加藤のメモ的日記
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2010年01月31日(日) 象牙を狙われたアフリカゾウ

このまま手をこまねいていたら絶滅してしまう動物の一つとして、アフリカゾウがある。アフリカゾウは、現在生きている陸生哺乳動物の中でもっとも体が大きく、体長4メートル、体重10トンに達するものがいる。そんなアフリカゾウの唯一の敵が人間で、多くのゾウたちが象牙を狙われて殺された。

とくに1970年代、野生動物を守るための国際法であるワシントン条約の発動が裏目に出て、象牙の価格が高騰したために、大規模な密猟が行なわれるようになった。ことに東アフリカ諸国のケニア、タンザニア、ウガンダ、ジンバブエなどにおいては、4カ国の合計で年間20万頭も殺されたといわれている。

密漁者たちは、野生動物の聖域である国立公園や保護区も横行する。アフリカゾウ最大の生息地の一つといわれるのは、一万数千頭が生息するケニアのツァボ国立公園だが、この地はかってはアフリカ最大の密猟地帯だった。

毒矢があたったゾウは、何日もかかって次第にその体を蝕まれ、やがて群れから遅れはじめる。ゾウはついに動けなくなり、群れはあきらめて去って行かざるを得ない。そこで後をつけてきた密漁者はとどめを刺し、ゾウを地中に埋める。

そしてほとぼりがさめ、肉が腐ったころ合いを見計らって象牙を抜き取るのである。子ゾウをつれた母親だった場合は、子ゾウも群れから離れて母親のもとに留まる。密猟者は子ゾウまで殺しはしないが、動物園や観光施設のペットになる。たとえ野生に生き残ったとしても、一人ぼっちで残された子ゾウは、だれからも守ってもらえない。大人のゾウは敬遠する猛獣たちも、子ゾウなら襲う。

象牙を狙う密猟は無作為に、時にはその意に反して子ゾウの死を招くのである。密猟者が横行しているとはいえ、封鎖された空間で比較的保護が行きとどくアフリカ諸国の国立公園や保護区では、ゾウの頭数は増える傾向にある。

増えたゾウは大量の木や草を食べるので植物生態系を破壊してしまう。結果的にはこれは草食動物のすべてを巻き込んでしまうので、間引く必要があるという声もある。一部は真実だ。しかし、ゾウは生態系を徹底的には破壊しない。それどころか、ゾウは生態系で重要な役割を果たしていることが、先に取り上げたツァボ国立公園などでわかっている。

この土地は、ヤブだらけの荒れ地だったのだが、1948年に国立公園となってゾウが増え始めると、ゾウたちは木の葉や芽などでは食物が不足し、木を押し倒して枝などを食べ、一時的に生態系は攪乱された。そのため「増えすぎたゾウを間引く」という意見が強くなったのだが、反対者の意見も考慮して様子を見ていると、ゾウが倒した木々の後から草生え出し、ヤブは草原になっていった。

それにつれてシマウマやスイギュウなどの草食獣も爆発的に増え始めたのである。また干ばつで水が干上がると、ゾウは持ち前の嗅覚の良さで水を求め、前足と牙で穴を掘って水場をつくるため、他の動物たちも助かる。ゾウは大食漢のために一見、環境を破壊しているようにみえることもあるが、長期的にみれば環境を維持する役目もはたしているのである。



『滅びゆく動物たち』


2010年01月28日(木) 小沢氏深まる疑惑

土地購入の原資について、小沢氏は陸山会による多数の不動産取得が問題になった07年2月には、「献金してくれた皆様のお金を資産として有効に活用することが、皆様の意思を大事にする方法」と述べていた。原資は政治献金だったというわけである。

それが昨年10月、今回の土地購入疑惑が表面化すると、4億円の定期預金を担保に受けた同額の銀行融資となり、今月16日の民主党大会では、「私どもが積み立ててきた個人の資金」と変遷、23日には、「個人事務所の金庫に保管」となった。

