Day Dream Believer
過去の日々｜過去の昨日｜過去の明日
私がなぜ、なかなかkazeに心を開けなかったのか
それには理由があった。
私は長いこと別居中ではあっても法律的には配偶者がいることとか
彼にも妻子がいるらしいことを知ってしまったこととか
そういう重大な事実などは、別にどうでも良かった。
彼に強く惹かれながらも心をなかなか開かなかった理由。
彼の紹介でプロジェクトに新しく参加した女がいた。
彼らの事実上の上司である自分の立場を考慮しなければいけなかった。
それと・・・
それとこの世の中には欲しくても自分のモノにできない存在が
あるという事実を知ってしまったからなのだ。
それならば、最初から欲しがらなければ良いだけのこと。
だから私は彼の心が欲しいという欲望を捨てた。
肉体は簡単だ。手に入れようと思えば手に入る。
だから私はkazeとのセックスは受け入れた。
でも、実体の見えない不確かなものである「愛」は
どんなに欲しくても自分ではどうにもならないものなのだ。
今日は朝から恵比寿で新人研修のオリエンテーションがあった。
私は今日のプログラムや参加者リストに目を通すふりをして
外の廊下でkazeとその女が話している姿を無意識に見た。
女は背の高い彼のスーツの袖をつまんで見上げながら
何か甘えたような目をして訴えている。
彼は僅かに困ったような表情で応えていた。
それを見て私は急に気分が悪くなった。
「そんな目をしてkazeを見ないで。」
本当はそういいたかったのかもしれない。
部下の女に嫉妬しなくても済むように
だから私はこれ以上彼への想いを封印したのだ。
でも見ていなさい。
あんな胸ばかり大きな生意気な女より
私の方が良くなるようなそんな風にあなたをしてあげるから。
心はあげないけど体はあげる。
私からあなたを離れられないようにしてあげる。
たぶんそんな風に私が彼を愛し過ぎて憎み始めたのは
この頃だったと思う。
| 2002年04月26日(金) |
優しさと残酷さの境界 |
ＬＡ滞在からすでに１ヶ月以上が経過していた。
あの夢の製造工場であるハリウッドにほど近いヒルトンでの１週間の日々。
そっと研修会場を抜け出して異国の街を二人で歩いた。
カリフォルニアの明るい空の下で知らない国の料理を二人で食べた。
多くの人種が集まるあの国で私達も異邦人なのだと言うことを痛感した。
ネィティブな発音で会話ができる彼がとても頼もしく見えた。
多種多様な国籍の人々の中で
二人は日本人には見えなかったかもしれない。
彼のその日本人離れした長身の端正な横顔を見上げ
そして時々コーリアに間違えられる自分を確認して
なんだか無性に楽しい気分だった事を想いだした。
この晩・・・
あの異国の日々で毎晩同じベッドで寝たにも関わらず
私達はまるで初めての夜みたいな気がして
どこから始めたのかもさえわからないほど夢中で抱き合っていた。
もちろん別々にシャワーを浴びて
kazeの待つベッドに滑り込む。
とても懐かしい感じがした。
そう思った瞬間彼も同じ事を言った。
「ああ懐かしいsoraさんの匂いがする。ＬＡを思い出すような。
あの時と同じ匂いだ。」
自社フレグランスはいつもつけているから
この香りが彼の嗅覚による記憶を蘇らせたのだろうか。
それから私達は無我夢中でお互いに抱きしめ合った。
私はこの夜が最後だと思って切なくて悲しかった。
彼はこの夜が私達の始まりだと思いこんでいた。
私の唇や頬や首筋を辿って
それから乳房や固く突起した乳首を愛撫して
それからいつの間にkazeは私の視界から消えた。
私はkazeに思い切り両足を開かされて
彼の吐息をその間に感じた。
暖かい湿った柔らかい彼の舌だと認識したそれが
私の敏感で充血してふくらんだ蕾に触れた。
次の瞬間、強い快感が背中を通って全身に走る。
