| 2025年02月16日(日) |
あめだま、ノーバディズ・ヒーロー、ファレル・ウィリアムス、サスカッチ・サンセット、太陽の運命、ハッピー☆エンド |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『あめだま』 3月2日に発表される第97回アメリカ・アカデミー賞🄬 短編 アニメーション部門に東映アニメーションとしては初めての ノミネーションを果たした上映時間21分の作品。 主人公は他人とのコミュニケーションが苦手で、いつもビー 玉でひとり遊びをしている少年。そんな少年が駄菓子屋でい ろんな模様の入った数個の飴玉を手に入れる。そしてその飴 玉の1個を口に入れてみると…。 少年の頭の中に突然ある声が聞こえてくる。それは隣の部屋 にいた飴玉の模様と同じ模様を持ったあるものの声だった。 つまりその飴玉はそれを口に入れると同じ模様のものの声が 聞こえる魔法の飴玉だったのだ。 しかもそれは生物だけでなく、置かれた物体の声だったりも する。こうして少年はいろいろなものの声を聞き取り、その 思いに沿った行動ができるようになって行く。そしてその行 動が少年を成長させて行く。 原作は2020年に「アストリッド・リンドグレーン賞」を受賞 した韓国の児童文学作家ペク・ヒナによる同名作と『ぼくは 犬や』。その原作から『ふたりはプリキュア』シリーズなど の西尾大介監督と鷲尾天プロデューサーが作り上げた。 またアニメーション制作は『THE FIRST SLAM DUNK』などの ダンデライオンアニメーションスタジオが担当。声優は、嶋 陽大、長谷川義史、岩崎ひろし、山路和弘、渡辺いっけい、 雨蘭咲木子らという作品だ。 映画の製作に当っては実際に韓国にロケに行き、その撮影素 材を基にCGアニメーションの制作を行っている。それによ って韓国でもちょっと昔の風景が見事に再現されているよう だ。従って映像にはハングルが溢れている作品だ。 短編アニメーション部門の他の候補作は“Beautiful Men” “In the Shadow of the Cypress”“Wander to Wonder” “Beurk !” となっているもので、他の作品は観ていないの で僕の評価はできないが、IMDbでの評価は一番高い。 子供の成長を描いた作品ということでは見事で、僕自身は非 常に気に入っているが、とは言えアカデミー会員の評価基準 は全くわからないので、それが受賞に繋がるかは全く不明。 でも多くの人に観て貰いたい作品ではある。 一般公開は未定のようだが、出来れば受賞して特別上映にで も漕ぎ着けて欲しいものだ。 なおこの紹介文は、製作した東映アニメーション株式会社の 招待で試写を観て投稿するものです。
『ノーバディズ・ヒーロー』“Viens je t'emmène” 2025年1月紹介『ミゼリコルディア』のアラン・ギロディ監 督による日本未公開3作品の2本目。本作は2022年のベルリ ン国際映画祭パノラマ部門のオープニングを飾ったものだ。 物語の始まりは男が道端に立つ女に言い寄るところから。そ の女は娼婦で客待ちをしていたのだが、男は迎えの車が来た のもかまわず強引に連絡先のメモを女に手渡す。すると帰宅 した男の許に電話が架かってくる。 こうして男女は関係を持ち始めるが、男のテクニックが気に 入ったのか金は払わないとする男に女は連絡を取り続ける。 そんな男女の関係に、嫉妬深い女のパートナー、さらに逢瀬 を紡ぐホテルのフロントなどで話が展開して行く。 そこに爆弾テロが発生し、過激派と疑われるアラブ人の若者 が男の住むアパートに侵入。さらにはホテルのフロントの若 い女性、若者の処遇に迷う男の住むアパートの隣人らが入り 乱れて、かなり飛んでもない物語が繰り広げられる。 出演はジャン=シャルル・クリシェ、ノエミ・ルヴォウスキ ー、イリエス・カドリ、ミシェル・マジエロ、ドリア・ティ リエ。本作がデビュー作というイリエス・カドリ以外はそこ そこの出演歴のある俳優が並んでいる。 所謂艶笑コメディという部類の作品になるが、そこで語られ る爆弾テロの意外な真相や性別、人種、民族に関わるマイノ リティの問題など、現代社会が抱える様々な問題を巧みに織 り込んだ展開も見事と言える作品だ。 しかも性行為などはかなりリアルに描かれ、これは監督自身 がインタヴューで「ポルノグラフィーの復権が目的の一つ」 と語っているもので、この辺の捉え方も凡庸な監督とは一線 を画していると言える。 しかもそんな種々雑多な情報を我々日本人のような部外者に も判りやすく描いているのも見事で、民族間の問題など複雑 な社会情勢が巧みに描かれているのも秀逸に感じられた。監 督が現代フランス映画の旗手とされるのも頷ける作品だ。 民族間の問題などは日本人にはなかなか判り難いが、その点 には学びもある作品だった。日本の近い将来を暗示する作品 でもある。 公開は3月22日より、東京地区は渋谷のシアター・イメージ フォーラム他にて全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社サニーフィルムの招待で試写を 観て投稿するものです。
