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カコ|ミライ
岡谷
「ね、昨日の夕方、三丁目のあたり歩いてたでしょ」 マイスイート・肉人形・真里ちゃんが俺ん家に来て下さったんでコーヒーいれてみたんだけど、どうもご機嫌ななめみたい。コーヒーと俺、交互にきっつい視線を動かして、昨日のことを問い質してやる!って雰囲気ピリピリ発してらっしゃいますな。わかりやすー。おじちゃんは酒でも飲まないと君の視線に耐えられない。そんなまっすぐな君を、そこそこに愛してるよ、真里ちゃん。ぐびぐび。 「きのう?バイト行ってたもんあのへんは行かないよー」なんて嘘ウソ。昨日はシフトが急に変わったからー、三丁目にお住まいの美帆ちゃんとしっぽりしてたんだけどねー。 「だって見たもん」 「見間違いでないの?」ぐびぐびぐび。 どうやってごまかそ。夕方だったら俺が一人で帰るとこ見ただけだと思うけど。 「だっていつも被ってる帽子だったよ」 「そんなこといわれてもなー」 あー、そういや結構特徴ある帽子かぶってたな。三丁目にいたことは認めといたほうがよかったか。でももう否定しちゃったしー。 「わかった!ドッペルペンガーだ」ぐびっ。 おー俺名案。さっすが俺。 「…えーと、ドッペルゲンガー?」 わお、言い直された!恥ずっ。ま、いいけど。 「そそそ、それそれ。見られたら死ぬとかいうやつ!…て、うっわ、縁起悪っ。なんてもん見てんのチミ。」 よーしよしよし、こんままごまかしちゃお。 つか、ドッペルゲンガーって、浮気をごまかすために考えられた言い訳なんじゃね?ドイツ人(たぶん響きからしてドイツ語だろ)てエッロいなー。ぐびぐび。 おや真里ちゃんが鞄から何か取り出した。布に包まれた…何だろ。 「ドッペルゲンガーを見られた人は死ぬ、って言いたくなる人の気持ちがわかった」 真里ちゃんが震える声で言って俺の腹のあたりに体重をかける、と共に、痛みが走る。 「ほんとは、見たの、これが初めてじゃないの。もう、全部、知ってるの」 そっかーごめんねって言おうとしたけどおじちゃんお酒飲み過ぎたみたいで呂律まわんないや。腹は痛いし腹痛いのに頭はぼんやりしてきたしー。あれ、今俺何してたんだっけ、と周りを見渡せば俺の体が血まみれで床に横たわってる。真里ちゃんが俺に覆いかぶさって何度も包丁振り下ろしてる。これが本物のドッペルゲンガーってやつか…、って違、俺死にかけてるんじゃん?ちょっとやめてよそれ、ていうか何それまだ刺すの?刺しすぎでしょー可哀想だからもうやめてあげてやんちゃもするけど根は善い人なんだから!と思ってるうちに原形がなくなってきた。バイバイ、俺だった俺。生まれ変われるならドッペルエロスなドイツ人になりたい。グーテンエロス。
* web拍手はちょっと今見づらい状態なのでしばらく取り外します。 送ってくださったかた、ありがとうございました。
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