道院長の書きたい放題

2003年01月08日(水) ◆年末年始の番組から

 新年、明けましておめでとうございます。本年も本「書きたい放題」をよろしくお願い申し上げます。同時に何かお気付きの点があればご指摘賜れば幸いです…。

■年末年始のテレビ番組で印象深かったものを書きます。一つはNHK『新春対談/瀬戸内寂聴・日野原重明』でした。ビデオで録画していないので、あやふやな記憶で辿ります…。

印象が深かった日野原氏の言葉。「…モーゼ以来、私達は“ナニナニをしてはならない!”という教育を受けて来ました。しかし歴史を振り返ると、果たしてそれが効果があったのか…はなはだ疑問です。殺すなかれ!戦争反対!でも戦争は無くならなかった…。ですから私は、これからは“Don't”ではなく“Let's do”で行こうかと…。命の大切さを教えて行こうと思うのです(要約)」と発言されたことでした。

「私も全く同感です。命はかけがいのない大切なものと常々話しています(要約)」。瀬戸内氏が相槌を打ち、医者と坊主が共感し合ったのでした。

■私の本HPの主命題はプロローグで述べている通り“生命の尊重”です。ですから、不殺活人拳は少林寺拳法の根幹を為す教えであり、技術体系であると主張しています。ご両人の対談を聞いていて、特にここの場面に差しかかって、「我意を得たり!」と年明け間もない深夜、小躍りしてしまいました。

さらに日野原氏は、NHK番組で各界の著名人が母校の小学生に特別授業をするという面白い番組があるのですが、そこで次のような授業をされていたのでした。

「…子供達に命の大切さを教える為に、私は心音と血圧を測らせました。そうすると、子供達は私達の中に確かに命が宿っていることを実感したんです(その場面を放映)。そして命の大切さを分からせる為に人工呼吸を指導しました。命を助けることを教えたんです(要約)」…。

■私は感動しました。主張と共に見事に方法論/具体論を提示されたからです。と同時に「書きたい放題」の諸所で述べている心配事が頭の中をよぎりました。例えば…

「【2002年03月25日(月) 審判講習会場での質問!】 半月首投げで投げた後、固めを用いず顔面部に下段直突きをしています。これは、頭部が床に挟まれているので相手を殺傷しかねない危険な当身です。別の演武でも、刈り足からの足刀で後頭部を蹴っていますが、同じく危険な技です。これらは減点の対象にならないのでしょうか?

また、特に少年拳士の教育という立場から、相手が参ったという意志表示をしているのに、なお止めを刺すような当身の処理は(法形といえども)検討の余地があると思われます。是非、今後の役員講習会などで討議して頂きたいです」。

などの生命の尊重に逆行する問題点を、本部は真剣に検討してくれているのでしょうか…。命を大切に思う少林寺拳法の完成を是非、目指して頂きたいものです。

■上のことに関連しますが、暮れに放映された『総合格闘技番組』の一部試合内容は酷かった! どこが酷いかと言いますと、腕の逆技で決めた場合、相手の選手が「参った!/ギブアップ」しているのにもかかわらず、逆技を解かないからです。結果、相手選手は腕に多大なダメージを負ってしまいます。中にはギブアップしない負けず嫌いの選手がいますが、同様に関節が破壊されます。

普通人は肘関節をあのように破壊されたら1年近く、あるいはもっと長い期間、元に戻らないことが予想されます。まあ、あの試合に出る人達は身体の造りが違うんでしょう…。

■昨年の暮れ、万引き犯と店長が揉めているところに加勢に入った人が締め技を決め、15分ほど締め続けていたら、犯人が死んでしまったという記事が載っていました。その人は柔道の心得があったと書いてありました。

ご承知のように柔道は締め技、逆技があります。ひとつの文化として眺める時、これらの技の存在が相手の「参った!」を認める行為を育んだと考えられます。これは敗者に対する大切な労わりの心なのです。

柔道が学校教育の中に取り入れられて、その影響で「参った!」が浸透していたのでしょう。私達の子供の頃は相手が泣いたらケンカは終わり。片方勝ち!が暗黙のルールでした。しかしこのような格闘番組が続くと、相手の「参った!」を無意識に認めない若者達が育って来る危険性があります。

もしマスコミ関係者がこれを見ていたら、よくよく考えてもらいたいものです。具体的な改善方法としてレフリー以外に競技判定者を置き、逆技や締め技が決まったら、例え相手がギブアップしないでも素早い判定を行う。また、ギブアップ後に直ちに技を解かないことは重大な反則であることを選手に徹底する指導をしてもらいたいものです。

社会は相互に関連しあっているのです。暴力の連鎖を呼ぶような、生命の尊重にはなはだ逆行するような、汚い試合マナーの試合を放映するのは、ただ面白いからだけでは済まされない問題なのです…。

■暴力に対して暴力で返礼しない人達の存在が『NHKスペシャル』で報じられました。「Peaceful・Tomorrow's」というテロ被害者の遺族を中心としたグループでした。あの“9.11テロ”の直後から「私達は武力行使での解決を望まない」と意思表示し、訴え続けて来た人達でした。

しかしアフガニスタン/アルカイダへの報復は、当時90%のアメリカ国民が支持していたこともあり、創始者の女性をはじめ、メンバー達は迫害を受けました。驚いたことに、彼等のことを「非国民!」と大勢のアメリカ人達が非難したのでした。

「アメリカは民主主義の国ではなかったのか…!?」という悲痛な声が印象に残ります。が、幸いに1年経った今、彼等の主張はだんだんと理解されつつあるというラストシーンに安心を覚えました。

平和を主張することは、勇気を伴うことなのだと教えられました。


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あつみ [MAIL]