『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』 “Piece by Piece” 音楽家として数々のヒット曲を発表し、自らのファッション ブランドを生み出すと共にルイ・ヴィトンのクリエイティヴ ・ディレクターとしてランウェイショーを手掛けるなど、多 岐に活躍するアーチストの半生を特別な手法で描いた作品。 内容は、1970年代に生まれた孤独だった少年がやがて音楽の 才能に目覚め、友人とバンドを組んで徐々に音楽で頭角を現 して行くというもの。この程度は他にもあるかなと思うが、 本作ではここに錚々たる顔ぶれの証言が加わる。 その顔ぶれはスヌープ・ドッグ、ケンドリック・ラマー、ジ ャスティン・ティンバーレイク、グウェイン・ステファニー ら、音楽には疎い僕でも知っているような名前が並んでいる ものだ。 そして彼らがファレル・ウィリアムスの偉大さを語ってくれ るのだが、何とそのインタヴューやその他の彼の半生の映像 が全て2014年2月紹介『LEGOムービー』のようなブロック玩 具の造形で描かれている。 監督は2013年オスカー受賞作『バックコーラスの歌姫たち』 などのモーガン・ネヴィル。受賞作はここでの紹介は割愛し たが試写を観て優れた音楽ドキュメンタリーだったと記憶し ておりドキュメンタリーの実績は充分な監督の作品だ。 そんな監督が本作では何とも奇想天外な作品を作り上げたも ので、これはもしかして最初は実写のドキュメンタリーで制 作して後付けでレゴ🄬 ムーヴィ化したのかとも疑ったが、イ ンタヴューの受け答えでは最初からの企画だったようだ。 まあ単純にはインタヴューのシーンが多い作品なので、それ では単調だと考えられたのかもしれないが、正直にはレゴ🄬 の造形が面白くて、インタヴューがしっかりと頭に入ってこ ないような印象にもなってしまった。 ただそんな中でファレル・ウィリアムス本人がかなりSFに 造詣のある人のようで、『スター・トレック』や『カール・ セーガンのコスモス』なども引用されているのには大いに興 味を惹かれたものだ。 なお映画の製作はレゴ🄬 社の協力の許に行われているものだ が、実際の造形はCGIで行われているようで、これにはレ ゴ🄬 化ソフトみたいなものがあるのかな? 公開は4月4日より全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社パルコの招待で試写を観て投稿 するものです。
『サスカッチ・サンセット』“Sasquatch Sunset” 北米大陸に生息するとされる未確認生物サスカッチの生態を 描き、2018年10月紹介『ヘレディタリー/継承』などのアリ ・アスターが製作総指揮を手掛けたという作品。 舞台は広大な森林地帯。そこで暮らすサスカッチ=通称Big Footの群れが登場するキャラクターとなる。そして物語はと ある年の春に始まる。そこで1頭のオスがある切っ掛けで発 情してしまうが…。 季節は巡って夏。メスが自分の身体に異変を感じる。そして 群れの行く手に赤いペンキで描かれた「×」印を発見し、さ らに舗装された道路にも遭遇する。その風景に興奮する彼ら だったが、やがて別れが生じる。 そして秋。メスと幼い息子だけになった群れはキャンプ用の テントを発見。そこである出来事に興奮したメスは破水。新 たな生命が誕生する。しかしそこには野獣の捕食者の影も近 付いていた。 さらに冬。遠くに山から煙が上がるのを発見。彼らは仲間へ の呼び掛けの叫びを発するが、応えはない。そして進んで行 く彼らの前にBig Footの姿を描いた看板が出現する。その看 板に向かっても叫ぶ彼らだったが…。 脚本と監督は、2014年に菊地凛子主演『トレジャーハンター ・クミコ』を手掛けたデヴィッド&ネイサン・ゼルナー。幼 少期にレナード・ニモイがMCを務めた番組でサスカッチに 興味を持ったという兄弟が、その思いを実現した作品だ。 そして出演は、脚本を最初に読み製作の手掛かりも提供した という2010年10月紹介『ソーシャル・ネットワーク』などの ジェシー・アイゼンバーグ。 それに2010年12月紹介『ランナウェイズ』などのライリー・ キーオ、2013年2月紹介『オズはじまりの戦い』などの出演 者でスタントマンのクリストフ・ジジャック=デネク。また 監督のネイサンも出演している。 サスカッチというのは元々が未確認生物だからその生態など は全く不明。従ってここに描かれる展開も全て想像の産物だ が、監督兄弟は他の野獣生物などの行動を参考に愛情を込め てその姿を作り上げている。 それはかなり下品な面もあるが、全体的には愛すべき姿とし て描かれた。しかし描いている内容は登場する音響機器など の様子から少し前の時代かな。そしてタイトルのサンセット =日没からは悲しい現実も想像させる作品だ。 公開は5月23日より、東京地区は新宿ピカデリー他にて全国 ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社アルバトロス・フィルムの招待 で試写を観て投稿するものです。