説明がくるくる変わるのは、原資の偽装工作ではないのか。小沢氏は23日、「4億円の一部は建設会社からの裏献金であるやの報道がなされているが、事実無根」とした。しかし新聞赤旗が、中堅ゼネコン「水谷建設」の関係者から、小沢氏側に04年と05年に各5000万円、計1億円を小沢氏側に渡したとの詳細な証言を得ている。

しかも岩手県奥州市の胆沢ダム関連工事受注の”見返り”として小沢氏秘書からう要求したものだったという。こうしたゼネコンなどからの「不正は裏金」を隠すために、収支報告書には記載しなかったのではないか。「単純な記載ミス」では済まされない。


「朝日新聞」


2010年01月22日(金) ピラミッドは現代技術でもつくれない

カイロの市街地から十数キロ離れた所にあるギザの三大ピラミッドは、地上最大の建築物で、四方の地平線を見晴らす台地にある。大ピラミッドが最大の建築物であることは、今日も変わらない。古代エジプトには古い順に、古王国、中王国、新王国の時代があり、マケドニアのアレクサンダー大王に征服されたあとは、プトレマイオス朝、ローマ時代と時代が変遷した。三大ピラミッドはその最も古い時代である古王国時代、クフ、カフラー、メンカウラーの王、(ファラオ)たちによって建造されたというのが定説化している。定説に従う限り、三大ピラミッドが余りにも常識を逸脱している点が多いために、世界の七不思議の一つに数えられている。

最大のピラミッドはクフ王が建造したといわれ、そこには250万個もの切り石のブロックが使われている。一つのブロックの重さは平均2.6トン、中には16トンのものがある。総重量は600万トンを上回る。頂上に置かれたはずの冠石がなくなっているが、本来の高さは146メートルになるように設計されており、底辺は一辺が230メートルもある。

当時のエジプトには鋼、青銅、石、木材以外の道具はなかった。専門家によると世界最大の日本製のクレーンを用いても、このような切り石を持ち上げることすらできないという。驚異的なのは石積みの技術だけではない。三大ピラミッドの外装に使用された石灰岩は極めて細く、正確にに合わせるだけでも難しいのに、高精度の光学機器にも匹敵する作業が、8万5000平方メートルもの斜面全体の施されている。

また大ピラミッド内にある数十メートルある通路は何度も測定されたが、それらは完全に直角である。下降通廊の場合、誤差は5ミリ以下で硬い岩をくりぬいて作った60メートルの通廊を含めても、誤差は6ミリしかない。この技術や精度は現代をしのぐ。

ピラミッド内の岩の加工技術も無視できない。例えば、いわゆる「王の間」にある硬い花崗岩の容器は非常に高い精度で切り出されている。これほどのものを花崗岩をくりぬいて作るには、ダイヤモンド刃のドリルと2トンの圧力、そしてコンピューター制御が必要だという。エジプトでは初歩的な工具しかなかったクフ王の時代に、作業者がそれをやったとされているのである。

このようにピラミッドの技術は多くの面で20世紀の技術を凌いでいる。あの巨大なピラミッドには誤差があってもミリ単位で、古代にはあり得ない科学の知識が駆使されている。今日の建築家が認めるように、いくら何千人、何万人という労働者や奴隷を投入しようがあの驚くべき正確さで建造することなど絶対にできない。ましてや数学や幾何学を駆使した設計は、だれが行なったというのだろう。

伝統的なエジプト学の見解が怪しい。いや妄説であると言うのはまさにこの点にある。しかしエジプト学者は、このピラミッドはクフ王のものであると言い張っている。


エジプト学と考古学のパラダイム

定説に反して、地質学的にはスフィンクスがつくられたのは少なく見積もっても1万2000年の昔という結論が導き出されている。また、三大ピラミッドはの建造年代について、正史の年代の拠りどころとするのは、かなり時代が時代が下った紀元前3世紀ごろのエジプト人の神官の記録などであるが、歴代の王の名、数、治世の期間などがまちまちで、どの資料からも正確な年代は確定できない。 つまり、エジプト史の始まり、ピラミッドの建造年代、目的は不明のままなのである。だが、紀元前3100年ごろに描かれたピラミッドの絵があり、これはギザの大ピラミッドが、その頃にはその頃にはすでに存在していたことを示している。、

