TOM's Diary
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2005年08月29日(月) 熱中症

S氏は台風一過の素晴らしいお天気の中、家の周りの片付けをしていた。
お天気は最高なのだが、外で片付けをするには少し暑過ぎだと思いながらも、
S氏は麦藁帽子や水筒を装備して片付けをしていた。

午前中に物置の片付けを終えたS氏はお昼を挟んで庭の片付けに入ったが
気温はどんどん上昇しているようだった。
庭には陽炎が立ち、強烈な日差しでサングラスをしていてもまぶしく
まともに物を見ることもままならない感じであった。汗が止め処も無く
噴出し、水分を補給するがとても追いつかない。あまりの暑さに立って
いるのもやっとなほどだ。S氏は作業の手を止めて、日影に隠れようと
したが、その足取りもとても重かった。軽い目眩も感じる。どうやら
庭に出て5分も経っていないのに熱中症にでもかかってしまったようだ。

あまりの暑さに、午前中はうるさいくらいだったセミも鳴くのを止めて
しまっている。そう言えば周囲からはいつも聞こえてくるクルマの音も
通行人の声もなにも聞こえてこない。暑さでみなどこかに隠れているの
だろうか?

いったい何度くらいあるのだろう。
S氏は腕時計に装備された温度計を眺めた。しかし、時計の液晶は暑さ
のためか、まっ黒になっていてまともに表示されていなかった。

S氏は作業を諦め部屋に戻った。
エアコン全開の室内は外から戻ったばかりのS氏には涼しく感じられたが、
温度計を見ると30度を超えている。あまりの暑さにエアコンもまともに
効かないようだった。
それでも外にいるよりははるかにマシとソファに身体を横たえ、水分を
補給した。テレビをつけるとどのチャンネルもまともに番組をやって
いるところはなく、臨時ニュースばかりやっていた。どうやらこの異常
な暑さのため、多数の人が病院に運ばれ、交通網は麻痺し、政府は外出
禁止令を出し、気象庁は暑さによる機器の故障で観測もままならない
らしかった。

S氏は体調が落ち着いたところでなんとか家の中を涼しくする方法が
ないか考えた。まず、エアコンの室外機に水を吹きかけることを思い
ついた。また、家の屋根にも水を吹きかけることにした。しかし、
そのためにはどちらも一旦外に出なくては作業が出来ない。
そこでS氏はこの暑さのなか外で作業をしても熱中症にならないで済む
スーツを考え出した。
アルミ蒸着された生地で作られたスーツは太陽の熱を反射するように
なっており、その内側には断熱素材で高温に熱せられた空気からの
熱を遮断する。背中に付けられたホースからは、冷たい空気が送り込める
ようなっており、冷たい空気の供給源となる、小型の強力な冷却装置は
とりあえず、台車に載せて運ぶようした。リュックサックに入れて背負う
こともできなくはないが、この猛暑の中を重たい荷物を背負って歩くの
は、躊躇われた。
スーツにはフードも付いており、頭まですっぽり覆うことができ、
外の熱い空気からは完全に遮断することができる。

S氏はさっそくエアコンの効いた(とは言え、室温はすでに35度を
超えていた)室内で試してみた。十分過ぎるほどの涼しさだった。
さっそく外に出たS氏は外の光景を見て驚いた。
あまりの日差しの強さにあたりは真っ白であり、草木は枯れ落ち、
鳥や昆虫は地面に落ちていた。まるで砂漠のようである。
冷却スーツを通しても熱さが伝わり、さすがのS氏の発明でも長時間は
外にはいられそうになかった。
S氏はわざわざ外に出なくても、この格好で室内にいれば良いのでは
ないかと思って、部屋戻った。そのままソファに横になり、S氏は
快適なスーツの中でお昼寝を始めた。

S氏が寝ている間に、急激な温度上昇により強力な入道雲が発生し、
S氏の家の周りに激しい夕立が降った。夕立は大粒な雹が混じり
一気に地面や建物を冷やし、夕立に伴なう強風が熱い空気を噴き飛ばし、
急速に気温を下げたのだった。
エアコンを全開にしていたS氏の家も一気に冷え、室温は15度くらい
まで下がっており、S氏のスーツの中は冷蔵庫どころか冷凍庫なみに
冷えていた。

S氏は寒さで目覚めた。指先や耳が痛い。ちぎれそうだ。
どうやら凍傷になってしまったようだった。

S氏は熱中症の患者でごった返す病院の中で唯一の凍傷の患者として
病院に運ばれ、迷惑がられるのだった。


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