wakaP〜の好物三昧

2004年10月24日(日) NY 「GIG事情」

先日ライブでご一緒したNY在住のボーカリスト、Yさんからお聞きした現地のGIG事情(あちらでは「ライブする」事をGIGと言います。)が面白かったのでご紹介しよう。(一部、Yさんから詳細情報頂き加筆・修正しました。)

以前、彼女は横浜で普通にライブ活動をしていたのだが、持ち前の英語力とチャレンジ精神を活かしてボストンのバークリー音楽院に留学、その後NYに拠点を移して今年よりアーティストビザを取得しながらJAZZ中心に音楽三昧の生活を送っている。マコトに羨ましい限りのご身分だがご本人によると音楽のみで食べていくのは至難で、仕事選ばずしょうもないギグ(安ギャラだったり、変な場所だったり)もやってるから肩身が狭いとの事。

よく言われることだがNYで一介の日本人ボーカリストが音楽生活を送るのは、かなり厳しい環境と言う。居るだけでは何の情報も入らないし誰も声を掛けてくれない。自分から動き、アピールし、売り込み、結果を出す事を実践し続けなければならない。プロフィール写真、自分の唄を収めた音源などの宣材は常に用意し、事ある毎に配る様心がけている。

GIGをする為には、まず店とギャランティの交渉をする。ミュージシャンはすべて個人のプロなので、ギャラを提示しない限り事は動かない。ギャラは店によっていろいろで、ローカルギグでプロなら一人50ドル以上はあげたいが、店からそれが見込めない時はチップで稼ぐ。

例えばお店は30$の提示でミュージシャンが50$の条件だった場合、差額20$は彼女がリスクを背負い当日店内でチップを集めて回収するのだそう。日本でも投げ銭ライブがあるがチップ文化の根付いた米国では、客と仲良くなり自分や唄を気に入ってもらえばそれなりの収入になるらしい。

また、日本では一度仕事を請けた後、更に良い条件の仕事がきても前の仕事を優先するが、NYではあっさりキャンセルされる事が普通と言う。もちろん「ゴメンね」の一言はあるし代わりのミュージシャンも探してもらうそうだが、さすがアメリカと言う感じ・・・。

楽器プレイヤーはNYだけあって、メチャ上手い連中がウジャウジャといるそうな。彼らはボーカリストに比べ仲間で行動する分、GIGに関する横の情報共有がやり易いと言う。また、一部のミュージシャンはボーカリストのバッキングをいやがる者もいる。(ギャラがチャンとあれば勿論OKだそうです。)

NYジャズシーンはインスト中心で、お金やなんらかのメリット(人集め?スケベ根性?…笑)がないのに、始めから歌ものを考える事って少ない。歌が敬遠されるのは、インストは歌ものじゃ満足できない以外に最近インストのオリジナルを書いて発表したい人が増えており、ギャラ安くてそこまで手が回らないのも理由かも知れないとの事。

更にJAZZは黒人固有の文化として、売れている日本ミュージシャンを快く思わない輩がいたり、仕事場に入りづらい場面もあるらしい。

また米国のJAZZ業界はPolitical(政治的)な要素も多々あり、日本の有名タレントがその筋を通じてやってくれば、一見難しいJAZZビジネスは魔法のように道を開け超有名なミュージシャンと共演やレコーディングがあっという間に可能になる事も良くあると言って悔しがっていた。

そんな環境の中で彼女が心がけている姿勢のひとつは「ナメラレナイ」事。好き・嫌いを置いてまず知識・技術両面で基本を押さえるのは勿論、ミュージシャンが触手を動かしたくなる選曲を心がけ、GIGを仕切るリーダー(ボーカリストは常にリーダーである事を強要される)として積極的にアサインし、やる気をアピールする。そして何と言っても自分のアイディンティティとは何かを常に意識し、オリジナリティを発揮する事だ。

歌は孤独だし、「よそ者」がバックグランドや言葉を乗り越え仲間意識を持たせることは大変な苦労と言う。(もちろん楽器は楽器で、上手い・下手でヒエラルキーができるから初対面ではあの人たちも勝負って感じで大変との事)

正に「タフ」でなければ続けられない環境であるが、それでもやり続けたい魅力がNYにあるのだろう。アーティストビザは未だ三年有効と言う。
頑張れ!Yさん!!

最後にジョニミッチェル、ベティカーター、ボビーマクファーリン、カートエリング、ダイアンリーブス、ジョンヘンドリックス等は、特に地元のミュージシャンからのリスペクトを得てるそうです。


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