前略 美保子さま
先日、「春の古書大即売会」というイベントに行った際、見返し部分に貴女の名前が刻まれた古い本を見つけました。「幕末風雲録」という本のタイトルと、何ともレトロな装丁に惹かれ手にとってみると、まるで本に見せかけたカラクリ箱のように、あまりに軽くてびっくりしました。
表紙 と 見返し
幕末風雲録 著者/野田開作 偕成社 昭和32年発行 黄色く焼けた乾燥した紙片。夥しいしみ。それこそシルバーフィッシュが好んで住んでいそうな状態の本で、巻末をめくってみると「昭和32年8月5日発行 定価150円」とありました。
昭和32年…! じつは私が生まれた年です。(言っちゃった…)
口絵や挿絵が付いていたり、漢字に総ルビがふってあるところを見ると、大人向けの読み物ではなく、少年少女向けの読み物のようですね。
ということは、この本の最初の持ち主と思われる荒井美保子さんは、当時、10代前半の少女だったのではないでしょうか…。
本など中々買ってもらえなかった我が家はともかくも、それでも、この時代の本は今よりもっと高価で、大事にされたものだったんでしょうね。
もし、今、お元気でしたら、美保子さんは60代ぐらいのご婦人でしょうか…。
裏表紙の裏に刻まれた青いインクの伸びやかな筆跡を見ながら、美保子さんはどんな少女だったんだろうと想像しつつ、今日、本を読み始めました。
裏表紙の見返しに私も名前を並べて書いてもいいですか、美保子さん?
読めば読んだで常にほったらかしの私ですが、偶然手にした、私と同じ年の生まれの本。大切にしたいと思います。
Sako
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残念ながら主要人物の挿絵には登場しませんが、佐川官兵衛と共に、白虎隊の少年隊士を見守る土方歳三や、榎本釜次郎らお馴染みの人物が登場しています。少年少女向けと書きましたが、活劇的であるものの、禁門の変、海援隊、上野彰義隊、天誅組騒動等、かなり詳細で読み応えがあります。
挿絵といい、カバー、装丁といい、貸本屋時代の懐かしい匂いがする本です。
※ 偕成社から少年少女歴史小説全集として1966年にも発行されているようですが、絶版のようです。
Sako