アイデンティティー

2002年05月01日(水) 役立たず




何度も


何度も


聞いてしまいました。







軽口で済ます事も


素直な言葉を吐き出す事も


出来なくなった二人が造った


小さな静寂。








本当にさり気ない




"じゃあ、おやすみ"



'また'




なんていう常套句さえ


付かなくなった


二人の挨拶。











沈黙の代わりに聞こえた


車の音。






どうして、

何故ですか?





左の耳に

直接聞こえた

独特の排気音を出す車が

通り過ぎる音。




右の耳に

受話器越し

全く同じに

独特の排気音を出す車が

通り過ぎる音。







どうして


私のスグ近くを通った車の音が


全く同じに


あなたの沈黙の代わりに


応えるのですか?





"俺は近くのツレの店に軽く飲み行くから。


気を付けて帰れよ。


じゃあ、おやすみ"






そう言って、


同じ道を別にしたじゃない。







私が同じ道に戻ったのは

あなたに伝えたい言葉があったからで。




伝えたい言葉を決心に変えて

先刻の道に戻ったのは、

確実に

10分以上時が経った

後の事で。






待っていたように


電話に出ないで。





アタシの言葉埋めようと


そんなに喋らないで。






伝えようとした言葉も

飲み込んで、

聞いてしまいました。




何度も


何度も。





彼の沈黙の代わりに答えた

車の音。




二人の耳に響く

同じ車の音。






"お前の友達に会うのも酒も久々だしさ、

楽しいかなーと思って"
















それだけ?
















耳の奥に残る

痛々しい車の響く音。





















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桜木 舞 [MAIL]