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2003年05月31日(土) 消えゆく思い/Life goes on

大事なものが消えて、
大事なものがもうひとつ消えて、
また、大事なものが消えていこうとしている。

もう何もすることはできない。
消えるのに任せるだけ。
つなぎとめる手には握り返す力も感じられない。

後悔の言葉も、努力しつづけることも、
もう何の意味もなさない。
苦しみながら去っていくのを、ただ見送るだけ。


いっそ、大事と思えるものを今すぐに全部捨てて、
安い消耗品といれかえてしまえば
気が楽になるのかもしれない。

最初から消えるとわかっていれば、
未練なんてあるはずがない。
大事にすらしなくていいのだから、気楽なものだ。

とりあえず、ここに座って
全てがなくなるのを見届けようと思う。
今動いたら、ひきとめてしまいそうだから。

すり抜けて落ちていくことが、わかっていても。


BGM : Flight 602 - Chicago

「僕はただ、満ち足りた人間になりたくて、
 そしてほんの少しだけ自由になりたかっただけなんだ。」







外に出たくない気分でも。

軽いめまいがしても。

言いたくないことを言わなくてはいけなくても。

会いたくない人に会わなくてはいけなくても。

不利な状況に飛び込んでいかなければならなくても。

いつものようにいつもの人に否定されても。

星占いと逆のことしか起こらなくても。

求めるものがそこになくても。

誰のためにもなれないことに気づいても。

生きていくための理由がどこにもなくても。


生きていかなくてはいけない。

生きていかなくてはいけない。


BGM: Sweet Lies - Robert Palmer



2003年05月30日(金) No one to love me./今を、越えるために。

昨日、自分の親が僕のことを

「あんなやつを好きになるやつなんていない」

というのを聞いて、
僕は何も言うことができなかった。

普段は適当に聞き流すのだけど、
落ち込んでいるときだったから、
さすがにちょっとこたえたよ。


自分を好きになってもらいたくて
誰かに何かをしたり言ったりしてるわけじゃないのだけれど、
見ず知らずの他人ならともかく
自分の親に断定的に言われると、ちょっと困っちゃうね。

彼らの言うことは大抵間違っているから
いつもなら何も言わずににやにやしているだけなんだけど、
今日は言い返す言葉も根拠も一つも思いうかばなかった。


僕は本当に好きになってもらえるような
人間ではないのだろうか?
きみも本当は、そう思っていたのかな。

だとしたら僕は、どうすればいいんだろう。


BGM: The Want of a Nail - Todd Rundgren






昨日。

人の、

身勝手さ。
やさしさ。
言葉。
他へむけられた愛情。
気遣われすぎた思いやり。

自分の、

無力さ。
バカさ。
後悔。
信頼。
友情。


それらすべてが、自分を貫き、
ズタズタにした。

朝はいつもどおりやってきて
やるべきことをやれと命令するけれど、
手元がまだおぼつかない。


認めるよ。今の僕は、ボロボロだ。
正直言って、誰も信じたくないと思っている。

だけど、これはきっと乗り越えないと
いけないことなんだと思うから、
あせってきめつけちゃいけないと思う。


何を言っていいのか、悪いのか。
何を自分にとりいれるのか、とりいれちゃいけないのか。

辛い言葉でも、受け入れていいのかどうか。
やさしい言葉でも、言わないでおくべきなのかどうか。
学ぶために。


このままつぶれるわけにはいかない。
もう少し心に体力をつけたら、元に戻るつもりだ。

昔ほど強くない。
でも、少しずつ。急がずに。
強くなるつもり。


だけど、今はまだ強くないから。
気が済むまで泣くことにするよ。
今を超えなければ、いけないから。

こんな泣き方はこれで最後にする、というと
嘘になりそうだからまだ言わないでおくよ。


BGM : Countermoon - Donald Fagen

「あなたは私のジャッキーじゃない。
 ジャッキーは、最高だった。」



2003年05月29日(木) pursuit of happiness/勇気ある人たち

結婚式で、花嫁である私の友人から
ブーケを渡された。

みんなの前で
「次に幸せになるのはあなたよ」
といわれ、心の中で苦笑いした。


たぶん、私がつかむ幸せは彼女とは違うものだ。

私が一緒に幸せな人生を歩みたいと思う相手は、
ある条件が備わっていないといけない。
でも、その条件を満たさせることは、
その人が築いてきたものを捨てさせることでもある。

あまりにもわがままな願いだとわかってはいるけれど、
そうしてもらえなければだめだとわかった。
だから、彼女のつかんだような「幸せ」は
あきらめようと思っている。


でも、それは決して
幸せの追求をやめたことにはならないよね?

やりたいことはいっぱいある。
見たいものも、知りたいことも。
他の人と同じ人生を歩まないからといって、
それを恥じる理由はどこにもない。
私は、誰とも同じにはなれないのだから。

ひどく落ち込むかもしれないし、
窮地に立たされるかもしれない。
だけど、すがれる人がいなくても、
周りに流されて仕方なく選んだ選択肢でなく
自分で選んだ選択肢ならばちゃんとむきあえると思う。


でも今は、心をもう少し休めてから
先のことを考えることにしよう。
あともうしばらくの間、自分にはやさしさが必要だ。


BGM: A Dream Goes on Forever - Todd Rundgren






今まで子連れ夫婦を見ても
なんとも思わなかったけれど、
実は彼らはものすごく勇気がある
人たちなのではないかと思えた。

自分のこの先の人生を相手にゆだねて、
相手の血筋を丸ごとうけいれて、
そして、新しい命を作りだした。
一歩先に、過酷な運命が待っているかもしれないのに。

自分の血筋を否定しつづけてきた今の私には、
とてもできないことだ。


子どもが持っていたおもちゃが
こちらに飛んできたのでひろってあげたら、
お父さんがやってきた。

彼は笑顔で「ありがとう」と言い、
お母さんも微笑みながら会釈してくれた。

勇気ある人たちは、笑顔も素敵だ。


私もあなたたちと同じような笑顔になれる日がくるだろうか?
そう思いながら、私は彼らと逆方向に歩いていった。


遠ざかる子どもの笑い声が、天使の笑い声に聞こえた。

私も思わず笑顔になった。


BGM: Tomorrow's Girls - Donald Fagen



2003年05月28日(水) No Excuses./「よくない」天気のほうが好き


久しぶりにマイケル・フランクスのアルバム
"Blue Pacific"を聞いた。


これを買ったのは何年前だったかなぁ、と
ケースを裏返してみると、どうやら1990年頃らしい。
たしか、TRの曲をはじめて聞いたのも
この頃だったような気がする。

CDプレイヤーに久しぶりにおいてみて、
今も変わらず"The art of love"が
大好きなことを確認した。


理屈とか、テクニックとか。
前と比べてどうとかじゃなくて。
ただ、聞きたいから何度も聞いた。それだけ。

なのに、私はこの数年間、
他人の意見に振り回されすぎていて
このアルバムをちゃんと聞くことができなかった。
なぜ好きなのか、言えなかったから。

でも、そんなのはやっぱりおかしいよね。
そういうふうに聞きたい人には
勝手にそうさせておけばよかっただけで、
自分まであわせる必要はなかったんだ。


意地悪な笑いや、他人の妬みを
自分の判断材料にして、どうする?