初めて私のそこに触れた彼の唇や舌は
溢れてぐちゃぐちゃに体液を分泌している
私の一番敏感なその部分のすべてを
びちゃびちゃと音をたててなめ回し強く吸い上げ
そしてそれはその中心の中にまた差し込まれ
私は永遠に男の唇や舌で犯され続けた。
まだペニスをつっこんでくれた方が良いとさえその時に思った。
あんなに執拗にオーラルで責められた経験がなかった。
彼は飽くことなくたぶん１時間近くも私に悲鳴を上げさせた。
真っ暗な空間の中で
激しい愛撫を受けてエクスタシーを何度も迎えたはずなのに
私はまるでその時孤独だった。
私が欲しかったのは性器への快楽でなく
男の肌の温もりだった。
ペニスを挿入してくれてぎゅっと折れそうなくらい抱きしめて
その方がよっぽどいいと思った。
悲しかった。
強いエクスタシーで何度も果てながら
私は悲しくて仕方がなかった。
「ここはどこ？あなたはどこにいるの？」
薄れゆく意識の中で自分の声が遠くに聞こえた。
誰を呼んだのかも自分自身でわからなかった。
kazeでもない。Ｔでもない。ましてや別れた夫でもない。
「ここだよ。ここにいるよ。」
遠くの方から優しい声が聞こえた。
暖かい大きなものが私の小さな全身を包んだ。
私を抱きしめているのはkazeだった。kazeの声だった。
力強く抱きしめて、それから顔中にキスをしてkazeは耳元で囁いた。
「ずっとそばにいるよ。」
それから私の中に彼は入ってきた。
それはとても心地よく、
私はこの夜の中で一番強くエクスタシーを感じて果てた。
そんな時間はあっという間に過ぎて
私はとたんに激しく後悔した。
今夜が最後のつもりであって
いつもクールに装っていた二人が
あんな愛し合う恋人同士みたいに抱き合ってしまって
本当に深みにはまっていったらお互いに身の破滅。
彼の車を降りる時に私は心にもない事を言った。
「今夜は楽しかった。ありがとう。
また明日からは元通りのビジネスパートナーに戻ろうね。」
努めて冷静に優しく言ったつもりだったのに
彼から反ってきた言葉が私の胸を突き刺した。
「わかりました。
明日からはセックスもできるビジネスパートナーになりましょう。」
ほんの数時間前のあの言葉。
私を優しく包み込んでくれた男の言葉。
「ここにいるよ。ずっとそばにいるよ。」
まるで同じ男の口から発したとは思えないほどの
冷淡で乾いた優しさの微塵もない残酷さ。
こんな思いやりのない言葉は彼の本心ではないはずだったのに
たぶん一生懸命この夜の準備をしてくれて
たぶん私ともっと距離を縮めたかったのだろうと思ったけれど
自分の気持ちが私には届かなかった事と
（十分に届いていたのだけれど）
甘い時間の最後の別れのシーンで
私が放った言葉に苛立ったのだ。
この日から、彼は私に対して優しさを忘れた。
この日から、私は肉体を開いても彼に心を開けない女になった。
「あのね、明日時間が空いたの。」
「じゃあお祝いさせてもらえますか？」
「ええ、ありがとう。」
kazeはとても嬉しそうなとろけそうな笑顔で言った。
「明日の夕方６時半にオフィスの駐車場で待っています。」
「うんとお洒落してしてくるね。」
「楽しみにしています。」
Ｔとの過去が完全に終わったのは
もしかしたらkazeの存在のせいなのかもしれない。
この時に私はすでに恋に落ちていたのだろうか。
出張遠征のあの晩の彼の悲しそうな横顔の為に。
いや、もしかしたら桜の花咲く頃のあの異国の地で
私は彼に抱きしめられた５分間の空白から
彼から離れられなくなっていたのかもしれない。
kazeが用意していてくれた私への誕生日の贈り物は
人工池そばの瀟洒なフレンチレストランでの美味しいディナーと
大きな花束とそれに英会話のＣＤ付きテキストだった。
ディナーの後は彼が昔から行きつけだったカクテルバー。