先史時代に現代をしのぐ高度な文明がエジプトに存在した。学者はこれほど単純明快な事実を正直見認められない。なぜか、それは歴史の教科に書かれたパラダイムに反するからである。もしスフィンクスや大ピラミッドの建造年代がさかのぼり、紀元前一万年以上のものであることが判明すると、こうしたものが石器時代の未開人たちの業績となってしまい、旧石器時代から新石器時代、青銅器時代へと文明はゆっくり進歩したという従来のパラダイムが崩壊してしまう。

この時代は石器時代で、人々は国家などとは無縁の部族で、犬を家畜し始め、石を削った矢や槍で身を守り、小さな畑で未熟な農耕をし、粗野な皮の衣服を身にまとっていたことになっている。しかしこうした常識に反して、大スフィンクスは芸術的な傑作であり、その建造には国家的な組織と専門的な技術を必要とするものなのだ。

このような巨大な建造物が登場するのは、新石器時代よりはるかに後でなければならない。青銅器時代以前に存在を認めるのは許されないのだ。


考古学者やエジプト学者は、現存のパラダイム維持に最大限の努力を払う。この暗黙の了解にあらがって、このような年代に高度な文明があったことを証明しようとすれば迫害されるのがアカデミズムの世界なのだ。20世紀、21世紀を呪縛するパラダイム、すなわち文明も技術も時代と共に一直線で進化してきたという文明の進化モデルは、このようにして温存されているのである。

かくして著しいパラダイムの影響下にあるエジプト学者や考古学者は、大ピラミッドや大スフィンクスが人類史上の黎明期にまつわるという秘密を最大限隠している。1万2000年以上も前に現代よりも高度な文明があった事実は、よくて曖昧にされるか、あるいは完全に隠匿されているのである。  P79



『この地球支配する闇権のパラダイム』 中丸薫


2010年01月18日(月) 開き直る小沢氏を追認

民主党大会は、鳩山由紀夫首相と小沢一郎幹事長のツーショットが「政治とカネ」」をめぐる重大な疑惑に包まれる中で開かれた。小沢氏の資金管理団体「陸山会」に、土地取引をめぐる疑惑で強制捜査が及んだのに続いて、大会直前には元秘書の石川知祐衆議院議員3人が一斉に逮捕されるという異常な状況である。

大会であいさつした鳩山首相は「小沢幹事長を信じております」と述べ、小沢氏は「毅然として自らの信念を通し戦っていく決意と表明。国民に対する説明責任には完全に背を向けた。小沢氏に向けられている疑惑は、他にも西松建設からの違法献金疑惑「新生党」「自由党」解党時の政党助成金の処理をめぐる疑惑がある。

鳩山首相も自らの偽装献金疑惑は「決着」したと強弁、こちらも国民への説明はなかった。異様なのは、政権と政権与党の中枢が疑惑を持たれる中で、民主党大会でも、何ら批判の声が出ず、小沢氏の開き直りを追認したことである。

問題になっているのは、公共事業にばらまかれた税金が、企業・団体献金を通じて政治家に還流するという古い自民党政治そのままの疑惑であり、税金から拠出される政党助成金をめぐる疑惑である。こうした疑惑に対して、民主党が自浄能力を示さなければ占めせなければ、新しい政治を担うどころではない。

ある民主党議員は、「民主党が野党で、与党にこうした疑惑が出た時は大騒ぎになった。それが出てこないのは、国会では圧倒的多数を握り、自民党がまったく再生の見通しをつけられない中で危機感がない」と漏らす。しかしそれはかっての自民党と同質の”おごり”である。