自分以外の人の言葉だけで
自分の気持ちを決めてどうする?


このアルバムを初めて手にしたときと
同じくらいの力が取り戻せたら、
自分にとって一番いい答えが出せるような気がする。

そして今度こそは、理由付けも
言い訳もしないようにできればいいと思う。






くもりのほうが、太陽の光が強すぎなくていい。
雨のほうが、傘で身を隠せるからいい。
今日みたいなくもりで冷たい風の日は特に好きだ。


くもりや雨の時のほうが気持ちいい人もいるのに、
どうして太陽が出てる日が「いい天気」で
そうじゃないときは「いい天気じゃない」んだろうか?

今の私には、まぶしすぎる晴天よりも、
少しやさしい光のほうが心地良い。


まだ、太陽の下を歩く気分になるには
時間がかかりそうだ。



2003年05月27日(火) テーブルクロスのつぶやき/Better leave it unsaid

テーブルに布がかかっていて
足元が見えなくなると、
なぜかみんな、急に足元がだらしなくなる。


靴を脱いだり。
足をかいたり。
微妙なリズムをとったり。
足をぶらぶらさせたり。

スカートなのに両膝を離して座ってみたり。
むかいの人の足をけったり。
隣の人のひざをなでてみたり。
ひざごしに何かが書かれたメモを渡してみたり。


これが本音?
これが本当のあなたたち?

布の上はみんな綺麗なのに。
布の下はなんてまあ。まぬけな姿。


テーブルクロスが、
必死で笑いをこらえてるよ。

「どういうふうに育ったらあの子は
 あんなに上品なふりができるんだい?
 クロスの下じゃとんでもないぜ。
 で、お前が好きな子っていうのはどれなんだい?」






「あの時、あなたが必要だった」と
後で言われても困る。

もともと私は誰かに必要とされているなんて思っていない。
だから、匂わされても暗示されても
気づかないふりをする。
勘違いだけはしたくないから。


それで何度か大事なものを失ったけど、
たぶんそれはそういう運命だったんだと思う。

だって、その人が私のことがわかっていれば
そういう言葉はすぐに信用しないってわかるはずだもの。
自分じゃなくてもよかったんだ、って
思わされるのを一番恐れている人間だから。


否定して、否定して。否定しつづけていたから。
「そこにいてもいいんだ」っていう言葉を。
その言葉を一度信じたら、
そうじゃなくなったときにどうすればいい?

「ずっとここにいてほしい」という言葉さえ、
何度聞いても嘘だったことがあったんだから、
ただ「そこにいてほしい」んなら
最初から聞こえなかったことにしたって別にいいじゃない?
いつかはいなくてもよくなるんだから。

一人になるのはかまわない。
でも、一人にされるのはあまり好きじゃないんだ。
だから、言葉にしようとしない
本当の気持ちとやらに耳を貸すつもりはない。
後から言うくらいなら、忘れたほうがいいね。


……今は誰にもやさしくできないんだ。
だから、もう少しだけ眠らせてほしい。



2003年05月26日(月) 愛されたことのない子供でも、走りたくなる気持ちは抑えられない


少しずつ、感じていた。
あの人が誰かに似ていること。
でも、今の自分ではありえない。

それが誰なのか気づいたとき、
少しずつ気持ちに変化は訪れた。
でも、今さらそれを取り戻すことはできないと
その考えを否定した。


昔の自分と同じような負けず嫌いな部分と
自信のなさを持っているあなたを見ているうちに、
自分がずっと変わりたかった、
いや、本当は障害や困難と戦う力を持っていた頃の
自分のままでいたかったことに気づいた。

元に戻る為の鍵のありかまで
光をあててくれただけでも
感謝しなくちゃいけないから、
あなたの幻影に頼るのはもうやめるつもりだ。


封じ込めていた過去の箱をあけてみると、
ずっと昔に障害にあたったときに
何度も心に念じていた言葉が出てきた。

「山や海も、自分にとっては道でしかない。
 私なら、いつか乗り越えられるから。」

あの時、本当は怖かった。
だけど、ここで笑えなければ
終わりだと思っていたから、
走り出すのを止められなかった。

何度も押しつぶされていくうちに
立ち上がる力をなくしてしまったけれど、
もう一度挑んでみようと思う。

昔の自分に、もう一度会うために。
そして、なり得たはずの自分に会うために。



2003年05月25日(日) All by myself


星占いに、
昨日は自分の本質を見極める日だと書いてあった。


自分の本質。

それはやはり、孤独な人間であることだと思う。
何が起こっても、誰といても。
それがわかったから、
もう何にもよりかからないことにしようと思う。

もし何もないままそれに気づいていたら、
二度と立ち上がれなかったと思う。
だけど、何かによりかかる安心感と暖かさ、
そしてそれを喪失した時の恐ろしさを知った。

だから自分を支えるものを身につけないと、
自分を頼る人と共倒れになったり、
足をひっぱるものに負けてしまうことを思い出した。


私は戻れるだろうか?

不安や孤独、今よりも多かったしがらみと戦いながら、
必死で自分の足で立って笑顔で歩いていた頃の自分に。
過去と自分の無力感に押しつぶされる前の自分に。

今ならまだ、引き返せるかもしれない。
あの頃と同じくらいの力はないけれど、
とりあえず、今の重さを抱えながらでも
立ち上がれる力を出せるようになろうと思う。


自分にまだ立ち上がることのできる足があることを
思い出させてくれた、あなたに感謝したい。
やっぱりあなたは素敵な人だ。

あなたが他の誰かを見つける頃までに、
私も何かを見つけられればいいと思う。


とりあえず今は、TRの歌を聞きながら
再び力が出るその日を待とうと思う。

自分の力で

立てるようになったら、歩けるように。
歩けるようになったら、走れるように。
走れるようになったら、飛べるように。

なれたらいいと思う。

うまくいくかどうかは、
とりあえず今は考えないようにしよう。



2003年05月24日(土) one regret, one determination/衝動

入院している友人のところへいった。
友人はだいぶ回復しているようで、
もう起き上がれるようになっていた。

私がほっといてごめんね、と言うと、
助けを求めなかったのは自分なのだから
あやまる必要はないと答え、
むしろ顔色の悪い私のほうが心配されてしまった。


ここしばらくのことを聞かれ、
仕事や家族とのトラブル、
最近読んだ本のこと、
そして子猫との別れのことを話した。

友人は、私が黙り込むと
ただだまって手のほうを見つめ、なでていてくれた。
私が今の自分の表情を見てほしくないのに
気づいてくれたようだった。


幸せになろうとしたから、
欲しい物を手にいれようとしたから、
罰をうけたのかもしれない。
そう言えばきっとこの人は
「そんなことないよ」と言っただろう。

だけど、今の私には
そんな言葉は何の意味ももたない。
そうでないのなら、
なぜこんなに人との出逢いを
後悔しているのか理由がわからない。


私の周りには、少ないながらも
大事にしないといけない人がいる。

これからは、彼らのことだけを考えて生きよう。
腕に重ねられた手の暖かさを感じながら、そう思った。
新しい出会いは、あくまでも自然に任せよう。


そして、それでもまだ余裕があるようだったら
自分の未来のことも考えることにしよう。

ほんの少し、光が見えてきた気がするから。






まだ話したいことがたくさんあるのに
これで本当にいいのか、と思った瞬間に
またしてはいけないことをしてしまった。

壊したのは自分のほうなのに、
何をやっているのか自分でもよくわからない。
きっとむこうも迷惑しているだろう。

いい加減大人にならなきゃ。
今度こそ本当に最後。

。。。というか、仕事しろ自分。(苦笑)
他の人のことを考えようって言った初日から
締め切り破ってどうするよ。(^^;