カウンターのみの粋なマスターがいる静かな店だった。
彼はフォアロゼスのロックを注文し
私には何か口当たりの良いものをとマスターに目配せ。
ハンサムな年下の男にちやほやされるのも悪くない。
男がこれからどんな風にして私を口説いてくるのかも大人の非日常。
私はゲームをしているような感覚で楽しんでいた。
「今宵の甘いアバンチュールのために・・・」
マスターが私の前に静かに置いた背の高いグラスには
薄桃色の液体が仄暗くロマンティックな照明を映して
口をつけるとほんのり甘くとても美味しい。
「ねえ、あのマスターには私のことをなんて話してあるの？」
絵に描いたようなシチュエーション。
完璧なバースディの夜。
この男、女が何に喜んで何に弱いかちゃんと知っている。
やっぱり女慣れしている感じだな。
なんだか可笑しくなってkazeの横顔をまじまじと見た。
「僕の大切なお客様をお連れするからよろしく、とだけ。」
「そうなんだ。まるで私達がこれから情事の楽しみに向かっていて
あなたがこの店で私を口説くんじゃないかと思われている感じね。」
と、笑った。
「口説かれてみたいの？」
と、kazeはニコリともせずに真剣な顔で言った。
私はそれには答えずに
今まで彼に見せたことのないよう柔らかな笑顔で
彼に向かって微笑んでしまったような気がして
慌てて化粧室に行こうとスツールから立ち上がった拍子に
その情事のために存在するようなカクテルのグラスを倒してしまい
kazeのパンツを濡らしてしまった。
「もう行こうか。」「ええ。」
店のドアを開けると花冷えの空気が心地良い。
「今夜はまだ時間あるのかな。」
「ええ、まだだいじょうぶよ。」
しばらく（いや数秒間だったかもしれない）経ってから
kazeはいつもの丁寧な言葉に戻って
でも私の目を見ずにこう呟いた。
「じゃあ今夜は眠らせませんので覚悟していて下さい。」
私は思わず笑って答えた。「ええ、喜んで。」
愛のないセックスは出来ない主義だから
今夜はあなたとの時間を共有するということは
私はあなたに対して愛を感じているからなのよ。
本当はこう伝えたかっただけなのだ。
もうこれで最後だから。もう一度彼に抱かれたい。
いくら心惹かれても私達はこういう関係になってはいけない運命。
だから神様、今夜だけ許して。
なんてこんな私の心の中の葛藤を
たぶんkazeは知る由もない。
優しく激しく幸せな時を過ごして
彼からの愛のメッセージを受け取ったはずなのに・・・
最後に別れるときの私の一言で
私とkazeの関係は完全に歪んでしまった。
この続きはまた３年前の明日にでも。
| 2002年04月20日(土) |
エピソード�靴泙任侶舒� |
私とkazeがそんな風な関係になったにはそれなりの経緯がある。
ボスもバケーションから帰ってきて
でもその間の１０日間は何事もなく過ぎていた。
その間に一度、高速を飛ばしても４時間もかかる場所への出張の日。
早朝からの会議のために真夜中に出発しなくてはならなかった。
私はkazeに車の運転を頼んだ。彼が断るはずもない。
真夜中の高速を飛ばしながら
私は遠くの夜景ばかり見ていた。
「soraさん。」この時はまだ私を敬称で呼んでいた。
「なあに？」
「居眠り運転防止の為に、あなたの専属ドライバーの為に
眠気も吹き飛んでしまうような話しをして下さい。」
「なにが良い？」
「うーん。例えば過去の恋話とかどうですか？」
「私はもう女を捨てているのよ。女の身体はしていてもたぶん中身は男だわ。」
「なにかひとつくらいあるでしょう？」
「男はすべてビジネスの対象。恋話なんてないわよ。」
私はちらとＴの事を想いだしたけど
努めて冷静な声を出して呟いた。
「じゃあ、soraさんは、愛がなくてもセックス出来るんですか？」
クールな声色でkazeが訊いた。
