A Thousand Blessings
2004年1月〜最新ひとつ前に戻るひとつ先に進む


2004年12月04日(土) 映画「永遠のモータウン」DVDを購入。

前回の日記でとり上げた映画「永遠のモータウン」のDVDを購入。
早速鑑賞した。
素直に楽しめた。モータウンの音楽を作ってきた連中の生の姿が
見られるだけでも相当な感動ものだが、彼らが今も現役の
優れたミュージシャンであり、ライブステージ場面で出てくる音が
想像以上にグルーヴィーであったことにはちょい涙がこぼれた。
末期の肺癌だったドラマー、ピストル・アレン(映画完成直前死去)の
スティックさばきを何度もリプレイして鑑賞した。
誰にもその名前を知られること無く、
モータウンの専属スタジオ・ミュージシャンとして
数々のヒット曲を作ってきた彼らファンク・ブラザーズが
40年の時を経て、この映画の撮影のために再結成されたのだ。

映画は不世出の天才ベーシスト、故ジェイムズ・ジェマーソンのエピソードを
軸に進行していく。
多くの音楽ファンにアピールするためにあえて彼のベースプレイに関する
専門的な解説はしていない。それは正解かもしれないが、ちょっと物足りなさも
残る。仕方ないか。

さて、映画の中で、ブーチー・コリンズがジェマーソンについて
語る場面がある。
ブーチーはフォートップスの“リーチアウト”での
ジェーマーソンのベースプレイに最高の賛辞を送っている。
同席したファンク・ブラザーズのメンバーも同様に褒め称えた。

ところが、実はあのベースはジェマーソンではなかったのだ。
演奏していたのは、キャロル・ケイである。
フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドやビーチボーイズの
「ペットサウンズ」の音を根幹から支えた史上最高の女性ベース奏者である。
彼女がスタジオ・ミュージシャンとして参加した録音はとても挙げきれるものではない。あまりにも多いのだ。
1949年がプロデビューと言うからすごい。最初はギタリスト、途中から
ベーシストになった。
ちなみにあの有名なビーチボーイズの“ファン・ファン・ファン”のイントロの
ギターフレーズを考えて演奏したのは彼女である。ご存知でした?

ジェマーソンをリスペクトしてやまないキャロル・ケイだが、
“リーチアウト”での自分の一世一代の名演が長い間ジェマーソンの
ものと思われていたことに相当腹が立っていたらしい。
(実際にこれはもう・・筆舌に尽くしがたいすっごいベースプレイです!)

実は“リーチアウト”を初めとする60年代のモータウンのかなりのヒット曲が
本拠地デトロイトではなく、70年代に拠点を移す事になるロスアンジェルスで
録音されていることが判明している。
たとえば、シュープリームスなどは半分以上がロス録音だったという
衝撃的な話まで聞く。
デトロイトのオリジナルの音楽が実はロスで録音されていたというのは
ずっとタブーであったらしい。

モータウンという会社にはいろいろと問題
(もちろん経営上の問題であって、決して音楽の質の問題ではない)
があるらしく、今回のモータウン賛の映画もそういう部分を
全て包み隠す事で成り立っているように思える。
映画の中でナレーターが語る。
「モータウンのすべてのヒット曲のバックで演奏していたファンクブラザーズ」と。
これはやはり違反だと思う。

ただ、それでも映画の最後、
“エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ”を演奏する場面では涙を抑えきれない。
やはり、そこには純粋な音楽的感動があるからだ。

余談だが、日本の多くの音楽ファンは、ジェームズ・ジェマーソンも
キャロル・ケイも知らない。ま、知らなくてもいいけど。


響 一朗

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