と地下鉄の駅が奏でている。 高い音から中音域まで人の数だけ音がある。 時折しめし合わせたかのようにリズムをそろえ、 風のタクトに導かれて強弱を変える。 ひとしきりの演奏が終わると閉演の汽笛が鳴ったので そっと拍手をして地上に上がった。
外に出ると少し強い風がふいていた。
駅から学校に行くには細い路地に入る。 その路地の隣にはお寺があって、 そこは柵の向こう側で行ったことはないけれど なんか前から知っているような存在感がある。 細い小道の中はむしろ暖かく線香の香りがやさしくふいていた。 うららかな陽気に誘われて、このまま春をさがしに行きたくなる。 水曜日の魔法にかかりそうになりながら なんとか坂を上って実験室にたどり着く。
鍵を開けて中に入ると いつもと少し様子が違っていた。 この天気に誘われてか 電気もどうやら休みらしい。 これじゃぁ何も出来ない。 ということで外に出た。
お昼になって 今日はもうしょうがない。おもむくままに コンビニでお弁当を買って上野公園に足を運んだ。 かもが毛づくろいをし、はとがご飯をもらっている。 池の周りにはジョギングをしたり昼寝をしている人、 バトミントンをしている動物園の人や観光に来ている外国人。 それぞれな人が、当たり前のようにそこにいた。 時間の流れがそこだけ遅く、歩く早さも心地よい。 都会の中の隙間を見れた気がして こういうのも悪くないな。なんて思った。 向かいのベランダでゆれているピンクの風船から目が離せず 時差式の信号にも戸惑いながら、 やっぱり読み物でも持っていけばよかったなぁって 研究室に帰る。
せっかく帰ってきても 鍵が閉まっている研究室はせつない。 ひとり寂しく中に入り さしあたり誰もいない部屋の机にむかってみる。 しばらくすると後輩がやってきて ギリチョコというネーミングをして お土産のチョコをふたつくれた。 その子はPCがすねててお困りの様子。 結局壊れているようで何も出来ないらしい。
やっぱりこんな日は漂っているほうがいいのかもしれない。
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