「ねえ、そういう話題って私は苦手なの。もっと他の話しをしましょう。」
「僕との事はまったく忘れてしまったんですね。」
あの異国での１週間の事は忘れた訳じゃない。
ビジネスに支障をきたすから私は心の奥に封じ込めているだけだ。
事実、昼近くにオフィスに近づくにつれて
私はkazeがいたら良いのに、とか
でもいたらどうしょう、とか
そんな事ばかり考えながら
でも、オフィスのそばの曲がり角を右折して
彼の黒いステーションワゴンの鼻先が見えると鼓動が高鳴った。
車を降りてオフィスのドアを開くまでの５分間で
私は体勢を整えて、彼がデスクから振り返る瞬間には
また元の自分に一生懸命に戻る、というサイクルを
毎日永遠と繰り返していたのだから。
「私は愛のないセックスは出来ない主義なの。」
自分の意志とは反した言葉が口をついた。
愛のないセックスができないのだから
あなたには愛を感じているのよ。
精一杯の本心だった。この時kazeには私の想いは通じなかった。
「だからもう僕とはそういう関係になれないって事ですか。」
これ以上本心をさらけ出す気にはなれずに私はそれには答えなかった。
そうとってくれるのなら今後の私達の関係がスムーズにいくのなら
それでも良いと思った。
「あなたは私の大切なビジネスパートナー。それで十分でしょう？」
kazeが私に対して好意以上の感情を抱いているとは思えない。
明晰な頭脳と端正な容姿を持ったこの男が
たぶん女には不自由しないであろうこの男が
あの異国の地で私を抱いたことは「愛情」からではないことは
既に大人の分別で経験的に知っていた。
私は私だけを愛しいと想って抱いてくれる男が
その時には必要だったのだ。
求めても手に入らないものがこの世にあることを知って
私はこの時既に失望していた。
だから
簡単にセックスできる相手が欲しいのなら
あなたは見当違いをしてるのよ。
悪いけど私はそんなお手軽な女じゃないわ。
真夜中の高速を１８０キロで飛ばしながら
私の為に不眠不休でハンドルを握るkazeに対して
こんな事を言ってしまった自分に酔いしれていた。
「それともkazeは私の玩具（オモチャ）にでもなりたいの？」
「良いでしょう。その代わり一生あなたに付きまといますよ。」
一言一言が夢の中の会話のようで
私はだんだん現実味がなくなってきて
あの遠く冷たく瞬いている街の灯りのようだと思った。
日が昇ればそれらは一瞬にして消え去ってしまう幻なのだから。
そうＴとの事もすべては幻だったのだ。
４ヶ月も会わない時間はすべて幻なのか現実なのか
この週末にすべて理解してしまった。
Ｔは永遠に私の前から去っていき
現実のビジネスパートナーであるはずの
kazeとの時間が始まった事を知った。
| 2002年04月17日(水) |
エピソード�掘� Fuck to you |
実際、kazeは表向きは私に従順なふりをしていたが
ベッドの上では私をおもちゃのように扱った。
まるで大きくてしなやかでどう猛な獣が
小さくてか弱い小動物をいたぶるように。
そしてそれは私が自ら望んでさせていたのかもしれない。
ビジネスシーンでは
彼に対してわざと冷たくあしらったり
彼より上の自分のポジションを誇示して
辛くあたったりした。
そんな日はことさら彼の私に対するセックスは攻撃的になり
そんな二人の関係を
私は快楽として受け入れていた。
私が悲鳴をあげて「もう許して。」と懇願するまで
kazeは私の肉体を翻弄した。
「ほら、こんなに濡らして。いやらしい女だな。」
「もっと逝ってごらん。何度も逝って良いんだよ。」
誰もいなくなったオフィスのデスクの上で
普段は誰も使わないゲストルームのソファの上で
或いはつけっぱなしのＰＣモニターの明かりの前で
国道に面した駐車場の片隅で