『太陽(ティダ)の運命』 2019年6月30日付題名紹介『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』などの佐古忠彦監督が再び問う沖縄 の現実を描いたドキュメンタリー。 以前紹介の作品は戦後と呼ばれた時代の沖縄史を描いた作品 で、実はコロナ禍で僕は観られなかったが2021年には『生き ろ島田叡―戦中最後の沖縄県知事』で日本帝国支配下の沖縄 史も佐古監督は描いている。 そして本作では1972年の本土復帰以降の沖縄の苦難の歴史が 第4代沖縄県知事・大田昌秀と第7代沖縄県知事・翁長雄志 の姿を通じて描かれている。それはタイトルにある「運命」 というより「宿命」に近い沖縄県民の叫びだ。 大田は社会学者、沖縄戦研究者の立場から革新統一候補とな り、1990年に県知事に当選した。そして1995年に米兵による 少女暴行事件が発生し、「日米地位協定」の見直しを訴えて 橋本龍太郎首相から「普天間基地返還」の言質を得る。しか し県内移設などの条件からその実現は叶わなかった。 これに対して翁長は保守の立場から大田県政を批判、大田を 退陣に追い込むが、那覇市長時代に辺野古埋め立てを強行す る安倍政権と対立。自らの支持母体だった自民党とも対峙し て保革の対立を乗り越えた選挙戦で2014年に当選する。 つまりこの2人は、立場は真逆でありながら結果として基地 の返還と県外移設を唱えるもので、これこそが「運命」とい うより「宿命」と呼べるものだと僕には思えるのだ。それに しても事態がここまで拗れる原因は、単純過ぎるほど単純だ と思えるのだが。この単純さが暗礁にもなってしまう。 いやはや、辺野古埋め立ての問題は今までにも2023年11月紹 介『沖縄狂想曲』や琉球放送製作のドキュメンタリーなどで 理解していたつもりだったが、こうも単純な裏切りの上に成 立しているとは思わなかった。 それにしても現代戦において日本の国土防衛に沖縄の基地は ほとんど意味がないものであって、にも拘らず沖縄の米軍基 地に自民党がここまで固執するのにはそれなりの利権がある のかな? その辺ことは本作を観ても判らないままだった。 まあ判っても意味はないのだろうけど。 公開は3月22日より那覇市桜坂劇場で先行上映の後、東京地 区は4月19日から渋谷ユーロスペース他にて全国順次ロード ショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社インターフィルムの招待で試写 を観て投稿するものです。
『ハッピー☆エンド』 群馬県前橋市で緩和ケア・萬田診療所を営む萬田緑平医師を 通じて、末期がん患者などの緩和ケアの実際を描いたドキュ メンタリー。 末期がんの治療に関しては胃婁や抗がん剤治療など診療報酬 の確保を目的とした人間性を疑うような医療が行われて、僕 自身は延命治療の拒否は行うつもりだが、世間的にはそうは いかない実情もあるのかもしれない。 そんな中で治療か死かの二者択一と思われる医療に第3の道 を示してくれるのが本作で紹介される緩和ケアだ。それは医 療用の麻薬などを用いて患部に伴う痛みなどを緩和し、それ によって穏やかに死期を迎えるまでを過ごすというもの。 それはもちろん病気を治す訳ではないから、これを治療とい うには抵抗があるのかもしれないが、人が人としての尊厳を 保ったまま最期を迎えるには理に適った方法と思える。しか しそこには様々な抵抗もあるようだ。 その抵抗の1番目は緩和ケアに使用される医療用の麻薬とい うことだが、それは多分医療用のモルヒネだがそれはかなり 以前から手術後などに使用されていたもの。それが今更抵抗 の要素になっているとは思わなかった。 でもまあモルヒネという言葉にも抵抗があるのなら、ヒロポ ンがいつの間にか覚醒剤になったように呼び名を変えればい いような気もするもので、そんなところにも訳の分からない 抵抗組織がいるのだろうな。 そんな医療に関する不自然な抵抗は、COVID-19ワクチンへの アンチな言論からも身に染みて理解しているところだ。そん な抵抗にもめげずに緩和ケアを勧める医師の姿が描かれてい る。 とは言っても本作が主にレンズを向けているのは医師よりも 患者の方で、そこには緩和ケアによって満足の行く生涯を終 えられた患者たちの姿が描かれる。そしてそこに緩和ケアを 実践した樹木希林さんの言葉も添えられる。 正直に言って本作の全体の流れは緩和ケアのCMのような趣 もあるが、緩和ケアという選択肢を周知させるためにも本作 の価値はあるようにも思えた。自分も後期高齢者になって、 こういう情報を知れたことには感謝したい気持ちだ。 監督は、以前には学校給食の問題を描いてきたというオオタ ヴィン。ナレーションに佐藤浩市と室井滋。エンディングに ウルフルズの『笑えればV』をフィーチャーした作品だ。 公開は4月18日より、東京地区はシネスイッチ銀座、アップ リンク吉祥寺他にて全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給する新日本映画社の招待で試写を観 て投稿するものです。
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