「小沢支配」の強まりの中、小沢氏に対する公然とした「批判」への「報復」を恐れたり、小沢氏に代わるリーダーが見つからない」という声も多数あるが、これらは、民主党の自浄能力のなさ、政党としての脆弱さをあらわすものである。

小沢氏は疑惑を持たれている土地取引の「原資」について、「積み立ててきた個人の資金であり、金融機関の名前、支店名も検察当局に返答していた」と延べた。しかし、それだけで取引期日の記載の誤り、原資の調達方法についての説明の様々な食い違いや、ゼネコン幹部の「資金提供」の証言など、とうてい「説明」がついたとはいえない。

また小沢氏はあいさつで、「検察のやり方がまかり通るなら日本の民主主義は暗澹たるものになってしまう」などとし、「参院選で勝利することが、鳩山政権の基盤を盤石にすると同時に、日本の議会制民主主義を定着させる」などとと述べた。

しかし、疑惑解明に背を向け開き直る姿は政治不信を増大させ、民主政治を根本から脅かすものである。自民党政治の転換を求める国民を裏切り、政権の基盤を動させずにはおかないだろう。



赤旗


2010年01月14日(木) 公設派遣村

公設派遣村の約600人の入所者は6日、交通費などを支給され、東京23区などの福祉事務所に行き、生活保護の申請などを本格的に始めた。中野区では日本共産党区議団が親身に相談に乗った。2ヶ月間の路上生活をして公設派遣村にたどりついた男性(47)は、幼い頃に住んでいた中野区を生活保護の申請場所に選んだ。男性は5日昼、中野区役所2階福祉事務所に生活保護の申請に行った。

「公設派遣村」の入所者だと告げると、同福祉事務所の職員は丁寧に対応。申請を受理し、手続きなどをするための当面の活動費5.000円を支給した。男性はその際、すぐ上の3階に共産党区議団の控室があることを発見。「公設派遣村」で取材を受けた赤旗記者の紹介もあり、同控室を訪ねた。

応対したのは党区議団の来住さん(62)。男性は「都から紹介されたアパートは『生活保護受給者は不可』という。私が入居できるアパートはないでしょうか」と相談。来住さんはすぐに電話の受話器を握り、知り合いの不動産関係者を探し始めた。

生活保護受給者も入居可というアパートが見つかったのは同日夕方。男性に携帯電話で連絡すると男性は大喜びだった。男性は翌6日、中野区役所の福祉事務所に行き、前日申請が受理された生活保護について、調査員から聞き取りと説明を受けた。

保護費は月額合計約14万円(アパート代を含む)その他、敷金・礼金・布団・家具代の実費が合計約30万円(上限)支給される。12日に支給開始予定と告げられた。男性は答えた。「共産党に相談して本当によかった。臨時宿泊施設の大部屋で昨日夜、たまたま隣になった男性がいます。彼は墨田区に生活保護を申請したと言ってた。彼にも共産党区議団に相談するようにすすめたい」と語った。

相談に乗った党区議の来住さんは「公設派遣村」から26人の入所者が6日から8日まで、中野区に生活保護の申請にやって来ると聞いた。大変な思いをして来た入所者達を私たちも全力で支援していきたい」と話していた。



赤旗


2010年01月13日(水) 小沢幹事長に聴取要請

小沢氏が陸山会の収支報告書に不記載となっている4億円を、個人的に用意したとすると、この巨額資金をどこから調達したのかという新たな疑惑が生じる。国会議員の所得公開によると04年までの10年間で小沢氏の収入合計は約3億5千万円である。常識的に考えても歳費など個人所得だけで4億円を用意することは不可能である。土地購入問題に絡んで東京地検特捜部が、ゼネコン幹部らの事情聴取を行なっているという。

特に小沢氏の地元、岩手県で建設中の胆沢ダム関連工事の受注業者や下請け業者から詳しく聞いているという。赤旗日曜盤では水谷建設が胆沢ダムの下請け工事受注をめぐり小沢氏側近に現金5千万円を2回、計1億円を提供したという、同社関係者の証言を報じている。