2003年05月23日(金) natural likeliness/sleeping with the past

傷つければ傷つけるほど、
憎むべき存在に似てくる自分。
「きみは本当にあの人にそっくりだ」と
言われるのが、何よりも苦痛だった。

それでも彩ろうとすると、
その存在そのものが
私の奧で笑いかけてくるのが
いやでたまらなかった。

外見、しぐさ、歩き方、声。
ふと発した言葉。特有の考え方。
時々あらわれては消える、
狂気。プライド。貪欲さ。
すべてが、彼らと似ているという。
それが恥ずかしくてたまらなかった。


あともう少しすれば解放されると
思おうとしていたけれど、
解放される時なんて
本当は来ないことくらいわかっていた。
それなら、しがみついているものや支えるものが、
あってもなくても同じなのではないかと思えた。

だから、破壊できるものは
破壊しようと決めた。
それでも壊れないものがあるなら、
手元においておこうと思う。


もう誰も、まきこまない。

私の人生に。






きみにとっては、僕のしがらみが
過去のものに見えるかもしれない。
でも僕は毎日罪の意識に苛まれつづけている。
だからこれは、過去ではないんだ。

自らが存在しつづけることが
一番の自分への拷問だなんて、
きみにはきっと
理解できないことだろうね。


自らの血を愛し、自らの遺伝子を愛せる
そんなところの生まれではないから、
そうできる人には心を閉ざしつづけてきた。
たぶん、きみにもそうしていた。

自分と同じような感情を持つ人間なんて
この世にはいない。
それがわかっただけでも、
きみに出会えてよかったと思う。


同じように思える人もいなくはなかったけど、
彼女は僕より先に自滅した。
この世に未練を残した僕に
「裏切り者」という言葉を残して。

どうせ苦しむなら、
誰もまきこみたくはない。
だからこれからは、
無駄に動き回るのはやめることにするよ。


生きたいわけでもない。
でも、死にたいわけでもない。
僕はただ、最後の審判を待ちたいだけ。

静かに、ひっそりと。
もう自分を恥じなくてもいいと思えるその日まで。
本当に心の底から笑えるその日まで。


足かせが全て外れるその日まで、
僕はしばらく心を眠らせておくことにする。
逃れられない過去をそっと抱きしめながら。

手を差し伸べようとしたり、
光をあてようなんて思わないでほしい。
暗闇が増えるだけでなんの意味もないことだから。


なぜ逃れようとしないのか、と
きみは聞くかもしれない。
でも、同じ根っこから生えている草の葉が
一枚だけ全く別のものになることなんてできると思うかい?

だから僕は、待ちつづけているんだ。
他の葉がすべて滅び、
たった一つの存在になれる日を。
それが僕にとっての本当の勝利だから。

そのためなら、10年でも20年でも
待つつもりでいる。
こんな僕を、バカだと思うかい?


2003年05月22日(木) It makes no difference./No title


たとえば、僕が「この本、きみは好きかい?」と
楽しげに言ったとしよう。
きみはたぶんこの本のことを僕が好きなんだと思って
好意的な意見を言うだろう。

本当は僕は、きみを試したかっただけで
その本が嫌いなのかもしれない。
興味はないけどたまたま手にとっただけかもしれない。

でもきみは、僕がその本に好意的じゃなかったら、
僕のことを嘘つきだと思うみたいだね。


仮に、僕の好きなアーティストが
「商業主義的な心のない歌」を作ったとしよう。
きみはたぶん批評家と一緒に「ショウギョウシュギテキ」だと
彼のことをののしるだろう。

本当は彼は、そういう歌を
最初から書きたかったのかもしれないし、
僕は自分が気に入ったらそれでいいと思う。

でもきみは、彼がそういう歌を作ったら、
彼のことを嘘つきだと思うみたいだね。


僕は、どうやらきみのような考え方はできないらしい。
だけど僕はきみのことが嫌いじゃない。

でもきみは、自分と同じ考えじゃないのに好きだという
僕のことを嘘つきだと思うみたいだね。

僕がきみの考えに全面的に賛成すれば、
きみは僕のことを好きになって正直者だと言ってくれるかい?

でもきみは、それは僕が自分に嘘をつくことになるのに
僕のことを嘘つきだと思ったりしないんだね。


いずれにしろ、
きみが僕を好きだと言ってくれるなら
そんなことはどうでもいいよ。

僕の主義、主張、言い訳、嘘。
このどれも、聞いてくれるきみがいないのなら
なんの意味もないのだから。






自爆装置のスイッチを押しにいってきます。

いつか傷つかないといけないなら、
心に余裕があるうちにやっておいたほうがいいと思うから。

今ならまだ、立ち直れると思うから。


2003年05月21日(水) 繰り返される悪夢/dialogue des sourds


夢を見た。

行方不明の知人の住所をやっと見つけたのに、
友人の調べでそんな住所は
どこにも存在しなかったことを知り、
愕然としたところで目が覚めた。

少し興奮していたせいか、
目覚めてしばらく咳き込んだ。
落ち着いてからまた布団にもぐりこみ、
今度はいい夢を、と願って再び眠りについた。


ベッドで目をあけると、目の前におそろしいものが
たちはだかっていて、目を閉じても消えない。
なんとか逃げ出してトイレにかけこむと、
自分は再びベッドに戻っていた。

しかし、再び目の前にさっきのものがあらわれ、
私は悲鳴をあげることもできず気を失った。
同じようなことがもう一度繰り返され、
やっと目を覚ました。


水を飲みにいこうと部屋の戸をあけると、
隣の部屋では父と母が言い争いをしていた。

関わりたくないので寝なおしをするけれど、
しばらくたって再び目覚めても
まだ言い争いは続いていた。

同じようなことをもう一度繰り返し、
やっと我が家は静けさをとりもどした。


目覚めても、目覚めなくても、悪夢。
逃げ出せないのなら、
せめてどちらか一つにしたい。

こんな毎日だと、切り傷程度のことは
あまり気にならなくなってくる。
眠っている間くらいは解放されたい。


幸せな夢は二度と見られないことが多いのに、
悪夢は何度も繰り返される。
望んでも望まなくても。

そもそも私は今、
本当に目覚めているのだろうか?
前から疑問ではあったのだけれど
未だにはっきりしない。







A.

「あなたなら私のことをわかってくれると思ったのに。
 裏切られた。」


「とりあえず。。。私、あなたのこと
 ぜんぜん知らないんですけど。。。
 どこで私を知ったんですか?」


B.

「どうやら、僕には確かめずに疑うというのは性に合わないらしい。
 昨日やってみたけど、ひどい罪悪感でいっぱいだよ。
 きみがまず疑うことからはじめるのは別にかまわないから、
 僕の人生は僕のやり方で生きさせてくれないか?」


「わん。」


C.

