Rollin' Age

2004年10月11日(月)
 すこし、ふしぎ

 「なんだあれは」と不思議に思い、遠めに見ながら、避けて通っていた。梅田の駅前を通り過ぎるたびに見かける光景。汚らしい格好をしたおっさんが、雑誌の束を抱え、そのうちの一部を振り上げて立っている。梅田駅周辺は「アンケートに答えてください」といった勧誘が多い。こいつもどうせマルチか宗教かの勧誘で、ここに立っているんだろうと、そう思っていた。

 その謎が解けたのは、先週どこかの新聞の夕刊に掲載されていたコラムを読んだ時だった。汚らしい格好のおっさんは、紛れもなくホームレス。手に持つ雑誌は、「ビッグイシュー」。これは、ホームレスの自立を支援する事業なんだそうな。1部200円のそれが売れるたびに、販売員であるホームレスは缶ジュース1杯分のお金を手にする。家を借り生活を立て直すことができるようになるのがゴールという。ほう、そうなのかと、びっくりした。

 なんか不思議だなぁと思いながらも気にせず通り過ぎていたモノに、意味や理由が与えられた瞬間というのは、実に楽しいものだ。さっそく買ってみた。別にホームレスに頑張ってほしいとか、そんな殊勝な気はない。雑誌の内容は、可もなく不可もなく、あれば読むという程度の内容だったけれど、通勤路の途中で売っているために、今後もなんとなく買うだろう。「こういう仕組みっておもしろいな」という気持ちだけで。そんなもんでいいと思う。

 似たような話で、「ハリーポッター」のこともある。最近どこの本屋でも九月からずっと、新刊「不死鳥の騎士団」が山積みにされているのを見て、少し不思議に思っていた。書店の一角を埋め尽くす、あのピンクの山。文芸春秋の11月号で、そのカラクリが明かされていた。単純に、売れてないのだ。そして、売れてないのに返品できないという事情があるらしい。詳しくは無いが、通常、本は返品可能で、売れ残った分は出版社に返って来る。ハリーポッターの場合は、それができず、いつまでも本屋に並んでいるという。

 これもまた、少し不思議に思いながら、そのまま特に考えもしなかった。事情通の人が、こういうことなんだと教えてくれて初めて、気づく。世の中は、なんかようけ分からんことがたくさんあって、特に気もせずやり過ごしてしまうものだけど、その裏のカラクリが分かったときに、少し見る目が違ってきたり。そういう発見は、嬉しい。人に教えられるのではなく、自分で探し当てることができるのなら、なおさらなのだけど。

 しかし、「ビッグイシュー」の活動は、日本では約一年前から始まっていて、メディアにも散々露出してきていた。調べてみると、最近でも、新聞紙上に乗っかっている。少なくとも毎日一通り読んでいりゃ引っかかるものだろうに。しばらく前、「新聞記者なのにそんなことも知らないの?」と言われて、「記者だからって何でも知ってるわけじゃねえっつぅの」と反論したこともあったけれど、最近、知らないことが恥ずかしいと思うようになりつつある。

 若造の張れるアンテナなんて、たかが知れているのだけれど。少なくとも、新聞に何度も書かれているようなことについては、見落としてはマズい。一時プロ野球の取材でとても忙しかった上司が、それを尻目にノホホンとしてた俺に、質問を投げかけてきた。「パリーグの6球団、全部言えるよね?」。「あたり前じゃないですか。西武とダイエー、近鉄とロッテに、えーと、あれ、オリックスと、えー、・・・」。上司、あきれた顔で、「日ハムな」。

 ・・・これはもう、アンテナを張るとか新聞を読むとか以前のお話。


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