し振り。小林くんとは、ほぼ一年ぶりになる。
 その後、しりとりをしたり、ゲームをして、今日はあっさりと終わる。久し振りにおしゃべりしたなあという気持ちになった。
 僕はサッコさんと待ち合わせをして、美術の打ち合わせ。初演は駅前劇場、パート2は同じポケットになる「Four Seasons 四季」。全く同じはつまらないということで、いろいろなアイデアを聞き、あれこれ提案させてもらう。すっかり話しこんでしまい、座ったまんまで帰れる最終の直通北越谷行きにようやく間に合う。マッサージのせいか、肩がとっても軽い。腰の痛みは相変わらずだけれど。湿布やバンテリンのお世話になってたこの数日。人の手の持ってるちからに感謝。長い座りっぱなし電車もそれほどつらさをかんじずに帰宅する。
 アン・バンクロフトが亡くなったというニュースを夕刊で知る。「卒業」のミセス・ロビンソン、「奇跡の人」の元祖サリバン先生、「エレファントマン」のケンドール夫人、そして、何よりも「トーチ・ソング・トリロジー」の母親役。しばらく見ないと思ったら……。いっぱい勉強させてもらった女優さんだ。どうもありがとうと言いたい気持ち。どうぞやすらかに。


2005年06月07日(火) スープで夕食

 ウズくんからチケットのデザインが届く。高市氏にすぐ送る。
 母親が出かけていて、今晩は一人。猫もどこにいったのか見あたらない。
 朝方作った鶏肉とキャベツのトマトスープにヒヨコ豆を入れたもの、ショートパスタを入れて夕飯にする。台所にあるものを適当に煮たスープの2日目に、パスタを入れて食べるのが僕は好きだ。豆を入れることが多いのは、この頃の傾向。
 夜中、「離婚弁護士2」を見る。瀬戸朝香の元夫役で田辺誠一が出てる。佐々木蔵之介とのやりとり、ずっと若いはずなのに、同年代に見える。少しおじさん化がすすんでいて、知っている田辺誠一とはちょっと違う印象。それもまたいいかんじ。
 ガチャガチャの動物フィギュアの扱いなど、今回も、気の利いた台本。
 天海祐希と宇梶剛士が一夜をともにしてしまった。こんなにあっさりいっちゃうんだ……。元恋人の佐藤隆大もいよいよ登場。どうなっていくんだろう。


2005年06月06日(月) トニー賞

 腰は昨日より、少しラクになった。だましだまし、歩く。そのぶん、首が痛い。寝違えたような痛みだ。
 原稿を書き上げて送る。
 夕方、祐天寺でノグと待ち合わせて、ウィッグを渡す。バイトで使うんだそう。
 頭の中で「ナイン」のナンバーがずっと流れている。歌詞が曖昧なので、メロディだけ。こんなのひさしぶりな感覚だ。
 今年のトニー賞の受賞結果がニュースになってる。微妙に遠いものばかり。何年か先に身近になったりするのかな。
 2003年のトニー賞の授賞式のビデオを見てみる。「グイドズ・ソング」を歌うアントニオ・バンデラス。前に見てた映像なんだけど、一気に身近なかんじ。カルラを演じた、ジェーン・クラカウスキーも。「アリーmyラブ」のエレイン役の彼女。助演女優賞を受賞してた。
 もう一度みたいと思える舞台は久し振りだ。今頃、あのへんをやってるだろうなと想像してしまうのも。
 ホームページの更新をあれこれ。日記もまとめてアップする。


2005年06月05日(日) 腰痛再び

 朝から、腰が痛い。ぎっくり腰だろうか? 座っているのもきついので、横になって、パソコンに向かう。
 昨日の読み合わせを踏まえて、台本の改訂に向かう。
 他の原稿も、とにかく書こうとするが、つらい。起きてなきゃと思いながら、久し振りにどかんと眠ってしまう。ヘビーな夢、たくさん。そのたび、いやな自分に「それはないだろ」とつっこんで目が覚める。