「先生が私を病気だと診断なさるのは、まず私の親族全員を
 診てからにしてもらえませんか?
 その上で全員が正常だとお認めになるなら、
 いくらでも処方箋を出してください。
 でも、私は絶対にそんな薬飲みませんけどね。
 だって私はおかしくなんかないし、あいつらを正常だと
 診断したあんたの出す薬なんて効くはずがない。」


注:彼女が話し掛けているのは
  壁にかかっている胸像。



誰も話を聞いていない。

対話という名のモノローグは終わらない。



2003年05月20日(火) 光の存在/stagger

嵐をくぐりぬけた人ほど、
人にやさしくできるのはなぜなんだろう?

人によりかかれない人ほど、
力をあたえてくれるのはなぜなんだろう?

傷をうけた人ほど、
人を癒そうとするのはなぜなんだろう?


こういう人たちほど、自分たちが
他人に光を与えていることを認めたがらない。
今日だって、こんなに照らしてくれているのに。

もしかすると、自分への照らし方がわからないから
自分がどれだけまばゆいものなのか
知らないのかもしれない。


見てごらん。
あなたが繰り出した一つ一つの言葉が、
こんなにも輝いているよ。

普段は闇を映し出す私の鏡。
あなたの光をうまく反射することが
できるようになればいいと願う。






毎日僕が出す同じミルクで喜ぶ子猫
本当は冷蔵庫には他のものがあるのだけど
今は出すわけにはいかないんだ

申し訳ない気持ちと手放したくない気持ちの間で
ふらふらとゆれている


きみはもうすぐそのミルクに飽きるだろう
いや、本当はもう他のものが
欲しいのかもしれないね

そう遠くないうちにきみはそれに飽きて
それ以外のものも出さないと不機嫌になるだろう


この次僕がきみを追い出すとしたら
それはきっときみを嫌いになったわけじゃない
だけどたぶん僕はきみを嫌いになったと言うだろう

きみが二度とここへ戻りたくなくなるくらいに
きみが道で僕を見つけても逃げてしまうくらいに

冷蔵庫の中の
他のものの存在なんて忘れるくらいに


それ以上は求めないでと心で念じながら、
求められなくなる日を恐れている
こんな日々がいつまでも続けばとどこかで望んでいる

きみはいつまで、
こんな卑怯な僕を許してくれるのだろうか?

僕が答えを出す頃には
きみはもういないかもしれない


2003年05月19日(月) 通り過ぎる者、立ち止まった者/flesh wound

友人との待ち合わせに遅れそうになり、
タクシーに乗った。


道はそれほど込んでいなかったのだけど、
乗っていた車が四台の車とぶつかりそうになった。
こちらの運転が悪かったのではなく、
いずれもむこうが車線を乗り越えて変な走り方をしていたせいだ。

運転手も黙って運転してはいたけれど、
「私があなたを脅したことにしていいから
今のやつシメてきていいですよ」と言ったら
喜んでやってきそうなほどイライラしているのがわかった。


こっちがよけるものだと思い込んでいる。

交通法規はよく知らないけど、
いつから車の運転っていうのは
他人に迷惑をかけていいことになったのだろう。

本当はこっちが誰かに衝突したがってたら
どうするつもりなんだろう?


歩道を、歩行者をけちらしながら進む自転車。
きみは、そこが歩く人のための道だって知ってるかい?
自分が急ぎたければ何をしたっていいんだね。

彼等はきっと自分が車上から人を見下ろせる間は、
車に乗っていない側の気持ちを
考える気はないのだろう。


歩く目線で見える花や草。
立ちどまってみてみると、
儚いながらも力強さを感じる。

だけど、自分の目的地のことしか頭にない人間の乗る車は
その花のために止まることはない。
彼らはその美しさを愛でることなく
踏み潰して引きずり、台無しにする。

黒い煙で汚したことを恥じることはない。
静かに生きていた小さな命を潰した罪悪感なんて、
もちろんあるはずもない。


みんな、自分さえよければいい。

そう感じるのは、ここが都会だからなのか。
それとも、人はもともとこうなのか?
もしそうなら、私や私より繊細な心をもった人が
人とわかりあうことで悩んでいる意味は何なのだろう。

不器用? 弱い? 神経質?
いつから自分勝手は正しいことになったのだろう?


昨日から感じていた絶望感がピークに達し、
運転手に「この料金の何倍払ったら
一緒に死んでくれますか?」と聞きたくなった。

しかし、彼の笑顔と
「お気をつけて。良い一日を」の言葉に我にかえった。

この先に、私を待っている人がいるのだ。


「ごめん。待った?」

「ちょっとだけね。」


通り過ぎないで、
待っててくれてありがとう。


自分勝手な言い訳や
一方的な攻撃だけして
通り過ぎる者たちはいらない。

今はただ、自分のために立ち止まってくれた
数少ない者たちのことだけを考えよう。







この場所を整理しておけば

後で役にたつだろうと思ってはじめた書類の整理。

気を抜いた瞬間に、右手の人差し指が白い紙で傷ついた。


よかれと思ってしたことが仇となる。

傷つけているのが、

自分の手だけならまだいいのだけど。


赤い傷口はまだ閉じない。

たぶん、数日はしみるだろう。



2003年05月18日(日) Access denied./leave me alone


求められるのは、


母親




昔の恋人
取り戻せなかった友人

過去の自分
なりたくない自分
自分の代弁者
身代わりの存在
恐れる存在
軽蔑する存在
利用する存在
使われる存在


「私」ではありえない。





「何らかの理由により、アクセスは拒否されました。」




相手が一方的に探るのは許されるけど、
こっちからのアクセスは許されない。
表面だけ探って、表面で評価して、
接続は閉じられる。

言い訳も、理由もなく
全問正解でも落第点をつけられる。
何がよくても、何がだめでも、
最初から合格させる気なんてない。


好き勝手に接続されっぱなしで、
拒否は許されない。
全部アクセスしてもいいけど、
重要なファイルをそんなところにおくバカがどこにいる?

重要なIDやパスワードを盗んで
サーバをのっとってみたところで、
そこにないものを探ることなんて
誰にもできやしないのに。



本当の自分を知らないからとか、
本当の自分なんてわかるはずがないとか、
本当の自分は誰も欲しがってないとか。

そんなことは、どうでもよくなってきたよ。
笑ってしまうくらい、
馬鹿げてることだから。


安心して。
こんなことはすぐに終わる。

落第点をつける人が、
また一人増えるだけのこと。

いつものように、薄笑いをうかべて
待ってればいい。



いいファイルはみつかったかい?
よかったら持っていっていいよ。
そこにあるのはどれも、

私にとってはどうでもいいものだから。









ただ、静かに、

できるだけ誰ともかかわらないように

生きていきたいだけ。

なのに、どうして私を標的にするの?


どう思われてもいい、と

何度も何度も立ち上がっても

叩き潰そうとする。

あんたたちとは、こっちだって関わりたくなんてないのに。


好きでこうなったんじゃない。

本当は何も隠したくなんてない。

ここにいてほしくないんなら消えたいよ。

でも、それならどこにいけっていうの?


変わっても、変わらなくても

否定されつづけることはわかってる。

だけど、泣きも叫びもしないからって

傷つけていい権利なんてあんたたちにある?