ますます深まる小沢氏の「政治と金」の疑惑。小沢氏は「収支報告書の単純ミス」だと語っただけである。しかし、それではとうてい説明責任を果たしたとはいえない。資金の出どころは何か、土地取引にどう関与したのか、明確な説明が求められている。

●石川議員再聴取へ。
小沢一郎氏の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる問題で、東京地検特捜部が6日までに、同会の事務担当者だった石川衆議院議員(36)に2度目の事情聴取を要請しいたことが関係者の話でわかった。

石川議員側は、連休明けの12日にも再聴取に応じる意向を示したという。石川議員はこれまでの聴取に、陸山会が200年に土地を購入した際、同会の口座に入金された約4億円について「小沢氏から借り受けた」と供述。

特捜部は再聴取で、改めて一連の資金移動への小沢氏の関与について説明を求めるとめられる。石川議員側は昨年末に行なわれた事情聴取で、4億円の入金が同会の政治資金報告書に記載されていなかった点について、「意図的に記載しなかったわけではない(05年の)衆院選出馬などで忙しかった」として、記載ミスだったと説明していた。再聴取で特捜部は、不記載が故意ではなかったのかについても改めて事情を聴くという。

朝日新聞


2010年01月12日(火) 剣と寒紅

三島さんの執筆姿、出来上がってゆく生原稿を見るのは初めてだった。愛用の太めの万年筆で、力強く、どんどん書いてゆく。殆どそのまま、編集者に手渡すのである。訂正がない。あっても原稿用紙1枚の中で一割足らずである。字体は流麗な角張り方で、勢いがある。のちに三島さんは剣道も身につけてゆくが、あの刺子の紺の剣道着の感じ―けじめを重んじた、凛乎とした文字である。

時々、ここ読んでごらんという。私の感想を聞くというよりは、二人の間にとどこおる空気をほぐすためのようでもあった。「悠一の中には君のことも書いてあるよ。どこか、わかるかなあ」と笑いながら言う。あの憧れの小説「禁色」の生原稿が、目の前で製作されていて、しかも混合折衷された主人公の一部に私も入っているなどとは、数か月前には考えもしなかった。

願ってもないことが、とは言うものの、空しく、白々と疲れている私には、それが嬉しいとも、何とも感じられなくなっていた。小説は、ちょうど、悠一と、悠一を愛する鏑木夫人が、東京の春先に吹く空っ風の中にいる場面で、雄一は主に見られる側で、鏑木夫人の心理描写に重点が置かれていた。

「悠一がこのプラム入りの温かいプディングを見る見るうちに平らげる子供らしさに、彼女は救われたような心地がした。自分の掌から飴を食べるこの若い小鳥のなれなれしさ、硬い純潔なくちばしが掌をつつく快い痛さ」という部分は、その時わかった、梓氏や倭文重さんからよく指摘された、私のあわただしいもの食べ方を下敷きに、これは大変、美化してあるのだと。

「いかなる贅沢にも華美にも一向おどろかず、しかも決して、わざとおどろくまいとしている貧しい虚栄は見られない。何もほしがらないので、すべてを与える気になるが、ついぞ感謝の色は窺われない。たとえ長袖者流の附合へ連れ出しても、この美しい青年の育ちの良さと惑ひ気の皆無は、人をして真価以上に買いかぶらせる。おまけに悠一は精神的に残酷だった。これが信孝の幻想を、必要以上につのらせた理由である」とあるのも、私がモデルであることがわかる。育つの良さが皆無とくるのである。

銀座で食事をする時も、三島さんは、「これタンといって、牛の舌なんだぜ。これで牛の一匹分なんだから、一番高い料理なんだよ」などと説明していたが、(食い者の値段など聞きたくない)という私の気持ちだったから、ついぞ感謝の色は窺われないとくるわけだ。そう見えたのだろう。ただ、これで私は、その後、何十年も(皿一枚分の一人前が牛一匹分)と思い込んでしまったのだが。

