おれが生まれ育ち現在も住んでいる町はJR亀有駅から歩いて10分弱のところにある。亀有駅は葛飾区だけど住所は足立区。家から100メートルも歩くと葛飾区との区境があるところ。
自分の町をヒトコトで言うなら「工場の町」。日本紙業っていう製紙会社の亀有工場が昔からあって、それを取り巻くように佇んでいる小さな町。日本紙業はその後、合併かなんかで大日本板紙(?)かなにか、そんな名前の会社になり、そして来年。その亀有工場が閉鎖されるのだという。
おれが小さい頃から、おれの見る風景の一部に常にその工場があった。路地裏の小さな通りの片側は工場の敷地と外界とを隔てる高い壁がそびえていて。その壁の向こうにはシートに覆われた何かが常に高く積まれていて。そしてその向こうにはモクモクと白い煙を吐く赤と白の高い煙突。
夏になれば「シギョウ」のプールに「シギョウ」の盆踊り。シギョウのプールは「水が冷たい」と評判だった。「シギョウ」の社宅には何人もの同級生が住んでた。社宅の階段をわざとバタバタ走り回って怒られたっけなあ。
でもなくなっちゃうんだって。工場。おれの生まれ育った町がそのアイデンティティを失おうとしている。さびしいなあ。これからおれの生まれ育った町を誰かに説明するとき、どういうふうに説明したらいいんだろう。
工場の跡地はでっかい病院かスーパーになるらしい。でもまだどうなるかはハッキリ決まっていないらしい。でもどっちでもいい。工場がなくなってしまうんだったら、もうどっちでも。
大事なものは移ろっていくんだ。いつだって、そうやって。
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