ほっといて。

気に入らないならほっといて。

なぜそれができないの?



2003年05月17日(土) together again/hatred/苦しめるもの


追い出したはずなのに、

扉の前でじっと座って戸が開くのを待っていた子猫。


ほんとうは、おまえの居場所はもうないんだよと

追い払ったほうがよかったのかもしれない。


ここには、お前が満足できるようなエサはないんだよ。

それでもいいのかい?








「最近、おまえは人を憎むのはやめたのかい?」



「しばらく休み。
 あれって、意外と体力いるんですよ。」







わかってるんだ。

存在するだけで、

姿を見せるだけで、

苦しめる人がいるってこと。


だけど私は、

消えるわけにもいかない。

たぶんこのまま、

苦しめ続ける。



どちらかが、永遠に消えるまで。



2003年05月16日(金) Closed./selfish

ヘッドホンから
都会を歌う声が聞こえてくる

おまえのようなやつは
都会でそつなく生きるのは無理だから
さっさと野垂れ死にしたほうがいい

乾いた歌声は、私をあざわらうかのように
軽やかに明るい音色で頭の中に流れ込んでいく


濃すぎるくらいのコーヒーを飲んで
無理やり目を覚ます

最近少し心を開きすぎていたようだ
あちこちが痛み始めている
目が少し腫れているのは寝不足のせいだろう

キーを叩く音 書類を送ってくる音
どうでもいい人たちとの会話


ヘッドホンをして
人の声に耳を閉じ
目を閉じて
口も閉じて
心も閉じる。


やっといつもの私が戻ってきた。
もう少しで、あやうく
一人で歩けなくなるところだった。






もう話せなくてもいい。

でもできることなら、

すぐに幸せにならないでほしい。




2003年05月15日(木) Leave it unsaid/ときどき

秘め続けたその一言さえ言ってしまえば
うまくいく 全てが満たされる
でも、それは一瞬だけのことで
結局後悔することになる

そう思って、言わないでおいた言葉が
どんどん溜め込まれていく
たぶん、今日も明日も
その存在を忘れるまでずっと言わないまま

言わないでいたほうが
相手のためになるのなら
このまま黙っていたほうがいいと思う
真実を告げるだけがやさしさとは限らないんだ


寂しくさせてしまっている時点で
その言葉を言う資格はないのだから







ときどき、高いところから落とされたカボチャみたいに
ぐちゃぐちゃに潰れて死にたくなることがある。

今日が、そんな日。

こなごなに砕けてしまえば、誰も腹なんて探らなくなるし、
理由なんて聞かなくなるだろう。

それもいいかもしれない。



2003年05月14日(水) rose in the gloom/Coward Dancing

きみはまるで白いバラの花

正面を向いて咲いているバラはトゲですら美しくて

傷つくのがわかっていても

指でふれてみたくなる


暗い日陰の中だというのに

きみの白さはとても際立っていて

太陽っていうのはこんな感じだったかなと

遠い記憶に思いを馳せる



だけどここは、光などほとんどない薄暗い世界

きみはすぐにしおれてしまうだろう

とても惜しいけど、もうすぐきみを手放すつもりだ


だけどここは、光などほとんどない薄暗い世界

きみのような光はもう現れないだろう

とても惜しいから、もうしばらくだけここにいて欲しい



丁寧に扱うから 大事にするから

あともう少しだけ

その美しさと強さを見つめさせてほしい



ドライフラワーや押し花にしてもいいから

ここにいさせてほしいというきみ

でも僕は、花を枯らせたり腐らせたことはあっても

花の美しさをとどめることはできないらしい


君がしおれていくのを

自分のせいだと思う事がとても辛くて恥ずかしい

だから、きみを見ているのがつらいと言うことはあっても

きみをとどめておきたいと言うことはできないらしい



丁寧に扱っても 大事にしたつもりでも

あともう少しだけなんて

本当は思っちゃいけないのかもしれない



白いバラにそっとキスをして

地上に戻してあげよう

きみがいるべきなのはここじゃない


白いバラにそっとキスをして

地上に戻してあげよう

陽射しをうけて輝くきみはきっともっときれいなんだろうな



見られないのがとても残念だ






真実を知るのを恐れるあまり
頭の中で創りあげた最悪の状況に
震えてるきみ

ちらちらこちらを盗み見ては
真実が僕のポケットから零れ落ちやしないかと望み、
何もでてこないことにためいきをつく


真実を知るのを恐れるあまり
真実を手にすることのないまま
自滅しようとしているきみ

あいにくだけど、臆病者にあげる真実はないんだ
せいぜいぐるぐる回って踊っていればいい
こっちもそのステップを見て楽しませてもらってるよ


きみの思う「真実」を自分のせいにしたくないなら
僕のせいにすればいい
人のせいにされるのは慣れてるからね

でもそれで、解決になるのかい? ならねえだろ
それじゃ解決にならないってことまでは
僕のせいにしないでくれよな


踊れ、臆病者

震えが全身を襲い
立っていられなくなるまで
目の前の恐怖は
自分で作り上げたものだと気づくまで

踊れ、臆病者

きみが恐れつづけている
真実という名のものが
恐れるほどのものじゃなかったことを
知るときまで



2003年05月13日(火) Give your baby doll leave to go./Words of Liar



- この赤ちゃん人形、すごくかわいい。
 ずっと一緒。一緒にいてね。。。



- 僕、その人形で遊びたいなあ。


- 私も!


- 私も!


- いやよ。これは、私の人形だもん!


- みんなで一緒に遊びなさい。
 お人形さんもみんなと遊びたがってるわ。


- でも。。。あっ!


- わーい。みんなで人形で遊ぼうぜー。



- ねえ、みんながお人形もってっちゃった。。。
 あれは私だけの赤ちゃんなのに。。。


- ううん。お人形は、みんなにかわいがってもらいたいのよ。


- 違うわ。あれは、私がおこづかいをためて買った
 私だけのお人形なのよ。


- そんなことは、関係ないの。


- どうして?


- あの人形は、おもちゃ屋さんの棚にあったものを
 買ったのでしょう?


- うん。


- あの人形が棚にいたのは、誰でもいいから
 手にとってほしかったからなの。
 あなただけに見てほしかったからじゃないのよ。


- でも。。。


- 工場で作られて、店の人がおいたから
 たまたまあの棚にいた。それだけなの。


- でも、あの赤ちゃん人形なら、
 私だけのお人形になってくれるんじゃないかって思えた。。。


- 本当にあなたのためだけに作られた赤ちゃん人形なら、
 あなた以外の子が言葉をかけても
 目を開かないでじっと目を閉じてるはずよ。
 でもあの人形は、他の子といても目を開くし、
 あやしたらうれしそうに笑ってるじゃない?