三島さんと、或るビアホールに行った時、つきだしは、とウエイトレスが聞くので、三島さんが何でもいいと言うと、彼女は「それじゃ、柿の種を持って来ましょうね」と言って去った。三島さんは驚きの目を見張り「へぇー、君、ここじゃ、柿の種を食べさせるんだって。あれ、食べられるのかい」と言うし、私も、柿の種がアラレの一種と知らなかったから、一緒に驚きの表情をして見せたのだったが、卓上に置かれたのは……この時、二人とも「ああ、これが」とも何とも言わずに食べた。

自分たちの無知に、改めて感心したくなかったからだろう。私の無知は別格として、三島さんにも、そんな「半可通」や「エアーポケット」の部分があった。


『三島由紀夫』


2010年01月11日(月) 聖徳太子の謎

……非実在説もある聖徳太子を巡る「自殺」「心中」「怨霊化」の真相とは

飛鳥も奈良県である。このあたりを舞台にした最大の歴史ミステリーに、聖徳太子の存在がある。非実在説を唱える人もいるが、太子の実在は日本書紀などの文献ばかりでなく、法隆寺などの書庫物件が証明していると思う。

聖徳太子は「憲法17条」で、日本人の本質を的確に示した。実はこれは日本人の談合体質を初めて指摘した貴重な史料でもある。外交では「日出る処の天才」という書き出しの国書を隋(中国)に送り、「日本という国(これが国号の由来だと私は考える)を東アジア世界に知らしめた。しかし、その最大の謎はなぜ、死後「聖徳」大使と呼ばれたかということである。

当然ではないか、「とてつもなく偉大な太子だったからだ」というのは、実は日本史のルールが分かっていない。むしろ「不幸に死んだ」人間であればある程、その鎮魂のために重々しい称号で呼ばねばならない、というのが日本だ。

だからこそ「聖徳太子は怨霊である」と喝破したのが梅原猛である。聖徳太子は曽我氏によって子孫を絶滅させられた。そのことによって太子は怨霊化したと考えられるということだった。私も大使は不幸な死を遂げたのではないかと思う。大使の遺品ともいうべき玉虫厨子(国宝)には「身を捨てて仏教の教えに従う」という二大説話が描かれているのだが、これは身もふたもない言い方をすれば両方とも「自殺」の話である。

一方、伝承では聖徳太子はある日妃と共に寝所に入り、再び起きてくることはなかったという。普通に考えれば「心中」であろう。そして、その相手の考えられる膳妃(かしわでのひ)と、太子は同じ墓に合葬されているのである。

人物をその器量に応じて単純に讃えるのではなく、むしろ不幸な死を遂げた人々が怨霊化するのを防ぐために「聖徳」や「崇徳」などの「佳名」を死後に贈るのが日本のルールなのである。


週刊ポスト


2010年01月10日(日) 戦争の仕掛け人は

アメリカ第32代大統領のフランクリン・ルーズベルトは、おそらく歴代大統領の中で、最も偉大な大統領の一人であろう。彼は1929年の大恐慌のさい、ニューヨーク州知事として革新的行政を行ない、1932年現職のフーバーを破って当選した。彼の選挙公約は「ニューディール」であった。これは不況克服のため、政府が積極的に介入して、いわゆる自由主義経済に大きな修正を加えるという政策である。

まず銀行・通貨の統制、経済的に危機にある企業の救済、農業の救済、労働法の改正による労働者の救済、失業者に対する社会補償などがあげられるが、その重点は、基礎工業部門振興のための公共事業への投資など、多額の政府資金をばらまくことによって人為的に景気を回復することにおかれた。

この資金のばらまきは、造船所にも行き渡り、新主力艦をはじめ多くの補助艦艇の建造が始まり、錆びついていたクレーンも唸りだした。確かにアメリカは、ルーズベルト大統領のの一連の政策によって再起したかに見えた。だが、失業者はまだ多く残っていた。ニューディールには、やはり限界があったのだ。

