肩の力を抜くのと、手を抜くのは違う。

　リビングの入口へついて「こちらです、どうぞ」と、愛想笑いとともに促すと、穐田さんは志郎が料理をテーブルに並べている姿を認めて、「……こいつか」と、低く言い放った。
「彼がキミの恋人？」
　確認を促され、「はい」と頷いたら、
「確かにキミ相手じゃないと、あんなすごい奴は幸せになれないだろうな」
　と、不躾な評価をいただいた。
　えぇっ、と度肝を抜かれるも、うしろにいたコータがすかさず穐田さんの頭を引っぱたいて黙らせる。
「先輩、なにいきなり失礼なこと言ってんすか。いいから入れ、こら」
「い、いたい。やだ、殺される」
「それ以上なにか言ったら、俺が貴方に地獄を見せてやりますよ」
「天国にしろよ……」
　コータがまた穐田さんをぶつ。


　…この冊子は理科の教科書のようなすごくいい匂いがします。

【Animate Selection ［jewel］】

「次はキリンを見に行こうか」と先生が言って、俺は頷いて先生の手を繋いだ。
　はっ、と驚いたように振り向いた先生が、照れくさそうにはにかむ。

　俺から触れて想いを伝える、というこんな些細なことに、先生が喜んでくれたのがわかる。

　……あ、やっぱり俺、もらってばかりなんだ。

あさ。