- ……私と一緒の時しかそんなことしてほしくないのに。。。


- 赤ちゃん人形は、たくさんの愛を望んでいるのよ。
 回りもそれがわかるから、
 あなたがどんなに手元においておきたくても、
 そこにいるだけでみんなが欲しくなってしまうのよ。

 箱に閉じ込めても、あの愛くるしい瞳と
 かわいらしい手で誰かを求めつづけるの。
 そのうちあのかわいい足で、
 誰かのもとによちよち歩いていってしまうわ。

 どうしても手元においていきたいなら、
 あの目をガムテープで閉じて、四肢をもがなければ
 いけなくなるわ。


- ……そんなのいや。


- そうしないと人形はどこかへいってしまうわよ。
 でも四肢をもいでしまえば、みんな気持ち悪がって
 手にとろうなんて思わなくなるわ。


- ……。


- 口もふさがないと、あなた以外の誰かの名前を
 呼ぶかもしれないわね。


- それじゃ、ミルクをあげられないわ。


- どうする? 人形の形のままで、みんなと一緒に
 あのお人形で遊ぶか、手足をもいで自分だけのところに
 おいておくか。あのお人形は、どっちが寂しくないと思う?


- どっちもいや。。。


- じゃあ、あのお人形はみんなにあげてしまいなさい。




- ……私だけの人形は、どこかにある?


- ……たぶんないわ。どこにもね。
 でも大人になれば、ずっと自分だけの人形じゃなくても、
 たまに自分のところに戻ってくる人形で我慢できるようになるわ。


- ……そんな人形なら、いらないわ。


- でも、我慢できるようにならないと
 いくつお人形を手にいれても、ずっと同じことを繰り返すわ。


- 我慢なんてしない。そんな人形しかないなら、
 人形なんてもういらない。



手をひかれてそこを去るときに、
一度だけみんなと遊んでいる人形のほうを振り返った。
みんなに抱かれているあの赤ちゃん人形が、
笑いながらこっちを見ているような気がした。

でも、内心ではほっとしていた。
あの人形から離れられなくなる日がくるのを、
心のどこかで恐れていたから。


できるだけ長く、きれいなままで、
誰も傷つけないでいてくれるなら、
誰もあの人形を一人にしないでいてくれるなら、
手元になくてもかまわない。

たとえあの人形の視線の先に
最初から私がいなかったとしても、
あの人形を見つけて手放すまでの間は
幸せだったことにはかわりはない。


その時間が心に刻まれている限り、
あの赤ちゃん人形にもう触れることができなくても
大丈夫なような気がした。






俺は愛の歌を歌うけど

きみ一人のために歌ってるわけじゃない

同情する歌も歌うけど

誰か特定の人がいるわけじゃない


今日会う予定になっているジェーンにだって

「愛してる」なんていったことはないし

母親が死んだって言うマイクには

電話すらかけちゃいない


あまりにもたくさんの歌を歌いすぎて

自分の気持ちがそこになくても平気になった

あまりにもたくさんの言葉を吐きすぎて

何が本当なのか自分でもわからなくなった


こんな俺を嘘つきと言って罵倒するかい?

でも、きみが何を言ったところで

しょせんそれはただの言葉でしかない

俺が俺ということにはかわりはない


嘘にしか思えないならそう思えばいい

本当だと思えるなら信じればいい

どちらにしろ

本当のところは誰にもわからない



2003年05月12日(月) counterfeit/その、小さな体で

どんなに精巧に作ったところで、

偽者は偽者でしかない。

模造品は模造品でしかない。

そう見えるだけで、本物じゃない。



私がどんなにあなたに飲み物をあたえたくても、

私はその飲み物程の価値はない。

手間のかかったゴミでしかない。

そう見えるだけで、本物じゃない。



それに気づいたとき、あなたはどうするのだろうか。






その、小さな体で、

いったいいくつの雨や嵐をくぐりぬけてきたのだろうか?


たった一人で。

助けも呼ばずに。


もしかすると、

あなたは本当は誰も必要ないのかもしれない。

必要としているのは、

きっと本当は私たちのほうなのかもしれない。



生きてください。



2003年05月11日(日) 回し車/keep out

好き。嫌い。ごめんね。いいよ。
好き。嫌い。ごめんね。いいよ。

あと何回、これを続けるのか。


どんなに早く走っても、見えてくるのは
さっき自分の後ろ足が蹴った部分。
何度も、何度も、後ろに蹴りつづける。


こっちにこいよ。だめ。そうか。ごめん。
こっちにこいよ。だめ。そうか。ごめん。

あと何回、これに耐えられる?


前に進んでみても、見えてくるのは
さっき自分の後ろ足が蹴った部分。
ただひたすら、何度も回しつづける。


爆発しそうなもどかしさを抑えながら、
できるだけ何もかわらないように
必死になっている。

自分が望んでいるものに手がふれたとたん、
全てが壊れることを知っているから
見ないふりをしようとしている。


私はたぶん、この回し車からは
降りられない。
そう遠くないうちにいつもどおりに
なるだろう。

きっと最後に残るのは、
それがあったという感触だけ。
それがわかっているから、
できるならもう触れたくない。


「どうするのが一番いいのかは
 自分でよくわかっているはず」

頭に浮かんでは消えるその言葉をやり過ごし、
私はまた、回し車を回し始める。


告げられることのない言葉を
心の中で叫びながら。

願ってはいけないことを願ったことを
後悔しながら。






何人もの手を振り払っては

逃げ回ってきた


ここまでくればもう大丈夫、と気を緩めると

他の人が私の手をつかむ


かかわりをもった理由は違うけど

なぜ、この手をつかもうとするのかわからない



今朝メールチェックをしたら

古い知り合いからメールがきていた

この人は、私が彼らを忘れようとするたびに

自分たちがずっと私を覚えていることを示そうとする

私にとっては彼等は忘れたい過去の一つなのに



友情という名で私を包み込もうとし、

私はそれを拒絶した

なのに、彼等は私を忘れない



忘れたいのに

忘れればいいのに


なぜ、振り返らせようとする?

なぜ、私なんかと関わろうとする?



お願いだから消えてくれ そう叫んではみるけれど

彼等は境界線のむこうでじっと私が戻るのを待っている


彼らは境界線からこちらには入ろうとしない

でも、私の手を掴んだまま離そうとしない


なぜ。。。?


本当は戻りたくないわけじゃない

でも、彼らの中には

私に死んで欲しいと思っている人もいる

それがわかっていて戻れというの?


だとしたら、

この手をつかんでいる理由は、

復讐なのかもしれない



2003年05月10日(土) keep shady/How sweet


再び輝きはじめた命の灯火に喜ぶ一方で、
私の言葉で力をなくしていく光に悲しみを覚える
この光も、私の手元にあったら
きっといつか壊れてしまうだろう


私にはこの輝きを奪うことはできても、
今以上に輝かせることはできない

早く逃げたほうがいい
心があるうちに 涙が無くなる前に
その気持ちが憎しみにかわる前に


本当は、こんなに明るすぎる光は
好きじゃないんだ

あまりにもまぶしすぎて、
しがらみさえも見えなくなって
ずっとそこにいたくなってしまうから


薄暗いくらいが、ちょうどいいんだ
ひっそりと目立たないでいれば

誰にも見つからない
誰も傷つけない






きみはどのくらい甘いんだろう?
想像するとたまらなくなる
チョコレートみたいかな?
それともイチゴ?

むしのいい話だってことはわかっているけど
一度味見がしてみたい
ほんの少しだけ 一瞬だけでかまわないから


だけど、心の底では
きみがだめっていうのを期待している
そうすれば、僕がきみに
夢中にならなくてすむ理由ができるから

お願いだから「NO」って言って
味見だけですませられる自信がないんだ
こう言ってる今も恐くてたまらない


きみはどのくらい甘い?
きみはどのくらい甘い?