つまりニューディールの改革と復興といっても、それはあくまでもアメリカの寡占企業体制の中の試みであったし、世界経済事態が復興していなかったことから、膨大なアメリカの供給力に対して見合う重要市場が成り立っていなかったからである。そのことが800万〜1.000万人の失業者となって現れ、完全雇用という彼の公約は、すでに破綻しつつあった。

アメリカは、独占資本家からブルーワーカーにいたるまで、需要の拡大を望んでいた。だがその膨大な需要は戦争以外になかったのである。その需要を呼び起こしたのは、結果的には日本とドイツであった。というよりも、この2国がアメリカの完全雇用の踏み台にされたということである。

日本とドイツは、それぞれヴェルサイユ体制ないしワシントン体制によってがんじがらめにされ、生きるためにはいわゆる侵略と非難される行動をとらざるをえないほどに、がんじがらめに追いつめられていた。その日独を追いつめた元凶は、といえば世界の自由主義体制の制覇を維持しようとしていた一握りの集団である。

彼らもまた戦争を望んでいたのだ。ただ、みずから戦争をはじめるという愚かさを避ける狡猾さだけは、失っていなかったのである。ルーズベルトは、その一握りの集団の意向を体現するために再選、そして三選されたのである。

…………

太平洋戦争で、在来型戦闘機に一大変革をもたらし、ついに日本を敗北に導いた兵器といえばレーダー(電波探知機)であろう。電波を発信して物体に当て、その反射した電波をキャッチして、その往復時間とアンテナの指向性とから物体の位置を測定するのが、いうなればレーダーの原理である。

この原理は、電波の発見(1886)以来すでに知られていたことであり、またそれに用いる指向性アンテナは、昭和元年(1926)東北大学の八木秀次、宇田新太郎博士によって発明されていた。

この原理と指向性アンテナとを兵器に利用したのは、イギリス(1935)であり、アメリカ(1936)であった。もちろんドイツも第二次大戦中に開発、使用していた。一方、日本ではこの新兵器の開発が遅れたために、苦戦を強いられることとなった。

アメリカ海軍のレーダーのため、日本海軍が最も得意としていた駆逐艦や水雷戦隊が夜間、敵艦隊に接近し、魚雷で敵艦に多大の損害を与える夜戦が無意味となり、また海空戦でも索敵能力に大差をつけられた。それらが、いずれも日本海軍の敗北につながっていたのである。

ところがこのレーダーも、日本海軍がアメリカ海軍はもとより、イギリス空軍よりも一足お先に使用できるチャンスがあったのだ。というのは、戦前アメリカの発明家はせっかくの発明が、軍はもとより民間航空会社からも相手にされず、経済的にも落ち込んでしまったことがある。そこで日本海軍に買ってもらおうと考えたのである。

その時の売値は30万円だった。つまり戦闘機数機分の金額である。というよりも、当時の銀座の土地数十坪分といったらよいかもしれない。だが海軍の艦政本部や航空本部のお偉方は、レーダーの原理がわからず、技術スタッフもすったもんだして一年ほどたった頃、イギリスでレーダーを本格的に採用するという情報をキャッチしたアメリカ軍部が、急いでその発明を買い取ったのである。チャンスの女神は連合国に乗り換えたのだ。


『太平洋戦争の謎』


2010年01月09日(土) 不動産ファンド

架空の不動産ファンドへの投資名目で金をだまし取ったとして、福岡県警生活経済課などは8日、詐欺容疑で、福岡市中央区の建設会社「東菱興産」(とうりょう)元社長、村上恭一容疑者(56)同区梅光園、ら2人を逮捕した。同課によると、「金を預かったが返していないだけ」と2人とも容疑を否認している。