私は両足を大きく拡げられて舐められ噛まれ吸われ続けた。
数え切れないほど彼に体液を吸い取られ
そしてヴァギナの奥深くまで
興奮して怒張しきった彼のペニスで犯され続けた。
激しく責められれば責められるほど
私は強いエクスタシーに陶酔した。
私は精神的なサディストで肉体的なマゾであり
彼は肉体的なサディストで精神的なマゾであった。
つまりお互いの性癖はピッタリと相性が良かったのかもしれない。
「ねえ、私達がセックスするって英語でなんて言うの？」
微睡んだ空気の中で広い胸の上に顎を乗せながら訊いてみた。
「なんて表現したら良いんだろうか。」
「We made love.かな？」
「陳腐だ。」
「じゃあ一番ピッタリなのは？」
「I fucked my Boss...」
私は黙って彼の端正な横顔を見詰めて顎の先を噛んでみた。
あなたは自分より
偉そうな女上司をただ犯しているつもり。
じゃあ私もそれを逆手にとって・・・
あなたを私のおんなの武器で
永遠に離れられない快楽の虜にしてあげる。
あなたは私の肉体を好きにするかわりに
私の為に息の根が止まるまで尽くすのよ。
ただ・・・その時はまだ気づいてはいなかった。
私はkazeを愛し始めていたのだ。
| 2002年04月10日(水) |
エピソード�供｜砲離汽ぅ� |
帰国後まもなく私の誕生日が近づいた。
kazeとの異国での情事を引きずりながらも
私はＴと連絡をとり会う約束をした。
あれから一定の距離を保っていたkazeがある日・・・
「soraさんの誕生日もうすぐですよね。」相変わらず敬語を使う男。
「そうよ。」
「じゃあお祝いさせてもらえませんか？」
今週末Ｔと会う約束をしている。
「ありがとう。でも今週はちょっと時間がないの。」
「わかりました。予定が空いたら教えて下さい。」
金曜日、約束の時間がきた。予定より少し早く家をでた。
春の雨が降りしきる夜の国道を走る。
私の脳裏に浮かぶ男の顔は
なぜか今夜会うはずのＴではなくkazeだったのだ。
あんなに恋い焦がれたＴに会いたくない私がいた。
胸を締め付けるのはＴへの恋心ではなく
kazeに対する後ろめたい後悔の念。
「変だな私。なぜkazeの事ばかりかんがえているんだろう。」
久しぶりに会うＴは
相変わらずさわやかな印象で
それはそれで嬉しかったのだけれど
嬉しいという感情のみで
目の前の食事も喉を通らなかった。
「もし、この後この男が私を抱こうとしたら
私は一体どうすれば良いのだろう。」
目の前でもくもくとパスタを平らげる
ほんの少し前までは恋いこがれたこの男。
愛する妻と娘の事をこよなく愛するこの男。
私は一体この男のことをまだ好きなのか。
旅先の過ちであったにしても
kazeに抱かれたこの身体を
今夜、この男に差し出せるのか。
メイドインＵＳＡのＴシャツは大柄のＴにはピッタリだった。
「よくサイズがわかったね。ありがとう。」
嬉しそうにＴが言った。
「私の両腕があなたのサイズを覚えていたのよ。」
シャイな男は困ったような顔をした。
その表情で私はすべてを察してしまった。
「ありがとう。来週はsoraちゃんの誕生日だね。
何かプレゼントするよ。また連絡する。」
明日から出張に出かけるとＴは私に触れることもなく去っていった。
私の元から。永遠に。
不思議と悲しくはなかった。寧ろ安堵さえした。
もしこの店を出て「今夜時間ある？」と聞かれたら
私は躊躇なくこう吐きだしただろう。
「ごめんなさい。明日の朝仕事で早いの。また連絡するね。」
その言葉をただＴが代わりに言ってくれただけなのだ。
終局。私達の関係が終わった。もう会うこともないだろう。
私はひたすらkazeの事を想い続けながら帰路につく。
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