きっとそれは、
永遠の謎にしておいたほうがいいんだろうな



2003年05月09日(金) surface noise



この事態を引き起こしたのは
自分のせいではない、と言って欲しそうな視線と涙。

あなたのせいですよ、と言えば
悲劇のヒロインになれるだろうね。
あなたのせいじゃない、と言えば
安心できるんだろうね。

どちらにしろ、あなたは
この状況から逃れたいだけ。
罪の意識なんて感じちゃいない。
私はこの状況からあなただけ
解放してあげるほどやさしくはない。


今、見えている表面の部分しか見ていない。
なぜ、そうなったのかなんて考えもしない。
今のこの状態だけをみて、
自分のせいなのかが知りたいだけ。
この直前までの状態が自分のせいだったとしても、
それは問題じゃないらしい。

自分のせいじゃないとわかれば、
どんなに最悪な状況でもほっとする。
安心のあまり、その最悪な状況を
笑う側にさえ回ろうとする。そういう人。


家に戻ったら、父が「おまえのやっていることは
わかっている」という視線で私を見た。

この人も、表面しか見ていない。
この人がわかっているつもりになっているのは
表面部分であって、必ずしも真実ではない。
でも、それで満足しているなら訂正する気はない。
何を「わかって」ニヤついているのか、
聞く気すらおこらない。
何かたくさん言われたような気がするけど、
鼓膜にたどりつく前に融けて消えてしまったのでもうわからない。


みんな、見えてる部分だけあれば満足なの?
その表面がどんなに真実をゆがめているか、
聞かせていないかなんて興味がないんだね。
ゆがみを通さないで見たり聞いたりする本当の部分なんて、
どうでもいいのか。。。


じゃあ、もう何も話す必要はないよね。
せいぜい表面だけ見て楽しむといいよ。



2003年05月08日(木) Fading away/Monster

自分の無力さに叫びだしたい衝動に駆られながらも
必死で平静を装う毎日。

しかし、人をいたわる余裕は無く、
やさしくしないといけない人にさえ
ストレートにぶつかってしまう。
相手の怯えた態度を見ても、
いつものように茶化す気すらおこらない。


こうやって、どんどん周りを壊してく。
そう遠くないうちに、誰もいなくなる。
そのほうがいいのかもしれない。

私の背中には自分の牙で傷つけた他人の血が
べったりくっついているに違いない。
こんなんじゃ恐れられるのは当たり前だし、
近づかないほうが利巧だと思う。


元気になったら一緒にいようと思っていたけど、
それは私の甘えでしかないのだろうか?
できる限りのことをしたんだから
おかえしがほしいと思っているだけなんじゃないのだろうか。


クズ同然の自分に嫌気がさす。







引出しの中に見つけたカッターナイフ。
自分を切ってみれば何か理由が見つかるかも
しれないと手にとってみる。

必要以上に長く出した刃をしばらく見つめ、
あまりのバカバカしさに笑いながら引き出しに戻した。
何をやってるんだか。
痛い思いをするのは大嫌いなんじゃなかったの?


恐れられることや去られることに慣れすぎて、
懐に入ってきた人を
力の加減がわからないまま潰してしまう。
こんなことばかりしているんだから、
いつか、正義の味方が退治しにくるんじゃないだろうか?


暴れる理由なんてどうでもいい。
ここまで変形した理由なんて誰も聞く気はない。
危害を加えるやつはいつか退治される。

自分が倒れたその上で、たくさんの人たちが
正義の味方に感謝するのを聞きながら、
癒されない痛みに埋もれて迎える最期。
そういうのがたぶん、一番自分に似合っている。


助けてください。ここにモンスターがいます。
人を傷つけて笑うモンスターがいます。。。


あと何人傷つけたら、
正義の味方を呼んでくれる?


2003年05月07日(水) その手は離さない



「助けてほしい」といわれなかったから
大丈夫だと思っていた、なんて言い訳に過ぎない
自分のバカさかげんを笑うばかり
何をわかっていたつもりでいた?

弱弱しく握り返された手は
無意識のものだとわかっているけど
この手をここまで冷たくしたのは私


今は何もできないし、
あなたのそばにいたいと願う人がいるから
今はこの手を離すけど、
心の中ではずっと握ったままでいるよ


今度は二度とサインを見逃さないと誓うから、
もう一度元気になってほしい


2003年05月06日(火) 祈り



奇跡なんてものは信じてはいなかったけど、

今日からは、あると信じます。



だから、お願い。

私たちに奇跡を下さい。



2003年05月05日(月)


救いを求めるサインに、
手遅れになってから気づくなんて。


父親や、母親よりもいっぱい話をしたはずだった。
でも、話をしただけで、理解なんてしていなかった。
元気になったように見えたけど、
そう見えていただけだった。
「本当に大丈夫なの?」の後に続いた少し長めの沈黙を、
なぜもっと追及しなかったのだろう。


私はこの数ヶ月、
自分のことばかりしか考えていなかった。

「助けて」と言えない子なのに。
もう大丈夫なんだと
思い込みたかったのかもしれない。

あんなに腕が、足が。
細くなっていたなんて。。。



お願いだから、助けてください。。。



2003年05月04日(日) 太陽を見つめて/endless game


約束されるはずのない幸せと
希望に満ちた夢に怯える日々
早く目を覚まさなければ、と
一日が始まるたびに思う

あまりにも不幸なことが多すぎて
感覚が麻痺してしまったのだろうか?
ときどき、希望のある未来が
開けているように感じる時がある


否定しても 否定しても
なかなか夢が覚めない
これは一体なんの冗談? それとも罰?
この不安の終わりはどこにあるの?