同社は2004年7月以降4年間で福岡、熊本、兵庫各県の42人から投資名目で計6億5千万円を集めたが、うち3億8千万円が返還されていないという。逮捕容疑は07年5月〜08年3月「年6%〜10%の配当を払う。元金も必ず返す」などと偽って架空の不動産ファンドに出資するように勧誘し、福岡市内のビルのオーナー(77)ら女性計3人から計2600万円を詐欺した疑い。



読売新聞


2010年01月03日(日) テロ戦争で荒稼ぎする奴ら

ブッシュ政権が軍事一辺倒でテロとの戦いに突き進むようになって、ボーイングとロッキードの契約受注は年間何十億ドルも増えた。2002年財政年度に三大兵器メーカーが国防総省から受注した契約の総額は、410億ドル以上。ロッキードは170億ドル、ボーイングは166億ドル、グラマンは78億ドルだった。

軍用の簡易食やライフルからミサイルまで、国防総省が支出する予算の4分の1を今やこの3社が得ている。ビッグスリーはかってない政治的な影響力を駆使して、国防総省予算に占めるシェアをさらに伸ばし続けるだろう。とくにそれが顕著なのは、最近TRW社を傘下におさめたグラマンだ。TRWは宇宙関連の有力な軍事企業で、2002年には国防総省から20億ドルもの契約を得ている。

ビッグスリーは、国防総省だけでなくアメリカ連邦政府のさまざまな機関に食いこんでいる。その契約内容は空港警備や国内監視に始まり、実に多岐にわたる。ロッキードとグラマンは、沿岸警備隊の兵器と通信の改良に関して大規模な契約を結んだNASAもビッグスリーの上得意だ。ロッキードボーイングの合弁企業であるアライアンス社は、スペースシャトル運用業務をNASAから委託されている。

ロッキードは、国防総省などの軍関連機関のために核兵器を開発、試験、製造するエネルギー省核安全保障局(NASA)の有力受注企業でもある。コンピューターによるシュミレーションで新しい核兵器をテストしているネバダ試験場の運営も、ベクテル社と組んで受注している。国土安全保障局、NASA、エネルギー省の核兵器関連施設、さらには内国歳入長などのひ軍事部門からも納税者の血税を吸い上げていることを考えると、ビッグスリーが国防総省から得ている年間410億ドルなど、連邦政府がこれらの企業に惜しげもなく大盤振る舞いしている金のほんの手付け金ほどでしかないことがわかる。

連邦政府との契約で得ている金額は、ロッキードだけで毎年200億ドルを優に超える。この金額は連邦政府最大の福祉プログラム「貧困家庭一時扶助」に例年使われる金よりも多い。ビッグスリーがブッシュ政権の大規模な軍事増強の恩恵を受けられるのは、クリントン政権がポスト冷戦期の軍事産業の大合併を後押ししたためだ。このため大手兵器メーカーはますます膨張した。

歴史上最も高価な戦闘機であるロッキード社のF22は1機2億ドル以上。空母や潜水艦の値段は約20億ドル。第三世界の中には、国全体の軍事予算が20億ドル程度という国あるというのに。軍事産業は国防総省や連邦議会とのコネを使って政府の予算案や議会の修正により、冷戦の遺物に国の金をつぎ込み続けさせることができた。

つまりペリーとクリントンは本当によかれと思って取った行動なのかもしれないが、実のところはロッキードやボーイングなどのような企業をさらに潤わせただけだった。この企業再編の中でボーイングはライバルのダグラスを呑みこんだ。クリントン政権の合併助成策のもとで軍事産業は甘い汁を吸ったが、工場の従業員は話が別だ。

合併補助金の実体は「レイオフのご褒美」に他ならない。要するに会社側は合理化という名目のレイオフを行なうことで助成金を受け取るだけでなく、人員整理によって浮いた金を国庫に還元する責任を負っていないのだ。かくして何万人もの労働者が職を失う一方で、ビッグスリーは政府の助成金をちゃっかり手にしたのである。


『ブッシュの戦争株式会社』


加藤  |MAIL