2005年06月04日(土) 「ナイン the musical」・「Four Seasons 四季」顔合わせ

 小林くんと浜松町で待ち合わせて、アートスフィアへtptの「ナイン the musical」を見に行く。会場入り口でユカさんと合流。
 デヴィッド・ルヴォーが演出して、2003年のトニー賞ミュージカルベストリバイバル作品賞を受賞した舞台。
 フィリップ・スタルクの透明なプラスチックの椅子と白っぽい無機質な骨組の装置に、ベニスの石造りの建物と、ボッティチェリの春の三人の女神のモザイクなどなど、美術からしてとってもきれい。オープニング、天井までつながる螺旋階段を60年代モードで降りてくる女達、それだけでもうすばらしい。
 フェリーニ「8 1/2」をモチーフにしたお話。映画監督グイド・コンティーニ(別所哲也)は大勢の愛人を持つプレイボーイ。妻(高橋桂)の関係が行き詰まって、離婚を切り出され、新作の脚本に困った結果、二人でベニスのスパにやってくる。そこへ、プロデューサーのリリアン(大浦みずき)、愛人のカルラ(池田有希子)、映画女優のクラウディア(純名りさ)らがやってきてしまう。また現実ではない女たちも登場、母や初めての恋の相手などなど、総勢16人。
 グイドは自分自身を映画にしようとし、「カサノヴァ」の物語を撮り始める。だが、その過程でどんどん女性達を傷つけていってしまい、彼女たちは去っていく。映画も失敗した彼の前に9歳の彼自身が現れて、「大人になるとき」と歌いかける。
 お話を説明すると、すぐに何だそりゃになってしまうようなストーリーなのだけれど、こんなにおもしろい舞台はひさしぶりだった。
 作り手の葛藤というのも身近だったのだけれど、生涯にめぐりあった女たちが、心の中にどんなふうに生きているかということも、思い当たることがいっぱい。
 16人の女性たちは、ほんとうにきれいだった。いつもアンサンブルとして登場しているようでいて、一人一人がまぎれもなくオンリー・ワンだった。
 舞台のどこを見ていても夢中になれるそんな舞台。
 1幕のラスト近くのサラギーナ(9歳のグイドに恋の手ほどきをした女。田中利花)の歌声が圧倒的だった。鳥肌が立って震えてきた。こんなの久し振りだ。歌詞に感動したというのでもない、不思議な心の揺り動かされ方。
 2幕は、お話としては、どんどん結末に向かって突っ走っていくだけなのだけれど、ストーリーよりも何よりも、舞台美術の美しさにまずは圧倒される。三美神の壁画からにじみ出る水、床からもぼこぼこと吹き上がって、舞台は水浸しになる。出演者はみな、ばしゃばしゃと水しぶきを上げて、歩き回り、「カサノヴァ」を撮影する。
 離婚が成立したから結婚できるとカルラが持ってきた婚姻届を破り捨てるグイド。カルラは、その後、長い間だまって、舞台の下手に座り続ける。
 このへんから、もう何がなんだかわからないけど涙が出てしかたなかった。何度も言うけど、ストーリーに感動してるんじゃない、いい芝居を見てるってこういうことなのかもしれない。
 終幕、女達全員が傾いたテーブルのまわりに座って、グイドを見守る場面。そして、天井まで続くらせん階段を上っていく場面。そしてラストの大仕掛け。見事だった。
 なんのためらいもなく、スタンディングオベーション。なんだろ、これは。もう打ちのめされるくらいパーフェクトな舞台だった。
 終演後、ユカさん、小林くんと楽屋へ。ヒトミさん、ルミさんにご挨拶。タマキさんともワークショップで一緒だったと言われ、あわてて思い出す。
 ユカさんと一緒に別所さんの楽屋にもうかがい、お話をする。この間のレミゼといい、今回のグイドといい、日本を代表するミュージカル俳優だと思う。間近で見る背の高さにも感動。
 女性ばかりの楽屋は、なんだかやさしい雰囲気。いいチームでいい芝居を作っているんだということが、とってもよくわかる舞台裏だった。

 小林くん、ユカさんと徒歩で品川まで。歩きながら、感想を言い合う。
 品川で二人と別れて、台本と原稿に向かう。大雨が降ってきたので、雨宿りがてら、阿佐ヶ谷の喫茶店にて。

 夜は、顔合わせ。出演者全員と制作の高市氏、それにトシくんをまじえて。
 制作からの説明のあと、僕からあいさつ。そして、今日持っていった2場までの改訂台本を読み合わせする。
 一昨年の初演のときも、2場までを顔合わせで読んだ。
 天辺くんのキャラがおもしろくなりそう。それぞれの人物の課題を考えながら、ノグと一緒に終電ぎりぎりで帰ってくる。


2005年06月03日(金) 書いては書き直し

 ビデオがようやく見つかる。とりかかるが、大幅に書き直すことにする。もう何度目か。書いては書き直し。台本の直しも。書いては書き直し。
 夜中、「タイガー&ドラゴン」を見てしまう。鶴瓶が落語を披露する。あまりのうまさにびっくり。もう全然違うもの。西田敏行の落語、なかなかいいよねと思ってたけど、大間違いだったことに気がつく。さすが本職というか、鶴瓶ってこんなにうまかったんだっけと思うくらいよかった。何十年ぶりで高座に上がるのに、着物がちゃんとしてるなとか、上方だから見台があるんだなあとか、いろいろ思うことあり。


2005年06月02日(木) さがしものの日

 一度返してしまった原稿用のビデオが見つからない。あちこち探し回るが今日は断念。どうしてないんだろう? 大体、どのジャンルにあるかを探すだけで途方にくれてしまう「蜘蛛女のキス」。ヒューマン? サスペンス? ドラマ? 北千住のツタヤではアカデミー賞受賞作の棚にあったんだけど。これで何軒目?ってかんじのツタヤツアー。
 それでも、もろもろ原稿追い込み。手に着くモノ着かないモノなどなど。顔合わせ前のいっぱいいっぱいな気分。また芝居が始まるんだなというかんじ。


2005年06月01日(水) gaku-GAY-kaiの申込み

 年末のgaku-GAY-kaiの予約のため、新宿文化センターに行く。抽選の順番で希望日がとれるかどうか。
 時間までに集まった12組の希望者のなか、僕は9番目にくじをひいた。で、当たったのは2番! 当初の希望どおりの25日に決まった。よかった。文化センターのみなさんに今年もよろしくお願いしますとごあいさつ。手続きをしてくる。
 その後、法政大学の講義で知り合ったKくんと会う。中島さんを通じて連絡をとってきてくれた。トップスでお茶をし、あれこれ話す。その後、二丁目をさくっと案内して、ココロカフェで一服。最後はアイランドという流れに。アイランドで、永山くんに会う。初めての二丁目という彼を思う存分ひっぱりまわしてしまう。僕も昔は、こんなふうに連れ回されたっけと思い出す。アイランドのラクちゃん、シマさんも初めての彼に、とても親切にしてくれた。彼のこれからの何かになるとうれしいなと思ったりする。がんばれ!


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