手にしたバラを握ってみても
トゲでできた手のひらの傷から
出てくる血すら信じられない


きっと、あの太陽が美しすぎたせい

あまりに長く見つめすぎて
私の目はうまく機能しなくなってしまったのだろう
まるで光に満ちた未来が
あるように感じる時がある

私の目は光で満たされたまま
本当は前なんて見えていない
前に進めているのかすらわからない

もしここが本当は崖なら
お願いだから、誰か背中を押してほしい
それがだめなら、崖のふちまで
手をひいてほしい


不幸な未来と 不安な未来
どちらかしか選べないのなら

未来なんて、もういらない






目の前にスイッチがある
今度こそは絶対に押してはいけない、と思うのに
手を後ろに引き戻そうとしても動かない
破壊へのスイッチ


黒い翼の者がささやいた

なぜ 自分の欲望を抑えようとする?
お前は欲望のままに動く血筋の人間じゃないか
誰を突き落とす時も 笑いながら背中を押すことができる

落とされる相手はお前の幻影に騙されて
自分が落ちていくことすら気づかない


今度こそはその手にはのらない
そう叫んだ瞬間
黒い翼の者が私の手の上からスイッチを押した


ゲームは開始された
このゲームは、お前が気づくまで続けられる

誰もお前を必要としていないこと
お前も誰も必要としていないこと

安心しろ お前には勝利が用意されている
いつものように 苦い勝利がな


黒い翼の者は 私をなめるように見て笑いながら言った

安心しろ 誰もお前の瞳なんて見ない
真実を言ったところで無駄でしかない

無理に苦しんだりなんてするな
せいぜい楽しんでこい
引き返す術なんてない


ゲームはもう開始されてしまったんだから



2003年05月03日(土) Never Never Land



もう二度と戻れないとわかっている
心の底から笑えたとても幼い頃の自分
大人が汚い手でふれても
汚しきれなかった頃の自分


もし、私がそのときの
自分と会うことができるなら
たくさんのやさしさと信頼
そして、愛情というものがどんなものか
教えてあげたい

いつか、大人になったときに
本当の形がわかるように
いつか、大人になったときに
本当の形がわからなくて
壊してしまわないように


もし、私がそのときの
自分と会うことができるなら
好きなだけ一緒に遊んであげたい
大人たちに遠慮して
ブランコに乗りたいと言えなかった
自分のために

いつか、大人になったときに
幸せの形がわかるように
いつか、大人になったときに
幸せの形がわからなくて
壊してしまわないように


小さな頃の自分を連れて、
空想の国へ行こう

空想の国では
なんでも好きなことをしていい
大人はいない
だから、大人の顔色をうかがって
自分を殺すこともない

空想の国では
なんでも好きなことをしていい
大人はいない
だから、自分の大事なものを
奪われたりはしない


おみやげには肌触りのいいシーツと
大好きな色のパジャマをプレゼントしよう

大人の人に見せたらとられちゃうから
一人の時にだけ使うのよ、と
何度もいいきかせて


何度も何度も いいきかせて


2003年05月02日(金) Faithfully Yours/Wailing Wall

何を考えてるの?
何を考えてるの?
何度も問いただすきみ

さっききみには思っていることを
包み隠さず言ったはずだけど
ちゃんと聞いてたかい?

僕はいつだって、きみには
自分の本当の気持ちしか話していない
きみが僕を疑うのは、きみが
逆のことをしているからだろ?


布団をめくってごらん
財布を全部ひっくりかえしてもいい
なんなら、僕の内臓も見るかい?

どこを探ったって「本当」なんてない
だってきみは何も信じていないんだから
目の前に本物の岩があっても、
本当はスポンジに違いないって思ってる

きっと、きみ自身のことですら
信じられちゃいないんだろうね
同情してあげたいところだけど、
信じてもらえないだろうからやめておくよ


本当の言葉に耳をふさぎ、
小さな嘘には早押しゲームのように反応する
そんな生き方は楽しいかい?

もし今「そうだよ。僕はずっと君を騙していた」といったら
きみは「やっぱりそうだったのね」って言うのだろうか?
それとも「そんなはずはない」って言って疑うのだろうか?

どちらにしろ信じてもらえないのはわかっている
だから、きみの好きなほうになってあげる
きみに僕の誠実さを示すには
こうするしかないみたいだから






嘆きの壁の前にたたずむ蒼ざめた彼女は
毎日そこにひざまづき
自分の孤独が理解される日がくるのを祈り、泣き叫ぶ

あんなに大声で泣いているのに
誰も気にとめようとしない
そして僕も


嘆きの壁の前にたたずむ疲れきった彼女は
毎日そこにひざまづき
自分の愛と忍耐が受け入れられる日がくるのを祈り、泣き叫ぶ

あんなに大声で泣いているのに
誰も気にとめようとしない
そして僕も


嘆きの壁の前にたたずむ髪を振り乱した彼女は
毎日そこにひざまづき
本当の自分が理解される日がくるのを祈り、泣き叫ぶ

あんなに大声で泣いているのに
誰も気にとめようとしない
そして僕も


「連れて帰って欲しい」と叫んでいても、
それは僕に向けられた言葉じゃない
みんながそう思っているから
毎日壁の前でこぼれる涙と祈りを
見てみぬふりをする

だけどもし、僕がきみの嘆きの壁になれるなら
いつだって手をひいてあげる
涙で剥げ落ちた化粧を恥じる必要はない
ただ振り返って手を伸ばせばいい


僕の気持ちは無視していい
わがままに胸をかきむしって
傷つけられた分傷つければいい
それで君の気がすむのなら

泣き止んだ後は、黙って立ち去ればいい
ありがとうなんていらない
とってつけたようなお世辞もいらない
だって僕はただの壁にすぎないのだから


流されたたくさんの涙と
血がにじむような叫び
この壁が乾く日はいつのことだろう


君がもし望むなら
僕がきみの嘆きの壁になってあげる
必要があるならこの手をつかんでいいよ

他の誰でもないこの僕が必要だ、なんて
嘘は言わなくていい
遠慮もいらない
だって僕はただの壁にすぎないのだから


2003年05月01日(木) あきらめの目玉焼き/instinct

「目玉焼きが壊れちゃった」といって僕を見るきみ
卵は十分あるはずなのに、
なぜ作り直そうとしないのだろう?
そう思っていると、きみのいつもの言い訳がはじまった

本当に「目玉焼き」を食べさせる気があるのなら
作り直してくれればいい
言い訳している間に新しいのを作れるはず
形が悪くたっていいし、それでも失敗したなら仕方がない

でも、そう言ったところで
何の解決にもならないことはわかってる
だから僕は「それでいいよ」と言うしかない


そんなことで怒るのはおかしいだろうか?
じゃあ、そんなことで怒らせるきみは
おかしくないのか?

きみは今までに何回、
目玉焼きを失敗したか覚えてる?
僕はきみが失敗した数だけきみの言い訳を覚えてる

だけどきみは、また新しい言い訳を
作り出そうとしている
一度だって目玉焼きを
作り直そうとしてくれたことはないのに

愛情の名のもとに強制された承諾と許し
きみが一番最後に心からあやまったのは
いったい何年前のこと?


でも、どんな言い訳をされても、
作り直す気がないということにはかわりがない
だから僕は「それでいいよ」と言うしかない







みんなが驚いている

あの猛獣を見ろよ
いつからあんなにおとなしくなったんだ?

あの猛獣のとなりにいるやつを見ろよ
まったく恐れている様子が無い
なぜ恐れない?
なぜ恐れない?


その男は言った

みんなはこいつの牙に騙されてるけど、
こいつはただの子猫だよ

ずっと誰かからミルクを欲しがって
なでてもらいたがってたのに
この爪と牙をみてみんなふるえあがってた
ただそれだけのことだよ


その時、
「子猫」は彼の手をひっかいた

彼等は笑った
やっぱりこいつは猛獣だ 猛獣じゃないか


「悪い子だ」

そういうと彼は、また「子猫」をなでた
「子猫」は目を細めて、
気持ちよさそうに横になった


彼は言った

爪は丸まっているし、牙だって脅かす程度の力しかない
今おまえらが見ていたくらいの力で
ひっかけば、俺は死んでいた
でも、ほんのかすり傷しかないだろ?


彼等は、おそるおそる
眠る「子猫」に震える手を伸ばそうとした
すると男は、その手をつっぱねた

致命傷を恐れる限り
猛獣はいつまでたっても猛獣にしか見えない
おまえらは猫に見えるものでもなでとけよ


彼は軽蔑のまなざしで彼らを見たあと、
また「子猫」に視線をうつし、
いとおしそうに「子猫」をなではじめた

「子猫」はまた眠り始めた
まるで胎内に戻ったかのように
安心して 力をぬいて

こぼれ落ちそうな笑顔のままで


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MyEnpituに追加させてもらってます。(^-^)