井口健二のOn the Production
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2024年02月11日(日) FEAST−狂宴−、エドガルド・モルターラある少年の数奇な運命、リトル・エッラ、(報告)記者会見:室町無頼

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『FEAST−狂宴−』“Apag/Feast”
2017年6月4日付題名紹介『ローサは密告された』などのブ
リランテ・メンドーサ監督によるフィリピンの社会情勢を背
景としたファミリードラマ?
登場するのは貧富に隔たりのある2組の家族。その金持ちの
一家の息子が車を運転して父親と帰宅中に、わき見で貧しい
一家の父親と娘を撥ねてしまう。そして動転した親子はその
場から逃走してしまう。
こうして家に帰りついた親子だったが、一家を仕切る女主人
は話を聞いて弁護士に相談することを提案、弁護士は自首を
勧める。そこで父親は運転していた息子を差し置いて自首を
決意。刑に服することになるが…。
一方、被害者一家では幸い娘は助かったものの、事故後昏睡
状態だった父親は帰らぬ人となり、収入も失って一家は困窮
状態になる。そこで加害者一家の女主人は被害者の妻を自ら
の邸宅の使用人にして一家を支えることに…。
こうして事故の加害者と被害者の両家が同じ家に住まうとい
う奇妙な暮らしが始まってしまう。

出演は「フィリピンインディーズシネマのプリンス」と呼ば
れるココ・マーティンと、『ローサは密告された』でカンヌ
国際映画祭主演女優賞受賞のジャクリン・ホセ。
そして本作の舞台であるフィリピン・パンパンガ州で知事を
務めたこともあるというリト・ラピッド。それに悪役女優と
して著名というグラディス・レイエス。かなり錚々たる顔ぶ
れのようだ。
映画の途中では女主人と加害者の息子、それに被害者の未亡
人という3人が一つ屋根の下で暮らすことになるが、これが
3人ともその時点で配偶者がその場にいないという尋常では
ない展開。
まあよくこんなシチュエーションを思い付いたものだという
感じだが、これが結構人情味もあってうまいドラマが作り出
されていた。展開からはもっと過激な復讐劇みたいなものも
考えてしまったが、こんな人情劇も良いものだ。
それにしても、劇中に登場する豚を1頭まるまる使ったパン
パンガ州の郷土料理みたいなものがめちゃくちゃ美味しそう
で、これはどこかのフィリピン料理店で再現してくらないか
な。あったら食べてみたいものだ。

公開は3月1日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
渋谷他にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社百道浜ピクチャーズの招待で試
写を観て投稿するものです。

『エドガルド・モルターラある少年の数奇な運命』
                      “Rapito”
2017年5月28日付題名紹介『甘き人生』などのマルコ・ベロ
ッキオ脚本・監督で、19世紀にイタリアボローニャで起きた
ユダヤ教徒一家の息子を巡る誘拐事件の実話に基づくとされ
る作品。
始まりは1858年6月23日、ボローニャのユダヤ人居住区に建
つモルターラ邸に教皇直属の兵士が押し入り、当時7歳の当
家の息子エドガルドを連れ去る。それはその子が生後間もな
く洗礼を受けたという情報に基づくものだった。
しかしその状況を把握しない両親は息子を取り戻すべく申し
立てを行うが、洗礼が行われたか否かの明白な証拠はなく、
教皇側は洗礼を受けた者にはキリスト教教育を受けさせなけ
ればならないとの決まりに基づき拉致を強行する。
こうしてローマに連れて来られたエドガルド少年は教皇に謁
見し、キリスト教教育が始まるが…。少年は毎夜の就寝前に
シェマの祈りを捧げることを忘れなかった。しかし事態は変
わらぬまま時だけが過ぎて行く。
一方、当時の教皇ピウス9世は、初めは救世主とも崇められ
たもののその権威は失墜、今やエドガルドの存在が権威を保
つ手段にもなっていた。そしてこの事態にフランスやアメリ
カ合衆国など世界が動き出す。

出演は、ベロッキオ監督作品で2011年3月紹介『愛の勝利を
ムッソリーニを愛した女』に出演のパオロ・ピエロボンと、
同じくファウスト・ルッソ・アレジ。そして『甘き人生』に
出演のバルバラ・ロンキ。
さらに映画初出演のエネア・サラ、2023年『蟻の王』で映画
デビューしたてのレオナルド・マルテーゼらが脇を固めてい
る。
同じ題材では出版された書籍もあるようで、そちらの映画化
権獲得にはスティーヴン・スピルバーグも動いたとのこと。
成程なとは思わせるが、まあつまりはユダヤ人迫害の歴史的
な1ページを描いた作品ということだ。
それにしてもローマカトリック教会の横暴さがこれでもかと
いう感じで描かれた作品だが、バチカンもその辺は理解して
いるということなのかな。ユダヤ人にとってはナチス以外で
新たな標的が見つかったようだ。

公開は4月26日より、東京地区はYEBISU GARDEN CINEMA、新
宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町他にて全
国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ファインフィルムズの招待で試
写を観て投稿するものです。

『リトル・エッラ』“Lill-Zlatan och morbror Raring”
スウェーデンの作家ピア・リンデンバウムが2008年に発表し
たサッカー好きの少女が主人公の絵本の映画化。
主人公は友達との付き合いがちょっと苦手なサッカー好きの
少女。近所の男の子が話し掛けてはくるが、何時も冷たい態
度を取ってしまう。そんな主人公が唯一話せるのはヘアデザ
イナーのおじさんで、両親が仕事で旅行中はおじさんの家で
暮らすのが楽しみだった。
ところがそんなおじさんがイヴェントの準備を始めた頃、お
じさんの家に1人の男性が現れておじさんと親密な態度を取
り始める。しかもおじさんの方が積極的で、その男性に愛の
告白まで準備してしまう。そんな様子に気が気でない主人公
は、男性を追い出す計画を練り始めるが…。
そんな少女の成長が描かれて行く。

脚本と監督は、ノルウェー出身でイギリスの芸術大学で映画
制作を学んだというクリスティアン・ロー。子供や家庭を描
く作品が得意という監督が、隣国スウェーデンを舞台に描い
た作品だ。
出演は2012年生まれで本作が長編映画デビューのアグネス・
コリアンデル。なお本作後はビリー・コリアンデルに改名し
ているそうだ。相手役は1979年ストックホルム生まれのシー
モン・J・ベリエルと1979年オランダ生まれのティボール・
ルーカス。
他に2012年生まれで本作が映画デビューのダニヤ・ゼイダニ
オグル、1996年生まれでYouTuber出身のウィリアム・スペッ
ツ。さらに1959年生まれで、1970年代に製作された『長くつ
下のピッピ』でピッピ役を演じていたインゲル・ニルセンら
が脇を固めている。
物語自体は少女の憧れや嫉妬を描いた他愛のないものだが、
そのシチュエーションにLGBTが関るのは時代ということ
なのだろう。逆に言えば西欧ではそれくらいに普遍的な状況
ということだ。日本はどうかな。
なお原題のZlatanはサッカーの元スウェーデン代表選手ズラ
タン・イブラヒモヴィッチのこと。イブラヒモヴィッチはオ
ランダのアヤックス・アムステルダムにも在籍していたから
彼氏が持ってくるボールにはその意味がある。
因にJリーグの大宮、浦和で活躍した登録名ズラタンの選手
はズラタン・リュビヤンキッチ。元スロベニア代表の選手な
ので誤解の無きよう。

公開は4月5日より、東京地区は新宿シネマカリテ、UPLINK
吉祥寺他にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社カルチュアルライフの招待で試
写を観て投稿するものです。
        *         *
記者会見『室町無頼』
 2025年1月17日公開予定作品の製作発表会見に招待され、
2月11日に行われた会見を見学してきたので報告する。
 作品は直木賞作家・垣根涼介の原作を、前回紹介『あんの
こと』などの入江悠脚本/監督で映画化するもので、戦国時
代へと繋がる応仁の乱の前夜=室町時代の末期を背景に、大
飢饉と疫病で疲弊する社会を立て直すべく立ち上がった者た
ちの活躍が描かれる…、というもの。
 そして会見には、主演の大泉洋を始め、堤真一、「なにわ
男子」長尾謙杜、松本若菜、北村一輝、柄本明と入江監督が
登壇した。
 その会見は、大泉が絡むと大体は彼が喋りまくって終始す
るが、今回は堤や長尾にもそれなりの目配りをして、まずは
会見らしい感じのものになっていた。
 そして会見では撮影クリップなどの映像も紹介され、特に
長尾に関してはワイアーなども使ったアクションが撮影され
たようで、中々の迫力が感じられた。
 その他にも場内のパネルには大勢のエキストラを動員した
モブシーンなども紹介されており、実際に京都撮影所に関東
からもエキストラが招集されたとのこと。
 そのモブシーンに絡めては大規模な爆破シーンや吹きまく
る風にもこだわりがあったということで、入江監督の渾身の
作品が作られているようだ。
 なお会見中の発言によると撮影は既に完了しており、ここ
から入江監督が編集などの仕上げに掛かっている途上とのこ
と、来年1月が楽しみになる会見だった。
 なおこの紹介文は、製作会社東映株式会社の招待で会見を
観て投稿するものです。


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井口健二